2021年2月28日
福島県と山形県にまたがる西吾妻山に行ってきました。標高は2035mです。
冬の西吾妻山には、2月中旬頃から樹氷(スノーモンスター)が出現します。福島県の裏磐梯にあるグランデコスキー場から、ゴンドラとリフトを乗り継いで、登ってきました。
樹氷で一番有名な蔵王は、観光客でも樹氷を楽しめるのに対し、西吾妻山は標高1900~2000mの稜線上に樹氷ができるので、雪山装備のある登山者しか見ることができません
西吾妻山の樹氷を見に来るのは2回目で、1回目は2013年でした。その時は高曇りの天気でスタートして、ガスに巻かれるという一歩間違えれば…際どい経験をしています。旅としては非常に愉快なものでしたが、山の天候的に再訪したい山でした。
今回、2021年の冬において、一番の天候に恵まれ、スノーモンスターと南東北の山々の展望を見ることができ、会心の旅になりました。
冬の西吾妻山について
地図
福島県裏磐梯にあるグランデコスキー場から西吾妻山の山頂を登りました。西大巓までは樹林帯歩き、そこからアップダウンがあり、西吾妻山の山頂です。
吾妻神社方面に行くと山形県側の展望がよくなります。
コースタイム
- 9:57グランデコスキー場 リフトトップ(ゴンドラとリフトを乗り継ぐ)
- 11:04西大巓
- 12:07西吾妻山 山頂
- 14:36グランデコスキー場 リフトトップ(リフト部分を徒歩、ゴンドラで降りる)
- 15:06ゲレンデ駐車場
行動時間は5時間9分でした。
アクセス
マイカー利用以外では、ツアー会社主催の夜行スキーバスツアーに参加するか、JR猪苗代湖駅から無料シャトルバス(予約必要)でアクセス可能です。
また、山形県側の天元台スキー場から縦走が可能です。
冬の西吾妻山 雪山登山
登山者で行列のグランデコのゴンドラとリフト
道の駅磐梯山で3時間ほどの車中泊をして、裏磐梯にあるグランデコスキー場に移動します。冬真っ只中の2月にしちゃ、全く雪がなく、スタッドレスタイヤが意味を成しません。
前回、冬に裏磐梯に来た時はもっと雪深かったのにな…。
オープン前にも関わらず、駐車場はいっぱいでした。
しかも、スキー・ボード客より登山者の方が多い異例事態です。スノーモンスターシーズン終盤の晴天予報で、登山者がワラワラと詰めかけたようだ。
ゲレンデから西吾妻山の頭頂部を肉眼で確認できる。
周囲の山がカラッカラの晩秋みたいな景色で心配したが、スノーモンスターは存在しているようだ。
グランデコスキー場に来たのは初めて。裏磐梯らしい綺麗な施設。今日は、茨城在住栃木の小山市に憧れる「なべ氏」と二人旅。
登山者がたくさん来ることを見越して、「登山のお客様専用チケット(3000円)」が販売されています。ゴンドラ乗車券2枚(往復)と共通リフト券1枚(登り片道)のセット。ちょっと、高いな…。
レストハウスから出るとゴンドラ待ちの行列ができていました。30〜40分は並びました、後ろの方は1時間くらい待った人もいるんじゃないだろうか。
もし、自分がスキーで来ていたら、登山者にヘイトが溜まるだろうな…。
コロナで他人同士を詰め込まないというのもあり、時間かかりました。ロープウェイ最終が15時くらいなので、結構なロスです。
登るペースが遅い、山頂でゆっくりしたい場合は、早めに列に並んだ方が良さそうです。
グランデコゴンドラ山頂に到着し、リフトに乗り換えます。
ゲレンデを横切るような形で、リフト乗り場へと歩きます。ロープウェイの向こうには、会津地方を象徴する磐梯山が綺麗に見えてます。
朝一発目は、ほぼ登山者しかリフトに乗ってません。
雪山登山日和であることは間違いないが、それはスノーモンスターにとって致命的なダメージを与えかねない。早く登らなきゃという気持ちが高まる。
9時45分にリフトトップに到着。
ロープウェイの運行開始が8時30分なので、行列でだいぶ時間をロスした感じです。リフトトップでは、たくさんの登山者が準備中。スノーシュー、ワカン、スキー、それぞれ道具はバラバラ。条件が良かったので、ツボ足の人もいました。
溶けきったシラビソの中を歩き、西大巓を目指す
9時57分 登山開始
リフトトップで標高1580mくらいなので、最初の目的地になる西大巓まで標高400mの登り。コースタイム1時間20分~30分ほどの道のりになります。
リフトトップからはシラビソの樹林帯を歩きます。
登り始めて5分で汗ダラダラ、インナーが厚手な分、夏より暑く感じる。
30分ちょっと登ると、展望も良くなってきて、目指す西吾妻山の山頂方面の展望がみえてきました。しかし、スノーモンスターの「ス」の字も感じることなく、黒々した雪原が広がってます。
「スノーモンスター終了のお知らせ」
そんな、不安が脳裏をよぎります。
ただ、目を凝らすと、毛穴から飛び出た皮脂のようなスノーモンスターっぽいのが見えるため、希望をもって、登り続けるしかありません。
振り返ると磐梯山が全貌を表しました。奥には猪苗代湖も見えています。さらには、栃木県の那須や日光の山々が見えていました。福島県の端から端まで見える展望。なかなか、珍しい一日です。
開けた場所に出ると風が通り抜けて気持ちいい。
しかし、白日にさらされた木々は、ポタポタと水滴が落ち、樹氷シーズンの終わりを告げていました。
冬を通して、2、3日あるかないかの広範囲な晴天で、遠くの山々まで見えます。これは、奥会津や越後山脈の方角。
一度、ニセピークっぽいのを挟み、西大巓が見えてきました。いまだにスノーモンスターは確認できず。
温暖化でスノーモンスターが見れなくなる日は近いのだろうか。
標高1982mの西大巓に到着。
山頂は広いので、休憩場所に困ることはありません。
ようやく出現した樹氷、スノーモンスターの稜線を歩く
そして、ようやく、ようやくです。樹氷のモンスター群が出現。標高1900m以上の稜線付近まで登らないと現れないのか…。
東北の秘境、飯豊山の白い山脈が異彩を放ちます。
ドローンが山頂付近をぐるぐる旋回していて「写真に入り込んで邪魔だな…。」と、ボヤいたら、すぐ隣にパイトロットがいて、「すいません…。」と謝られた。気まずい。
山形県側の視界が開けるので、真っ白な朝日連峰が見えます。東北の2大連峰が眺められ、なんとも贅沢な展望じゃないですか。
これから目指す西吾妻山の山頂の方角。
すっごい遠くに見るけど、コースタイムは45分ほど。緩やかに下ってから、登りになります。
ポツンと一軒家ならぬポツンと避難小屋。
福島県側の樹氷は剥き出しになっているけど、山形県側の樹氷はしっかり成長しているようです。
爽快な稜線歩きのスタート。
西吾妻山のようなだだっ広い稜線ですが、人の歩くコースは明瞭なので、しっかり踏み固められています。
西吾妻山の登り返しになると樹氷原に突入。人間と比較すると、樹氷の大きさがわかります。
4m級の巨大な樹氷。今にも、咆哮しそうな怪獣のようだ。
数え切れないくらいの樹氷。
大量にコピー&ペーストで生成されているように見えて、どれ一つとして同じ形がないのが奇々怪々、摩訶不思議です。
広大な稜線ではありますが、場所ごとに樹氷の高さや太さが変化するのも面白いです。風の微妙な流れの違いで、成長が変化するんでしょうか。
アスパラのように細い個体があれば、とうもろこしのようにぷっくりした個体もある。
ワンちゃんも元気に樹氷の雪原を駆けずり回ってました。
この日、犬を散歩させている人を7〜8人は見たかな。ゴンドラ並んでいるとき、犬同士で吠えあって騒がしかった。
避難小屋の手前まで来ると、樹氷のない雪原が広がってました。夏はここに湿原があるところだろうか…。
避難小屋から山頂までは15分ほどの登り。
メインのトレースはあるけど、自由に歩いている人も多い。自由に歩き回るなら、ワカンよりスノーシューだなぁ…。売っちゃったけど。
上部にある樹氷は中身が露出しておらず、完璧な樹氷の姿を保ってました。
西吾妻山の山頂直下は積雪が多くて、樹氷はてっぺんだけが頭を出している、身長1mくらいの小ぶりのサイズです。
雪に埋もれて看板、GPSで確定する西吾妻山の山頂
12時7分 西吾妻山の山頂
登山者がたまっている広場に出れば、西吾妻山の山頂です。リフトトップから2時間10分かかりました。
西吾妻山の山頂看板は雪の下。なので、GPSで山頂を確認しました。
ちなみに冬以外は、樹林帯に囲まれた展望ゼロの山頂。地面から2m以上離れているということになります。
山形県側の天元台から登ってくる人も合流し、たくさんの登山者が休憩していました。
犬連れ同士が「あー、久しぶり。今日はグランデコから登ってきたの?」近所の公園で、ばったり知り合いに遭遇したくらいの会話が聞こえてきた。
福島県の猪苗代方面の展望が抜けているので、大半がそちらを向いて休憩しています。風は微風で、ロープウェイの終了を気にしなければ、何時間でも滞在できる。
ナイフのように鋭い山頂をしている磐梯山が正面に鎮座。標高は西吾妻山の方が高いので、見下ろす感じに眺められる。
先程、通過した西大巓が見えます。「でん」は変換で出てこないし、難読漢字だ。「峰」とか「嶺」と同じ意味。
斜面にはバックカントリーの滑走跡がたくさんついていました。ゲレンデに合流できるのかな?
東の方角には安達太良山が見えます。
福島県の安達太良山、磐梯山、吾妻山の3つの山は、シーズンごとに表情があり、山を始めてから毎年どこかしらには足を運んでます。
冬の山頂で食べる海老の濃厚トマトクリームは美味い。
福島県の山と自分は相性が悪く、微妙に晴れているけど、肝心なポイントで曇ってしまうジンクスがあったのですが、こんなに見通しの効く一日は初めてだったかもしれない。
山形県側の吾妻神社、東北の名峰を眺めるビュースポット
ロープウェイの時間を気にしつつ、山形県側の領域へと進んでいきます。目指すは吾妻神社です。
天元台から登ってくる人の方が少ないので、どこを歩くか探り探り下山。ツリーホール(木の周辺に出来る落とし穴)に足を取られてしまうと、脱出に体力20くらい持ってかれます。
天元台方面はアップダウンがなくフラットな稜線。
ここで、吹雪かれたり、ガスったりしたら遭難間違いなし。実際、前回来たときは危うい場面がありました。
10分ちょっとで、雪でガチガチにコーティングされた吾妻神社に到着。
前回来た時はここで、お昼ごはんを食べたことを思い出す。ガスガスで全く展望なかったけど。
吾妻神社からは山形県米沢市の展望スポット。どこまでも雪原が広がる雪国の風景。
山頂とはまた違う展望になるので、時間が許せば、ここまで足を運んでみるのが良いかと。
山形一の名峰である月山が見えます。月山の更に北に見えるってことは、鳥海山だろうか。自信はないけど。山形県の端から端が見えていることになる。
んで、吾妻神社から山頂方面を見たとき、もはや異世界の風景に見える。
夏に来た時はここは岩場だった記憶がある。
樹氷原から一段高い場所にあるので、見下ろすことが出来るスポットです。
さて、いい加減、同じ風景ばかりで飽きてきたと思う。雪山記事は、書き手と読み手の熱に、大きな差異があると思うのですよね。
下山は西大巓を登り返さなければならいのが、ちょっと憂鬱です。
吾妻神社から避難小屋に向かって歩きます。この周辺は、樹氷密度が高めです。
避難小屋の入口の周辺は除雪されてるっぽいですが、入るのは2階の扉かな?
樹氷のない風の通り道にできたシュカブラ(雪の風紋)。今日はたまたま天気が良いだけで、冬の殆どは暴風雪の地域です。
西大巓まで戻ってきました。ここまでくれば後は下るだけです。結構、疲労していると感じるのは、体力というより暑さのせい。
西大巓をショートカットして歩く登山者がいました。楽そうだけど、雪崩ないか心配になる道です。
樹林帯は猛スピードで駆け抜けて、グランデコスキー場のゲレンデに戻ってきました。
下りのリフトを利用できない理由はわかりませんが、リフト1本分を歩かなければいけません。
ロープウェイに乗り、ゲレンデ駐車場に戻ってきました。終日良好な天気で、登山者を喜ばせる一日でしたが、樹氷にとっては致命的なダメージになった一日でした。
裏磐梯の休暇村の温泉に入り、まるいち食堂のソースカツ丼を食べる
裏磐梯は温泉地なのですが、リゾート施設ばかりで、立ち寄りやすい温泉施設がない。
グランデコスキー場から15分くらい移動して、休暇村裏磐梯の日帰り温泉で汗を流しました。
裏磐梯から表磐梯に移動して、猪苗代町にある「まるいち食堂」で食事にしました。営業時間が17時半までと、夜には店が閉まってしまうので注意が必要。
昔ながらの食堂という雰囲気。基本のメニューはラーメンだけど、カレーやカツ丼のごはんメニューがあります。
登山後に選択してしまいがちなソースカツ丼。冬山なのにたくさんの汗を流したので、味の濃いものを欲していました。
分厚い豚に薄手の衣、脂身からぎゅっとうまみがあふれ出て、パワフルながら上品なソースカツ丼で、おいしゅうございました。
猪苗代湖ICに近いので、磐梯山周辺の登山に来た時に立ち寄りやすい店としてメモしておきます。
道の駅猪苗代の「猪苗代の牛乳ソフト」でフィニッシュ。そのまま、猪苗代湖磐梯ICから磐越道に乗り、帰宅するのでした。
西吾妻山の雪山登山を終えて
この冬一番と言ってもいい天気に恵まれました。
西吾妻山は福島県と山形県の県境なので、南東北全域の山々を見渡せました。磐梯山、安達太良山、飯豊山、朝日連峰、蔵王山、月山、鳥海山、那須連山などなど。
例えば、気温30度の猛暑の中登った飯豊山。辛い思いをしたので「もう登るのはいいや」と思っていたのですが、眺めてしまうと「また、登りたいな」と思ってしまうのは、登山者の悲しい習性です。恋愛もそうですが、依存しないように気を付けないといけません(?)。
西吾妻山の樹氷以外に蔵王の樹氷しか見たことないですが、スノーモンスターの群れの中を歩けるので、登山者的にはより身近に見れて良いですね。小屋・山頂・神社の三角コースは歩いてみると、樹氷の形成され方が場所によって違うのが見れて発見になりました。
冬でも西吾妻山は、ゲレンデを経由するので、アクセス方法が多々あります。天気が100%保証されたのであれば、新幹線でもスキーバスでもレンタカーでも、多額の交通費をベットしてでも、登りに来てみてはいかがでしょうか。
コメント
めちゃくちゃ気持ち良さそうですねー!
スノーモンスターの写真、途中から鼻の角栓に見えてきましたー!
コメントありがとうございます。
人の皮膚を歩いたら、こんな感じなのかもしれませんね。特に脂ぎってる中学生くらいの。