2017年3月12日
埼玉県秩父群小鹿野町にある四阿屋山に行ってきました。標高は771mです。
2月下旬から3月中旬に開花する福寿草が咲く山として有名で、たくさんのハイキングコースが整備された山です。北秩父の山域らしく、山頂付近は岩が剥き出しとなっており、鎖場が連続するポイントがあります。
福寿草が咲くと同時に麓にある節分草の自生地と中腹にある蠟梅の開花したということで、1粒で3つ美味しい思いをしてきました。そして、もちろんご当地グルメも頂きます。
春を告げる花三昧、秩父小鹿野町の旅スタートです。
四阿屋山について
地図
道の駅両神温泉薬師の湯を基点とした周回コースです。
節分草自生地を絡めているので、上級コース(破線コース)であるつつじ新道で山頂へ。薬師堂コースで、福寿草と蝋梅を見ながら下山しています。
コースタイム
- 8:58両神温泉薬師の湯
- 9:44節分草自生地
- 10:24つつじ新道入口
- 11:38四阿屋山山頂
- 12:06福寿草園
- 12:50両神温泉薬師の湯
行動時間は3時間52分でした。
四阿屋山 登山
レッドアロー号で秩父、レンタカーで小鹿野町へ
早朝の池袋駅より、レッドアロー号で秩父を目指します。
なるべくなら鈍行を利用しますが、秩父に行くときだけは必ず利用する特急。埼玉県内を長時間移動したくないので…。
特急料金700円なので、それほど高くないので。
西武秩父駅に到着。
あれ?駅舎の雰囲気がだいぶ変わってないか?
大改装中らしいです。
仲見世通りの店で、軽食を買おうと思ったのに…。駅に隣接して温泉が出来るのは嬉しいですねぇ。
8時58分 両神温泉薬師の湯
西武秩父駅から両神温泉薬師の湯へ移動しました。併設して温泉がある道の駅です。
四阿屋山へは路線バスでアクセス可能ですが、駅前でレンタカーを手配しました。4人での行動なので、一人当たりの値段も安くなりました。
下山後のわらじかつ丼の店への移動も楽なのです。
節分草自生地へ徒歩で移動します。
節分草を目的とせず四阿屋山を登山するのであれば、この道の駅からぐるっと周回するコースが通常のようです。
3キロほど車道を歩きます。
秩父鉄道の三峰口駅から出ているコミュニティバスとすれ違いました。節分草自生地への直通運転もしているみたいです。
節分草開花中は看板が転々と車道脇に立てかけられているので迷うことはまずないかと思います。
没個性でおなじみの埼玉近辺界隈とは一線を介し、田舎らしさを持っている街です。
酒屋が西洋造りになっている建物があったりと味わい深いです。
両神山の白井差登山口が終点にある道路を歩いて行きます。こちらは2016年のゴールデンウィークに通っているのですが、まるで覚えてなかった…。
歩道は無くなりますが、交通量はほとんどありません。たまに節分草自生地から帰ってくる車が通るくらいです。
道の駅からだらだらと40分かけて到着しました。
直売所があり、軽食のおこわだったり、野菜が売られています。
四阿屋山の登山バッチ(400円)が販売されていました。
バッチの収集を開始したので、とりあえず購入。知名度の低い山でバッチが存在するのは珍しいです。福寿草がデザインされていました。
そして、せつぶん草のバッチも販売されていました。花単体のバッチもあるのかと珍しく思い、悩んだ挙句に購入。
オリジナル缶バッチは買わなかった。
入園料を支払うとパンフレットをもらえます。
日本一の面積、小鹿野町の節分草自生地
せつぶん草自生地です。ドン!!!!
白く小さい花なので、遠目に撮っても、地面が腐ってるとしか見えない。
節分草自生地は栃木県の「四季の森星野」、広島県の庄原市総領町の道の駅でも見られるようですが、秩父小鹿野町の自生地は日本一だそうです。
日本一という触れ込みに弱いため、広島県が日本一と言われると困りますが、埼玉県秩父なら射程圏内です。
「春を告げる花」というキャッチコピーがついていました。
春の花の代表格と言えば桜なのですが、目立たない雑木林であったり、山の斜面と言った陰になっている場所で、人知れず春は始まっているのですね。
白、紫、黄の三色の構成。
雄しべの一部で花粉が入る紫色の葯(やく)が、小さい花ながら気品を感じさせてくれます。黄色は蜜線です。
高さ10cmほど。花期は2-3月で直径2cmの白い花を咲かせる。花弁に見えるのは萼片(がくへん)である。黄色の雄蕊(ゆうずい)は、花弁が小さくなり蜜線に変化したもので、濃い紫色の雌蕊と共に中央に固まっている。
満開の時期だったので、面積5000㎡ある奥の奥まで、白い絨毯が展開されていました。見頃の見頃に来れてしまったようだ…。
少し枯れている個体もありました。
節分草の面白い特徴として、ハチを媒介する虫媒花でもあり、花粉を飛ばして受粉する風媒花の2種類の種の増やし方をするようです。虫の少ない時期に開花するためのシステムらしい。
開園から間もない時間帯ということもあってか、人はまばらでしたが、花撮りの熱心なカメラマンが多数いました。
節分草の大きさを表現するために高知県のゆるキャラ「とさけんぴ」と比較します。とさけんぴの大きさがわからないって?
以上、節分草自生地でした。
上級コースとされるつつじ新道から四阿屋山へ
節分草自生地を後にして、登山口がある場所へと来た道を引き返します。
10時24分 つつじ新道登山口
400m戻ったところに登山口があります。
メインルートではないので、突然な感じが出ている。
ゴローの靴だ。
巣鴨にあるオーダーメイド登山靴の専門店。
「この先健脚向コース」と書かれています。
鎖場が多いルートという事なので、健脚向きという定義が当てはまっているかは謎。鎖場のルートを避けるのであれば、更に戻り押留コースがあります。
全体的に「あずまや山」と平仮名表記になっているのは意味があるんでしょうか。
字面と読みが同一という事で、長野県にある四阿山と混同します。赤いレンゲツツジが咲く山です。一方で、こちらのつつじ新道は、時期的につつじが咲いている気配はゼロ。
無慈悲な急斜面の登りで、かつ砂利を含む地面なので、滑りやすい。これが「新道」という最短ルートということで、造られたルートのステータス。
他の山では新道と名の付く登山道は登りでは使用しませんが、節分草自生地から一番近かったから…。見どころもなく、ぐいぐいと登り続けます。
植生が竹林に変化し、分岐点に到着。
鎖場は真っすぐ、福寿草園への迂回路もあります。というわけで、直進して鎖場へ。
つつじ新道の恐怖の鎖場
クサリ場注意の看板があり、迂回を呼び掛けています。初心者は「鎖」を読めないと思っているのだろうか。
最初の鎖場は補助的なものだったので、容易に登ることが出来ました。
問題の箇所はこちらの鎖場です。
つつじ新道の最大の難所です。
たいていの鎖場は、手と足をかけるポイントがはっきりしており、登攀中にエアドラムでもしない限り、落下することはありません。
V字に切れた岩壁に5~6mほどの長さが垂直にぶら下がっています。技術と身体能力に合う掴みを探す必要があります。
さみえもんとよしこさんは、苦戦しながらもクリア。
岩場と鎖場が苦手なゆみえもんさんは、「ここから足をどこにかけたらいいの?」、「無理じゃないの」とだいぶ苦戦していました。
と、何とか時間をかけて無事通過。
自分も取り付きましたが、結構怖かったです。
腕の力を使いながら、何とかクリアです。
後続で登ってきた二人組も苦戦していました。
垂直の鎖場を抜ければ、後はおまけ程度の鎖だったので、ひと安心。
「お花見って聞いてたから、こんなとこ登るなんて思ってなかった」
非難轟々の声を頂きながら、霞に浮かぶ武甲山を眺めました。
鎖場が続きますが、それほど傾斜もありません。
新芽もなく、まだまだ枯れた山。つつじ新道の名の如く、つつじが咲くんだろうか…。
2回目の鎖場ですが、こちらは斜面を巻くように鎖が設置されていたので、最初ほど恐ろしくはありませんでした。
確実に一歩一歩と歩いて行きます。
タイムスケジュールは厳しいのですが、慎重にいかないといけません。
終盤に差し掛かってくると1m幅のヤセ尾根になります。両サイドは急斜面です。
3回目の鎖場。
注意喚起の言葉が緩くなっていっているのは気のせいだろうか。
ヤセ尾根上の鎖になっています。
道がしっかりしているので問題なくクリア。
振り返るとやはり鋭角に飛び出た武甲山が目立ちます。
メインルートとの分岐コースに到着。
上から人の声が聞こえてきて、登山者が結構いる山なんだと初めて認識しました。
「石を落とさないよう注意」の看板が設置されています。
山頂直下は急斜面になっています。
団体パーティーとすれ違いながら、山頂を目指します。
休憩する登山者がちらほら現れ、頂上の存在が近くなってきました。
両神山を展望する四阿屋山の山頂
11時38分 四阿屋山山頂
登り始めは10時24分だったので、1時間14分で登頂しましたが、鎖場とヤセ尾根で神経をすり減らしたので、実際以上に時間を長く感じました。
ちなみに山頂は樹林に囲まれ、2坪ほどしかありません。
北側の展望があり、扇状に広がった両神山を見ることが出来ます。
岩峰らしいギザギザした尾根が特徴。
両神山は奥秩父という山域に属していますが、妙義山、荒船山などの西上州エリアに近い山容です。
もう一つ、ピンと尖った二つの山が見えます。
二子山と言い、かなりインパクトのある山です。
やまももドリンクを飲み、喉を潤します。伊豆の土産で、埼玉県とは一切関係がございません。
山頂の滞在はほどほどにして、下山を開始します。
分岐点まで戻り、薬師堂方面へと下ります。
こちらも鎖場が設置されていました。
砂が岩の上を覆っており、登山靴を履いていて滑りました。
階段になっている場所もありました。
山頂直下を過ぎれば、後は樹林帯歩きとなり、危険個所はなくなります。
両神神社奥社に到着です。
秩父地方の両神信仰の深さを感じさせます。杉林の中にひっそりとたたずんでいるので、幽玄な雰囲気がありました。
「両神山に登りたいけど、泊りがけで2日も3日もかかるしなー…せや!近所の山に神社作ったろ!!!」
両神山は人里離れた山深い場所にあるので、両神山が展望でき、里からも近い山にこのような神社を設置したのでしょう。富士山の浅間神社や御嶽山の御嶽神社などが里山にあるのはそういう理由だったりするらしい。
神社からは展望休憩所方面へと下ります。
サイドに柵のある道に変わってくれば、福寿草の群生地になります。
遠目には落ち葉がたまった山の斜面にしか見えませんが、ぽつぽつと黄色い花が咲いています。
サイズ感はたんぽぽの3分の2ですが、繊細な葉の形と鮮やかな花が目を引きます。
花言葉「幸せを招く」「永久の幸福」は、古くから縁起のよい花とされてきたことに由来。四阿屋山のバッチのデザインが福寿草であることから、福寿草の開花時期に登るべき山なのでしょう。
ちなみに望遠レンズがないと撮影できない距離にあります。
こちらは「秩父紅」という秩父の固有種だそうです。ムクゲ自然園などでも見ることが出来るようです。
非常に珍しい品種らしく、幸運がきっと訪れる予感がしなくもない。
立派な休憩所。なにやら富士山の形にしてあるらしいとか。
ちなみに、秩父の山からは富士山を見ることはできない。両神山からは頭だけが見えます。
福寿草を楽しんだ後は蠟梅園に向かいます。
蝋梅園には登山客がたくさんいました。中にはビニールシートを敷き、お昼ご飯にしている人たちもいます。
あたり一帯に立ち込める蝋梅の甘い香りが立ち込めています。
蝋梅の黄色い花が青空に映えます。
秩父で蝋梅と言えば、宝登山(ほとさん)ですが、同じ秩父なのに開花が一カ月も違うんですね。宝登山の開花時期は1月下旬から2月中旬。
透き通るほどに薄い花びらが重なり合い、見た目はにぎやかですが、一つ一つの繊細な造形が蝋梅の魅力。
冬の空気感を瓦解するほどに青空を彩っていました。
何だかんだ蝋梅は毎年のように見ており、これから花のシーズンだなーと冬から春への切り替えを真っ先に感じる花です。
蝋梅ごしの武甲山という構図は秩父を象徴する。
のか?
福寿草園と題していますが、蝋梅が目立ちすぎている感は否めない。
福寿草や蝋梅以外の花も咲いていました。
蝋梅園を10分少々楽しみ、下山します。
下山は車を駐車した道の駅まで直接歩ける薬師堂コースを利用します。福寿草園からは少し車道を歩きます。
駐車場の先から登山道へと入ります。
後は黙々と樹林帯の道を下山します。結構、急だったので、あまり登りでは使いたくない道だった。
民家が見えてきました。
道の駅の隣にあるバス停が、ロータリーもありやたら立派でした。
12時50分 両神温泉薬師の湯
約4時間の周回コースでしたが、濃密な内容でした。そして、スケジュールが分単位で迫っているので、温泉には入らず次を目指します。
小鹿野町名物、元祖わらじかつ丼
小鹿野町の市街地へと移動しました。
秩父の田舎町、どう見ても民家にしか見えない店に行列ができています。
安田屋は秩父の名物グルメである「わらじかつ丼」の発祥の店なのです。
元祖、発祥、総本店などの触れ込みに弱い自分としては、「行きたい登山後グルメリスト」に入っていました。そんなリストは作っていませんが。
到着が昼営業のギリギリで、「お客さん(自分達)の並びで最後にします」と定員さんに告げられた時は、アポロ13が大気圏に突入し、数分間交信が途絶え、生還の応答が返ってきたときのNASA職員が歓喜する瞬間に似ていた。
後からやって来て列に並ぼうとする人に「今日は終了したようです」と伝える任務を任せられました。コミックマーケットである文化っぽい。
メニューはわらじかつ丼の一本勝負です。
1枚が750円、2枚が850円、3枚が1200円。2枚から3枚への価格差が激しいのが謎です。通常である2枚を注文しました。
着丼。
カツがはみ出てます。ゴクリ。
味噌汁一杯サービスとなっていたのは、豚汁でした。あ、先に出されたので減ってるだけです。
ででんと大きなカツ2枚が乗っています。
たまらなくご飯を食べたくなるような醤油の匂いが鼻孔を刺激ます。
一般的なカツより薄くなっていますが、面積が広いためボリュームは十分あります。麺つゆのようなダシの効いたタレが絡んでいます。
いやー、登山後らしい食べ物です。わらじかつ丼。
通常のかつ丼やソースかつ丼より、日本人の味覚に合っているためご飯が進みます。
本当は赤谷温泉に入りたかったが、行列時間の圧迫により、営業時間内に入れず、星音の湯にやって来ました。
道の駅の温泉は露天がなく、今一つなので、あまり寄りたくはない。
わらじかつ丼の行列により、観光プランと食事プランができませんでしたが、6時過ぎには秩父の市街地に戻ってきてレンタカーを返却。
仲見世通りでイチゴでも買いたかったのですが、改装中で何も買えずな感じでした。それが少し残念。
秩父の旅を終え、都内へと帰るのでした。
四阿屋山の登山を終えて
節分草、蝋梅、そして福寿草の3つの花を楽しみ。また、わらじかつ丼を食べ、小鹿野町を満喫できました。
四阿屋山は花の開花時期が重なる3月上旬から中旬ごろが見どころ満載です。調べてみると花花菖蒲、紫陽花、つつじ、アカヤシオなどの花が咲くので、違う季節に訪れても違う顔を見せてくれそうです。
夏はアルプスの縦走、冬は絶景を求めて雪山も良いのですが、花の開花やご当地グルメを組み合わせて、低山を楽しむのもそれらに勝る楽しみ方の一つです。
秩父は1000mを越える山はそこまで多くありませんが、人間の生活と結びついた味わい深い山の数々があり、何度でも足を運んで楽しめるエリアだと思います。
四阿屋山の地図はこちら
秩父・奥武蔵ではなく、雲取山・両神山の地図に記載されています
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