2016年7月16日
南アルプスの甲斐駒ヶ岳に行ってきました。標高は2976mです。
山梨県と長野県にまたがり、南アルプスの山々の中で、顔役的な存在です。また、南アルプスの天然水の採水地としても有名。花崗岩が剥き出しで、歪な形をした白亜の山頂が特徴です。
山梨県側の登山口は険しいコースで有名ですが、長野県側の北沢峠から登ると日帰り登山が可能です。
2016年の3連休はどこも雨予報で、無情な休みになりました。
登山に対する熱意がメラメラしていた夏だったため、諦めきれない思いでした。どうにか雨の降らない場所はないかと、あらゆる天気図と睨めっこし、甲斐駒ヶ岳に可能性を見出しました。
まだ梅雨が明けず、気圧の谷が居座る日本列島。雲の上へと跳び出すため、旅してきました。
甲斐駒ヶ岳について
地図
長野県の北沢峠から登りました。
長衛小屋キャンプ場にテントを張り、登りを仙水峠、下り双児山を経由する周回コースを歩きました。
コースタイム
- 7:54北沢峠
長衛小屋キャンプ場でテントの設営
- 9:06長衛小屋
- 10:19仙水峠
- 11:43駒津峰
- 13:14~14:11甲斐駒ヶ岳
- 15:47双児山
- 16:50北沢峠
行動時間は8時間26分でした。
甲斐駒ヶ岳 日帰り登山
長野県の仙流荘からバスに乗り北沢峠へ
7月の海の日を含む週末の3連休から、本格的な夏山シーズンが開幕されます。が、この連休って梅雨明けしていないことが多く、天気に恵まれない年が多い気がします。
登山的には最終週にあるのがベストですが、「海の日」ですから…。
一日目 | 曇りのち雨 |
二日目 | 雨 |
三日目 | 晴れ |
1日目、2日目が曇天雨天という、救いようのない誠に遺憾な天気予報でした。
甲斐駒ヶ岳の登山拠点となる北沢峠へ行くため、長野県の戸台口(仙流荘)にやってきました。東京からは休憩しながら4時間かかり、相変わらずの遠さです。
3年前の2013年に仙丈ヶ岳を日帰り登山して以来です。
南アルプス林道バスのチケットセンターは、早朝からバスに乗る登山者で行列が出来ていました。
予報が悪かったので、これでも少なめだと思う。テント泊、日帰りが半々くらいでした。
仙流荘~北沢峠の往復チケットを購入し、7時発の便で北沢峠へ。
深夜移動のため、バスの車内ではぐっすり眠りました。このまま、山頂まで連れて行って欲しい…。
標高2030mの北沢峠に到着しました。バスを降りた瞬間にわかる、ヒヤッとした清浄な空気。
「え、ここから北岳に登れない??」と、焦っている登山者がいました。
何故そうなると思っていましたが、「南」アルプスの「北」沢峠が「北」岳の登山口ではないというのは、若干ややこしく、初めてであれば混乱するか…。
地図にすら記載はないですが、北沢峠にはクリンソウの群生地があります。一面ピンク色になっているので、規模が大きいです。ほとんどの人が、気づいていないか、興味がないようでした。
夜露をまとってキラキラしていて、とても綺麗でした。7月中旬ごろに見頃なのかはわかりませんが、是非とも観察してください。
本日は、登山後にテント泊の予定なので、まずは北沢峠から林道を歩いて、長衛小屋のキャンプ場に向かいます。
長衛小屋キャンプ場にテントを設営、豊かな水が流れる仙水峠
受付をして、テント設営完了。小川沿いの良いロケーションの場所に張れました。
元々、相当なキャパのテント場でしたが、やはり予報のせいかテント数は全体的に少な目。1人1張贅沢に使います。
それでは、身軽な装備で、甲斐駒ヶ岳の登山へと向かいます。
長衛小屋でトイレだけを済ませます。飲料水は、この先にある仙水小屋で採水が可能なのでスルー。
テント設営が終わったら、雲がかかり始めた…。これは天気ダメなのか…。
長衛小屋から仙水小屋までは、甲斐駒ヶ岳から染み出る南アルプス天然水がジャブジャブ流れる沢沿いのコースです。
甲斐駒ヶ岳の中では、一番に水が近くに感じるコースだと思われます。
鬱蒼とした原生林で、両目では受け止めきれないくらいのグリーン。人によっては一番この区間が好きなんじゃないだろうか。
太陽の光が届かない時間がないので、苔がぐんぐん成長しています。砂から顔出すチンアナゴみたいにのびた苔がいました。
水の音を聞きながら、緩やかに登っていきます。
仙水小屋に到着しました。
長衛小屋から30分程かかりました。
仙水小屋で水を補給させてもらいます。
氷点下になっているんじゃないかと思うほど、キンキンに冷えて美味しい。登山完了分まで、十分に採水しました。無料の南アルプスの天然水である。
続いては仙水峠に向かって登っていきます。
群生こそしてませんが、シャクナゲが花を咲いていました。
標高2000m以上なので、7月になってようやく咲きはじめのようです。
しばらくすると、登山道の雰囲気がガラリと変わり、ハイマツ帯へ。そして、露岩ゾーンに入ります。
ギッシリと岩が詰め込まれているような不思議な道です。
宇多田ヒカルが出演するサントリーのCMで、演出的にこの辺の岩場を登っていました。登る必要はないんだけど。
仙水峠からは急斜面を登り、標高2700mの駒津峰
仙水峠に到着しました。
甲斐駒ヶ岳の前衛にある駒津峰と栗沢山の分岐点になっています。標高は2264mで、北沢峠からは200mの標高を登ってきました。まだ、全体の4分の1ほど。
仙水峠から駒津峰へ、標高差500mを一気に登るので、ここから急斜面が始まります。
展望のない樹林帯を無心で登ります。今回のコースでは一番辛いところです。
標高2500mを越えると、木々の背が低くなり、空が見えるようになってきました。
ハイマツ帯になってきて、風が通り抜けて、ようやく涼しさを感じるようになりました。しかし、雲が湧きまくっていて、隣にある仙丈ヶ岳のみがチラチラ見えています。
真夏だと、9時半を過ぎると、雲が湧き立ってきますが、この日は低い位置で滞留していました。梅雨空が続き、気圧の谷があるからなんだろうか…。
足元には高山植物が咲き始めました。コザクラみたいな花が咲いていました。なんだろう…?
台風の後の海を見ているみたいに、雲がうごめいています。そして、ようやく駒津峰の地獄の急斜面が終わりそうです。
駒津峰に到着しました。
仙水峠から1時間20分ほどかかりました。いやー疲れた。ここからは、甲斐駒ヶ岳が見える…はずだったんですけど、残念ながら雲の中。
駒津峰は展望が良く、南アルプスの山々が見えます。山頂に雲がかかって、どれが北岳なのか、鳳凰三山なのか、ハッキリわからないんですけども。
山頂までは標高差200mですが、まだ六合目です。まだ、先は長い。
しばらく、休憩していると徐々に甲斐駒ヶ岳にまとっていた雲が取れてきました。
おおおぉぉ?!
甲斐駒ヶ岳の全貌が見えました。雲がオーラのようで、迫力が凄い。
それでは、甲斐駒ヶ岳の本体を目指し出発します。
駒津峰と甲斐駒ヶ岳を橋渡しする尾根道は、一人分の道幅でかなり細いです。ナイフリッジみたいになっている箇所もあります。バリエーションルートに寄った一般ルート。
地味にアップダウンがあるので、帰りが大変そうです。
八合目に到着しました。すっかり雲の中に入ってしまった…。
ここで、初心者向きの巻道と岩稜直登コースに分岐します。
登りでは、岩稜直登コースを選択しました。ゴロゴロした花崗岩の岩場を登っていきます。手足使ってよじ登っていきます。
高度感もなかなか。
ちょっと怖いなと思うところもありますが、足場はしっかりしています。
2800mあたりを越えてくると、青空が出てきました。
周囲を見渡すと、大雲海が広がっていました。雲の上に出たようです。いやー、こんな高い位置にある雲海は初めてのことかも。
岩と砂礫の登りを繰り返します。
砂礫の中に、群生まではいかないものの、ハイマツ帯の草原に高山植物の花がチラホラと咲いています。
王道の高山植物であるハクサンイチゲやシナノキンバイが咲いていました。
山頂付近にもシャクナゲが咲いていました。ちょっぴり黄色みがあるので、キバナシャクナゲでしょうか。
高山体の砂礫地で花を咲かすタカネツメクサが咲いていました。
ようやく、斜面の先が見えなくなり、山頂が近づいてきました。
雲に浮かぶ甲斐駒ヶ岳の山頂、展望は見えないけど
甲斐駒ヶ岳の山頂に到着です。
長衛小屋を出発して、4時間8分かかりました。2012年以来の2度目の登頂です。でも、全然新鮮な気分で来れたのは、メンバが違うからなのか、自分が忘れやすいのか。恐らく後者。
さぁ、甲斐駒ヶ岳からの展望はというと…。何も見えぬ。
ちなみに、山頂に足りついてようやく山梨県(旧甲斐)に入りました。看板は長野県、山梨県でそれぞれ二つの看板が存在します。
雲海の位置が山頂の高さとシンデレラフィットしているせいで、周辺の山々が見えません。辛うじて、北岳と思われる山頂の先っぽだけが見えます。
「山頂晴れてるんですか!やったー!」「山頂曇ってるんですか!やだー!」
これが、10秒ごとに繰り返される情緒不安定な甲斐駒ヶ岳。
最前列のプラチナチケットをゲットしたけど、ステージ全体が見えなくて、意外と視野が悪いみたいな感じだろうか…。
雲が360度の方向から襲い掛かり、まるで帆船で嵐の中の大海原を進んでいるかのよう。
本来であれば、富士山、南アルプスの山々が見え、八ヶ岳、中央アルプスなどなどが見えたはずだけど…。これ以上の回復もないだろうということで、下山を開始します。
2012年の甲斐駒ヶ岳は、鳳凰三山の向こうに富士山が見えました。
下山は一般ルートで帰ります。こちらのルートは、花崗岩の砂礫を歩きます。所々で非常に滑りやすくなってます。
下山中に雷鳥を発見したけど、望遠レンズがないので画像無し!!!
砂の上で転がって、カモフラージュしていました。こんな雲の状況でも天敵が襲ってくるのかな。
摩利支天山は雲の中だったので、立ち寄らずにスルーしました。
駒津峰まで戻ってきました。登って来た時は展望がありましたが、既に雲の中。
下山は、双児山を経由して、北沢峠に下ります。樹林帯の尾根道なので、見どころもなく、作業的に下っていきました。すっ飛ばしていますが、山頂から1時間半ほど歩いています。
双児山からは永遠とも思えるような代り映えしない樹林帯。この辺りまで降りると、暑さにもやられてヘロヘロでした。沢沿いのコースを往復した方が良かったかな…。
ようやく、北沢峠が見えてきました。
北沢峠に到着しました。
山頂からは2時間40分ほどなので、それほどでもない時間ですが、やけに長く感じたな…。そして、17時前なのにすっかり薄暗くなっていました。
キャンプ場に戻ってぐったり1時間は仮眠をしました。その後は、生野菜のチーズ蒸し、餃子、スパゲティなどを作って、もりもりと食べました。
前回ここに来た時、周囲が肉を焼いたり、豪華に作っている中、レトルトだけの食事で、非常に侘しい思いをしたんだよな…。
2日目は帰るだけ、伊那の名店「たけだ」で絶品ソースカツ丼
翌朝、この日は天気が悪いのがわかりきっているので、仙丈ヶ岳には登らず、朝のバスで帰ります。とても、気が楽な起床でした。
テント少ないなと思っていましたが、びっしり並んでいました。黄色のテント率が70%以上で、逆にこの中じゃ目立たなくなっておりました。
テントを撤収して、北沢峠に戻ってきました。バスを待っていると、ポツポツと雨が降り始めました。予報通り、天気は悪化するようです。
8時便が到着し、仙流荘に戻りました。さすがに、この時間の帰りのバスはがら空きでした。
仙流荘から少し移動して、道の駅「南アルプスむら」に立ち寄りました。朝食だけじゃ足りなかったので、焼き立てクロワッサンを食べました。
そして、牛乳ソフトで脳を活性化しました。
二日ぶりのお風呂ということで、高遠温泉さくらの湯にやってきました。高遠はさくらの名所で有名です。毎年、行こうと思っているんですけど、4月になると必ず雨降るんですよ。
現在はわかりませんが、10時から営業していました。
さて、温泉後は食事です。伊那地方と言えば、ローメンと言うグルメがありますが、全く食指が動かないので結局はソースカツ丼になります。
ソースカツ丼の名店「たけだ」にやって参りました。人気店、そして連休なので、すでに行列が出来ていました。
ちょい時間が早めだったのもあり、1時間は待たずに入店できました。
「精肉店直営の食堂」
「現場を最優先するリーダー」、「原作者監修のオリジナルアニメ映画」、「ノースフェイスとコラボ商品」など、成功が約束されている安心感よ。
火であぶられた貝のような状態で着丼です。もはや、蓋としての機能はなく、ビジュアル重視です。
信州SPF豚ってのを使用し、厚切りなのに柔らかく、オアシスのように脂が染み出ますが、くどくはありません。味付けは甘すぎず、しょっぱすぎず、上品さすら感じます。
馬刺し、馬ホルモンも有名なので、次回があれば食べてみたいです。
雨上がりの京都で、祇園祭の熱気を浴びる
信州を後にして、やってきたのは京都です。
予報を再確認したら、翌日は近畿地方が晴れそうという単純明快な理由で、長野から京都への長距離ムーブをしました。
到着した京都は、雨上がりでめちゃくちゃ蒸し暑かったです。
長野県伊那から京都は4時間、お昼過ぎに出発し、到着する頃には夕方でした。
というか、奈良の大台ヶ原に向かっていたので、京都に寄るつもりはなかったのですが、道中に調べていたら、祇園祭が開催していることを知りました。この日は7月17日だったので、前祭だそうです。
調べが全く足りず、どこが会場なのか、よくわかってませんでしたけど。
四条にある「六傳屋」という居酒屋で夕食にしました。リーズブルな値段で、京都らしい料理が食べられます。お祭りでどこも混んでいましたが、辛うじて入店できました。
どて焼きに水餃子。ウマし。
そして、初めて食べるすっぽん鍋。うわぁ、見た目がグロテスクです。
亀の肉って結構骨が多くて食べにくい。味は白身魚みたいに淡白でした。
すっぽん自体の美味しさは?でしたが、むしろエキスを吸ったネギがホクホクと美味しい。そして、〆の雑炊は出汁が最高にキマって美味しかったです。出汁を楽しむものなんだな~。
南アルプスの大自然のど真ん中から、熱気がみなぎる夏祭り、これを一日で体験することができ、この夏の良き思い出になりました。
この後は、奈良に移動し、24時間スパで仮眠を取って、大台ヶ原の御来光登山に出掛けるのでした。今思うと、すごい元気なことしてたな…。
甲斐駒ヶ岳の登山を終えて
「甲斐駒ヶ岳」の名前が定着していますが、長野県の特に伊那地方では「東駒ヶ岳」と呼んでいます。山の名前が違うのは、市、県、国単位で違ったりするので、どこにでもあることです。
今回の北沢峠側からの登山は、99%が長野県の領域です。これ正式には、甲斐駒ヶ岳ではなく、東駒ヶ岳に登ったことになります。いずれ、真の「甲斐」駒ヶ岳に登るべく、黒戸尾根に挑戦したい思いです。でも、険しく、厳しいらしいからなぁ…。
不確かな予報の中で、見通せるような展望こそなかったものの、夏の始まりを予感させる青空が見れて良かったです。
駒津峰で、雲間から出現した、要塞のような山体には痺れました。4年ぶりの再訪でしたが、初めての登山くらいに新鮮な気分でした。
登山、キャンプ、お祭り、そしてまた登山。
この3連休が、3割増しの無茶なプランになったのも、全部夏のせいです。でも、山が好きな人って、夏のせいにして、どこか旅に出るものなんですよ。
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