2022年1月16日
栃木県の那須岳に行ってきました。標高は茶臼岳の1915mです。
雪のない季節は那須ロープウェイが運行し、お手軽な登山ができますが、冬は閉鎖されています。しかし、ゲレンデがあるため、登山口直前まで除雪され、マイカー利用が可能。また、バスが運行しているので、アクセスが比較的容易な雪山の一座です。
森林限界を早々に越えられるので、標高2000m未満とは思えない雪山風景が魅力です。
”風の通り道”となっている那須岳は、稜線に出ると強風が吹くことで知られています。しかし、この日は恵まれて、空気が非常にクリア。気構えることなく、気持ちの良い雪山登山ができました。
冬の那須岳に登り、硫黄成分強めの温泉に入り、グルメを堪能する。栃木県の那須をコンパクトに旅してきました。
冬の那須岳について
地図
- 剣ヶ峰は冬ルート
- 那須ロープウェイは冬季閉鎖
- 駐車場は大丸園地を利用
コースタイム
- 7:42大丸園地
- 8:20峠の茶屋駐車場
- 9:07峠の茶屋跡避難小屋
- 9:58茶臼岳 山頂
- 11:03剣ヶ峰山頂(※冬季限定の山頂)
- 12:25大丸園地
行動時間4時間42分でした。山頂でのんびりしていたりしたので、緩めのコースタイムです。下山はペース早いけど。
那須岳 雪山登山
スキー場が併設する大丸園地が冬の那須岳登山口
東北自動車道の那須ICを降りて、那須湯元の温泉街を抜け、山道を走っていきます。道路はカチコチに凍っていて、徐行する軽自動車に阻まれながら、登山口のある大丸園地を目指します。
大丸園地に到着。春~秋はもう少し上まで駐車場がありますが、冬季大丸園地でゲートが封鎖されています。キャパが広い無料駐車場があるだけで、冬期登山者にとっては嬉しい限りです。
この駐車場の利用客のメインは「那須温泉ファミリースキー場」だと思います。
那須町は27日の定例記者会見で、湯本の町営スキー場「那須温泉ファミリースキー場」の営業を3月末で休止すると発表した。スキー人口の減少や新型コロナウイルスの影響などで売り上げの減少が続き、老朽化したリフトなどの修繕費が確保できないと判断した。
https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/548128
しかし、2022年3月をもって休止してしまうので、大丸園地が今後、冬に開放されるかは不明です。登山者なんて金にならないだろうし…。
また、那須塩原駅から路線バスが運行しているので、冬期登山において、マイカーと電車利用者が同じスタート地点となれる稀有な山です。
来年以降バスの運行が続くかは、怪しいところですが…。
風もなく雪山登山日和に恵まれました。那須岳には、秋に2回来ていますが、その時よりも寒くないです。風がないだけで、ここまで体感が変わるとは。
久しぶりの冬山の格好に着替え、那須岳に向けて出発します。しばらくは樹林帯なので、アイゼンは装着せずにスタートしました。
さっと登って、さっと下って、温泉に入りたい。
ロープウェイは冬季閉鎖、林道を歩いて避難小屋を目指す
林道と舗装道を繰り返すように歩いていきます。那須岳はそこまで滑るところがないのか、バックカントリーの人は1割未満でした。
冬期は営業していない那須ロープウェイまで来ました。
今日の風の弱さだったら、ロープウェイが動いても問題なさそう。風が弱い日なんて、月に1,2回あるかどうかだけども。
ロープウェイからもしばらくは樹林帯コースが続きます。
峠の茶屋駐車場に到着しました。
冬期以外は車でここまで来ることができます。紅葉シーズンになると、深夜0時でも駐車できないらしいけど。
この駐車場に初音ミクがプリントされた自動車が1台ポツンと停まっていました。
「この車はいつからあるんだ?」
周辺に車のタイヤ痕はなく、昨日今日に駐車された車じゃない。もしかすると、冬期閉鎖前に来て、所有者はもしかすると…。でも、こんなハッピーなデザインの車で来るかな。
冬以外であれば、玉こんにゃく等を販売する売店がありますが、当然シャッターは降りています。
ようやく、那須岳登山口に到着しました。
過去、那須岳に登った時は曇天からのスタートでした。入口から山頂(たぶん、朝日岳)が見えているんですね。
登山口にある山之神の鳥居は雪に埋もれ、陸上の高跳びのくらいの高さになっていました。1mくらいの積雪ですね。
トレースが複数あったので、登山者が付けた急な道を進んでいきます。全体通して、一番キツイ登りだった…。
そして、しばらくは樹林帯歩きが続く。
那須岳ってすぐに樹林帯フリーになった記憶があるので、意外と長く感じる…。
徐々に木の背丈が低くなり、開放的な風景へと変わってきました。
那須岳は地球レベルで見ると、生まれが最近の若手。
緑が育っていないので、1900mの高さながら、標高3000mの雪山に見えなくもない。ヒマラヤに生息するヤクが歩いていても違和感ない。
茶臼岳の斜面にある緩やかな坂道を登っていきます。ここからは、山の向こう側から吹き付ける風を感じるようになってきました。
茶臼岳と朝日岳を結ぶ稜線が見えて、中央に建つ避難小屋が目立ちます。青と白の世界で、赤い屋根が目立ちます。「青と白の世界」って使われまくる表現で、使うのが恥ずかしい。
雪山でありがちな、近くに見えているはずなのに、歩けど歩けど辿り着かないパターン。
避難小屋の奥にあるのは、剣ヶ峰。冬季にしか登れない山です。
峰の茶屋跡避難小屋に到着です。駐車場を出発して、1時間40分かかりました。強風とは言わないまでも風が吹いていました。でも、過去2回よりはマシ。
稜線の向こう側の展望が開けます。
たぶん尾瀬の山々で、会津駒ヶ岳とか燧ヶ岳が見えているはずです。
ここで休憩、実家で握ってもらった特大おむすびを食べます。1個がデカい。
強風が吹き荒れる冬の那須岳、岩を登り茶臼岳の山頂へ
これから目指す茶臼岳。ここからは山頂は見えないので、岩の向こう側にあります。
Amazonで購入したチェーンスパイクを装着して、茶臼岳を目指します。雪はフカフカだし、必要性があるかはまだ未知数。
三本槍岳〜流石山〜三倉山の稜線は、豪雪地帯の谷川岳周辺並みに真っ白な山脈に化けてました。裏那須エリアもいずれ歩いてみたいなぁ。
アルプスや南八ヶ岳にある人間の進入を拒むような見た目をしている岩峰って珍しいから、那須の朝日岳は稀有な存在だと思うんですよね。
溶岩ドームの茶臼岳は、夏に来ると岩がゴロゴロしてるので、逆に冬は積雪しているお陰で歩きやすい。
お釜直前で、ゲレンデみたいに広々した斜面があったので、滑落しないように慎重に歩きました。
お釜口の分岐に到着しました。
ロープウェイとの合流地点で、ここから山頂部です。
ここでようやく山頂が見えてきました。
山頂付近だけは風で雪が吹き飛ばされているので、岩が剥き出しです。
冬以外は温泉旅行のついでに立ち寄って、ロープウェイで上がってきた、子供やおじいちゃん・おばあちゃんが歩いている茶臼岳ですが、さすがにハードシェルを着た登山者しかいません。
鳥居が見えてきました。
こんな岩だらけの山頂で、まして爆風に吹きさらされて、よく倒れないで立っているな。
茶臼岳の大展望、遥か225キロ富士山と東北の山々が見える
標高1915mの茶臼岳の山頂に到着しました。駐車場を出発して、2時間16分かかりました。
雪山としては危険箇所もなく、登りやすい山という感想。まぁ、風が弱い条件で、プレイモードがイージーだったからですけど。
那須連山の中で、茶臼岳は最高峰ではないけれど、山頂扱いされている山。個人的なことを言うと、2015年以来の7年ぶりの茶臼岳の山頂です。
これだけクリアに展望が見える那須岳の山頂は初めてかも。今日は、県境をまたいで福島県の安達太良山や磐梯山が見えています。
磐梯山までは、くっきり見えましたが、吾妻連峰以北は曇っています。
茶臼岳から南側は、南月山へと続く平らな稜線。ここ歩いてみたいな…。
その奥には残雪期にしか登れない、大佐飛山、男鹿岳があります。遥か先には男体山、女峰山などの日光連山。栃木出身だけど、登ってない山が多すぎるな…。
関東平野が広がり、茨城方面には薄い雲の中に筑波山が見えていました。この日、筑波山はぼやっとした展望だったのかな。
そして、那須岳から225キロ離れた富士山が見えました。
富士山が見える山としては、那須岳はかなり長距離からの展望。直線距離だと、富山県の立山より遠いわけだし。
茶臼岳の大展望に満足したので、下山を開始します。
お鉢周りを周回しながら、元のコースへと戻ります。今まで、お鉢を意識して歩いたことなかったかも…。
茶臼岳から見ても朝日岳は迫力がある。
お鉢は平坦で歩きやすいです。砂糖がコーティングされてる雛あられのように岩が凍り付いています。
登りでも厄介だった傾斜の坂道を下っていきます。
下山はサクサクと進み、あっと言う間に避難小屋まで戻ってきました。
冬季限定コースの剣ヶ峰を登る
今回、朝日岳まで行きませんが、冬期しか登れない剣ヶ峰を登ります。冬以外の夏ルートは、山頂を経由しませんが、冬は剣ヶ峰を直登します。
剣ヶ峰は滑落するレベルの斜面です。茶臼岳はピッケルの必要性は感じませんが、剣ヶ峰を目指す人は、ストックから持ち替えていました。
夏はガレ場で登れないだけあり、緊張感のある斜面です。足を踏み外さないように、トレースを丁寧に辿りながら登りました。
斜面を登り切りました。
剣ヶ峰という名前だから、尖がった山頂を想像していましたが、意外とのっぺりとした平らな稜線でした。バックカントリー跡があるので、剣ヶ峰から滑るのか…。
稜線を歩いていると、仏像が雪の中から掘り出されていました。ここが山頂なのかなと思っていたら、ちょっと先にあるようです。
剣ヶ峰の山頂に到着です。標高は1799mなので、茶臼岳より116m低い。冬季限定の山頂なのに、素朴な看板が頭だけ出ていました。
剣ヶ峰から朝日岳はまだまだ距離があります。
時間と体力的にも余裕はありましたが、温泉と食事をしたい欲望により、朝日岳は今回目指さずに下山します。
岩場の連続だったような気がするので、なかなか大変そうです。茶臼岳と朝日岳を登る人は、全体の3割もいないんじゃないだろうか…。
そして、剣ヶ峰からの茶臼岳ビューが素晴らしい。この茶臼岳を眺めるために、剣ヶ峰を登ってみるのはアリ寄りのアリ。
それにしても、三本槍岳から続く稜線は黒い部分がなく、真っ白です。冬にこの稜線を歩く登山者はいるのだろうか…。
剣ヶ峰を後にして、下山開始です。
クリスタルサンゴになった枯れ木。
1mにも満たない草木が、やがて樹林帯へと変わっていくんだろうか。数百年後の登山者は、那須岳って樹林帯多くて、展望微妙だよな。みたいに言うのかもしれない。
茶臼岳と小屋が一緒に収まるのは、冬だけの限定公開です。
避難小屋に到着しました。3回目。
風も弱まり、汗をかき始めたので、上着を脱いで下山します。この時間になっても登ってくる人は多いです。
一定の傾斜角度が続くので、下山は楽々です。朝登った時より雪が解けて、残雪期のような風景に変わっていました。
あっと言う間に登山口に戻ってきました。
そして、しばらく林道を歩き続けて、駐車場まで戻ってきました。
駐車場はスキー客を含めて、満車状態で、路駐が出来ていました。
ファミリーゲレンデは閉鎖してしまいますが、雪山登山者相手に駐車料金をガンガン徴収して、継続してほしいところです。
廃墟手前の雲海閣の温泉と那須牛が食べれる寿楽
那須温泉と言えば、ストロングスタイルの鹿の湯や露天がプールな北温泉が有名ですが、温泉宿「雲海閣」を案内してもらいました。
「隠れた」とか「鄙びた」みたいなワードが付与されることが、温泉の魅力でありますが、現在進行形で朽ちており、廃墟一歩手前の温泉宿でした。温泉代は400円で、無人カウンター(管理人がいるにはいる)にお金を置いていくスタイルです。
温泉宿を正面から見た感じからは想像くらいに館内は大きいです。温泉まではかなり距離があり、ゲーム「バイオハザード」の地下ステージで見た廊下を歩いていきます。
昔の建物にありがちな、人間工学をガン無視したような急な階段。温泉入った後に疲れちまうなぁ。
館内の広さの割には、温泉は小さい。隙間だらけで、ほぼ外湯と変わらない内湯。洗い場などの設備はなく、酸性がきつくて、そもそも泡立たないとか。
濃厚な硫黄臭で、久しぶりに温泉らしい温泉で、体が癒されました。
いやー、ここに宿泊するのはなかなか勇気がいる。
そして、温泉の臭いがきつ過ぎるので、捨てても良いTシャツを持ってくることをおススメします。3回洗濯しても臭いが取れませんでした。
温泉後は「ステーキハウス 寿楽」にやってきました。那須の有名店で、とちぎ和牛、特にブランドの那須牛が食べれる店です。
那須には何回も来ているけど、初めて来ました。
店内にはびっしりと芸能人・有名人のサインが飾ってありました。直近のM-1で人気になった芸人が来ていたり、ロケが頻繁に行われる店のようです。
産地かつ肉屋併設ではありますが、決して安くはありません。那須牛のステーキを食べようものなら、3000~6000円は掛かってしまいます。
1000円前後のリーズナブルな価格帯もあり、焼肉定食を注文しました。
とろけるようなお肉はまるでバターくらいにジューシー。特に掛かっているソースは、これだけでライスを2、3杯食べられます。
「那須牛うまいうまい!」と言ってましたが、国産牛という表記なので、よく考えたら那須牛じゃねぇな…。
スーパーで買った安い肉を高級気分で食べようと思い、隣の売店で寿楽ステーキソースを購入して帰りました。
登山と温泉と食事と三点セットを消化して、栃木を後にしました。那須は意外と遠いのですが、20時前に帰宅できました。
那須岳の雪山登山を終えて
7年ぶり那須岳に登り、改めて地図を眺めていると、歩いてみたいコースがチラホラで出てきました。那須ロープウェイ側がメインの登山口になっているので、茶臼岳や朝日岳の周辺しか歩いていませんでしたが、那須の山域全体からすると2割程度のエリア。福島県側の裏那須に向けて縦走したり、温泉小屋のたばこや旅館など、まだまだ奥深い要素がいっぱいです。
稜線を常に強風が吹いている山域であるのと、雪崩事故のイメージで、冬に登るには難しそうな印象がありました。個人的には、八ヶ岳で言うと、南八ヶ岳とか西穂高の独標くらいの「本格」な雪山の位置づけでした。茶臼岳に限って言えば、危険を感じる場面はなく、チェーンスパイクで登頂できました。前日に少し雪が降り、当日は風が弱めと言う、とてもイージー条件なわけですけど。
また、栃木を離れてしばらく立ちますが、やっぱり栃木良いですね。それでは、ごめんねごめんねー。
コメント
veryblueさん
はじめまして。ぶらぶらと登山ブログを探していたらお見受けしました。
未だ全てのブログは見終えてませんが今後拝見いたします。
私も男体山が初登山でして。ただ、装備が…ヒートテックであったり靴はナイキの昔流行ったエアフォース1だったわけで…そんなもんから7年。今は速乾シャツにビブラムソールと少しだけ進化出来ました。
昨今数ある登山ログには少しだけ懸念というかあまり当てには出来ないというか。もし自分がブログや動画をやるとしたら①スタート②道中の展望③山頂で地鶏ウェイ☆ではなく!!自宅からの登山道までの車中や考えたこと、登山道中の危険ポイント、道中の高山植物、飯スペースの場所等の今後誰かが登るための参考という形で共有出来る形にしたいと思ってました。そんな時に
veryblueさんのこのブログ。探していた形です。文章も私にとってとても読みやすく、共感できる点も多いので時間あるときは読んでいきたいと思います。
この那須岳の記事にコメントとして書くのは、私が茨城在住でお隣の栃木県にも一時期住んでいた事があり、なにより那須岳には真冬以外で年に4から5回は行くのでこの記事に書かせていただきました。まだゴリゴリの雪山には行っておりませんが記事をみて行った気になりました。他sns等もチェックいたします。今後もご活躍期待しております。
はじめまして。
コメントありがとうございます。
ブログを読んでいただき、ありがとうございます。なるべく、情報だけ詰め込んで、ガイドや説教くさくならないように気をつけています。
文章は短く完結とは言いますが、つい長く書いてしまいます…。でも、読みやすいと言ってくれれば、励みになります。
那須岳にそんなに行かれるんですね。東京方面からだとなかなか遠いです…。
今後もよろしくお願いします。またのコメントお待ちしています。