2018年9月17日
北海道の剣山に行ってきました。標高は1205mです。
四国の徳島県にある同名の山を思わず連想しますが、北海道の広大な土地の帯広エリアにある山です。日本でも有数の山深さの日高山脈ですが、端っこにあるためアクセスしやすい一座です。北海道では少ない信仰の山で、鎖場、梯子、スリリングな登山ができます。
内地にはない雄大な自然に惹きつけられ、 北海道の遠征はこれで通算6回目。今までは名山指定された有名どころばかりでしたが、地元密着系の山は初めてです。
北海道を襲った地震の被害がまだ残る中、十勝帯広地方を旅してきました。
剣山 登山
地震の影響を残す北海道、帯広空港から剣山神社へ
白熊のマークが可愛らしいAirDoの飛行機・ANAの共同運航便でしたが、航空会社の仕組みはよくわからないが、溜まっていたマイルを使っての一人旅です。
東京から2時間ちょっとで帯広空港へ。均等に区分された広大な十勝平野が見えてきました。
帯広の名物が渋滞している手荷物受取所。
この旅で時間があったら、見ようと思っていたばんえい競馬。結局、時間が取れず見れなかった。迫力ある競馬は一度見ずして帯広は語れない。
広大な畑のど真ん中にある帯広空港に交通手段は選択肢はなく、レンタカーに頼るしかない。北海道全域に大きな被害を出した北海道胆振東部地震から11日後だったので、レンタカーを安く借りることができた。
物流が完璧に復旧していないので、セイコーマートの品揃えは5~6割程度でした。数缶だけあった北海道のソウルドリンク、キリンガラナを購入。これを飲むと「北海道に帰ってきた」と実感する。
帯広空港から剣山へは市街地をかすめることなく、ひたすらまっすぐな田舎道を走る。滅多に運転しない自分でも安心だった。
空港から40分弱で、登山口がある剣山神社に到着しました。広めの駐車場で、すでに車が10台ほど停車していました。そりゃそうだが、ほとんどが帯広ナンバーでした。観光で来るところではないので、ピンと来ないが、 住所でいうと北海道上川郡清水町です。
登山ブログを書くのに時折厄介なのが漢字と読み。「剣」と「剱」、「つるぎやま」と「つるぎざん」と「つるぎさん」で、何通りも存在する時です。「剣山」が現在のポピュラーな組み合わせなのかな?
北海道は明治に入ってから開拓され、宗教伝来が遅かったこともあり、山岳信仰が根付いている山が他の地域と比べて少ない。 この剣山神社は徳島県からの入植者が建造したらしい。先住民のアイヌは山に対する信仰はあっても、仏像や神社などの偶像崇拝はしない。
剣山神社は鉄骨の簡素な造りですが、雪や雨でも参拝できるようにきちんと神社の体ていを成していました。
一人で北海道の山に登るのは初めてです。
お腹を空かせたヒグマと遭遇して、ずたずたに腹を引き裂かれて、意識のあるまま食べられないようにお祈りしました。
登山者の名簿(入林届け)があったのでしっかりと書いておきました。
手水舎の代わりに水道がありました。ちなみに飲み水は登山口では補給できないので、事前に準備しておくのが賢明です。
三十三観音が並ぶ、山岳信仰の登山道
北海道のつるぎ山、登山開始です。
この日、帯広の気温は27度を越えていて、北海道の9月とは思えない暖かさでした。涼しく快適な登山を期待してたが…。
登山道には三十三観音が等間隔で配置されています。利尻山や樽前山のように山頂に神社の祠がある山はありますが、仏像が設置されてるみたいな山は北海道にはあまり見られないらしいです。
林道から分岐して、登山道が伸びているので、お見逃しなく。
手書きの看板が目印。地元の人に管理されているのがわかります。
9月なので花はあまり咲いてませんが、秋らしいトリカブトの紫色が際立ちます。
気温20度を越えているので、「あちーあちー」独り言をしゃべりながら登ります。
等間隔に並ぶ観音様。慣れない土地、一人で登るのはちょっぴり怖い。
木々の隙間からは十勝平野が見えてきました。どこまでも続く畑、これは北海道の山でしか見れません。
最初のポイントである一の森に到着です。畳10畳ほどの空間になっています。
一の森から脇道にそれると展望台があると小さい看板に書かれているので、寄ってみることに。巨岩に梯子がありました。
山頂方面が見えました。しかし、ここから見えるのは残念ながら偽のピークです。
気の早い葉っぱが紅葉していました。
一の森から尾根道を先へと進みます。
信仰の山にありがちな巨大な岩に無理やり名前をつける系のポイントがありました。蛙岩と名がつけられたソレは藪が多すぎて、全体像を把握できず。
茨城県の筑波山にありますね。岩を口の部分に放り込むと良いことがあるとかないとか。
二の森を通過。
こちらもぽっかりと空間が空いています。
不動岩がありました。
定番中の定番の岩の名前です。スナックにつけられる名前のライムライトくらいに定番です。
地面からはキノコが顔を出していました。収穫の秋です。
急斜面になり、体力消耗が激しい。
北海道到着後に登る山としては、空港から近く、コースタイムがそこそこだったので、スナック感覚で選びましたが、実際登ると想像以上に険しい山です。
北海道の過酷な環境に負けぬようしっかりと根付いています。
三の森を通過。
50代くらいの夫婦と出会い、ちょっとだけ会話しました。地元、芽室の人らしく、下山後の温泉を教えてもらいました。
三の森を通過するといよいよ剣山の稜線に出ます。
突き出た岩場は十勝平野のビューポイントになっていて、樹林に遮断されることなく展望を楽しめます。風はここちよくヒンヤリと涼しい。
振り返ると剣山の山頂が見えました。
剣山と名がついていますが、同じ四国の石鎚山の方がしっくりくる。突き出た山頂は石鎚山の天狗岳の風景と似通っていて、鎖場や岩場の登山道も似ている。これは是非、歩き比べていただき、体感してほしい。
母の胎内。
小さい岩と岩の隙間をくぐることができれば、生まれた時のように身が清められるヤツでしょうか。終盤にこれを持ってくるなんて土だらけに…ってことで、スルーしました。
細い稜線を進んでいきます。
そして、剣山の修羅場とも呼べるポイントに到着します。
「何故、そう掛けた?」
山頂直下の断崖にかけられた梯子の登場です。梯子とロープを頼りに横移動してから、縦移動する一般登山道の最難関レベルの危険度。
梯子の下は奈落というわけではありませんが、3~4m下に樹林帯があるので、転がり落ちたらタダではすみません…。
見渡す大地と畑の十勝平野、剣が刺さり立つ山頂
剣山の山頂に到着。
山頂っていうかほぼ岩壁。極めて狭い空間で、人数制限が必要なくらい…。素直に怖い。斜めに入った亀裂を頼りに山頂のところまで向かいます。
山の名前を示す看板は無く、剣が突き刺さっています。
栃木県の男体山、奈良県の大峰山、九州の高千穂峰などのように聖剣(もしくは何かしらの武器)が、山頂に刺さっている系の山です。
勇者が抜く県は地面に刃が刺さっていますが、山頂の剣は天に向かって突き立っています。これには理由があります。是非、調べてみてください。
大景色じゃ~!!
と、突っ込みたくなる風景。
剣の先には両目に視野角ではおさまりきらないほど広大な十勝平野が広がっています。三方向を山脈と丘陵に囲まれ、十勝川をはじめとする川が流れる北海道一の畑作地帯です。
ここで収穫される小豆、小麦、じゃがいもなど一週間で必ず口にしているのではないでしょうか。
ちょっと前に山頂を見上げていた岩場が見えます。
それにしても北海道は広い、いや世界が広い。
反対は日高山脈が広がります。
最高峰の幌尻岳をはじめとして、1800m前後の山脈が連なります。山小屋はほとんどなく、登山においては日本有数の未開なエリア。
日高山脈になじみがなく、全体的にフラットであるため、はっきりとは言えませんが、一つだけ抜きに出た山は幌尻岳でしょうか…。林道歩きと山深さがあり、とても難易度の高い山です。
辛いだろうけど、いつかは登ってみたい…。
自分が到着したときは誰もしませんでしたが、後続の人がやってきます。コース全体で登山者は20人~25人くらいはいたと思います。名山指定されていない北海道の山なので、よくわかりませんが、多い方なのかな?
十勝ポーズ?!
この日、帯広エリアは晴れていましたが、冬型の気圧配置で大雪山方面は晴れていたので、こちらを選んで正解でした。
牧草地帯に白い点々が見えるのは…?
それにしても、この山から見下ろす風景は一級品です。内地から登る人はほとんどいないと思いますが、選択肢としては十分アリです。
登山者が増えてきました。
地元の人に話しかけられて、「どこから来たの?(実際は訛っていた)」と聞かれたので、「今朝、飛行機で東京から登りに来ました」と答えたら、「なんでここ選んだんだ(強い訛り)」で、驚かれました。
確かに山梨県の岩殿山あたりに登っていて、北海道から来たと言われたら驚くだろうなと。
小人数しか許されない山頂から押し出されるように下山を開始しました。
山頂を見晴らすポイントからもう一度。もうちょっと左に傾いてたら、石鎚山にそっくりだな。改名したほうが…と、心の声です。
群馬県の妙義山くらい崖っぷちの山頂。大股を広げて立っている人がわかると下半身がキュンとします。
剣山は周回や縦走コースは基本的にない(あるのかもしれないけど)ので、下山は駆け足気味に降りました。
10時26分に登り始め、14時53分に下山、ざっくり4時間半の登山でした。
温泉へ向かい車を走らせている途中、北海道らしいスケールの畑から見た剣山。山頂の尖がり具合がよくわかり、シンボリックな山容でした。
下山後は芽室町まで移動してきました。 「温泉鳳乃舞 芽室」で汗を流しました。植物の有機物を含んだモール泉という珍しいジャンルの温泉です。トムラウシの帰りに音更でも入ったような記憶がある。土器がたくさんあったり、オーナー独特思想が反映されているのが、何となくお察しです。いい温泉ですよ。
この後は帯広に移動して、豚丼やカレーのインデアンなど、帯広ご当地グルメを堪能しました。
剣山の登山を終えて
日本の国土の7割は山岳です。
山頂から周囲を見渡すと、別の山脈が見えるわけです。しかし、ここ十勝、剣山から眺めた風景は、隣にある山が霞んで見えてしまうほど、北海道の大地の広さを思い知ります。
ぶっちゃけこの剣山には内地の人間が求める「北海道らしい山」要素は少ないです。この山を目的に来る人は、ほとんどいないでしょう。しかし、この剣山の最大の魅力は十勝平野の空と大地の広さの眺めです。帯広空港から近かったという理由で登りましたが、いい山の選択をしたと思います。
北海道にある四国の剣山と同じ名前、でも石鎚山の方が似てる山。ちょっと、複雑ですけど、北海道の旅の途中に登ってみてはいかがでしょうか。
コメント
地元民です。小5の息子を連れて近場で登れる山を考え、剣山登山を思い立ちました。
正直怖いです。独特の空気があります。実際感じる人はとてつもなく感じるらしい…そしてかく云う私も。さらに熊の通り道としか思えない沢。何度か登りやっぱり怖い
でも、写真がきれいで勇気もらいました!8年ぶり位ですが明後日行ってきます
❗ありがとうございました❗
>がねーしゃさん
地元の方に参考にしていただくことはとても嬉しいことです。ありがとうございました。
すいません、返信が遅れしまったのはこの日に北海道の旭岳に登っていて、ぐったりしていました。
つるぎ山は展望がぴか一で本当に気に入りました。
本州はずっと雨ですが、北海道はずっと天候が良く羨ましいです。無事、息子さんと登れましたでしょうか。
こんばんは。
元芽室町に在住していました。現在もたまに帰省します。
最後のほうに鳳乃舞が出てきて思わずびっくりしました。中盤ででてきた地元民の伏線だったのですねw
たまたま登山動画等を見ていてなんとなーくではありますが興味が湧いたので
参考までに唯一のぼった剣山の難易度を決めてから一人でいけそうな山を考えていました。
ブログ主様は全国の山々を制覇されているようですが、この山は一般的にはどれほどのものなんでしょうか?
>元芽室民さん
はじめまして、コメントありがとうございます。
芽室がご出身なのですね。
ほんと、剣山は展望が北海道の大地を感じられてよかったです。
全国の山で考えるとコースタイムは短めですが、剣山の最後だけ言えば危険度はかなりのものです。初心者向けかと言われると「う~ん」って感じです。
元芽室民さんの現在のお住まいはわかりませんが、町から1時間~2時間以内に行ける山は、剣山が登れれば大抵は登れると思います。
北海道だと剣山より、十勝岳や雌阿寒岳の方が登りやすかったです。展望もずっと良いですしね。