2015年1月31日
静岡県の長者ヶ岳・天子ヶ岳コースに行ってきました。標高はそれぞれ1335m、1330mです。
富士山の西部にあり、天子山地に属している山です。富士山周辺のエリアは降雪量もそれほどなく、登山口のそれなりに高いこともあり、冬でも軽アイゼンで登山することが可能です。
三つ峠や竜ヶ岳などの山と比べると知られていませんが、富士山展望の山としては非常に優秀です。
ローリングストーンズがライブでサティスファクションをセットリストに入れなかったら、寅さんがマドンナといい感じになって終わってしまったら、速水もこみちがオリーブオイルを料理に使わなかったら、合コンで相手側がほとんどパートナー持ちだったら…
世の中にはお約束が決まっていて、それがなかった場合に人は時に金を返せと憤ります。
関東近郊の登山者の場合、登った山の山頂から富士山が見えなかったら同じような思い抱くことになります。
今回の登山は、登山者が恋い焦がれる富士山の眺めを巡る旅でした。
長者ヶ岳・天子ヶ岳について
地図
田貫湖キャンプ場を基点とした周回コースを歩きます。
休暇村富士から田貫湖キャンプ場は木道の遊歩道がありますが、訪れた時(2015年1月)は工事中で通行できなかったため、タクシーで田貫湖を迂回しています。
コースタイム
- 10:16田貫湖キャンプ場
- 10:24長者ヶ岳登山口
- 11:58〜13:36長者ヶ岳
- 14:13天子ヶ岳
- 16:18休暇村富士
行動時間は6時間2分でした。
長者ヶ岳・天子ヶ岳コース
動機を語ってしまうとこの日に長者ヶ岳に登る予定はありませんでした。
当初は栃木県の日光にある雲竜渓谷を計画するも当日の天気が悪く、温暖な冬による氷瀑の出来が今一という理由で却下。
ドライバーであるSaku氏が静岡の実家に帰る予定があり、かつ天気が良い長者ヶ岳~天子ヶ岳が立ち上がったのです。
神奈川県の中央林間駅に集合し、度々登場するよし子さんを共に3人で出発します。
東名高速に乗り富士ICで西富士道路に乗り換え、朝霧高原方面へと向かいます。箱根を通過したあたりはガスガスで、「おいおい」という気配がありましたが、富士宮市からは日本の象徴たる富士山が「Welcome To Shizuoka!」をしてくれました。
スタート地点である田貫湖キャンプ場(http://tanukiko.com/)に到着です。
冬なのでガランとしていましたが、程良い高原、湖畔、そして富士山の眺めということで夏場はキャンプ客で賑わうようです。
10時をちょっと過ぎた時間で、冬の登山開始としては遅い時間帯ですが、周回にもそれほど時間はかからず余裕はあります。
田貫湖を眺めるSaku氏は、前回の小金沢山で着用していたネズミ帽を今回もまた着用して浮かれております。
駐車場で準備をしていると黒い塊が動いて「ビクッ!」と驚きました。
黒い野良猫です。この写真だと猫ではなく、違う生物に見える。
おや?
準備しながら横目でチラチラと猫の動向を追っていると、引き寄せられるように湖畔の方へと歩いてきます。
「あいつ食べていいか」
獲物(ネズミ)を見つけた肉食動物の目になっていた。
富士山をバックに田貫湖から長者ヶ岳へ
湖畔沿いに歩き、長者ヶ岳の登山口を目指し歩いてきます。
この日は富士山の東側である丹沢や箱根のエリア一体は曇天だった模様で、富士山を挟んで天候が違うということが生じているようでした。
雲量を示すレーダまで見て動くというのが、確実に勝利を収める条件のようです。
田貫神社(たぬきじんじゃ)という小さな神社が一つの目印になっています。
10時23分 登山開始
案内板に沿って行くと登山口を発見しました。登山道の一部は「東海自然歩道」になっています。このコースは東京の高尾山から始まり、大阪まで続いているようです。
八王子と大阪・箕面を結ぶ1都8県2府に及ぶ全長1697.2kmの自然歩道で、長距離自然歩道の第一号として誕生しました。東海自然歩道連絡協会は、自然歩道が通過する関係団体がお互いの連携を深め、各地の優れた個性と魅力を紹介し、観光レクリエーションのマナーの啓蒙活動と、地域会社の発展に寄与することを目的に設立されました。
完歩した人はいるのでしょうか…。
そういえば、奈良県・三重県の倶留尊山(くろそやま)で見かけたような。
山頂までは670mほどの標高差になります。
自然歩道になっていることから階段がしっかりあり歩きやすい道です。下山の道はぬかるみが激しく歩きにくかったので、周回は長者ヶ岳からの方がイイらしい。
序盤の展望スポットからは富士山を見ることができます。
山頂に到着して初めて富士山が見えるというわけではなく、下界から富士山が見えているわけで。
富士山の大沢崩れがしっかりと確認できます。この大規模な浸食谷は一日に275トン分の崩壊が現在進行中らしいです。
西側から見る富士山の最大の特徴です。
長者ヶ岳の登山道は特筆すべき点があまりなく樹林帯が続きます。
樹林の間からは駿河湾を見ることができ、その先には伊豆半島が見えていました。
徐々に雪も深くなり軽アイゼンを装着して登ります。
均等に並べられた植林の道。
光が交錯しており、少しだけ特別な雰囲気があります。
落葉しており、3シーズンだとかなわない展望があるのが、冬の低山の魅力だったりします。
雪道でなかなかの急斜面であるため結構息が切れます。
登山者なんて誰もいないんじゃないかと思いきや、20人くらいは見かけました。
分岐点まで来れば山頂は目と鼻の先です。
長者ヶ岳の山頂でスンドゥブチゲ鍋
12時2分 長者ヶ岳
登山口から100分ほどで山頂に到着しました。
ってあれ?
おなじみの山梨百名山の看板だ。東名高速に乗り静岡県に入り、静岡県の田貫湖から登ったら、頂上は山梨県である。
山梨県からの富士山の展望だと言わんばかりに看板が設置されています。
では、静岡県の看板は?と思い探してみると…。
これである。
分岐点の案内板かと思いましたわ。手書きて。
静岡県と山梨県から見える富士山はどちらが美しいのかというのは議論になりますが、西側の富士山も山梨に取られている事実。
Saku氏は静岡県から見える富士山が一番と語っていますが、残念ながらこの富士山も山梨県のものなのである。
山頂は広く、ベンチとテーブルがあり、富士山が見れるように樹林が切り開かれています。
山梨が設置した看板の位置に静岡県民は怒ったほうが良い。
栃木県民の自分からすると富士山問題はどうでもよく、食事の準備を開始します。
本日はよし子さんがあらかた準備をしてくれたスンドゥブチゲです。
卵を投入するシーンにこだわりをみせるSaku氏。
食事シーンが優れているアニメや漫画はヒットすると言われています。ブログがその流れに沿うかは別ですけど。
氷点下に近い気温で食べるスンドゥブチゲは体が温まり、大変美味しかった。
まあ、初めて食べたので比較はできませんが、富士山の好展望で食べるので一番うまいのは間違いないところ。
〆はチーズを追加し、リゾット風に食べました。
餃子も焼きました。
富士山と餃子という素晴らしい組み合わせ。ただこれはセブンイレブンで買ったもの。美味しいです。最近の冷凍餃子は。
明らかにカロリー過多であるため、食後は雪でボールを作成し、野球に興じました。
どちらも野球をするのはど素人ですけど。
それぞれの飛び方でこの一年を飛翔しようという勢いで撮影をしていました。
食事と食後で100分も要してしまい登山時間とイコールになる由々しき問題ではありますが、中村俊輔のような司令塔がいないので仕方がないことです。
甲駿国境で天子ヶ岳へ
というわけで、天子ヶ岳へと向けて歩を開始します。
若干の上り下りはあるものの基本的にはフラットな登山道でした。この稜線は甲駿国境となります。
稜線から右に降りていくと山梨県と表示されていたので、「なんでこっちが山梨なんだ静岡っぽくない?」と言ったら、栃木県民の分際で静岡を語るなとSaku氏にツッコミを入れられた気がした。
山梨県をアルファベットの「P」の字に例えると足の部分にこの長者ヶ岳は位置しているので、頭の土地勘が狂っているのです。
14時13分 天子ヶ岳
樹林に囲まれた登山道の途中に天子ヶ岳の山頂がありました。木の名前でも記した表示板みたく、枝にぶら下がっているだけでした。
天子ヶ岳は県境から離れ、純粋な静岡県です。
静岡県は富士山や伊豆には力を入れているが、その他の山には力を入れていないのだろうか。
天子=一国の王という意味で、名前は立派なのです。
「天子ヶ岳つつじ伝説」の看板がありました。
京都の嫁いで来たお姫様が亡くなるときに一緒に埋めた装身具から芽吹き真っ白な花が咲いたとか。村人がその花の枝を折って、里に持ち帰った際に暴風雨に見舞われ、被害に遭い恐れられたらしいです。
下山路はかなり厳しい急斜面で、登りに使うのはやめたほうが良いと思いました。
天子ヶ岳から1時間ほど歩くと舗装道とぶつかります。ここから休暇村富士まではずっと舗装道を歩くことになります。
路線バスを駆使して、観光地でおなじみの白糸の滝まで行っても良かったかもしれない。
ゲレンデのように広い場所がありましたが、雪が降る場所でもないので、たぶんパラグライダーの発射場?
山頂での飲み食いが祟り、膀胱の運命を決する一幕がありましたが、無事に休暇村富士に辿りつくことができました。
最後の車道歩き1時間超は長かった…。
田貫湖から見る富士山は優美
ここで日帰り温泉に入れればロスがないのですが、11:00~14:00と時間が短いのが難点です。逆算して間に合うように登山するのが良いかと思います。
休暇村富士にある展望デッキは有名な撮影スポットで、逆さ富士を撮影することができます。
特にダブルダイアモンド富士の日には早朝からカメラマンで溢れかえるのだとか。
見ごろ:4月20日・8月20日の前後1週間
時間帯:午前6時前後
せめて逆さ富士でもと思いましたが、風があり湖面に写らず。
車が駐車してある田貫湖キャンプ場までは、周遊道を20分ほど歩けば着くはずでしたが、改修工事で全面通行止めになっている悲劇。
田貫湖をぐるっと一周する気力もなく、タクシーを呼び戻ります。
ラウンジスペースで富士山を見ながらタクシーを待ちました。
冷めた体に暖かいカフェオレがしみます。
雲の影が富士山に映り込み、笑顔になっていました。
タクシーで田貫湖キャンプ場に戻ってくると、陽が落ち始め富士山が橙色に染まっていました。
登山用語のアーベントロートと呼ばれ、「夕焼けによって山が赤く染まること」を指す。
「凪って逆さ富士が映り込んでいたら完璧だったな」と贅沢を言いながら、一日の終わりを素晴らしい富士山で幕を落とすことができました。
富士宮市民は朝焼けに染まり、夕焼けに染まる富士山を一年中見ることができるのか…。
沼津の丸天で海鮮料理打ち上げ
タクシーの運転手にこの辺はあんまり温泉がないよと言われてやってきたのは国道沿いにある「花の湯」です。
スーパー銭湯的な温泉施設のため、まあ一通りはそろっている感じで、登山後の温泉としては相応しくはなかった感はあり。値段も高め。
温泉後は沼津漁港の丸天にやってきました。
沼津港の老舗料理店です。安くボリュームある海鮮料理を食べることができます。
生桜エビは静岡に来たら食べなければいけない一品。
煮つけ。
生ガキ。
丸天のランドマーク的なメニュであるかき揚げを今回も頼みました。
今回もと言っているのは残雪期に登った富士山でも立ち寄っています。3人でも食べきることは結構厳しいので、次回は見送っても良い。
他にもちょこちょこと注文し、満足の登山を終えることができました。
これだけの量を注文しても一人2000円に達しなかったと思います。富士山、伊豆半島、静岡県側の山をお尋ねの際には是非。
海風がとても寒いJR沼津駅でSaku氏と別れ、東京に帰るのでした。
後日談として、週明けに自分とSaku氏がお腹を猛烈に下すという事件がありました。何故よし子さんだけ免れたのかは謎でありますが、原因の追究はしておりません。
長者ヶ岳・天子ヶ岳の登山を終えて
予定したプランが中止になり、直前までは名も知らない山でしたが、充実の一日でした。アイゼンとピッケルを持って、いかにも冬山にのぞむぞという時もありますが、基本的にこのような一日が過ごせる登山が好きです。
朝起きて、準備して、陽の明るいうちに下山して、温泉入って、美味しいもの食べて帰るというカジュアルな山が自分には向いていると思います。
今回は積雪のある登山客が一番少ない季節に来てしまいましたが、5月中旬にはアシタカツツジやシロヤシオが咲くそうです。4月20日に田貫湖のダブルダイアモンド富士を見てから登るというプランも良いかと思われます。
富士山を裾野全体に見渡せる好展望、里山的な雰囲気もあり、落ち着いた登山ができる山でした。
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