2018年8月19日
長野県と富山県にまたがる針ノ木岳に行ってきました。標高は2820mです。
北アルプスの中央に位置するので、黒部湖と立山連峰をはじめ、全域を眺めることができる北アルプス屈指の大展望の山です。また、7月から8月上旬までは、針ノ木雪渓が登山コースになっています。
コースタイムは長いですが、北アルプスの中で、貴重な日帰りできる一座です。
個人的な所感ですが、登山者界隈で針ノ木岳の評価が非常に高いようの感じます。
一時の爆発的な人気が落ち着いて、テレビの出演はそこそこで、舞台を中心に人気がある漫才師のような存在。わかりにくい例えですけど。
展望抜群、高山植物あり、雪渓ありなので、前々から登りたくて注視をしていた山を旅してきました。
針ノ木岳について
地図
扇沢から往復するコースを歩きました。
年によって異なりますが、7月~8月中旬頃は針ノ木雪渓を歩くことになるので、アイゼンが必要になります。
コースタイム
- 5:29針ノ木岳登山口
- 6:29大沢小屋~針ノ木雪渓
- 9:36針ノ木小屋
- 10:54~11:48針ノ木岳
- 15:08針ノ木岳登山口
行動時間は9時間39分でした。
針ノ木岳 日帰り登山
扇沢の片隅にある針ノ木岳登山口から大沢小屋へ
針ノ木岳のスタート地点は、長野県大町市にある扇沢です。黒部ダム観光や立山の室堂へと続く、立山黒部アルペンルートの出発地点です。
個人的には立山・剣岳、鹿島槍ヶ岳、下の廊下などで訪れていて、4回目です。何気に来ること多い場所です。
要塞のような扇沢駅の左脇にある通用口、その端っこにひっそりとあるのが針ノ木登山口です。
ちなみに今回は、栃木の小山に憧れを持つ茨城県民「なべ氏」と二人の登山です。
入口に登山届のポストがあり、テント泊装備のおじさんが提出していました。
それでは、登山開始です。序盤は茂みの中を歩いて行くと思いきや。
アルペンルートの通用道と思われる舗装された道と合流します。登山道があるので、ショートカットできます。
針ノ木岳から続く稜線が見えました。8月中旬を過ぎ、雪渓はだいぶ面積が少なくなっているようでした。
扇沢で標高1400m以上ありますが、やはりまだまだ夏日で、自分以上に暑がりのなべ氏は、すでにバテ始めていました。というより、夜通しの運転からの登山は、無茶が効かないお年頃です。
舗装道との交差は終わり、ここからがいよいよスタートラインです。
樹林帯の隙間からは、針ノ木岳が見えました。本当に日帰りできるのか…、気の遠くなる距離があります。
針ノ木岳の登山道は谷に沿って行くので、沢の流れ、水の音を身近に感じます。登りに使うなら、尾根コース<谷コースが世界の定説です。
花たちの盛りは過ぎていますが、チラホラとあじさいが咲いていました。山で見る野生のツツジやシャクナゲは生命力あふれてますが、あじさいは繊細に見える。
時折、樹林が途切れ、沢を横切るような場面があります。雪解けの7月だと、渡渉に難儀しそう。
最初の通過ポイント、大沢小屋に到着しました。
扇沢から1時間程度なので、ほとんどの登山者は小休憩をして通過する小屋です。大町から扇沢の区間が整備されていなかった時代は、登山拠点となっていたようです。
ジュースの値段は稜線にある小屋と同じくらいの値段してました。
雪渓情報が張り出されていました。シーズンによって異なると思いますが、8月中旬すぎるとアイゼンは不要なようです。
それでは、針ノ木峠を目指し、登山を再開します。すでに3キロの進捗で、残り4キロちょっと。しかし、ここから傾斜がプラスされるので、単純に半分ちょいという訳にはいきません。
ここからは樹林帯が途切れ、沢沿いの登山道へと変化してきました。梯子も登場し始めます。
岩場が登場し、ロープで渡る箇所も登場します。
8月下旬の針ノ木雪渓は、ほとんど土と岩の道を登る
針ノ木雪渓が見えてきました。さすがに8月中旬過ぎなので、ほとんどが溶けています。この時期は、どこを登っていけばいいんだろう…。近くまで行ってみないとわかりません。
- 白馬雪渓
- 針ノ木雪渓
- 剱沢雪渓
そういえば、日本三大夜景、三大がっかり観光地のように、雪渓という狭いジャンルにも「三大」があるんです。北アルプス三大雪渓と言うらしいですが、出自は不明。
このあたりの花は夏の役目を終えて、枯れ始めていました。
と、思っていたけど、7月までは雪渓があったであろう箇所は、お花畑の盛りを迎えていました。癒し空間です。
雪渓の雪解け水が轟々と流れる沢に、頼りなさそうに架かる橋を渡ります。7月だとここは雪渓があるところでしょうか。
見た感じ雪渓を歩く箇所は、ほぼ無さそうです。
それでは、針ノ木雪渓の跡地?残骸?を登っていきます。
雪渓が溶けきった斜面と雪渓の残骸を繰り返しながら登っていきます。雪渓は登っても10m〜20mの長さくらいです。
谷底には山肌からの落石の集合し、荒れた感じになるんですね。
進行方向ばかりではなく、たまには振り返ってみます。種池山荘が見えるので、その稜線に沿って爺ヶ岳が見えました。その奥にあるはずの鹿島槍ヶ岳は、まだ見えません。
雪渓を歩いたり、避けたり。やはり、雪渓のあるシーズンの方が時間短縮して登れそうです。踏み抜きが怖いけど。
冷たい沢は冷たい風も発生させてくれるので、クールダウンしながら進みます。
慎重に、慎重に、橋を渡ります。
崩壊した雪渓を避ける道は、砂礫ある急斜面で、ロープを頼りに登らないといけないので、これがなかなか大変です。
現在進行形で急速融解が進む雪渓。ポタポタと水滴が滴っています。
空洞化して空中にせり出した雪渓。こんなのマリオでもない限り登れませんよ。
というわけで、雪渓の横にある壁みたいな岩場を登ることになります。
雪渓を眼下に見ながら、右側斜面を進んでいきます。最初の橋を通過して55分、峠はまだ見えてきません。
山を始めるまで、有毒植物トリカブトは、希少な花を思っていました。しかし、真夏を過ぎると雑草のようにそこらじゅうに咲き、珍しくもなんともない花と知りました。
ハクサンフウロが少しだけ咲いていました。
高山植物のピークは1ヶ月前だと思いますが、雪渓に隠れていた地面に遅咲きの花が咲いていました。
ようやく雪渓区間の半分を過ぎたくらいでしょうか。徐々に疲労の色が見えてくる頃で、ペースダウンし始めました。
近くを水が流れているのは涼し気ですが、樹林がないので、日差しを遮るものがなく、これはこれで暑くて辛い。
最終水場の標識ありました。どストレートな沢水なので、浄水器がないとちと怖い。
沢の上部になってくると、もはや単調かつ作業的な登りで、このあたりの記憶は全くありません。
樹林が途切れ、砂礫の道に変わってきました。峠は近づいてきた予感。
暑がりステータスをカンストしている「なべ氏」は、消火活動中の消防士くらいに滝汗をかいて、ばて始めてきました。峠に早く到着したい。
高山植物の代表であるチングルマを見つけました。花を散らし、逆さ箒状態のものしかありません。
階段が出現し、ようやく針ノ木小屋が見えてきました。
槍ヶ岳と穂高連峰の展望が開く、針ノ木峠に到着
針ノ木小屋に到着しました。
最初に渡った橋を針ノ木雪渓のスタート地点とすると、2時間30分で登り切りました。いやー、長かった…。
雪渓がある時期の方が、もうちょっと早く到着できると思う。
針ノ木小屋からは南側の展望が広がるようになります。槍ヶ岳・穂高連峰が見えました。
空気が澄んでいるので、富士山のシルエットが確認できました。
針ノ木小屋のある針ノ木峠は標高2536mあり、針ノ木岳までまだ標高差300mあります。
針ノ木峠は、江戸時代以前まで、越中と信濃(現在の富山と長野)を結ぶ交通の要所だったらしいです。昔の人は凄いな…。さらに、針ノ木岳はこの「針ノ木峠」から名が付けられた山です。峠から山の名前が付けられた珍しいパターン。
日差しで熱いけど、小屋の中はとても涼しい。炭酸飲料で回復し、針ノ木岳の山頂へのエネルギー回復。
針ノ木小屋から山頂へは1時間の道のりです。
稜線上にある針ノ木小屋のテント場は、狭いけど展望に恵まれたロケーションです。ここに宿泊して、ぐるりと爺ヶ岳方面への稜線を歩くのも良さそう。
この日は風はほとんどなく登山日和でしたが、麓の気温は33度を超す猛暑日。稜線でも汗が留まることを知りません。
ようやく、針ノ木岳の山頂が見えてきました。北アルプスらしい森林限界を抜けて、ハイマツの茂る高山の雰囲気です。
針ノ木岳から峠を挟んで対照にあるのが蓮華岳です。体力も時間も余裕があったら登ろうと思っていましたが、どちらも失っているので、また次回に登ります。
え?!
山頂間近にて、タイ仏教の僧侶(本職かは不明)の恰好をした人が、なんと裸足で登っていました。話を聞くと、麓から裸足で登っているそうです。
さすがに下りは痛いので、ザックにしまってある靴で下山するのだとか。
僧侶が裸足で登っていると、「修行」として受け入れ、ある種、尊敬の念が湧く。しかし、登山上級者がスーツ着用で登っているとバッシングを受けたりする。
「登山って答えがないな」と考えていると、山頂が見えてきました。
北アルプスの全てが見える針ノ木岳の山頂
針ノ木岳の山頂に到着です。
扇沢の登山口を出発して、5時間25分掛かりました。日帰り登山として、片道5時間オーバーは長い。山頂の標識は簡素な造りです。
針ノ木岳の山頂は広く、奥は岩が積みあがっています。
前述の通り、峠から名づけられた山で、明治~大正に名が付けられたので意外と若い山です。名前の由来は、「ハンノキ」という木から変化したようです。洋裁道具の要素はゼロです。
針ノ木岳は北アルプスの中央に位置しているので、「北アルプスの全て」を展望することができます。
黒部湖と立山連峰の大展望。
この風景こそが針ノ木岳の最大のチャームポイントと言えるのではないでしょうか。青と緑の中間、翡翠色というか青磁色というか、まるではめ込んだみたいな黒部湖が際立っています。
針ノ木岳から北側は稜線が続いていて、お隣の山はスバリ岳と言うらしいです。
スバリ岳より稜線が続いていて、爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳など後立山連峰が連なります。
黒部湖ほど目立ちませんが、高瀬ダムが見えます。
そんなに北アルプスに詳しくないんですけど、野口五郎岳や水晶岳に続く登山口があるんでしたっけ。
山頂からは引き続き、富士山また八ヶ岳などの高山も見えます。
山頂付近に雷鳥いないかなと、しばらく探していましたが、鳴き声一つもしません。こんな晴天化では出てこないのは当たり前か。
「展望」というステータスでは北アルプスでも群を抜いている針ノ木岳。名残惜しいですが、下山を開始します。
明日の天気は崩れるのか、上層に雲が広がり始めました。
針ノ木峠を通過し、針ノ木雪渓まで来ると、完全に曇り空になってきました。雨に降られなければよいけど…。
「今週の平日は何しよう」、「そういえば、あの手続きやってなかった」と、下山中は色々と思考するけど、降りた瞬間に忘却の彼方にいく現象ありますよね。
平地が30度こえる気温の中、後半はヘロヘロになりながら、扇沢の駐車場まで下山しました。
山頂から下山完了は、3時間20分でした。
雪渓があったら、20~30分は早くなったかも??
大町の薬師の湯に入り、信州ジンギスカン街道へ
扇沢から大町市内に移動して、「薬師の湯」に入りました。
扇沢から高速やJRに向かう途中にあるので、登山者には定番の温泉みたいですね。自分は初めての利用になりますけど。
今回、同行していた「なべ氏」が今までジンギスカンを食べたことがないと言うので、帰り道を少し寄り道して、信州ジンギスカン街道にやってきました。
ジンギスカンを提供する店が多い街道で、一番有名な「焼き肉レストラン むさしや」を訪れました。
通し営業しているので、登山帰りにも最適です。17時過ぎには並び始めてしまいますけど。
新鮮なサフォークラム、タレ付けされた安価なラムやマトンを食べることが出来ます。ジンギスカンの本場、北海道の名店に匹敵すると思います。
オーストラリアかニュージーランド産だと思いますが、仕入れ先が良いのかな?
サフォークラムジンギスカン | 780円 |
マトンロースジンギスカン | 630円 |
サフォークラムロース | 960円 |
ラム骨付きロース | 1320円 |
ジンギスカンはタレ漬けされて、ご飯とよく合います。ロースは焼肉のように肉本来の味を楽しめます。ロースはジンギスカン特有の臭みは皆無です。
牛や豚より少し野性味が強くて、味が濃い羊肉は登山後の食事に持って来いです。初体験になったなべ氏も「ウマいウマい」と大盛ご飯をお替りしていました。
山間にあるお店なので、食後に外に出ると周辺は真っ暗です。長野から関東まで、満腹の睡魔と闘いながら、帰宅するのでした。
針ノ木岳の登山を終えて
7年使用グレゴリーのザック、日焼けして色落ちしてるし、くたびれてるな…。
北アルプスの中でも、群を抜いた展望と雪渓登りのオプション付き。花よし、稜線よし。位置的にも常念岳と白馬岳を足して割ったような雰囲気でした。
しかしながら、百名山ブランド(二百名山に選定)がないので、白馬岳のような混雑はなく、アクセスの良さも魅力です。隠れた名山と言う程、隠れてはいませんが、針ノ木岳は素晴らしい山でした。
時間と体力の都合で登れなかった蓮華岳が気になるので、またいつか登りに来たいと思います。
コメント
せっかくなら少し贅沢して小屋泊で行きたいCTと景色ですねー。
日帰りは色々と気軽でいいんですけど。
コメントありがとうございます。
眺望良いので、針ノ木岳は泊まりたい山ですねー。泊まれば、蓮華岳も無理なく登れますし。
今年2022年は大沢小屋は営業してるようですよ
コメントありがとうございます。
修正させていただきました。
行程がとても分かり易くお人柄の良さも伝わり楽しく読みました。22年7月に針ノ木岳蓮華岳で日本アルプスデビュー。コースタイム目標でいつもの様に写真撮れず。北アルプスの全てが見えると読んでいたので景色を満喫。他の山行も参考にします。
コメントありがとうございます。
参考にしていただき、ありがとうございます。アルプスデビューですか。これからますます行きたいところが増えそうですね。
またのコメントをお待ちしております。