2017年11月3日
滋賀県の霊仙山に行ってきました。標高は1083mです。
鈴鹿山脈の北端にあり、山頂一帯にカルスト地形が見られます。樹林が成長できない地質による大展望、無数の石灰岩が転がる奇怪な風景が見られる稀有な山です。
道中に山小屋もある榑ヶ畑コースから登ってきました。
カルスト地形は一度見てみたい。しかし、「三大カルスト」は愛媛、山口、福岡と、関東地方からは実に遠い、遠すぎます。しかし、半分以下の距離で見られる場所が、滋賀県・三重県・岐阜県にまたがる鈴鹿山脈の北部にあると知りました。
とは言え、関東からは400キロ以上離れています。11月の3連休を利用して、滋賀県まで旅してきました。
霊仙山について
地図
榑ヶ畑登山口から霊仙山の往復コースを歩きました。
コースタイム
- 8:29榑ヶ畑登山口
- 8:46汗フキ峠
- 10:11お虎ヶ池
- 11:07霊仙山
- 12:46榑ヶ畑登山口
行動時間は4時間16分でした。
霊仙山 榑ヶ畑コース
廃村になった榑ヶ畑から登る霊仙山
早朝の岐阜県の養老サービスエリアよりおはようございます。
都内を真夜中出発し、東名自動車道を5時間以上走り、ようやく岐阜県に入りました。愛知県の道路事情にヒヤヒヤしながら、すっかり疲れ切っての休憩です。
豚丼ときしめんのセットを注文しました。きしめんの出汁が疲れた体に染みわたります。うどんの一種なのか、きしめんと言う確立されたジャンルなのか、未だによくわかりません。
天下分け目の関ヶ原を通過し、滋賀県の米原ICを降りて、霊仙山の登山口を目指します。東海道線で言うと、最寄り駅は醒ヶ井駅で、滋賀県の西の端にある地域です。
夢から醒める、覚醒剤の”醒”が付く、地名って珍しい。
山間部に入っていくと、養鱒場の看板が見られるようになります。時間的に食べる時間なかったけど、霊仙山の清流で育つ鱒が特産だそうです。
登山口の駐車場に到着しました。駐車場らしい駐車場は僅かで、紅葉シーズンのためか、路駐であふれていました。それでも、混雑しているって程じゃないですけど。
東京から440キロ、滋賀県の霊仙山の登山開始です。関西の端っこだけど、やっぱり遠いです。
登山口からは少しだけ砂利の林道を歩いて行きます。
林道と並行して、わかりやすく登山道への入口がありました。植林された杉林で、かなり鬱蒼として、暗い印象です。
比較的新しい霊仙山登山道案内板がありました。イラスト付きでとても分かりやすい図です。
大きく周回するコースもありますが、この後は観光と名古屋への移動の時間的制約があるので、最短の榑ヶ畑コースの往復を歩きます。
一部通行止め区間があるので、最新情報は米原市のサイトを参考にしてください。
離散した集落の名残を見ながら薄暗い樹林帯を歩く
ウェルカムボードが設置されていました。ころばぬ先の杖(長い枝)を配布してくれています。
シダ植物が茂る薄暗い登山道を歩いて行きます。
森の中を注意深く見ていると、樹林や落ち葉に埋もれている石垣や井戸など人工物が見られるようになります。この周辺は、榑ヶ畑と呼ばれる村があったそうで、1960年代頃に廃村になったそうです。
この榑ヶ畑集落では、薪炭を売って生計を立てていたようです。
「榑」って字は見慣れないので、きっと意味があるんでしょうね。このような、日の当たらない山荘集落は、その時代にいわくがあったりするので、暇があれば調べてみたいとこです。
民俗学に思いを馳せながら、ゆるやかに登っていると山小屋が見えてきました。
汗フキ峠に到着しました。汗を拭く峠。何ともシンプルな名前だ。
ここには、期間限定で営業する「山小屋かなや」があります。この日は営業していませんでした。宿泊もできるようですが、現在営業しているかどうかは不明です。
簡易トイレあり、キャンプ場もあります。
2017年当時の値段ですが、駐車場からそんなに離れていないので安いです。
小屋が営業していない時は、霊仙山のバッチは醒ヶ井駅に隣接する水の宿駅で購入できるようです。
山小屋からは緩やかに斜面を登っていき、尾根道へと合流します。
汗フキ峠からは太陽の光が射す尾根道、11月は紅葉が綺麗
「二合目 汗拭峠」の分岐に到着しました。ここから山頂を目指します。
「落合」と言う、こちらもまた廃村になっている場所へ続いているようです。
広めの尾根道を登っていきます。
今のところ、関東の丹沢でも見れる風景で、400キロ以上移動してきた意味は見出せない。
麓の集落が廃村になってから半世紀以上経ってますが、生活の道だったので明瞭です。
特に険しいわけじゃないですが、ロープが張ってある親切設計です。
11月初旬なので、標高が上がると木々が黄色に紅葉してきました。
いわゆる紅葉の名所的な山ではないので、年間通してのベストハイシーズンは、春の福寿草シーズンでしょうか。
ちなみに、夏場はヒルが出没するらしいです。ヒルだけは、ノーセンキュー。
徐々に木が減り始め、展望と空が見えるようになってきました。そして、サッカーボールと同じくらいの石灰岩が、地面に見られるようになりました。
「五合目・見晴台」に到着しました。なお、周辺の森を見晴らしするだけの模様。
五合目を過ぎると、山の稜線が見えるようになってきました。
カルスト地形は、土壌が薄く、ph値が高いので、木が生えないので、森林限界が低いです。
六合目を過ぎると、Happy Mountain(Tree Is Over)、展望が一気に広がりました。
ラーメンに胡麻を振ったように、山に岩をばら撒いたような地形は、カッレンフェルトと呼ぶようです。ドイツ語なので、覚えにくい。日本語だと、石塔原と呼ぶらしい。
日本では、山口県の秋吉台、福岡県の平尾台、愛媛県の四国カルストが三大カルストで有名。沖縄などにも見られます。霊仙山は観光地じゃないので、ウィキペディアに記載はなく、知名度がないカルスト台地です。
七合目を過ぎるとカルスト地形、展望の良い山頂エリア
「七合目・お猿岩」まで来ると、尾根道歩きは終了です。お猿岩は溶けてしまって、実体は既にないようです。
そして、とても広々した草地の山が広がります。
アルプスでもなく、火山群でも見られない、カルスト地形でしか見られないユニークな山です。
窪みの中に池が出来ています。石灰岩は雨水で溶けるので、もしかすると地下空洞と繋がっているかもしれません。カルスト地形で見られる窪地は、ドリーネと呼びます。
こういう、いわゆるカルスト台地の名所は前述の通り、西日本に寄っています。
関東から来る場合、最も近い場所なんじゃないでしょうか。なので、夜通し400キロの移動してきた甲斐があるってものです。
羊がそこらへんを歩いていても不思議ではない草地の中に登山道が伸びています。人が歩いて自然に作られたようです。
前述したカッレンフェルトの風景、クッキークランチの表面のようにゴツゴツした石灰岩が転がる風景が間近に見ることができます。
八合目に到着すると、霊仙神社がありました。
いかにも霊験あらたか、山岳信仰がある名前の山ですが、史跡らしいものは失われてしまったのか、残っていないようです。麓のお寺にある仏像などで、信仰の記録があるようです。
ささやかな鳥居とお虎ヶ池と名付けられた小さな池があります。雨水がたまり窪地になったことで、発生した池で、この池以外にもいくつか存在するようです。
なんて、起伏のない山なんでしょう。
八合目からは、九合目の経塚山までゆるーい傾斜を登っていきます。
標高が上がるにつれて、徐々に周辺の山々が見えてきました。
徐々に土の道から、カッレンフェルトの地形へと変化してきました。ギュッと石灰岩の密度が濃くなってきました。
九合目の経塚山に到着しました。
三方向に分岐していて、柏原・上丹生方面は避難小屋を経由して、岐阜県との県境を歩くコース。しかし、岐阜県側には登山口は存在しないようです。
見晴らしの良い場所にポツリと存在し、ロケーションのゲージがカンストしている避難小屋。
それでは、霊仙山の山頂を目指して歩いて行きます。
土地勘がないので周囲の山々はさっぱりわかりません。しかし、霊仙山から関ヶ原を挟んで見える伊吹山は「俺がガンダムだ。」の如き、主張の強さがあります。
東北地方の山を彷彿とさせる起伏がなく、広々とした稜線が素晴らしいです。
ようやく、山頂に着いた。
伊吹山と琵琶湖の展望、霊仙山の最高点と山頂
霊仙山最高点に到着しました。
「最高点?山頂じゃないんだ??」と、ここで気づきました。最高点は1098mで、山頂より4m高いです。飯豊山とか、安達太良山とか、山頂が最高点じゃないパターンは珍しくない。
最高点の周辺は石灰岩がビッシリ。テントはおろかレジャーシートすら敷くことができません。ソールが厚い靴で来る方が良いですね。
振り返ると先ほどの経塚山。稜線伝いに避難小屋が見え、さらに奥には伊吹山。
経塚山から南側は鈴鹿山脈で、こう見るとかなりディープな山域です。
それでは、仕切り直して山頂へ。
琵琶湖の方角から強風が吹きつけて、ジャケットを羽織りました。
霊仙山の山頂に到着です。
登山口からは2時間半ほど掛かりました。最高点からは4m低い、標高1084mです。
遮るものがない、360度の大・大・大展望です。
そして、カルスト地形の山は関東地方では見ることができないので、まるで異世界・別の惑星に来たような感覚です。
写真ではボヤけてしまっていますが、琵琶湖を眺めることができます。しかし、日本一の面積は伊達ではなく、これだけ展望の良い霊仙山の山頂を持ってしても、全貌をギリギリ見渡すことができない。
そして、北の方角には伊吹山が見えます。また、北東の方角には薄っすらと、御嶽山が見えていました。
滋賀県の山ということで、久しぶりに2012年の旅で友達となった彦根市のゆるキャラ「ひこにゃん」を連れてきました。
コンビニで買った湯浅醤油の焼きおにぎりを食べて小腹を満たします。ご当地のおにぎりかと思ったら、和歌山県の醤油で、滋賀県と関係なかった。
見方によっては、石灰岩の石柱の一つ一つが、墓標が並んでいるようにも見える。『霊仙山』という名前がしっくり来るなぁと思う。
とか、考えていたら、たくさんの子供が登ってきたので一気に賑やかに。登山コースがあってないようなものなのか、正式なコース以外にも道がいくつもあるようです。
強風で寒くなって来たので下山、登山バッジを買いに醒ヶ井駅へ
大満足の山頂でした。時間があれば周回コースを選択するのですが、登りと同じ道で下山します。
そういえば、紅葉も綺麗だったなぁ…。ただ、落ち葉で滑って、登りより大変でした。
鬱蒼とした山小屋を通過。
駐車場まで戻ってきて、下山完了です。トータル4時間16分の登山でした。真夜中移動してきた身としてはちょうど良いコースタイム。
登山バッジを購入するため、登山口の最寄駅である東海道本線の「醒ヶ井駅」まで移動しました。駅周辺は、中山道の宿場町の名残がある街です。
駅の隣にある「醒井水の宿駅」に立ち寄りました。
こちらで、霊仙山のバッジをゲットしました。オリジナル要素の強いバッジで、江戸時代の旅人と思われるキャラクターがデザインされています。
2022年6月以降は、どこで購入できるかは不明です。
城下町の面影が残る近江長浜と琵琶湖の夕陽
ここからは、霊仙山のある米原市から離れ、お隣の長浜市に20分ほど移動しました。伊吹山がいつの間にか雲隠れしています。
長浜市の市街地から少し離れた場所にある「あねがわ温泉」で、日帰り入浴します。
かなり綺麗めで、大きい入浴施設でした。ただ、霊仙山からは少し遠いです。
わざわざ、近江長浜までやってきた理由は、琵琶湖の夕日を見るためです。
長浜駅から歩いて数分の長浜城のある豊公園が夕日のスポットになっています。
ギリギリ間に合った!!
長浜市内で買い食いしていたり、モタモタしたので、間に合わないかと思った…。
広大な琵琶湖にできる太陽の光の柱。これが見たかった。
対岸には、武奈ヶ岳などの比良山地が並んでいます。ちょうど、光の柱に船がいて、ナイスな構図を提供してくれました。
夕陽を眺めながら、「芋平」という店で買ったさつま芋きんを食べます。
種子島に鉄砲が伝来されたことは有名ですが、その翌年には、この長浜で生産されていたようです。その歴史をなぞって、種子島産の芋を使ったお菓子だそうです。
出来立てホクホクでウマい。焼き芋や干し芋と違って、手が汚れないのが革新的です。
琵琶湖の夕陽は「日本の夕陽百選」に選ばれているようです。
ただこれは、関西のNPOがリストアップしているので、関西に偏っていたりする。大阪が10個で最多とか、関西のお笑い賞レースみたいやないかい!!
16時50分過ぎ、夕陽は比良山地の山陰へと沈んでいきました。冬はときおり豪雪になる長浜なので、11月の日没後は、強烈な寒さです。
というわけで、長浜のグルメが食べられそうな「みそ乃」で食事にしました。現在は、閉業してしまいました…。
こちらは、鯖そうめん定食。
鯖そうめんは滋賀県湖北地方の郷土料理です。素麵を魚と絡めて食べるなんて発想がないので、多県民からすると衝撃的な料理。
焼き鯖の味が染みこんだ素麺は、意外と美味しい。
薬味とトマトでごまかされてるけど、それを取っ払ったらビジュアルは下の中。
そして、こちらは近江牛の焼肉定食です。
近江牛と言えば、日本有数のブランド牛で、人生に一度は食べてみたかった和牛の一つです。
「んまぁ…」
数多くのブランド牛を(一口、二口程度)食べてきた自分ですが、人生でベストの美味しさでした。和牛はそりゃ美味しいけど、ステージが一段高い味でした。
滋賀県民は日常的にこんな美味しいお肉を食べているのか…。
長浜の中心地は、城下町の街並みが残る観光地でした。しかし、19時前にほとんどの店が閉まるので、ガランとしていました。
本日はこのまま、名古屋へと移動し、翌日は初めての伊勢神宮を参拝しました。
霊仙山の登山を終えて
アルプスの高山、進行形で噴煙上がる火山、紅葉の名所だったり、色んなジャンル分けできますが、カルスト地形の山は貴重なジャンルと言うか、イレギュラーな存在の山です。
王道の伊吹山、バリエーション豊かな鈴鹿の山々に挟まれながら、孤軍奮闘というか、個性を放つ霊仙山に、圧倒的なポテンシャルを感じました。
花の名山でもあるようで、福寿草の群生やニリンソウやミスミソウなどが咲き、春に訪れるのも良さそうです。
カルスト地形に興味が出たので、遠出をして他のカルストの山々を登りたくなりました。また、世界に目を向けると、ドラゴンボール初期の世界観のような中国の桂林、ベトナムのハロン湾などもいつか見たいものです。
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