2015年3月7日
島根県の三瓶山に行ってきました。標高は1126mです。
島根県の中央部に位置し、大山火山帯に属する活火山です。直径5キロのカルデラがあり、主峰の男三瓶山、女三瓶山、子三瓶山、孫三瓶山、太平山、日影山の6つの山があります。
三瓶山は、出雲に伝わる「国引き神話」に登場します。
真冬2泊3日の山陰遠征に行ってきました。
メインは翌日訪れる伯耆大山(ほうきだいせん)で、時間的な都合から三瓶山が選ばれました。正直な話、山陰という日本でも有数の影の薄い地域にある山は大山くらいしか知られていないのが現実です。
高曇りの天候でありながらも高い登山クオリティによって、ついでとして訪れた自分達に十分なサービスを提供してくれました。
山陰のモノクロの旅スタートです。
三瓶山について
地図
西の原からスタートして男三瓶山を登り、姫逃池コースで下山する周回ルートです。
コースタイム
- 12:22西の原
- 13:461000m地点
- 14:13~14:50男三瓶山
- 15:57姫逃池コース登山口
- 17:03西の原
三瓶山 登山
初めての山陰地方へのフライト
今回は往復ともに飛行機というプランでした。1ヶ月以上前にブッキングしたことにより、LCCでもない、国産ANAという上等な航空ブランドまた羽田空港発着という条件にもかかわらず、往復航空代は3万円も掛かりませんでした。
3月というと関東での季節は初春ですが、山陰(鳥取・島根)のある日本海側は冬が継続中です。
鳥取県の米子空港行き6:55発のフライトのため、自宅から始発にて羽田空港に集合したのである。
今回は例によってSaku氏との男二人の山陰旅行。
皆まで語るまい。
鳥取県にはスターバックスコーヒー(現在はある)がないため、最後に都会的なサムジング・トゥ・ドリンクを飲んでおこうという意味不明な足掻き。
成田空港に行くより、断然近い羽田空港は利便が良いです。
この週末の東日本は雨天であり、西日本は好天という天気予報でありました。
「東日本の登山者のみんなはおうちでゴロゴロかな~。」
意地の悪い性格の我々は、そんなことを思いながらフライトを待つのでした。
高度1万メートルに達すると雲の上に達し、青空が広がります。
「さぁ、飛行機が目的地に着く頃には下の雲が薄くなっていくぞ」
「ははッ!! 1ヶ月も前から、この週末に賭けた我々の大勝利だ」
「ところで今どこらへんを飛んでいるんだ」
「1時間経ってないから、愛知か滋賀あたりか?」
「いや、まだまだこの当たりであれば雲があっても仕方がない」
「もう20分~30分したら雲がなくなるさ」
冬の日本海側に相応しい曇天で、山陰は我々を迎え入れてくれた。
冬の日本海側の晴天率の低さを侮るなかれ、3月とは言えまだまだ冬なのです。日本海側の山、今回のように関東から遠い山陰登山を事前に予約し、フライト代を安く抑えようとするのは大博打なのです。
心もとない我々は休みを一日取得し、チップ(日数)を三枚用意したのです。
荷物受取で待っていたらスーツケースから目玉のオヤジが飛び出していたので、目を見張ってしまいました。そう、目玉だけに。
正式名称は米子空港、愛称は米子鬼太郎空港になっています。漫画家水木しげるの出身だからだそうですが、半世紀前の漫画を取り上げるとは…。他に何かないのかと思えば、同県には鳥取砂丘コナン空港があり、日本が誇る漫画・アニメカルチャーで県のPRを行っているようだった。
とりあえず、手配しておいたレンタカーを借りて山陰の旅がスタートです。「腹が減っては登山はできぬ」という格言があるようにまずは腹ごしらえに向かいます。
登山前に境港にて、日本海の幸を喰らう
米子空港から10分ほどの境港(さかいみなと)です。
境港は鳥取県のほぼ西端にある港町で、上記の水木しげるが学生時代を過ごした地です。水木しげるロードを観光の目玉にしているようです。目玉のオヤジだけに。
妖怪は鳥取、神は出雲がある島根と棲み分けができている模様。
というわけで、市場に潜入してみようと思います。
とても健康的な色をしている蟹を筆頭にし、魅力的な海産物がズラリと並んでいました。3月と言えば、海産物の身がしまった旬の時期です。
飛行機で来たために調理器具類は一切所持しておらず、ホームセンターで網とコンロを買おうか検討したほど、ここで売られている海産物は魅力だった。
次回はそういう旅にしよう。
市場の近くに朝食営業(7:00~15:00)をしている「かいがん」というお店に入店します。
食べログ:https://tabelog.com/tottori/A3103/A310301/31002001/
テナントビルに入っている喫茶店のような内装ですが、境港一帯では人気の店です。9時15分に入店して、お客さんはちらほらでしたが。
船盛定食(1700円)
Saku氏が注文したのはこちら。1000円台というプライスながら充実の内容で、刺身は旬の6種と贅沢な仕上がり。
カニセット(1600円)
私が注文したのはこちら。蟹メニューはピンからキリだが、こちらは安価かつボリューム感のある内容です。
ミニサイズではあるがカニ丼、カニ汁、カニ味噌、茶わん蒸しがついて1600円なら十分すぎる内容です。
たっぷりと入ったカニ汁が嬉しい。
濃厚なカニのエキスが味噌汁に溶け込み、アクセントに入っているねぎが口を爽やかにしてくれます。
ミニ丼でありながら、カニがもりっと盛られており食べごたえ満点です。
鳥取は素晴らしい海産物に恵まれていながら、なぜ人口減少が起きているのだろうか…。
全体的に小太り気味のファミリーが挑戦していましたが、45分制限の紅ズワイガニ食べ放題というメニューもあります。男性3000円、女性2500円。
ズワイガニの身ほぐしが大変そうですが、非常に魅力的です。
目の玉丼など挑戦的なメニューもあり、何度訪れても良さそうな店でした。サイドメニューも豊富です。
神話の地、奥出雲の三瓶山へ
開始1時間で鳥取の素晴らしさを堪能した我々は、重くなった体を奮い立たせ、いざ島根へと向かいます。
境港から島根県はすぐ隣だったりする。
中海という砂州で閉じられた湖沿いの道は快適なドライブコースでした。曇っていなければ…。
山陰自動車道→松江自動車道というこの場に来るまで名の知らなかった高速をひた走ります。途中の宍道湖サービスエリアで休憩。
宍道湖と言えばシジミが有名らしいですが、この旅においては機会がなかった。「しまねっこ」というゆるキャラが意外と可愛い。
レンタカーということで、運転に対する貢献度はフィフティーフィフティーであるが、別に運転が好きではない自分は助手席という定位置へ。背もたれの角度が開き過ぎじゃないかなと指摘を受ける。
北海道や沖縄であれば、田舎の風景というのは違って見えるが、どこにでもある見慣れた田舎の風景が続き、いささか退屈なのは仕方のないこと。
三瓶山は青看板に観光地として表示される程であり、島根県No1の噂も伊達ではない。
ナビが示す場所まで近づいていくと、一際目立つ雪山が現れました。
今回は利用しませんでしたが、三瓶山の登山後はこちらの「さんべ荘」に行くのが一般的らしいです。バッチも置いているとか。
登山口に近づくと樹林が切り開かれ、見通しの良い牧草地帯に変わりました。
レストハウスさだめに駐車しました。
シーズンオフということもあり、レストハウスは営業しておらず、車も数台しか停まっていませんでした。この天気だし、冬の山陰だし…。
三瓶山は山体をぐるりと道路があり、各方面にレジャースポットや温泉、宿が点在しています。島根県民にとっての高原レジャースポットなのは間違いないようです。
西の原から望む三瓶山の秀麗な山容
独立峰であるため、見た目は秀逸です。
男と女が並んでいるという点で、北海道にある阿寒岳と似ている気がします。
12時22分 西の原駐車場
午後に登山スタートというのは中々無謀なんじゃないだろうか。境港で蟹を食べなければ、1時間以上は早く来れたという反省の色はなし。
西の原をスタート。
最高峰である男三瓶山のメイン登山口です。ヤマトタケル(?)のイラストが描いてありましたが、何か伝承があるのですかね。
登山口が開けっ広げなので、逆に迷いました。牧草地帯を山に向かって突っ切っきるのが正解です。
牧草地帯と抜けると樹林帯の道になります。
ここで下山してきた中年夫婦とすれ違いました。登山中に自分たち以外に4~5組ほどしか見なかったかな…。
モノクロの奥出雲の世界
12時47分 登山道入り口
案内板が設置されている場所から登山がスタートします。
男三瓶山までは90分とお手軽なコースタイムです。
5分歩いたら男三瓶山の山頂まで60分の看板がありました。
空間のねじれを歩いたようです。これが神々が集う出雲を有する島根県のマナの力か。
序盤は樹林帯で、なぜ山陰まで来て、奥多摩と変わらないような道を歩かなければならないのか…。
樹林帯フリーの開放的な道へ出るに、そう時間は掛からなかった。
麓には西の原の草原地帯が広がり、奥は世界遺産に指定されている石見銀山がある地域です。この登山が終わった後に石見銀山観光という野心的プランがあったが、登山が押して叶わなかった。
雪が徐々に出てきました。
独立峰であるため眺めは一級品。この曇天が非常に惜しい。
Saku氏の背景にある山は子三瓶山。連峰が一家になっているのは、栃木県の日光に通じるものがあります(男体山、女峰山、太郎山など)
飛行機から見た高度3000m以上にある雲が、数十分でなくなってくれないかな(無理)
男二人で山陰の旅に相応しい寒風の空。
西日本で流通する奥大山の天然水で喉を潤します。南アルプスの天然水と奥大山の天然水の分水嶺はどこにあるのか?これってトリビアになりませんか?
標高1000mを突破。
山頂までは後100m弱となります。
1000mを越えると幅広な雪原エリアが待っていました。
登山道は雪に覆われ、どこを歩いても自由。新雪が積もった直後に訪れれば、極上のスノーシューエリアになるかと思われます。
三瓶山を構成する山々の中央部には室の内池があります。噴火口に雨水がたまって出来た湖で、凍結しているように見えます。
冬はどうかはわかりませんが、通行可能な登山道があるようです。
伯耆大山は人が多く、コースも1本であることを考えると、歩く充実度で言うと三瓶山の方が勝っているように思えます。
日本海側の山とは言え西より、そこまで積雪はないと思っていましたが、所々1m積もっている箇所がありました。
日本海を望む、男三瓶山の山頂
14時13分 男三瓶山山頂
山頂は広く平らで、高さ3mはあろうかという山頂看板が立っていました。島根県の三瓶山に対する本気度が伺えます。
しかし、あまりに大解放な山頂だけにこの天気が憎い。男二人で山陰を旅しているという心境が具現化したような空です。
5本の柱は三瓶山を表しているのだとしたら、一本足りない。日影山が存在していないということだろうか。
これほどの標識は塔ノ岳や栗駒山に匹敵する大きさです。
コンビニで見つけた「瀬戸内レモン」を飲みました。栃木県の「レモン牛乳」をパクったのだろうか、栃木県から遠く離れたとこで、こんな商品を販売しおって。
味はレモン牛乳より、少し酸味が強めだった。そして、こちらは果汁が入っている…。
山頂を観察すると隅っこに三瓶山頂神社がありました。
三瓶山は国引き神話にも登場する山で、歴史・文化的に見ても重要な山なのです。
男三瓶山からの展望解説が書かれています。
島根半島にある日御碕(ひのみさき)が確認でき、出雲大社を眺めることが出来るようです。天気のいい日には隠岐の島まで見えるらしい。
日本海の海岸線は見えるものの圧倒的な白さによって境がわからない状況。
ピッケル(ファッションアイテム)で、海外線がここだとなぞります。360度視界のゼロ、10m先も見えないようなガスに覆われるよりはだいぶマシです。
イラっと来る遠近感で集合写真をキメます。
男二人という現状を打開すべく、せめて山の名前だけはと女三瓶山へと急ぎます。
男三瓶山から少し下った場所に三瓶山頂小屋なる無人小屋がありました。
築年数はそれほど経っていないようで、新築が放つ爽やかな木の香りがしました。ここに泊まり、日本海に沈む夕日を見るのも良いかもしれません。
女三瓶山への登山道は細い尾根道に加え、ガレ場、トレースなしという三重苦になっていたので、あっさり引き返し下山を決断です。
姫逃池コースで下山
「姫逃池コース」より下山します。
姫が逃げるというのはファンタジーの予感しかしない。
後はちゃっちゃか降りようと思ったが、北側の斜面だったので雪が深かった…。それでも、何組かが先行して降りて行き、トレースがあったので安心でした。
使う必要はないけれどピッケルを取り出し、翌日の大山へのトレーニングを兼ねます。
中国自然遊歩道と合流し、駐車した西ノ原へと戻ります。
自然観察モデルコースが整備されており、登山をしないでもハイキングレベルで楽しめるようになっていました。小学校の遠足などで利用されるのでしょう。
15時57分 姫逃池コース
三瓶山の北側に位置する登山口で、西側の登山口から入ったので山体の4分の1週分を歩くことになります。
姫逃池がありました。
三瓶山から出る湧き水でできた池で、カキツバタの浮島と長者の娘「お雪」と若者の悲しい伝説の池です。姫逃池の畔にある大岩は、若者が山賊に切りつけた刃先によりきれいに二つに割れた姫逃石と言わています。
登山道から登山道への移動はアスファルト道で1時間ほど掛かり、山陰くんだりまできてなぜ車道を歩かなければならないのか。ムシャクシャしてきたところに「脱柵している牛~」の看板に癒されました。
意味は何となく通じるが「脱柵(だっさく)」という言葉を検索すると
軍隊や自衛隊において、所属する兵士や自衛官が逃亡すること。
とありました。島根の牛は訓練されたソルジャーということなのか。
17時に三瓶山の周回が完了しました。ちょうど山頂がガスに覆われ、一応運が良かったということになるのだろうか…?
そして、明日予定されている伯耆大山の登山の天気は大丈夫なのだろうか…。
伯耆大山へ向けて、国道9号線を移動
翌日の大山登山に備えて、再び鳥取へと向け、移動を開始。
ローカル牛乳が好きな自分としては島根県で流通する木次牛乳を購入。奥出雲で飼育された牛から絞った牛乳です。味が濃くて美味しいです。
写真はコーヒー牛乳だが、プレーンも買っています。
島根県の太田市から日本海沿い国道9号線に乗り、鳥取方面へと進みます。
途中の「多岐いちじく温泉」にて入湯し、三瓶山の汗を流しました。道の駅、キャンプ場、レストラン、温泉と一点集中展開している出雲市の企業のようです。
夕飯はオーシャンビューが望めそうなレストランで食べました。
ご当地感のありそう、かつ登山後の食欲を満たしてくれる条件の店は見つからなかった…。そして、我慢できなかった。
ご覧の通り、ファミリー連れで来るようなレストランに男二人が乗り込みます。
一品くらいあるんじゃないかと期待したが、島根らしさが何一つない食事でした。
朝食にお金をかけたため、食べ放題1050円というプライスで、エンゲル係数と食欲の均衡を取ったということで両成敗です。
誰に対する言い訳なのだろう。
そして、本日の宿泊場所は米子市の手前にある道の駅「あらえっさ」でした。
天気によって移動が左右される登山は、固定の宿を抑えられないジレンマがあります。というわけで、冬の山陰の車中泊でこの日は終わりました。
翌日の伯耆大山の記事になります。
三瓶山の登山を終えて
蕎麦が美味しいと評判のそば専門店を訪れ、メニューの片隅にあるカレーライスを頼むのはアレルギーか蕎麦を詰まらせて親を亡くした恨みを持つ人かどちらかです。
店の人間が近所に住む常連さんのために蕎麦だけでは飽きるからとメニューに加えたカレーであったり、かつ丼であったり、ボンゴレビアンコのような山に目を向け、登っていきたいと思っています。
看板メニューであるアルプスや八ヶ岳が片道3時間の距離にある関東からすると山陰まで登山を来るのは、大山を百名山ハントしに来る登山者だけです。大山を登った人はいますが、三瓶山を登った人なんて周りにいません。
三瓶山は曇天でありながら、また歩きたいという執着を高めてくれました。事実、後日登った大山より、コースの充実度や快適度の指数は上回っています。三瓶山を登るために再び山陰に来るという動機付けは十分です。
コメント
三瓶山は奥出雲ではないです。石見です。
ぱにさん
コメントありがとうございます。
三瓶山は奥出雲ではないのですねー、途中の看板に記載がされていたので、勘違いしていました。
土地勘なく申し訳ございません。
ユーモアたっぷりの面白い登山旅行記でした^o^
来月島根に帰省するので、子供の時に
遠足先だった三瓶山に登ろうと思い、
検索してこちらのブログに着きました。
大山と比較した感想など、大変参考になります。
冬の三瓶山は良いだろうな!と十分想像出来ました。
参考にさせてもらいます。
ありがとうございました^ ^
shantihさん
コメントありがとうございます。
GW帰省でしょうか。三瓶山は新緑が芽吹き、草原が気持ちよさそうなシーズンですね。曇天かつ残雪期のシーズンだったので、それ以外の季節も登りたいです。
是非、三瓶山の登山を楽しんできてください。