登山八ヶ岳・美ヶ原・霧ヶ峰

【八ヶ岳】冬の高見石・天狗岳 〜 渋の湯から周回、白い森と岩稜帯の旅

冬の天狗岳(八ヶ岳)

2016年12月24日〜25日

冬の八ヶ岳の高見石たかみいし天狗岳てんぐだけに行ってきました。標高は2646mです。

雪山初心者というほどでもなく、かといって上級者とも言えない、ちょうどよい山が天狗岳です。樹林帯と稜線の岩場のバランスが絶妙で、程よい難易度です。

今回は、路線バスで渋の湯へ向かい、高見石小屋に宿泊して、周回コースを歩きました。

冬の天狗岳

2016年は、自分の登山史上、全国各地を巡った一年でした。締めくくりの山として、小屋泊で12月の八ヶ岳の森をゆっくり散策し、標高の高い天狗岳に登る計画を立てました。

氷点下10度を下回る極寒でしたが、温もりのある山小屋を巡りながら、クリスマスの八ヶ岳を旅してきました。

高見石~天狗岳(1日目)

特急あずさで出発、茅野駅から路線バスで渋の湯へ

特急スーパーあずさ松本行き
あずさから見える甲斐駒ヶ岳

新宿駅か特急あずさ松本行きに乗ります。

普段、自他ともに認めるプロ助手席ハイカーなので、あまり山梨・長野方面の特急に乗る機会がないので新鮮です。

茅野駅

八ヶ岳への路線バスが出ている長野県の茅野駅で下車します。

茅野駅の諏訪バスターミナル

チケットセンターでバスの乗車券を購入し、バス停に向かいます。さすが、冬でも人気の八ヶ岳です。登山者が列を作っていました。

奥蓼科温泉渋ノ湯行きの路線バス
茅野駅から渋の湯

天狗岳の登山口がある「渋の湯」行きのバスに乗りました。

渋の湯までの片道料金は1150円でした(2016年当時)。2025年では1800円になっているので、物価の流れは残酷です。

渋の湯から登山開始、極寒の賽の河原

天下の霊場 渋御殿湯
渋の湯スタート

約50分の乗車で、渋の湯バス停に到着しました。その名の通りに、温泉旅館があります。下山したら絶対に入浴して帰りたい。

渋の湯登山口

旅館の廃墟を横に歩いていくと、登山口があり、入山カードポストが設置されていました。

渋の湯登山口

11:49に入山です。今日の目的地は、高見石小屋です。

雪が地面にパラパラ落ちてるくらいだったので、アイゼンは着用せずにスタートします。

高見石への登山道

序盤から鬱蒼とした北八ヶ岳らしい苔の森が、非日常感を与えてくれます。

霧氷

木の枝に霧氷ができていたので、昨晩はかなり冷え込んだようです。

高見石への登山道

分岐がありました。今回歩く周回コースの起点です。

高見石への登山道

雪が積もり始めてきたので、アイゼンを装着します。高見石小屋までは、急斜面はないので、軽アイゼンで十分です。

高見石への登山道

しばらく、歩きやすい道が続きます。そして、光が差し込んで良い感じ。

高見石への登山道

前方の視界が白くなってきて、樹林帯を抜け、「賽の河原」が見えてきました。

高見石への登山道

V字上の谷を登っていきます。

意外と人通りが多いです。ザックが大きいので、同じ高見石小屋の宿泊客と思われる。

高見石への登山道
高見石への登山道

八ヶ岳の山頂間近になるとよくある岩石帯に出ました。

「寒い寒い寒い!!」

標高2000mに吹き荒れる冷たい風がまるで凶器です。賽の河原、つまり「あの世の入口」の名前に相応しい過酷な環境です。

高見石への登山道

風による顔を刺すような痛みに耐えながら、岩の表面に描かれた赤いマークを頼りに登っていきます。

凍りついた看板

看板に厚さ3センチの氷の層が付着してます。

高見石へ続く岩場

アイゼンを削りながら、岩を登っていきます。12月は積雪がまだ少ないので、雪深くなる1月~2月はもっと歩きやすいのかもしれません。

高見石の樹林帯

再び樹林帯に入りました。

風の脅威から観を守れるので、樹林帯最高と言わざるを得ない。

高見石の樹林帯

賽の河原を登り切ると、平坦になるので楽ちんです。

高見石の樹林帯

標高が上がると、木の幹まで真っ白になっており、クリスマスツリーのようです。

まるで、「アナと雪の女王」の世界みたいと言いたいところですが、映画は見たことがなくて…。ミュージカルを見ると、寝ちゃう病気なんです…。

高見石小屋にチェックイン、あげパンを食べて白駒池を散策する

高見石小屋が見えてきた

樹林帯を抜けて、高見石小屋が見えてきました。

高見石小屋の正面

14:02に高見石小屋に到着しました。登山口の渋の湯から2時間10分かかりました。

高見石小屋の広場

小屋の正面はテント場なので、平らな空間があります。

暖かい小屋から出て、テント場で大変そうにお湯作ってる人見るの好きです。文字通りの高みの見物。

高見石へ

小屋のすぐ隣の高見石に登ります。アイゼンは脱いでしまったので慎重に…。ちなみに、高見石の標高は2225mです。

高見石の展望
高見石の展望

明日歩く中山方面の展望です。

周囲に雲が出現しはじめたせいで、思ったよりも展望は良くなかったです。

高見石小屋の揚げパン
高見石小屋の揚げパン

高見石から降りて、高見石小屋名物「あげパン」を注文しました。鍋割山の鍋焼きうどんのように名物小屋フードの一つです。

氷点下で食べるホクホクのあげパンは美味しかったです。

高見石から白駒池へ降りる

夕食まで時間があるので、片道コースタイム20分の白駒池に行ってみます。

白駒池

樹林帯を下っていくと、白駒池が見えてきました。

白駒池山荘
冬の白駒池

改修中の白駒荘を通り過ぎると、白駒池につながる桟橋があります。

凍りついた白駒池
凍りついた白駒池

標高2100m以上にある湖としては、日本最大の天然湖です。国道沿いにありアクセスは容易ですが、冬季は国道が通行止めとなるため、訪れることができるのは登山者のみ。

だからこそ、人影ひとつない白駒池は貴重な瞬間でした。

白駒池から高見石に戻る

小屋から下りだったので、帰りは登り。この時間の登りはしんどい。

高見石小屋の雑魚寝

小屋に戻って、しばらく大部屋の布団でゴロゴロします。中央にはこたつが設置されています。

標高2200mで見るクリスマスの夕日と星空

高見石の夕日
高見石の夕日

日没の時間になったので、再び高見石に登りました。が、周囲に雲が増えていて、なんとも終末感ある空の色をしていました。

高見石から見える白駒池

先ほどまでいた白駒池も見えました。

高見石小屋ランプの宿
高見石小屋の夜

日が暮れると、大部屋にランプの明かりが灯り、ストーブが置かれました。自分の布団の前にこたつが移動してきたので、自宅のようにくつろげました。

高見石小屋の夕食

夕食の時間になり、1階へ移動します。

高見石小屋の夕食

献立は湯豆腐付きのしょうが焼き定食でした。

山の中だと何故かお腹が膨れやすいので、ご飯は一杯でフィニッシュ。下山すると3杯以上は食べられるのに…。

みかん

二階に戻ったら、おじさんにオレンジもらいました。果実が少し凍ってたので、ストーブで溶かしながら食べました。

高見石小屋の星空

外に出て見ます。クリスマスの八ヶ岳の星空はとても綺麗でした。

高見石小屋の星空

マイナス10度以下の世界で、写真を数枚撮影して、小屋の中に逃げ込みました。星空写真はそこらへんにいる有象無象のフォトグラファーがSNSに載せているものを流し見するくらいで十分です。

そんなわけで、クリスマスイブの八ヶ岳の夜は更けていきました。

高見石~天狗岳(2日目)

高見石小屋から天狗岳、白い樹林帯を歩く

高見石小屋の朝食

朝食はスクランブルエッグ、ウィンナとハムの安定感あるラインナップでした。

高見石小屋の朝食

そして、ロールパンです。

あげパンと朝食用で、ロールパンを大量にストックしているのでしょう。

高見石小屋を出発する
高見石小屋を出発する

二日目の天気は残念なことに曇りです。

高見石での御来光を期待していました。まぁ、起きあがる気力はなかったと思います。

早朝の寒さに震えながらアイゼンを装着します。

中山・天狗岳方面へ
中山・天狗岳方面へ

昨日の道を戻るように、「中山・天狗岳」方面に向けて歩き出します。

中山・天狗岳方面へ

風の音で強風なのはわかりますが、このピュアホワイトな樹林帯が守ってくれます。

若い木にクリスマスの飾りをつけてみたところ、とてもいい感じになりました。霧氷のつき方によって、おもちゃのような可愛らしい雰囲気になっています。

中山展望台

中山展望台」に出ると樹林がなくなり、厳しい寒さが襲いかかります。

中山展望台

八ヶ岳上空は曇り空ですが、西の空には青空があります。晴れてくれるかな…。八ヶ岳の端にある蓼科山だけ雲に覆われています。

中山山頂

中山山頂は樹林帯の中で、地味な看板がありました。中山山頂は樹林帯の中で、地味な看板がありました。一応、標高2494mの高峰です。

見晴らし台
冬の天狗岳

見晴らし台」まで来ると、いよいよ天狗岳が見えてきました。

冬の天狗岳へ

風速15m前後はあり、時折煽られながら、進んでいきます。

樹林帯から岩稜帯へ、冬でも登山者の往来がある天狗岳

冬の天狗岳へ

黒百合平との分岐まで来たので、不要な荷物をデポして山頂に向かいます。荷が軽くなるけど、ザックのない背中が寒い…。

冬の天狗岳へ

山頂に近づくにつれて、樹林帯から岩稜帯に変わり、稜線が細くなってきました。ピッケルが必要な斜面はないですが、慎重に進んでいきます。

南八ヶ岳方面

今まで見えていなかった、硫黄岳、横岳、赤岳がある南八ヶ岳の景色が見えてきました。

東天狗岳
東天狗岳

東天狗岳に到着しました。

高見石小屋からは2時間10分でした。高低差がなかったので、疲労感はあまりないですね。

冬の天狗岳

さすがに冬でも人気の天狗岳、すごい登山者の数です。

フィナーレ間近の最高のタイミングで晴れ間が広がってきました。それでは、西天狗岳に向けて最後の行進です。

東天狗岳から西天狗岳へ

見た目以上に山頂をつなぐ稜線は太く、視界がはっきりしていれば危なげなく登れます。ただ、遭難・死亡事故は結構発生しているようです。

西天狗岳

西天狗岳の山頂に到着しました。東天狗岳からは15分ほどでした。

登頂と同時に上空に青空が広がり、これは天のクリスマスプレゼントと捉えておきましょう。

蓼科山と北アルプス

蓼科山に多い被っていてた雲が取れています。その奥には北アルプスの山々です。

蓼科山もクリスマスに登って、山頂で震えながらクリスマスパーティしたなぁ…。

北アルプス

12月は日本海側の山は荒れがちなので、全域で晴れているのは珍しい光景かも。

御嶽山

位置的に天狗岳から富士山は見えませんが、どっしりした御嶽山おんたけさんが見えます。

天狗岳から見える浅間山

こちらは浅間山です。山頂にもう少し雪が欲しいところですね。

天狗岳
冬の天狗岳

天狗岳の山頂は遮るものがなく、みるみると体温が奪われていくので、写真を撮ったら撤退です。来た道を引き返し、東天狗岳に戻ります。

冬の天狗岳
樹氷とアルプス

霧氷の白い枝が美しく、背景の北アルプスの稜線が際立ってます。

天狗岳

12月の冬山って、木の輪郭がしっかりした樹氷が見れるが良いです。天狗岳の樹林帯と岩山のバランス具合も絶妙です。

冬の天狗岳

黒百合平へは天狗の奥庭コースを通るルートもありますが、以前歩いた際に歩きにくいと感じたため、今回は避けました。

再び樹林帯に入り、強風から避難できました。分岐点でデポしたザックを回収し、黒百合平へと降ります。

黒百合ヒュッテのテント場

黒百合平のテント場は大盛況でした。

黒百合ヒュッテでカップケーキとカレーライス

黒百合ヒュッテ
チョコレートリリー

黒百合ヒュッテのカフェ「チョコレートリリー」で軽食にすることにしました。

手ぬぐいやワインなどのオリジナルグッツが販売していて、黒百合ヒュッテは登山界隈でも一、二を争う名物小屋じゃないですかね。

カップケーキとコケモモティー

カップケーキとコケモモティーのセットは人気のメニューです。木製のプレートにクロユリの焼印が押してあります。

カレーライス

こちらのカレーライスも美味しかったです。備えられている福神漬とラッキョウが嬉しい。

黒百合

黒百合平はその名通り、クロユリが咲きます。6月下旬に来た時、数株咲いているのを見ました。

黒百合ヒュッテから下山する
黒百合ヒュッテから下山する

お腹を見たし、渋の湯に下山します。

登山口が近い唐沢鉱泉にも路線バスが出ていれば楽なのにな…。宿泊者は利用できる。

渋の湯に下山完了

妙に長く感じた下山でした。13:26、昨日ぶりに渋の湯に戻ってきました。

渋の湯

路線バスが到着するまで、温泉に入り、体を温めました。浴槽は狭かったですが、泉質は極上でした。

渋の湯バス料金
渋の湯バス停

14:55の路線バスで、茅野駅に戻りました。

茅野駅

茅野駅のホームには、クリスマスを山で過ごした登山者がたくさんいました。

あずさ

特急あずさに乗って帰ります。大きめのザックを背負い、クリスマスで賑わう都心を乗り換えながら帰宅するのは、厳冬期標高2000mの稜線を歩くよりも苦痛だったのは言うまでもありません。

冬の高見石・天狗岳の登山を終えて

冬の高見石小屋

高見石~天狗岳の周回コースは、冬になると雪に覆われ、まるで別世界のような景色に変わります。それでも、多彩な景観の変化を楽しめる名コースでした。

今回は、12月の積雪量が程よく、凍結箇所もなかったため、安全に登ることができました。(状況によって異なりますが)

冬の天狗岳の集合写真

樹林帯と岩稜帯が織りなす変化に富んだ風景、山小屋の名物フード、下山後に直行できる温泉、さらに冬でも利用可能な路線バスのアクセス――。まるで80年代のスピルバーグ映画のような、満足感あふれる山行でした。

今度は夏に同じコースを歩いてみたいと思っています。

地図はこちら

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