2020年10月25日
長野県と新潟県にまたがる雨飾山に行ってきました。標高は1963mです。
関東からはアルプスに行くより遠い日本海側に位置し、長野と新潟のほぼ端っこです。麓から見上げる岩峰の荒々しさと笹原が広がる爽快な稜線の2面性が魅力です。名前は雨を飾るですが、人気を集めるのが秋で、紅葉の名峰として知られています。
2013年の9月に登っていて、2度目となる雨飾山。紅葉で知られた山なので、最盛期に訪れたいのと、前回山頂でガスられたこともあって、再訪したい山でした。
前回は台風直後で夏と秋の狭間でしたが、今回は前日に冠雪があり秋と冬が混在する風景を見ることができました。雪を飾る雨飾山の旅をしてきました。
雨飾山について
地図
長野県側の雨飾高原キャンプ場から往復するコースを利用しました。登山者の大半はこのコースで歩きます。登山者の渋滞が発生していたので、区間によって時間が掛かっています。
コースタイム
- 8:01雨飾高原キャンプ場
- 8:52ブナ平
- 9:27荒菅沢
- 10:50笹平
- 11:35雨飾山
- 13:19荒菅沢
- 14:15雨飾高原キャンプ場
行動時間は6時間14分でした。
雨飾山 紅葉登山
雨の降る温泉街で山を決め、雨飾山の小谷村へ
本日は長野県内の温泉街に前泊する珍しい出来事からスタートする。
同行するSaku兄はGoToキャンペーンと宿料金が全体的に下がっている点に味をしめ、安い温泉宿に宿泊するブームがあった。「宿代に金を払うのは無駄」と、車中泊信者だったが、コロナは人の意識を大きく変えるようだ。
ちなみに高速バスで移動し、長野県の上田駅前でレンタカーを借りています。
そんなわけで、強めの雨が降る温泉街を登山着のおっさん二人が闊歩する滑稽な絵がそこにあった。
適当な居酒屋に入店し、焼き鳥、天ぷら、川魚など定番の小料理に舌鼓を打ちながら、明日どこの山に登るかの議論をしていた。
そう、長野まで来ているのにどこの山に登るのか決まっていなかったのだ。
日本酒を3〜4本開けて、ちゃっかり締めのラーメン屋まで足を運ぶ始末。目的のない旅というのは、聞こえが良いが、いい年齢の男性二人がやることではないなとは思う。
たぶん、Gotoクーポンなどの値引きを考慮すると実費1000円程度の宿でした。温泉ブリーフィングを行い、明日は標高の高いところでは雪が積もる予報を考慮し、以下の二択となった。
- 新雪が積もった燕岳を登る
- 紅葉が期待できそうな雨飾山を登る
ここは長野県の上田市、地理に詳しい人であれば、どちらも同程度の距離であることはお分かりだろう。しかし、前泊するにしてはちょっと遠いよなと。
結局、眠りにつくまで行き先が定まらないまま、優柔不断おじさん達の夜は更けていくのでした。
朝起きると「やっぱ10月だから紅葉だよな。」という結論になり、雨飾山へと舵を取ることになりました。都内では半袖だったけど、長野はやはり冷える。そして、予報通り標高の高い山では、雪が降っているようでした。
雨飾山の登山口がある小谷村は、新潟県と接しているので、関東から行くと5時間半以上かかり、まぁ遠い。長野県内からも2時間以上かかりました。前泊の意味をあまりなしてない気がする。
登山口まで続く山道を走っていると、紅葉と冠雪の風景が広がっていました。標高1000m以上で雪が積もっています。
名も知らない山ですが、登山開始前に感動のピーク達していました。
巨大な紅葉のブナ林を歩く、雨飾高原から登山開始
雨飾高原キャンプ場が登山口になっています。
運良く1台分のスペースが空いたので駐車できましたが、結構な下の方まで路駐ができていました。紅葉が強みの雨飾山なので、10月中旬〜下旬が最も混雑するようです。
軽量化に取り組むSaku兄、トレラン用のザックを導入したようだ。
しかし、本日の山頂付近は真冬の気象条件が想定され、防寒と軽アイゼンが必要ということで、トレランザックでは容量不足。その結果、ウェストポーチ的なサブバックを背負い、珍妙な後姿になっていた。
トレランザックがこんなパンパンになっている人見たことない。
というわけで、8時1分に雨飾山の登山開始。
入り口の看板には山頂まで、210分となっています。しかし、歩いて5分くらいで、Saku兄がストックを車に忘れてくるタイムロスが発生。この日の登山では、大きなチョンボをやらかすことになる。
入口から既に紅葉の濃度は高く、鮮やかに変色した木々が出迎えてくれます。奥には白く雪化粧した山肌が見えいます。序盤は平坦な登山道を歩きます。
山の上に雪が降ったということは、それより下は雨だったということで、登山道は泥でぐちゃぐちゃな状態で、このコンディションはとても厄介です。
あくまで、個人の体感ではありますが、雨飾山を含む、頚城山塊(妙高山や戸隠山などある山地のこと)の麓に生えてる木って、他の山の木と比べて一回り大きい気がする。栄養分が凄いのかな。
その分、紅葉も派手で、群を抜いて素晴らしいと思うのです。
木道の敷かれた序盤から、そこそこの斜面の登りが開始。この辺からはブナの巨木の間を進んでいきます。
雨飾山は山頂までの距離を11分割した指示板が設置されているので、現在地がわかりやすいです。なぜ、区切り良く10分割にしなかったのか
そういえば、小谷村は「おたりむら」と読むんですが、この読み方をするのはこの村が唯一。
”おたり”の語源は、当時、麻の産地であったため「麻垂」から生じたものではないかといわれていますがまだはっきりとはわかっていません。
小谷村について
初見じゃまず読むことは不可能。
ブナ平を過ぎると冬の景色、激しい泥の登山道
樹林帯の中にぽっかり空いたスペース、ブナ平に到着しました。展望はないけど、休憩ポイントになっているようです。
昨日降った雪がでてきました。
ブナ平は標高1385mなので、この高さが雨と雪の境目だったようです。
ブナ平から先は落ち葉が増え、葉っぱの鮮度はなく、枯れかけの状態でした。斜度は落ち着き、のんびり歩ける区間です。
遠くの山は真っ白、紅葉のもみじに雪が被り、とても趣深い。
秋と冬が交差する風景にうっとり。しかし、泥まみれの登山道にずっぽり。いよいよ、雪の積もっている標高まで登ってきました。
ここからは冬に突入、枝に雪が積もっています。
しかし、気温が高くなってきているので、雪が解け、雨のように水滴が降り注ぎます。これがまた冷たくて、体に触ってくると、反射で痛みのような冷たさが走ります。
そして、ようやく雨飾山の山頂部分を見ることができる場所までやってきました。完全に冬の風景です。
ここから一度下って、荒菅沢に降りることになります。
朝一番ならサクサクと新雪の上を歩けたのかもしれません。しかし、登山者がたくさん通った後では、地面が露出して、にゅるにゅると泥の上を滑りながら下りました。
何度も転びそうになりながら、沢が轟々と流れる場所まで下りてきました。帰りの際、この場所でちょっとした事件が発生することになります。
先鋭な布団菱が見える荒菅沢、冬と秋が混在する雪紅葉
荒菅沢に到着です。
雨飾山において、シンボリックな場所になっています。
谷筋の木々が赤やオレンジに映える紅葉の名所です。
結構、葉っぱが枯れ落ちてしまっている感じで、「紅葉のピークは1週間前だったかな?」という印象ではありました。ただ、雪とのコントラストは抜群にエモーショナルな風景。
布団菱と名がつけられた岩峰。矢じりとして使ったら殺傷能力ありそうなくらいには鋭い。「あそこに布団干したら、めっちゃ乾きそうだな」と、昔の人は思ったんだろうか。雨の山なのにね。
ちなみに現地では「三段紅葉すげえ」と騒いでいたが、三段紅葉とは…
- 山頂の冠雪の白
- 山腹の紅葉の赤・オレンジ
- 山麓の木々の緑
とのことなので、ここには「3」がないため、三段紅葉ではない。言葉があるか不明だが、二段紅葉が正しい。まぁ、空の青を含めて、三段紅葉でもいいよね?
荒菅沢からは、山頂部の笹平へと一気に登るので、ハシゴが登場する急斜面となります。
ここがまぁ泥だらけの最悪な状態でした。上半身も使うので、手が泥だらけに…。
雪が降った日は、遠くから眺めるのが一番じゃないですかね…。
雨飾山から対岸にある、たぶん金山や天狗原山であろう山が見えます。雪と紅葉の境界が、はっきりわかります。
雨飾山よりも標高が高く、高山植物が咲くようなので、隠れた名山の予感する。
森林限界を越えると岩場が出現します。慎重になる箇所ですが、道幅が狭いので登山者がスタックしていました。
そこまで危険ではないけれど、なかなかの高度感のある尾根道で、人によっては苦手かもしれないですね。谷川岳の西黒尾根に似ている気がする。
笹平の直前は渋滞していました。紅葉のピークに加えて、雪が降ったので、全体のペースが鈍化している模様。
日本海の強風が吹き抜ける、霧氷が出来た笹平
笹平に到着。
荒菅沢からは1時間ほど掛かりました。
ここまで来ると雨飾山の山頂が見えます。看板的に言うと9/11の地点。笹平の緩やかなアップダウンを進み、ドーム状の山頂を登るとゴールとなるわけです。
今日は、雨飾山ではなく雪飾山ですね。
ここからは新潟県との県境になり、日本海が見えました。麓は糸魚川市の街。そして、特に雨が降っているわけではないのに、ちょっとだけ虹が見えました。
そして、日本海側か冷たい強風が容赦なく吹き付けます。
笹平には雪が積もり、枝には霧氷が出来ていて、完璧に冬の様相。
遠目でわかるのですが、山頂直下の行列ができていました。これは、一筋縄で山頂には立てなさそうです。
笹平にある荒菅沢を見下ろせるポイント。白黒の風景の中に、吸い込まれるような赤一色の紅葉。
モノクロ映画に、1点だけカラーを取り入れるワンシーンのよう。「天国と地獄」の煙突の赤い煙とか「シンドラーのリスト」の赤いコートの少女みたいな。
絵を引いてみると、ポーズがとりわけダサい緑のおじさんが映ってしまうけど。
案の定、行列にハマってしまった。
一人分の道幅しかないため、登りと下りで滞留。しかも、アイゼンを持って来なかった人が、下るのに難儀してモタモタしている状況だった。
寒風にさらされる環境故か、譲り合い精神も欠如し、精神状態のよろしくない空気が生まれていました。
写真を撮っている人に「撮ってないでさっさと登ってくれよ!!」ど怒号が飛び交い、アイゼンを使用していない人が通り過ぎると、「チッ」と聞こえる音量で舌打ちする人もいた。
殺伐とした登りから開放され、ようやく山頂にやってきた。
極寒の寒風吹き荒れる雨飾山の山頂、笹平の女神の横顔
雨飾山の山頂に到着です。
すっかり雲が多めになってしまったが、前回のガスガス展望よりは断然良い。
山頂に立って真っ先に感じるのが、日本海との近さ。直線距離だと20kmくらいしか離れていないのではないでしょうか。日本海方面からぐんぐん雲が襲ってきて、冬型の気圧配置をこの目で感じる。
糸魚川市の街が良く見える。海岸で翡翠を拾うことができるんだっけか?
立山方面に行くとき、通過する街なのでこの先、立ち寄る日が来るのだろうか。あの街から雨飾山はどのように見えるのか気になる。
さて、展望だが辛うじて高妻山(と思われる山)とギザギザした戸隠山(と思われる山)が見えた。それ以外は、雲に覆われていてよくわからない。お隣にあるはずの焼山、火打山、妙高山は雲隠れ。
白馬岳をはじめとする壮大な北アルプス北部の山が見えるはずでしたが…。紅葉と新雪と希少価値を手に入れたので、大展望の犠牲は仕方ないか…。
また、足を運ぶかと問われると、いささか距離が遠すぎるので、遥か遠い未来になると思う。
長野県側の登山道が主流ですが、新潟県側からの登山口もあります。そして、山頂に並ぶ石仏は新潟県側を向いていることから、古来は新潟県(日本海側)の街で信仰があったと考察できるようです。
遥か遠い昔に思いをはせるのも登山の一つの楽しみです。
山頂には霧氷がびっしりできていて、その奥には紅葉の山肌。見事な二段紅葉。
さて、山頂から笹平を見下ろすと、登山道が横顔の輪郭に見えるらしい。誰がつけたか「女神の横顔」と呼ばれているらしい。中二感あるネーミングだ。しかし、今日の笹平は抹茶ミルク状態になっていて、はっきりと分からないので赤線を付けた。
有名なトリックアートの「ルビンの壺」のような感じ。
雪山の山頂と同じで体の芯から冷える強風。山頂でゆっくり食事を取ろうという人は皆無です。体力ゲージがじわじわ削られているのを感じ、下山を開始します。
下山時も渋滞が解消されておらず、雨飾山の人気っぷりをうかがえる。下山時はチェーンスパイクを使い、サクサク下れた。
笹平の看板がある地点まで戻ってくると、どんよりとした天気に変わってしまった。いや~、体が冷え切っているので温泉に入りたい。
笹平から尾根道を下山。
この尾根道は梯子と岩場なのでチェーンスパイクは外しました。
荒菅沢まで下ってきました。ここは風がないので、遅めの食事を取りました。行きと比べると結構雪が溶けていました。
雨が降ってきそうな雲が出てきたので、下山を開始します。荒菅沢を渡ったあたりの泥道で、後ろを歩いていたSaku兄が、派手めに転びました。
そしたら、「やべえ、指輪なくなった!!!!」
彼の焦る姿(主に便意で)は何度も見てきましたが、今までに無い焦り方していました。
谷側の斜面の方に足を滑らせたので、発見は絶望的かと思っていましたが、山側に指輪がすっぽ抜けてたので無事発見。その時の彼の安堵の顔は忘れられません。
「指輪を見つけて、俺は運がいい」と、ポジティブ発言していて、結果ラッキーな出来事として消化されてました。
一瞬の指輪紛失事件がありつつ、下りはペースを上げて歩きました。100%泥道でした。
14時15分に登山口に戻ってきました。混雑していたのもあって、6時間14分の行程でした。キャンプ場の施設で、登山バッジを購入。
泥まみれになった靴を洗い流し、温泉へと向かいます。
雨飾荘の温泉はコロナで日帰り中止、上田のからあげセンターで打ち上げ
しかし、一番近い雨飾荘の温泉はコロナの影響で日帰り中止で、泣く泣く帰る途中の温泉へと向かいます。
雨飾山から結構離れ、白馬から長野市に向かう途中にある「ぽかぽかランド 美麻」で温泉に入りました。夏の汗を流す目的より、冷え切った体を芯から温める。冬ですねェ。
マツダ牛乳を飲んでさっぱり。
温泉後は道の駅でりんごを購入したりして、上田駅前のレンタカーの返却時間ギリギリに滑り込みました。
上田と言えば、駅に併設している「上田からあげセンター」に寄るしかありません。松本の同店を含めると、今まで何回も訪れているお店。
にんにくがガツンと効いたタレが絡んだからあげは、美味しくないわけがありません。信州といえば蕎麦ですが、やはり登山後は揚げ物と白飯が正義。
数時間に指輪をドロップし、巨額の融資不正がバレた銀行員みたいな顔をしていた男とは思えない笑顔である。
高速バスは既に無い時間なので、新幹線で帰京。長野の登山で新幹線を使うことは殆ど無いですけど、渋滞知らずの一瞬で東京について便利だ…。
ニューデイズで購入した、軽井沢高原ビールを飲みながら、快適な新幹線を堪能しました。
せめて、東京〜長野間が5000円くらいだったら使うのに…。
雨飾山の登山を終えて
紅葉と雪を一緒に見ることができ、貴重な経験ができました。一番のポイントである荒菅沢では見頃はちょっと過ぎてましたが、道中の紅葉は見事でした。凍てついた山頂から見下ろした真っ赤な紅葉が、一番印象的だったかな。
そして、温泉に入って体を温めたいと思うようになったら、山が冬に入っていくんだなと感じますねえ。
雨飾ならぬ雪飾山でしたが、やっぱり遠い。位置的には北陸地方なので、何度もリピートして来れる山じゃないので、いい一日に巡り合えました。雪と雨で泥だらけの道で、靴とズボンの洗濯が大変厄介でしたけど。
コメント
軽く降雪あった翌日の紅葉登山って「少し離れて見る景色」が最高に綺麗ですよね。
青空と組み合わせたらもうヤバい。
でも足もとがグチャグチなのは…とても良くわかります。。
山やってないとピンとこないでしょうね、これ。
コメントありがとうございます。
自分は今回はじめてだったんで、登山前に紅葉と雪が見れて、感動していたんですが、登るのはすっごい厄介な一日でした。
駐車場に洗い場があったんですが、そこも結構並んでいました。
当日は「もう、こんな日に歩くのは勘弁だ」と言っていたような気がしますが、今はもうころっと忘れて、良い思いです。