2014年10月11日
群馬県の武尊山に行ってきました。標高は2158mです。
読みが同一の北アルプスにある穂高岳と区別するため、群馬県の旧国名(上野国)の別称である「上州」を冠して「上州武尊山」とも呼ばれています。山名は日本書紀の日本武尊からつけられています。今回は武尊山神社を起点とした周回コースを歩いてきました。
武尊山は谷川岳などの上越国境の山脈、尾瀬、日光、市街地に近い赤城山・榛名山に囲まれパッとしない印象がありました。
何かと行く機会がなかった山に10月の3連休の初日にひょんなことから旅してきました。
武尊山について
地図
武尊神社から武尊山~剣ヶ峰山の周回コースを歩きました。
手小屋沢避難小屋~武尊山山頂が険しいので、時計回りに登る方が安全と言う印象です。
コースタイム
- 10:45武尊神社
- 12:18手小屋沢避難小屋
- 13:54~14:51武尊山
- 15:39剣ヶ峰山
- 18:30武尊神社
行動時間は7時間45分でした。
都内を早朝出発したので、登山口を出た時間が遅いです。10月中旬頃は陽が短くなっているので、朝8時までに武尊神社を出発するのが望ましいです。
武尊山登山
関越道に乗って、登山口のある武尊神社へ
今回はいつものSaku氏とよしこさん、マミさんの4人で向かいます。
関越道を群馬に向けて進むと道路を挟んで右に赤城山、左に榛名山が見えてきます。赤城高原を過ぎたころ、右手に横幅の広いどっしりとした山が現れます。
武尊山です。
独立峰という事もあり、よく目立ちます。
関越道の水上ICを降り、下道で登山口がある「武尊神社」に向かいます。
「水上宝台樹やすらぎの森キャンプ場」をナビにセットしておくと確実です。
いかにも事前に計画を立てているように解説していますが、高速道路で車を走らせている時点で、どこの山に登るか決まっていなかったという事実。
自分とSaku氏はそれぞれ10月連休後半にやってくる台風やら予約やらなんやらで、遠征計画を台無しにされていた経緯があります。
同じ時期の谷川岳に登った経験で、登山客の渋滞でひどい目に遭っていました。
水上ICを降りた時点の会議で「谷川岳の紅葉時期とか人が多すぎるから辞めよう」という意見がすんなり通り、登山口が同じICから行ける武尊山に決が下されました。
10時35分 武尊神社
登山口に結構遅い時間に到着しました。日が短くなっているというのに致命的です。
山に登る日は、事前に登る山を決めておきましょう。言っていて馬鹿らしいな。
武尊神社より先は護岸工事などだけが通行できる舗装道が続いています。「名古屋ナンバー」の登山者が余裕でつっきっていましたが、あれが名古屋走りか。
武尊神社の標高は1100mなので、標高差は1000mもあり、かなりタフなルートです。
この日は全国的に晴天で、南から迫りつつある台風を微塵にも感じさせない秋晴れの一日だった。
キャンセルになった四国ツアーの飛行機代が惜しい…。
行けなかった旅のことを引きずっていても仕方がないので、武尊山を思いっきり楽しむことにします。
10月の連休だと登山道入り口の付近はまだ紅葉していませんでした。
倒木もありながらの林道歩きは徐々に獣道に入ってきます。
群馬県では一番熊が出没する山域らしいので熊鈴を携帯します。
11時12分 周回ルートの基点分岐
「武尊山」と「剣ヶ峰」の分岐点に到着。周回ルートなので、どちらを選択しても同じ場所に戻ってきます。
自分たちは「武尊山」を先に登るルートを選択しました。
武尊山登山口からブナの紅葉を堪能する登山道
分岐点を過ぎると本格的な登山道に変わります。
「四国なんて遠いところ行かないで良かったね。」
しかし、徐々に紅葉が始まり、足取りも軽やかです。人は嫌なことを良いものにすり替えようとする生き物。
登山道は日本百名山ブランドとは思えない粗野な感じです。歩く場所は明瞭なので迷う心配はありませんけど。
スタンダードなコースではないのかな?
武尊山は高山植物が豊富な山ではないので、紅葉シーズンに登るのが適しているのでしょうか。
真夏に登るには標高差もあり、コースタイム長いしで厳しいと思う。
稜線に出る中間地点が紅葉のピークだったようで、視界の8割が黄色で占められます。
先々週の栗駒山、先週の那須岳は低木の紅葉だったのに対し、武尊山は背の高い樹林帯の紅葉を見上げる形です。
オコジョを撮影。
包まれるような暖かな陽射し、目をカラフルに彩る紅葉に士気が上がります。
急激な登りが続き、紅葉を眺める余裕はなく、士気が下がります。
「山心と秋の空」
秋の天候が変わりやすいように山の心は変わりやすい。
登り続けていると木々の隙間から展望が得られるようになりました。
手小屋沢避難小屋
しばらく、登り続けていると稜線に出て、避難小屋との分岐に到着。
稜線を少し下がったところに避難小屋はあるらしいのですが、茂った笹がわずらわしそうなので、わざわざ見に行く気は起きません。
稜線より右舷に特徴的な尖りをした剣ヶ峰山が見えるようになりました。
危険箇所である岩場の連続を乗り越える
地味極まりない樹林帯の稜線を歩いていくと突如として、岩場が立ち塞がります。
地図上では「危」と表示されている岩場です。
傾斜もゆるく、慎重に登れば問題はないと思います。
朽ちた木製の梯子の耐久力に不安があります。
岩場は思ったよりも長いですが、上部は鎖と梯子が安定しているので安全。
岩場の中間地点に到達すると岩場から谷川岳と尾瀬方面の展望が開けました。
谷川岳は有名な山ですが、他の山からの眺めの中ではあまり目立たなく、どれがそれなのかわからない。
最後の岩場にかかる梯子は10m以上あるんじゃないかと言う長さ。
攻城戦で矢倉に攻め入る歩兵の気分です。
最後の梯子を登り終えると山頂が見えてきました。
地味だな。
稜線より尾瀬方面に燧ヶ岳がそびえます。この山域で一際目立つ山です。
麓の紅葉が凄いことになってる。
稜線は展望が良さそうに見えて、針葉樹、熊笹、石楠花がごっちゃになっています。
剣ヶ峰山がどうしても目立つため、剣ヶ峰山を中心にコンパスで円を描くように歩いている気分です。
背丈を越えるハイ松帯を進んでいくと、空の面積が増え、開放的な空間が広がります。
13時54分 武尊山山頂
登山口の武尊神社を出発して3時間弱で山頂に到着です。3つの峰を模しているっぽい山頂標識が特徴的です。
「SANTYOU」って正しいのかな。
剣ヶ峰山がシンボルの武尊山山頂からは360度の展望
まさに武尊山は秘境群馬の最深といっても過言ではない。
時間も時間なので、お昼は足早に済ませます。
手作りの大学芋が秋の味覚。
武尊山の山頂から眺める剣ヶ峰山は、何とも画力の高い風景です。
北アルプスの槍ヶ岳のようなシンボル的な存在です。
名前の読みも一緒なので穂高岳と武尊山の関係性は近いのかもしれない(適当)
剣ヶ峰山をアップにしてみるとウルトラセブンのアイスラッガーの如く尖がっています。
そんな画力のある風景を全力で壊しに掛かるスタイル。
ハロウィンが近いという事もあり、猫耳をスタンバイしてこじんまりとした仮装を実施。
登山時間が遅いという事実を忘れ、山頂での遊び時間に余念がない。
結局、1時間も遊びに使い下山を開始したのが14時51分。
日没タイムアップの下山はナイトハイク
剣ヶ峰山経由で下山します。
武尊山山頂直下は岩がざれているので、足を滑らせて転びやすいので注意が必要です。
武尊山から剣ヶ峰は1時間弱の細かいアップダウンの繰り返しで、体力を容赦なく削り取ってきます。
冬は日本海側からの風の通り道になるためか、背丈のある木は生えておらず、展望は良好です。
武尊山は冬も登れる山です。
ゲレンデリフトを使用できるため、冬の方がコースタイムを短く登れるという稀有な山です。
下山を開始して、40分ほどで剣ヶ峰と下山路の分岐に到着です。
日没が迫っていますが100mということもあり、剣ヶ峰山に立ち寄ります。
見た目通り垂直に近い岩場に難儀しながら、剣ヶ峰山をぐいぐいと登ります。
15時39分 剣ヶ峰山
武尊山山頂ほど立派ではないですが、きちんと標識がありました。標高2020mということで、東京オリンピック開催の年に再度登らなければならないことを頭に置いておこう。
剣ヶ峰から眺める武尊山は横に広がっています。
心なしか山頂の看板の通りに、3つの峰が並んでいる気がします。
日没が徐々に迫ってきたので、急ぎ足で下山を開始します。
しかし、剣ヶ峰山からの下山路は急坂が続き、登山道が泥だらけになっていました。
夕焼けに暮れる武尊山を眺めながら…と、そんな悠長な暇はありません。
岩場と木の根がミックスする登山道で1コケ。
湿った土の上に落ち葉が広がる登山道で2コケ。
急坂の続く登山道は、陽の当たる内にくだり切ることができました。
標高を下がると巨大なブナの紅葉真っ盛りの道になります。
しかし、太陽の光がすっかり山影に隠れてしまい、楽しめなかったのが残念です。
ああ、どんどん暗くなる…。
小沢を数かい渡りながら、緩やかに進んでいきます。
周回コースの基点に戻ってきたときは、真っ暗になってしまいました。覚悟をしていないヘッドライトのハイクは嫌なものです。
紅葉拝シーズンということもあり、自分たち以外にも4、5組のパーティーが闇に飲まれてしまいました。
登山道は目視のうちに歩き切れたため、難なく下山できました。忘れてたけど、熊が最も多く出没する地域だったな…。
駐車場に戻ってくると満点の星空が綺麗で、駐車場に寝転んで星を見ました。
駐車場にテントを貼って前泊していたおじさんおばさんのグループが、流れ星が見えた途端に「金・金・金!!!」と願ってました。いつになっても貪欲である精神、嫌いじゃない。
宝川温泉に入る予定でしたが、営業時間を過ぎていたので、湯テルメ谷川に立ち寄りました。
安くて広さもあるいい温泉なのですが、内風呂と露天風呂に距離があり、この時期移動がめちゃくちゃ寒い。
温泉から上がって「蜂蜜れもん」を飲みました。沼田あたりで作ってるのかな?
赤城高原サービスエリアでうまくもまずくもない食事を取って、東京に帰りました。
武尊山の登山を終えて
武尊山を秋の果物で例えると柿だと思う。秋の果物と言えば他にりんご、ぶどう、栗などが挙がります。当然そこには柿も挙がるわけです。りんごやぶどうの果肉はケーキに添えられ、加工されジャムやソースになり、果汁はジュースやワインになります。栗はモンブランなどのケーキになるほかに、栗ご飯として食卓のメインを張り、甘栗として手軽に食べられます。
その一方で、柿はそのまま切って食べるか干し柿として食べらるかのほぼ2択です。
武尊山は山の展望を楽しむ、山の形を楽しむという、登山を楽しむことに特化した山というシンプルな点で、柿と似ているんじゃないでしょうか。
武尊山は初夏でも残雪があり、高山植物がそこまで有名な山ではないため、一般的登山者が楽しむ時期としては秋が最適かと思います。
周囲に有名な山がありすぎて影に隠れた山ですが、期待以上に楽しめる山でした。
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