2015年4月12日
山梨県甲州市の棚横手山・甲州高尾山に行ってきました。標高は1306mです。
この山は山火事によって山斜面の植林が全焼する事件がありました。元々は樹林に覆われ不人気の山だったそうですが、山火事によって展望を遮っていた木がなくなり、登山者に人気が出るという一風変わった経歴があります。
高尾山と言うと東京都にある日本一であり、世界一の登山者が訪れる高尾山が思い浮かびます。東京の高尾山から中央線で更に1時間。山梨県の県境を跨ぐと旧国名である「甲州」を冠した高尾山があります。
電車のトンネルを歩くという一風変わたルート、桜の名所である勝沼ぶどう郷駅のオプションをプラスして旅してきました。
棚横手山・甲州高尾山について
地図
中央線の勝沼ぶどう郷駅から棚横手と甲州高尾山を周回するルートです。
登山口へはタクシーを利用し、下山時に平成9年まで中央線の下り線で使用されていた大日影トンネル歩道を歩いています。
コースタイム
- 8:34大瀧不動尊
- 9:36棚横手
- 11:40甲州高尾山
- 13:00大善寺
- 13:30大日影トンネル
- 14:40勝沼ぶどう郷駅
写真撮影をしながらゆっくり歩いています。
アクセス
棚横手山~甲州高尾山 登山
桜のトンネル、勝沼ぶどう郷駅
春は人の流れが過渡期を迎える季節で、登山業界は冬眠する熊と同じように登山者が続々と山に増える時期です。
里に桜が咲く頃、標高1000m前後の山では雪が解け、徐々に春が始まっていきます。
立川駅で中央線に乗り換えて、山梨へと向かいます。
高尾駅で乗り換えて、神奈川県の相模湖駅を通過すると山梨県に入ります。高尾駅ではたくさんの登山者でホームが溢れ返っていました。
その東京の高尾山から電車で約1時間、山梨県の高尾山がある勝沼ぶどう郷駅に到着しました。
甚六桜という駅のホームが桜の名所という好立地。
JR中央線勝沼ぶどう郷駅周辺には約600本の桜があり、この桜を育てている地元菱山地区の後継者の集まり「甚六会」の名から「甚六桜」と呼ばれています。
すぐ脇を通り過ぎる電車と桜の風景は勝沼ぶどう郷駅の象徴的な景観となっています。改札を出て左手にある「甚六公園」には鉄道全盛期往年の機関車が設置され、子供たちの目は桜よりもこちらの機関車に夢中になっているようです。勝沼ぶどう郷駅前広場/甚六桜/富士の国やまなし観光ネット 山梨県公式観光情報
桜のトンネルを抜ける電車を撮影できるということで、撮り鉄に人気のスポットらしいです。開花が早く見頃は前週だったようで、4割ほど散ってしまっていました。
桜越しに見る甲府盆地と南アルプスの景観はフォトジェニックです。
桜を抜ける特急あずさを残念すぎる画角で撮影に成功しました。
口を開けばレンズの話ばかりのRed Sugar、口を開けば登山界のゴシップネタばかりのゆうちゃんと合流しました。
駅前には芝桜も植えられており、花の充実度がとても高い駅でした。
考えることは皆同じらしく、勝沼ぶどう郷という辺鄙な駅前にはたくさんの登山者で溢れていました。
この駅から歩ける山というと甲州高尾山くらいしかないし、あまりにも多すぎると思っていましたが、どうやら桃の花が同時に見頃を迎えているので、勝沼~山梨市のハイキングのようでした。
駅から90分ほど車道を歩くと登山口に辿りつくことが出来ますが、「そんなかったるいことはしたくない」と満場一致の裁決で、タクシーに乗り込みます。
ハイキング客を見込んで、タクシーはひっきりなしにやって来ています。
大滝不動尊と落差のある不動滝
大滝不動尊がある登山口に到着です。
駅からはショートカットできるような登山道はないため、人数が揃えばタクシー利用を強く推奨。登山口にトイレは一応あります。
山が地味なのか、オーバーフィフティーのパーティーばかりです。
大滝不動尊の境内へと入ります。
大滝不動尊は西暦880年に草創の寺院で、奥には複数の滝があることから修行の場としての歴史があるようです。
カメムシみたいな柄のザックを背負ったレッドシュガーさんを筆頭に境内へと入っていきます。
前日に雨が降ったため、地面の草に水滴がついていました。葉の先端部分に水滴が付着し、宝石を着飾っているようでした。
黄色いミツマタが咲いていました。
山門をくぐり、石段を登ります。石段の横には滝が流れていました。
数分歩くと本堂がある場所に辿りつきます。
奥宮の背後は切り立った崖があり、そこから不動滝が轟々と音を立てながら流れていました。和歌山県にある那智の滝のようです。
本堂でお参りをし、旅の無事を祈ります。
そして、東京に隣接していながら田舎から脱せない山梨の発展を願います。ちなみに現在は無人らしく、お祓いや御朱印などは貰えないようです。
本堂の横手に登山口があります。
とうわけで、レッドシュガー氏的にプレイボールとなります。
登山道は植林した杉の樹林帯で、しっかりと土が固められていました。
先ほどの不動滝を展望するポイントがあり、その落差に驚きました。
この不動滝は冬になるとガチガチに凍結するので、それを目的に来るのも良さそうです。
樹林帯を抜けると南アルプスと富士山の展望
樹林帯の先道を登り切ると鳥居がありました。
抜けると小さな祠が建っていました。これが奥宮なのでしょうか…。
部分的に展望が開けており、南アルプスの展望がありました。
標高3000mの農鳥岳~間ノ岳~北岳の稜線は4月になっても白さが際立ちます。
目線を下にやると甲府盆地。桃の花のピンク色に染まっています。
林業用道路を歩いて棚横手山へと向かいます。
登山用のものではないとは思うけど、ピンクテープ多すぎない?
「棚横手山こちら」と書かれた案内がありました。紅白のポールが体育祭の案内みたいだ。
ゆうちゃんを先頭に登ります。
富士山がドンと目の前に現れました。
不遇な山火事によってもたらされた展望になります。
4月特有のうす曇りの天気が、西側から迫っているため富士山のバックは白く霞んでしまいましたが、迫力は満点です。
富士山手前は三つ峠山を含む御坂山塊でしょうか。
分岐は棚横手山と甲州高尾山の間になっているため、まずは棚横手山を目指します。
山が火によって失われていく中、切り株に座りながら悲観の表情を浮かべるリス。
山梨界隈でよく見かけるポスターですが、山火事が幾度も発生したこの山だとよりリアルに感じます。
山火事によって失われたのは木だけではなく、自然に育まれた土壌もそうなのでしょう。相当の年数をかけて復元がされます。
展望が良いとプラスに取っていいかわかりませんが、南アルプス方面も開けました。
車道を通過すると階段があり、ここまで来ると山頂までは後わずかです。
最後のひと踏ん張りの登り。
棚横手山から甲州高尾山は展望抜群の稜線歩き
9時36分 棚横手山
タクシーを降り立った登山口から1時間弱で登頂です。棚横手山は山梨百名山に選定されている山です。今まで何個登ったんだろう…。
山頂は「大富士見台」と名付けられ、抜群の展望となっています。
富士山が存在する場所は、あるべくしてあると心底思います。ここから富士山を削った全く絵になりませんし。
棚横手山の山頂は木に寄り添うようにあり、山頂たる風格が今一つなのは仕方がないこと。
街歩きでもフルサイズカメラをぶら下げ、ワンランク上のカメラステータスをアピールすることでおなじみのカメラマンであるレッドシュガーさんに撮影をしてもらいました。
山頂でご飯にするには時間が早すぎるため、甲州高尾山へと向かいます。
くだりは富士山を見ながらなので爽快な道です。
再び分岐点まで戻ってきました。
富士山との直線状にいい具合に小高くなった場所があります。望遠レンズを使用して撮ると富士山がとても大きく映ります。
一人づつ撮影するために100mほど離れたポイントにダッシュする舞台裏。
それぞれ、慣れないダッシュで疲れてしまいました。昼食が取れる場所を探しつつ、甲州高尾山方面へと歩きだします。
20人から30人ほどのツアー団体がおり、狭い稜線での休憩場所がまるでありません。
しかし、木がほとんどないので展望が抜群です。
同じ山梨県内の2000mの山が連なる奥秩父でも、ここまで展望が開けているのは稀です。植林が回復すると見れなくなる風景であるため今の内ですね。
昼食にはフライパンでピザを作成しました。炒め物から鍋もでき、軽いため重宝します。
11時37分 甲州高尾山
甲州高尾山に到着。棚横手山から200m低い、標高1106mです。山頂という雰囲気はまるでなく、登山道の一部のような扱い。
山頂はやはり棚横手山ということで。
甲州高尾山の展望は、市街地がよく広がります。
中央道をよく走る人ならわかると思いますが、笹子トンネルを抜けて、勝沼ICまで一気にくだりのあたりがよくわかります。
11時41分 甲州高尾山剣ヶ峰
4分後に剣ヶ峰となっている標識があります。剣ヶ峰らしい尖った場所でもなんでもないので、この看板は必要なのだろうか…。
一度、車道に出る道がありました。そこに咲いていた峯桜。
大善寺方面へと下っていきます。
人が良くあるっており、非常に下りやすかった印象の登山道。
ツツジも咲いており、様々な山の花を見ることが出来ました。
平坦になっている場所もあります。
山頂付近にはなかった新緑が見ることができるようになってきました。
個人的に好きな唐松の新緑。
長い冬を終えてようやく目を出す緑。雪山もやる自分ですが、基本的には植物が茂る3シーズンが一番好きです。4月は残雪のある山には出かけたくない。
登山道に鉄塔があると必ずやるやつ。
途中にお菓子みたいなビジュアルのキノコが生えていました。ヒトクチタケというらしいです。
ヒトクチタケはカサの直径が2~5cm程度、形は樹木の側面に沿った形のハマグリ型で、色は上面と下面で違いがあり、上面部分は黄褐色~褐色で表面には光沢が見られ、下面はクリーム色の膜で覆われていますがやがてその膜は破れ、楕円形の穴が開きます。
マカロンみたいな見た目しているくせに美味しくないので食用ではないらしい。
鹿除けのフェンスがありました。
大善時に近づいていくと、桜の木が目立ち始めます。
桜咲く大善寺は花盛りの名勝地
撮影に夢中になる面々。
三人ともカメラを持っているので、なかなか前に進みません。
桜が豪華絢爛です。
たくさんの桜の木が植えられていました。
レジャーシートでも持ってきていれば、きゃははうふふのお花見ができたのでしょう。ただし、男3人である。
這いつくばって鑑賞します。
例年の山梨だと4月2週目あたりが桜の見頃と思っていたのですが、暖かい日が多く葉桜に変わっていっていました。
しかし、葉桜になりたての頃は悪くない。
写真が捗っているゆうちゃん。
桜越しの南アルプス連峰という立地。
こんな素敵な花見スポットがあるというのに人っ子一人いないとは全く不思議です。山梨には他にも桜の名所があるのでわざわざ来ないのでしょうか。
オオイヌノフグリも桜の花びらに埋もれながら咲いていました。
新緑がまぶしい。
スミレの花もひっそりと咲いています。
桜の花見を終えて、大善寺へと向かいます。
ぶどう寺と呼ばれ、山梨県内では歴史あるお寺のようです。
大善寺の中には薬師堂(国宝)をはじめ、木造薬師三尊像、木造十二神将立像、木造日光・月光菩薩立像(重要文化財)などたくさんの指定文化財があるすばらしいお寺
某人気ドラマのロケ地になって、聖地巡礼する人が多かったとか(2016年)。
境内にはたくさんの花が咲いており、春を楽しませてもらいました。
参拝者もそこそこに多かったです。
甲州七福神めぐりなるものをやっていました。最近、御朱印集めをはじめたので、いずれやってみるかもわかりません。
大善寺から路線バスまたは徒歩40分をかけて勝沼ぶどう郷駅に戻っても良いのですが、もう1か所歩きたいポイントがあるので、逆方向へと足を進めます。
川沿いに歩いて行きます。
少し登り坂になっているので、下山しきった状態ではきつかった。
「大日影トンネル」と表示された看板に沿って歩きます。
大日影トンネルでライトアート遊び
目的の大日影(おおひかげ)トンネルに到着です。
観光地になっているようで、小規模の売店と公衆トイレがありました。休憩していると観光バスが3台乗りつけ、大量の客を降ろしていきます。どうやら、トンネルの向こう側で拾うというツアー設定らしい。
明治36年から平成9年まで中央本線下り線として使用されていたトンネルを遊歩道として整備。トンネル内には鉄道標識・待機所・水路が当時のまま残されています。壁面や天井には昭和6年に電化されるまで走っていた蒸気機関車の煙突から排煙された煤が黒く付着しています。
残念ながら現在では閉鎖しています。笹子トンネル事故の影響を受けてでしょうか…。今後の通行は甲州市役所観光交流課などで確認してください。
いざトンネル内に進入です。全長は1367mあり、普通の速度で歩いて10分以上掛かります。入ったばかりだと出口の明かりは豆粒以下にしか見えません。
退避場所には彫刻が設置されていました。鼻がドリルっぽい象の像。
中央にはレールが敷いてあり、中央本線の走っていた名残があります。94年までは使用されていたみたいです。
かび臭さと地下水が滴る音が冒険心をくすぐります。
薄暗い場所でやることと言ったら、そうライトアートです。
「山」
「富士山」
「サタデーナイトフィーバー」
観光客が通過するので、通り過ぎるのを見届けてからの撮影でした。坑道内は明かりがなくても十分なので、あいつら何ライトをつけてるんだろうと不審がられたに違いない。
30分をかけてトンネルを歩ききりました。
おかしいな歩くのに慣れているはずが、誰よりも通過が遅い。
トンネルから勝沼ぶどう郷駅はすぐ近くです。
EF6418が展示されている公園がありました。
66年から05年の40年ほど活躍した車両だとか。
昔の看板がありました。
勝沼駅から勝沼ぶどう郷駅に変更されたのは93年の話だとか。
つくしとか久しぶりに見たかも…。
甲州の街並みを見下ろしながらぶどうの丘で温泉
本日の温泉があるぶどうの丘まで駅から歩きます。歩いても10分少々の距離です。
噴水に立つ女神がぶどうを担いでいるのが勝沼スタイル。
山梨県はワインの生産量日本一のなので、ワインカーブでは豊富な種類のワインが売られていました。試飲もでき、電車で来て良かった。
温泉は同じ施設内にある天空の湯に立ち寄りました。
露天風呂は甲府盆地を一望できるロケーションにあります。桃の花がピークだったので、大勢の観光客で賑わっていました。
温泉から上がり、鈍行に揺られながらゆっくり帰りました。
終点の高尾駅で乗り換えるとホームを埋め尽くさんばかりの人・人・人。
ミシュランにも認定、世界一の登山者数を誇る本場高尾山の人気は凄まじいものがあると実感。山梨の高尾山も良いですよ。
立川の駅前にある居酒屋で乾杯。
それぞれの家路につきました。この二人とは今後も何度も一緒することになります。
棚横手山~甲州高尾山の登山を終えて
甲州高尾山は東京の高尾山の陰に隠れて知名度が低いですが、展望に優れ、時期を選ぶと何倍にも面白くなる山です。山火事によってもたらされた展望はいつに日にかなくなってしまうので、登るなら10年以内が良いかと思います。
中央線に揺られ、いい旅が出来た一日でした。
春は桃ですが、秋にぶどうが収穫される時期を狙って来るのもいいかなと思いました。ワインが好き(国産に限る)になった今、ぶどうの里でワインを飲みまくりたいです。
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