2019年3月9日
福井県の荒島岳に行ってきました。標高は1523mです。
荒島岳は日本百名山のブランドを冠することから、県外からの登山者も多く、冬に登れる北陸の山として人気です。福井県の四方を山に囲まれ越前大野市にあり、大野富士の愛称で親しまれています。冬の時期は何と言っても、雪に覆われた白山連峰の展望が期待できます。
荒島岳を訪れるのは2回目です。
前回は「登山を生き急いでいた時期」で、白山に登ったついでとして登り、真夏だったので熱中症になりかけた挙句、山頂ではゼロ展望の悲劇でした。荒島岳の10%の魅力も感じることができていなかったので、再訪は必至でした。
関東からは距離が遠く、敬遠していましたが、北陸が実家のメンバが帰省するタイミングと重なり、冬の北陸を一泊二日で旅してきました。
荒島岳について
地図
勝原コース往復を利用しました。冬の場合、登山者の9割以上はこのコース利用です。標高1500mですが、高低差が1200m以上あるので体力が必要です。
遭難ニュースを滅多に聞かないので、冬の難易度はそれほど高くないようです。
- 12本爪アイゼン使用
- ピッケルは使用せず、ストックのみ使用
コースタイム
- 8:18カドハラスキー場跡駐車場
- 9:04シャクナゲ平
- 12:07荒島岳
- 15:07カドハラスキー場跡駐車場
行動時間は6時間49分でした。
ダラダラと時間をかけたと思います。普通であれば5時間半くらいじゃないでしょうか…。
荒島岳 雪山登山
福井県は遥か遠く、カドハラスキー場跡から登山開始
東名高速浜松ISAよりおはよう餃子います。
宇都宮出身の者としては、餃子戦争の敵国である浜松餃子を食べるのは、大戦中のドイツの捕虜兵にロシアのボルシチを食べさせるようなものです。
世界中の人間が昼に餃子を食べれば、世界から戦争が消えると言われる通り、餃子の前では鬼も恵比寿様になることでしょう。
この日、登山前に静岡県の浜松餃子、登山を終えて石川県で第七餃子を食べました。太平洋側の餃子、日本海側の餃子を一日で食べるコンセプトがあるのですが、本筋とは何の関係もないので忘れてください。
さて、今回同行するのはさく兄とゆうちゃん。
八ヶ岳の赤岳、槍ヶ岳、西穂高独標など、苦難の雪山を乗り越えてきた仲間たちであります。そして、この2019年3月時点は二人とも無職でした。3人中2人が無職、稀有なメンバ構成です。
何かやらなきゃ誰にも会えない
この歳になって身に染みてくる、大黒摩季の95年の名曲「ら・ら・ら」をテーマソング。
さく兄(無職)はこの登山でマイカーを売り払うことになっていて、ラストラン登山となりました。
出会った頃のさく兄は、2DAYSで白山と荒島岳の運転をこなしましたが、今回は荒島岳の一点集中。登山後の翌日は、グルメを食べながら帰京とゆったりプラン。大人になったのか、それとも、老いたのか。
睡眠不足で何度も仮眠を取りながら、予定1時間押しで福井県に入りました。関東から福井県は日本アルプスに阻まれて本当に遠い存在です。
九頭竜湖を過ぎたあたりから、正面に純白の山が見えてきました。
荒島岳だ。興奮してきたな。よし、登ってみよう。
2019年度は降雪不足だったので、標高1500m程度の荒島岳は雪山じゃないのではと内心思っていましたが杞憂だったようです。
勝原スキー場跡が荒島岳の駐車場になっています。日本百名山を冠する一座なので、駐車場は満車寸前でした。地域的に関東方面の車は少ない印象。
カドハラスキー場跡駐車場(8:18)
登山開始です。
荒島岳のメインである勝原コースを歩きます。序盤は地味に長いゲレンデ歩きです。スキー場もそりゃ営業できなくなるわなって感じで、雪は無く、からっからに乾燥しています。雪靴で歩くのが空しい。
全員が2度目の荒島岳なので、何となく覚えのある道を歩きます。
「ゲレンデが営業していれば、リフトを利用して、登山口までワープできるのに」と、無いものねだりをします。
荒島岳より東側、つまり石川県の名峰である白山が見えてきました。この山は白山じゃないのだけれど、中腹に至るまでずっと白山だと思っていました。
「あれは本当に白山だろうか?」石川県が地元のゆうちゃんだけが疑問視していました。
雪の少ないウィンターシーズン、勝原コースの樹林帯を行く
元リフト終点(9:04)
ゲレンデを登り切り、荒島岳の本格的な登山が始まります。
さく兄は破けているのか、歩きにくいのかわかりませんが、雪山用のズボンをロールアップしています。「オシャレは足元から」と言っていますが、雪山ルールに厳しい、マウンテンネットポリスに見つかったら指摘がうるさそうです。
荒島岳の序盤は樹林帯です。全然、雪がないのでアイゼンを付けずにスタートします。
荒島岳と言えば、白山連峰の眺めです。
「あれが、白山かー。白山って名前の割に雪が少なくて、意外とこじんまりとしてるんだなー」と、実は白山じゃない山を白山と思いこんでいる。
20分ちょっと登ると雪道へと変わりました。
前日が冬型の気圧配置だったので、降雪しているのかと思っていましたが、全然でした。木の根っこが露出している個所があるので、アイゼンを付けずに進行します。
本当の白山連峰が見えてきました。
ここで、今まで見えていた山が白山じゃないことに気付きます。前回、荒島岳に登った時はガスガスでしたし、福井県に何の土地勘もないので仕方のないこと。
植生が変わり、5月~6月になればブナの新緑が綺麗そうな場所です。
7月に登った時は3リットルの水が無くなりかけて、本当に辛い登山でした。今回の登山で、荒島岳のイメージを払拭したい。
樹林帯を黙々と登る。
登山口が標高260m~280mあり、山頂までの標高差は1200m以上なので、標高の割に意外とタフな山なのです。
分岐点となるシャクナゲ平に登る斜面はかなりの傾斜があり、東京から夜通し移動した面々には非常に厳しかった。
シャクナゲ平(10:28)
シャクナゲ平に到着しました。
ちょっとした広場になっていて、山頂に向かうための休憩ポイントになっています。登山者によっては、ここに荷物を置いておく人もいるようです。
白山連峰の眺めが素晴らしい(この後、何回も繰り返します)
白山の主峰である御前峰が良く見えます。
越前大野市と白山連峰の展望が広がる極上の稜線
12本爪のアイゼンを装着し、いざ荒島岳の山頂を目指します。
シャクナゲ平からは若干のくだり。場慣れしている登山者だあれば、再び登らなければならない未来が見えて億劫になるだろう。
夏場は岩場、階段、クサリと危険個所になっている場所です。冬の場合は、全てを覆い隠していますが、滑り落ちたら命が危うい箇所があるので、慎重に歩きます。
ここで、無職の二人が滑落しようもなら、職業無職と報道されてしまいます。ゆうちゃんに至っては引っ越し中なので、住所不定無職。
樹林帯を抜け切ると展望がドカンと開け、越前大野市の風景が広がりました。
越前大野市は福島県の会津、埼玉県の秩父のように、四方を山で囲まれた小さな市です。雲海に浮かぶ越前大野城が有名です。市街地から近い系の山なので、とても高度感があります。
進行方向を見れば、白山連峰が綺麗(繰り返し)。
白山と東北の鳥海山(ちょうかいさん)の二つは、関東から遥か彼方の距離にあり、雪のかぶった状態を見れるのは特別に感じます。
前日に吹雪いたようで、木々の枝には霧氷(雪が付着している状態なので違う?)が出来ていました。
柴犬が登っていました。
人間は装備で堅め、衣服を着込んで、ようやく雪山に登れるのに、犬ときたら初期装備で登れるわけです。人間はなんて脆い生き物なのでしょう。
夏場はもちがかべと名付けられた難所がありますが、冬だとどこにあるのかサッパリでした。
ようやく、山頂が見えてきました。道幅が広くなってきて、歩きやすいです。
同じく数年前の冬に登った、鳥取県の伯耆大山と同じ登山道の印象を受けました。市街地が近くに見える展望とか傾斜の角度とか。
視界を遮る樹林が全くなくなるので、気持ちよい雪山歩きが出来ます。
ずっと、奥には北アルプスの山々が垣間見れました。北アルプスから荒島岳は認識できる登山者はいるのだろうか。
進行方向がほぼ壁と言ってよいくらいの傾斜に足跡がついています。
「嘘だろ、あんなところ登るなんて聞いてないぞ」たじろぐ一同。
序盤は滑らかな傾斜だが。
終盤は殺人的な傾斜。
チェーンスパイクで降りてきた小学生の子供がいたけどよく登れたな…。
既に登り終えている人も、「はぁ、よくこんな斜面登ったな」みたいな感じで、見下ろしていました。
振り返ると白山が見える。
この角度の斜面は谷川岳にも伯耆大山にも無かった。
無事に登り切り、勝利を分かち合う無職二人であった。
越前大野市の奥にも白い山脈があり、ずっと何の山だろうと思って、帰宅してから地図で調べてみました。でも、わかりませんでした。北陸の山を登るときは、地元の人を捕まえて、教えてもらうしかないです…。
話は変わるが、このパーティーのライングループだが、仕事をしている人間は馬鹿にされていた。
山の陰になっている斜面は霧氷がびっしりと作られていました。
山頂まで412mの看板。
「荒島岳」なんとも男らしい名前ですが、山の表情はどこか精細な雰囲気を持っています。進行方向左手に見える、崖の斜面は迫力があります。
一発屋登山者ゆうちゃん。
家庭が忙しく、昨年は3回しか登山に行けておらず、久しぶりの絶景、北陸ホームマウンテンと言うことで、士気高揚していた様子でCanonのミラーレスで熱心に撮影していました。
下からは想像できませんが、山頂一帯はとても広々しています。
空を駆ける白山連峰の展望、荒島岳の山頂へ
荒島岳着(12:07)
荒島岳の山頂に到着しました。
前回は完全にガスに覆われていましたが、今日は文句なしに視界が開けています。
山頂碑から少し離れた場所には祠が設置されていて、15センチほどの海老の尻尾が出来ていました。
荒島岳より南側の展望になります。
奥美濃(おくみの)と呼ばれる岐阜方面の山々は全然わかりませんが、標高3000mを越す、乗鞍岳と御岳山がわかりやすいです。
荒島岳より南東側の景色。標高1000m以下の山々が連なります。右側に見えた少しだけ標高の高そうな雪山が気になりました。
360度の風景の中で、やはり主役は白山連峰です。
アルプスと八ヶ岳に属さず、標高2700mの高峰は、孤高の存在。引きつられる魅力があります。
数か月したら百花繚乱の花畑が広がる山とはとても思えません。
白山もまた2018年の7月に再訪しています。白山はのんびり宿泊して登りたいのと、別山まで縦走したいので後2回は行きたいです。北陸新幹線の開通で行きやすくなったとはいえ、やはり遠いのがネックです。
荒島岳の山頂碑でどれくらいの積雪があるかわかるようですが、「荒島岳」が全て見えているので、例年よりは雪が無いようです。「岳」の位置は、大体成人男性の胸の高さがある。
好天と言うこともあってか、登山者がひっきりなしにやってきます。
山頂では熱心に撮影しているパーティが。
男だけで来ると取れ高少ないな…。
岩峰が多い北アルプスは、雪がつかない部分ができるので、白さにムラができる。白山の山頂一帯が緩やかな形状であるため、ムラのない白さになっている。白山はまさに「白山」と名付けられるべき山。
ヨーロッパアルプス最高峰「モンブラン」、アフリカ大陸の最高峰「キリマンジャロ」の意味は「白い山」。山に対する人間の感覚的なものは世界共通なんだなと。
白山展望台の紹介のされ方をしている荒島岳ですが、単体で見ても、とても風格のある山です。
荒島岳発(12:49)
山頂で十分楽しみ、下山開始。無職のまま死ねない二人は慎重に下ります。
シャクナゲ平へのちょっとした登り返しでバテバテでした。午後になると雪が溶け、シャバシャバになるので、コンディションが悪い。
登山中は気づきませんでしたが「トトロの木」がありました。根元から折れていました。前回来た時は普通に生えていたので、大雪や大雨で倒れてしまったのでしょうか。
中盤以降は雪が溶けて、泥が混じる最底辺の登山道環境でした。リフト終点の雪原で洗い落とすのが大変でした。賢い人は水の入ったタンクを車に積んでいて、それで洗っていました。
カドハラスキー場跡駐車場(15:07)
6時間強もかけて降りてきました。13時には降りてる予定だったはずなのに、山頂で尺を取り過ぎてしまった。
大野市から見る荒島岳は貫禄のあるたたずまいです。
越前大野市は、小京都と呼ばれて、観光地になっているので時間があれば観光するのも良し。
福井市内でヨーロッパ軒のソースカツ丼と金沢市内で第七ギョーザの打ち上げ
下山後、食べるべきグルメのために大野市から国道158号線で福井市内を目指します。
国道158号線と言えば、松本市内から北アルプスの登山口、上高地や新保高温泉でおなじみですが、それを福井県で走っているのが変な気分でした。
ヨーロッパ軒総本店にやってきました。福井県内だけに展開するソースカツ丼の店です。
ソースカツ丼をご当地グルメとしている地方は多く、福井県もその一つです。
創業は何と大正時代、関東大震災があるまでは東京の早稲田に店を構えていたのだとか。
ヨーロッパ軒のソースかつ丼は、薄切りのばら肉を揚げています。歯ごたえのある、分厚く切られたソースカツ丼とは別物です。イタリアのカツレツに近い感じかな?
ソースの味が沁みていて、吸い込むように食べれます。脂っこさが全くなく、肉が薄くて柔らかいので、老若男女に受け入れられる味だと思う。
このヨーロッパ軒のソースカツ丼で、日本ソースカツ丼三山を制覇しました。
日本ソースカツ丼三山とは?
1 | 木曽駒ヶ岳(長野) | 駒ヶ根ソースカツ丼 |
2 | 磐梯山(福島) | 会津ソースカツ丼 |
3 | 荒島岳(福井) | 福井ソースカツ丼 |
もちろん、私が勝手に選定しました。
余談ですが、福井の観光名所「東尋坊」に夕陽を見に行く、攻めたプランもあったのだが、時間の都合上カット。自殺の名所に無職二人が行くのもアレだし。
この頃、サウナに目覚めたさく兄。
登山後の疲労回復にサウナだ。風情のある温泉よりサウナのある温泉を優先させると、サウナに対して、熱く語っておりました。サウナだけにね。
極楽湯はどこでもあるチェーン店ですが、タイミングよく熱波(ロウリュ)のサービス時間とかぶったため、男三人の老廃物を流し切りました。
高速を使って福井から石川へ移動。
金沢市内にある「第7ギョーザの店」にやってきました。駐車場は広々、ビル一棟まるごと餃子店というスケールです。
1階席はカウンターで、長蛇の列が出来ていました。
カツ丼を流し込んでいた我々ですが、あっさりめだったので、温泉と移動の時間でおなかはペコペコ。厳しい待ちだなと思っていると、2階は少額料金プラスで個室席、スムーズに案内されました。
乾杯である(運転があるためさく兄だけノンアル)
待ちに待った餃子三昧。
早朝に食べた浜松餃子を覚えているだろうか?一日で太平洋側と日本海側の餃子を食べた珍記録が誕生したのであった。
おいなりさんに見える餃子が、第7ギョーザの店のスタンダードです。全体を油で焼いてあり、皮が分厚いのが特徴で、一般的な餃子とは非なるものです。金沢発祥ではなく、本店は千葉県野田のホワイト餃子ですが、金沢のソウルフードとして定着しているようです。
いつからか登山に来たら餃子を食べて帰る伝統が出来つつある。
餃子が美味しい名山を現在選定中です。
20時間以上の行動に心も満たし、胃袋も満たし、今日という一日にピースサインを送る。
働かないで食う飯はうまいか?
本日の宿泊地は、ゆうちゃんちの実家です。
21時を越える時間に、にんにく臭い初対面のおじさん達(一人は無職)を温かく迎え入れてくれて、本当にありがたかった。一日をやり切り、電気を消したら秒で夢の中でした。
翌日は早起きし、富山県の雨晴海岸に移動し、富山湾越しの立山連峰を眺めました。太平洋側に住む人間にとって、冬の立山連峰は同じ国内とは思えない自然景観に映りました。
北陸全てで、美味しいものを食べました。
1泊2日の旅で、神奈川県、静岡県、愛知県、岐阜県、福井県、石川県、富山県、新潟県、長野県、群馬県、埼玉県、東京都の12都県を跨ぎ、日本アルプスを大周回する壮大な旅になりました。
また、雪山登山で苦楽を共にした三人の金字塔と呼ぶのに相応しい1泊2日でした。
荒島岳の登山を終えて
山を下りた時に入った温泉で、「あそこはきつかったー」、「次の山はどうすっかね」みたいなどうでもいい会話や、腹を空かして目の前に並んだ食事を、一緒にかき込む時間こそが、求めていたものだったんじゃないかと思う。大人になるとそれこそ数か月から、もしくは数十年単位で、一つの物事を終わらせる。登山ってのは、それを凝縮させて、たった一日でまとめてくれるツール。人によってはそれがゴルフだったり、草野球だったりするのかもしれない。
数年経って、”ある一日”のことを振り返った時、語れる人間が自分以外にもいるのは、本当に頼もしく思う。
冬の荒島岳は素晴らかったです。
お金と時間のコストを考えると関東から訪れるべきかと言われると、必ずしもそうではないです。絶景やコースの充実具合で言えば、北アルプス、谷川岳、八ヶ岳などが勝るからです。自分達のように「冬の白山連峰を見たい」、「冬の北陸を観光したい」など、強い思い入れがあれば、きっと約束された絶景を荒島岳がプレゼントしてくれます。
コースタイムは掛かりますが、危険個所は少なく、登りやすい印象でした。
無職二人と行く冬の北陸ツアーは、山に食に大満足の旅でした。
コメント
とてもいい記事だと思いました。
読んでいて、おもしろかったです。
>くまさん
読んでいただき、ありがとうございました。
内輪ネタにならないように表現するのって難しいです。
もっと、老人になった時に同じように楽しみたいですなぁ。