2021年5月14日
神奈川県の西丹沢にある畦ヶ丸に行ってきました。標高1293mです。
市街地から離れた秘境と呼べる西丹沢にある一座です。5月中旬頃からシロヤシオが咲き、多くの登山者がお目当てにやってきます。展望なしの山頂ではあるものの、渓流を遡上するコースに求心力があり、人気の山の一つです。
アカヤシオ、ミヤマキリシマ、レンゲツツジ、そして、シロヤシオなど、それぞれ色違いのツツジがあり、咲く山も時期もバラバラで、登山という趣味を深みにハマらせる要素です。
檜洞丸と並び畦ヶ丸はシロヤシオの名所で、前々から行きたいと思っていた一座でした。混雑する西丹沢行きのバスを避けるため、平日の休み取得して、旅してきました。
畦ヶ丸について
地図
新松田駅から出ている西丹沢行きバスで終点まで行き、西丹沢自然教室(西丹沢ビジターセンター)をスタートしています。そこから、大滝橋のバス停まで縦走するコースです。
コースタイム
- 8:58西丹沢自然教室
- 10:13本棚
- 12:14畦ヶ丸山頂
避難小屋に移動して食事
- 13:43一軒屋避難小屋
- 14:27大滝橋バス停
- 14:50中川温泉ぶなの湯
行動時間は5時間52分です。
畦ヶ丸 登山
平日でも満員御礼の西丹沢行きバスで、ビジターセンターへ
西丹沢は遠いので、ほぼ始発で家を出ます。小田急線から見える富士山は、ずっと見てられる映像です。ちなみに本日は金曜日の平日で、たまりにたまった有給を消化しての登山です。
バスが出る30分前には新松田駅に到着しました。
前回、ミツバ岳の時に来ているので、2ヶ月ぶりの西丹沢行きのバスに乗ります。
バス待ちも全然なかったので、箱根そばで優雅に朝食を取る。平日に食べる駅そばウマい。
「オーマイガー」
いつの間にかゾンビのように、ワラワラと登山者が湧いていた。平日だと思って油断した。かろうじて座れましたが、満車状態となりました。
おばちゃんが3人以上集まれば、そこに宇宙が発生するのか、無限に言葉が出てくる。コロナ禍なので会話は自重してもらいものだ…。なので、西丹沢行きのバスは混雑・長い・おばちゃんトークがうるさいで、世界一嫌いなバスかもしれない。
ノイズキャンセリング機能付きでも声が響いてくる。
登山前に疲れたが、スタート地点となる西丹沢ビジターセンターに到着した。2016年に檜洞丸(記事にしてない)に登りに来ているので、5年ぶりです。
ちょっと内部を見学。西丹沢周辺の情報を知ることが出来、犬越路、畦ヶ丸、檜洞丸のバッジが売ってました。
檜洞丸と畦ヶ丸に分岐するが、檜洞丸のシロヤシオはまだらしいので、畦ヶ丸に向かう登山者の方が多い。大室山ってどうなんだろう?
神奈川県内とは思えない美しい清流のトレッキング
畦ヶ丸までは4.8キロの道のりで、標準コースタイムは3時間、標高差752m。
標高差の割にコースタイムが長い。序盤が緩やかで、最後に登らせてくるタイプの登山道。
河内川に架かる立派な橋を渡り、登山スタート。新松田駅では青空だったのだけど、ちょっとばかり薄曇りになってしまった。
登山口に入口には野生の藤の花が咲いていました。藤の花を見ると、5月って感じがする。
登山道に入ると、奥多摩と見間違うばかりの鬱蒼とした杉林。まぁ、最初は許す。
ちょっとばかり歩くと、野球場くらい開けたスペースに出て、西沢が流れています。展望のない畦ヶ丸の人気の秘密は、序盤から沢沿いを歩けるってことにあると思うんですよね。
平地だしキャンプでもできそうなスペース。黄色く目立つ看板に沿って、畦ヶ丸を目指していきます。
心地よい清流のBGM聞きながら、歩いていきます。
油断することなかれ、雑に架かっている橋もあります。数年以内に発生した大型台風の影響で、崩れてしまったんでしょうか。
堰堤が立ちふさがるので、そういった場合は階段を登ります。これが意外と傾斜がありキツイ。
西沢には丸太橋が架かっているので、何度も渡ることになります。
巨大な堰堤を横から回避しながら登る箇所もあります。
登山口の吊橋から30分ちょっと歩くと、ベンチのある広場に出ました。ここからは杉林も堰堤も無くなり、西丹沢の原生林に入っていくことになります。
鹿よけ柵に沿って、進んでいきます。
この日は関東地方はまだ梅雨入りしていませんが、相模湾から湿った空気が来ているのか、若干ジメッとしていて、汗が滲み出します。
丹沢でも随一の名瀑、下棚と本棚
下棚沢出合に到着です。
本線の登山道とは外れますが、往復15分程度だし、畦ヶ丸の要所になるので寄り道します。
西沢から外れて、下棚沢という名前に変わります。岩場が濡れているので、慎重に歩きます。
心地よい沢の音から、轟々とした滝の騒音に変わってくると、流れる水が見えてきました。
下棚に到着。
「下棚」だけで滝という意味なのかな?ちなみに下棚は「しもんたな」と読みます。難読すぎるだろ…。
写真だと伝わりにくいけど、落差40m程ある丹沢では見たことがないくらい大きく豪快な滝です。
滝もいいけど滝周辺の苔むした濃い緑の空間がとても美しいです。山自体は地味かもしれないけど、登山道の美しさは丹沢屈指。
シロヤシオがメインディッシュではありますが、新緑だけでも見ごたえは十分でした。
下棚の見学を終えて、本線へ。ここから先は、より山深く秘境感が増します。緑マシマシにんにくアブラ。
あ、シロヤシオ咲いてんじゃんと思ったら、桜みたいな白い花だった。名前はわからない。
いくつもの丸太橋を越える。
本棚沢出合に到着。
こちらも下棚と同様に往復15分程度、見に行かない選択肢はない。が、前後を歩く数組がスルーしていき、自分だけが行くことに…。
下棚に比べると沢に落ちてしまいそうな道で、慎重に歩いていきます。
本棚に到着です。
「おー。」と一人で声を上げてしまうくらいに大きな滝が出現しました。水量は下棚よりも圧倒的に豊富。地図を見る限りは水源は同じところから流れているので、上がどうなってるか気になる。
落差60〜70mはあるとかで、丹沢最大の滝とも呼ばれているらしいです(自信なし)。ここだけ切り取ると、紀伊半島の大杉谷くらいの規模があります。
ちなみに滝の右側にも岩が禿げています。雨が降った直後に来ると、涸棚と呼ばれる「幻の滝」が出現するらしいです。ちなみに、前日の天気は雨だったんだけどな…。
よく見ると我慢汁程度に滝が流れていました。台風直後とかじゃないと出現しないのだろうか。それはそれで危険だが。
さて、本線にまた戻り、ここからはバイバイ渓流となり、尾根道へと至るストイックな登り。
「あんなに優しかったのに…。」と、ぼやいてしまうくらい登りが急です。ここからは体力勝負となり、シロヤシオゾーンに入るまではご褒美なし。
しかし、ここからはブナの木が出てくるので、新緑も一段と綺麗になる。
少し登ると丹沢特有のテーブル型ベンチがあって一休み。梅雨みたいな湿気のせいで、思うように体が進んでいかない。飲水の消耗が激しく、果たして持つかどうか…。
木の根っこ、段差がえぐい階段。瑞々しい関係は長くは続かないってわけです。
意外ときつい登りの先にシロヤシオの群生が出現
と、ふと登山者が立ち止まっているなと思って上を見上げたら、シロヤシオに遭遇。純白の花弁、森の清純とも言える美しい花です。
シロヤシオの寿命は短く、雨が降ってしまうとすぐに花を落とす。昨日が雨で不安でしたが、生存確認が出来て良かった。
こうなると気分も上がってくるもので、ペースアップして進んでいきます。
なんてこない道の途中に、善六ノワタというポイントがあった。単語から意味が全然わからない。
地面にシロヤシオが落ちてる。もしかすると、上部のシロヤシオは散ってしまったのではないか…。
しかし、畦ヶ丸なんて穏やかな名前している割に、えげつない角度でパンチを打ってくる。
トウゴクミツバツツジが咲いているのを発見。緑に赤紫色の花弁はよく映える。
そして、標高1000mあたりにあるシロヤシオの群生するエリアまでやってくるとたくさん咲いてました。良かった散っていなかった…。
畦ヶ丸に咲くシロヤシオは写真では良さ半分も伝わらない…。
人間より遥か上で花を咲かせていて、至近距離で咲いている個体が少ないのです。
ツツジは満開直後くらいに雨に降られると、鮮度の良い状態のまま花が落ちる。そのせいで、地面に花が咲いているように見えるのも面白い。
花が遠いぃぃぃぃ。やっぱり、シロヤシオの臨場感は、写真で伝えるのは不可能です。
こればかりは仕方ない。
木の間から見える畦ヶ丸。
樹林帯をまるっと刈り取ったら、丸じゃなくて、鋭い真の姿してるんじゃないだろうか。
最後の方にも階段はあり、結構な急斜面。平坦で楽な山かなと勝手に想像していたのに…。
さらに登ると、シロヤシオの蕾がチラホラ。標高で開花のバラツキはあるものの、見頃は2週間、満開は1週間と、見に行くタイミングと運が問われる花です。
シロヤシオの群生も通り過ぎ、ここからは山頂に向けて登りに専念。
最後だけ木道があり、畦ヶ丸の山頂が見えてきました。
展望なしの畦ヶ丸山頂、避難小屋は新築で綺麗
畦ヶ丸の山頂に到着です。
登山口から3時間15分かかりました。滝に寄り道したり、バテたり、シロヤシオ観察したり、個人的には時間かかった印象です。
いかにも山頂を示していそうな石碑は「白石峠補修記念碑」というものでフェイク。
こちらが畦ヶ丸山頂の看板。
コースの案内板の隣りにあり、配置も含めて地味でした。
かろうじて山頂から見える展望。
山間に見えるダムは丹沢湖、稜線付近が茶色で牧草地になっていそうな山は大野山だろうか。
丹沢系ベンチが3席あるが、羽根虫が飛び交っているので、避難小屋方面に移動します。
山頂より山頂感のある避難小屋です。
ここ数年以内に新築された避難小屋で、内部はとても綺麗でした。避難小屋にしては珍しく、ガラス窓が多くて、自然光が入いるのがポイント。
奥にはトイレもあります。
自宅で握ってきたおにぎりと、おにぎりと相性がいいらしいカップヌードル味噌味でランチ。まぁ、味噌スープだから米との相性は良いわな…。
東海自然遊歩道で大滝橋に下山し、ぶなの湯で汗を流す
食事を食べ終えたら、畦ヶ丸の周回コースで、ゴールになる大滝バス停を目指します。
山頂を挟んだこちら側にはシロヤシオは咲いておらず、ミツバツツジがちらほら咲いているくらいでした。
大滝橋のコースは登山者が結構減ったので、周回する登山者は少ないのかも知れない。
稜線区間は終わり、大滝橋を目指します。
東京と大阪の明治の森をつなぐ東海自然歩道の一部になっているみたい。有名どころじゃない山を歩くと、たまに遭遇する。
上部は台風の影響なのか少し荒れ気味でした。
一軒屋避難小屋に到着。
登山口からそこまで離れていない、山頂に新築の小屋で、この小屋で宿泊する人っているんかなと思ったり。扉が重かったので、隙間からちらっと見る限りは、お化けでそうな暗さでした。
シロヤシオも山頂も達成したので、淡々と降りていましたが、自然歩道とされているだけあって歩きやすいです。
最初から最後まで樹林帯ではありますが、視界がひらける場所に出ると、丹沢の青々した緑に惚れ惚れします。5月中旬ごろの丹沢って一年で一番好きです。
長野や山梨のアルプスの麓にあってもおかしくない、綺麗な清流。
やがて、砂利道へと変わり、ゲートが出てくれば登山道は終了です。ちょっとだけ駐車スペースがあって、河原でデイキャンプ(?)している人たちがいました。
大滝橋のバス停に到着しました。
「次のバスの時間まで20分後…温泉までのコースタイム20分」
楽しようかと考えましたが、温泉まで歩くことにします。
2ヶ月前のミツバ岳に来た時は茶色だった山も、今は緑一色に塗られています。
大滝バス停から20分くらい歩いて、中川温泉ぶなの湯に到着です。
温泉自体は、街道から3分ちょっと下る必要があるのがマイナスポイントだが仕方ない。
平日ということもあって、4〜5人しかお客さんはいませんでした。定員もかなり暇そう。
「冷えた体を温めたい」から「大量にかいた汗を流したい」へと、温泉に対する気持ちの優先の変化で、夏の近づきを感じる。
1時間の入浴を終えて、15時50分ごろのバスに乗りました。朝、大量にいた高齢者パーティー軍団はどこに消えたのか、席があまるくらいの車内でした。
質量保存の法則が成り立ってないぞ。
谷峨駅で途中下車。
住んでいる場所によりますが、御殿場線の乗った方が早く帰れる場合があります。
雑草がボウボウ伸び切った谷峨駅。
平日ということもあり、学校帰りの中学生が乗っていて、汗臭いザックに引き目を感じながら、夕日を浴びる箱根の山々を見ながら、帰路につくのでした。
畦ヶ丸の登山を終えて
原生林の木漏れ日を浴びる清流と水煙を巻き上げる滝、洗練されたブナの新緑、展望がない山頂なのに人気な理由がわかりました。遠出しないと出会えないような自然が、神奈川県で見ることができるのが魅力です。
まぁ、西丹沢は自宅から片道3時間かかるので、遠出に入ると思いますけど。
2021年5月は梅雨入り前にも関わらず、雨の日が多く、シロヤシオが落ちてしまうんじゃないか心配でした。タイミングよく来れてよかったです。
畦ヶ丸はシロヤシオの付加価値なにしにしても、いいコースなので、またのんびり歩きに来たいと思います。次はなるべく車で来たいですが、駐車場の争奪戦が激しそうなので悩ましいところです。
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