2022年11月19日
神奈川県の「三浦・岩礁のみち」に行ってきました。
環境省が関東地方の一都六県に整備した「関東ふれあいの道」で、神奈川県1番目のコースです。三浦半島の南端にある岩礁の海岸線を11キロ歩くコースです。
波によって出来た複雑な岩礁を観察したり、浦賀水道と房総半島を眺めながら歩くことが出来ます。
冬が近づいてくると、脳内で「山に行く、行かない」のシーソーゲームが展開されます。いっそ「山」というステージを降りて、以前から気になっていた「海」のコースに行ってみることにしました。もっとも、原動力となったのはゴール地点にあるマグロが美味しい港の食堂です。
京急線の「三浦1DAYきっぷ」を利用して、三浦半島の先端まで旅をしてきました。
三浦・岩礁のみちについて
地図
関東ふれあいの道で紹介されているコース、松輪バス停から宮側町バス停の区間を歩きました。
コースタイム
- 9:24松輪バス停
- 10:06剱崎
- 11:27毘沙門児童公園
- 12:15盗人狩
- 12:55~13:28まるよし食堂
- 13:32宮側町バス停
行動時間は4時間8分です。
三浦・岩礁のみち ハイキング
三浦海岸駅からバスに乗って、大根畑が広がる松輪バス停
京急線の「三浦半島1DAYきっぷ」を購入しました。以下の特典があり、単純な往復料金でも200〜300円安くなります。
- 京急線往復&フリー区間乗車券(金沢文庫以降)
- 京急バスフリー区間乗車券
- 対象店舗・施設で優待
ゴール地点から三崎漁港に移動して、マグロを食べる場合は、「みさきまぐろきっぷ」がお得になります。
横浜駅から京急線特急に乗って50分ほど、三浦海岸駅に到着しました。
三浦海岸と言えば、2月から河津桜が咲き、たくさんの花見客が訪れる観光地です。夏も海水浴に来る人で賑わうのかな。11月はシーズンオフなので、駅前は閑散としていました。
駅前のバス停から「剱崎行き」のバスを待ちます。このバスは、1時間に1本しか出ていないので、電車での到着に注意が必要です。
9時14分のバスのり、三浦海岸のビーチ沿いの道路をゆっくり進んでいきます。
17分の乗車で、「松輪」バス停で下車します。大根畑のど真ん中にあるバス停。
このバス停が、「三浦・岩礁のみち」コースの出発地点になっています。ハイカーは自分たちだけで、釣り客が2組ほど降りていきました。
自分が知っているブランド大根は、桜島大根、聖護院大根、そしてこの三浦大根です。主にお正月用に出荷される大根界隈では流通量1%未満の希少種です。
これだけの大根畑を見せられては、帰りに買って帰りたい。
バス停から30mほど進んだところにデイリーヤマザキがあります。コース途中に小さな商店はありましたが、ここで買い物をしておくのが無難です。
店内を物色していると、この小さな地域の地酒「松輪」が販売されていました。後でネット検索しても出てこないので、マイナー中のマイナーなんだろうか。大根焼酎が売っているのも三浦らしい。
関東ふれあいの道の看板を辿りながら剱崎へ
関東ふれあいの道の案内板がありました。いくつかの漁港、湾、海岸を繰り返し、全長10.3kmのコース。
緩やかに海へと続く坂道は、どこか沖縄の離島に似ている風景です。育てられている作物が、サトウキビか大根の違いってだけ。
案内板を頼りにして、まずは間口漁港を目指して歩きます。
海岸に近づいていくと、民宿が立ち並んでいます。
漁師が経営する民宿に泊まって、美味しい漁師飯を食べてみたいなと思いつつ、漁港へと歩いて行きます。
今回のコースの第一チェックポイントである間口漁港に到着しました。
漁港は穏やかな空気が流れていて、打ち寄せる波の音と鳥の鳴き声以外は、船をメンテナンスする金属音が響いていました。
係留されている船はあまりなく、陸に上がっている船が多かったです。陸に上げられている状態を指す言葉はあるのかな?
漁港を進んでいくと「関係者以外 立入禁止」と張り紙があり、一瞬足を止めてしまいました。その下に「ハイキングによる通り抜けは可」とあり、ハイカーだけ許可されるって珍しいなと思う。
ちょっと分かりにくいけど、漁港の端っこにある堤防の脇から、「岩礁のみち」へと進入できます。
海だー!!!
ジャンプするような砂浜はなく、その名の通り、岩礁の海岸線です。
高台の上に見えているのは、剱崎灯台です。一度、建て替えられていますが、日本が開国の転換となった、江戸時代末期から存在する歴史ある灯台だとか。
ここは、「剱崎」と呼ばれていて、かながわの景勝50選の碑がありました。
神奈川県内をハイキングしているとたまに見かけ、鎌倉の天園ハイキングコース、陣馬山、真鶴半島で見かけました。この碑を探している人はいないと思うけど、普通は灯台周辺にあると思うよな…。
東京湾の入口に当たるところなので、大型船などの往来を見ることが出来ます。海の向こうには、千葉県の房総半島の山並みが見えていました。
岩礁のみちを進んでいきます。
歩き出して、10分ちょっとで気づきました。平坦なコースだし、楽勝・楽勝と思っていましたが、ずっと岩の上を歩くので、足は疲れます。
変形した岩の上を歩くことになります。ニューバランスできてしまいましたが、ソールの硬いトレッキングシューズでも良かったなと軽く後悔です。
こんな岩礁帯にも関わらず花が咲いていました。これはイソギクという花で、日本紀伊半島の固有種らしいです。千葉県から山口県までの海岸線にしか咲かないのだとか。
岩礁を登ったり降りたりを繰り返しながら、海で削られた複雑な地層を見ながらのハイキング。
海水が浸食している場所は、小さい橋が架けられていました。序盤は危なげな箇所はないです。
だいぶ、日焼けしてしまった岩礁のみちの看板。
最初の海岸線ゾーンが終わり、江奈湾が見えてきました。
江奈湾には、美味しい「松輪アジ」が食べられる「魚料理 松輪」があります。ゴール地点にある食堂が目当てなのでグッと我慢。アジフライだけ食べれば良かったかな…。
千葉の金谷港に行列の名店「さすけ食堂」ってのがあるけど、そこのアジと同じかな??
海岸は一区切り、一般道に沿って歩いて行きます。
江奈湾のアシ原と大根畑の奥にある毘沙門天
江奈湾は遠浅の浜「干潟」で、色々な生物が棲んでいるらしく、カニ類が多いのだとか。
歩道だと思って歩いていたら袋小路だった件について。
葦が生い茂っている浜辺がありました。
先ほどの解説看板によると、この葦原にはカニがいたり、野鳥が見られ、神奈川県内においては、この葦原は貴重な場所だそうです。
江奈湾干潟を過ぎると、分岐があります。
真っすぐ県道のトンネル方向には進まず、枝分かれしている坂道を進んでいきます。意識せず、トンネル方向に進んでしまったので注意。
坂道をトコトコ登っていくと、再び大根畑が広ります。
数分歩くと、馬頭観音と毘沙門天の石碑があり、その隣にふれあいの道の看板があるので、車一台の幅の農道へと入っていきます。
そして、大根畑を抜けると海岸へと続く坂道へと進みます。
その坂道の途中に白浜毘沙門天がありました。ソテツが生えていて、南国のような雰囲気がありました。
動物が入るので扉を閉めてくださいの注意書きがありました。ちょっぴり中を覗いてみます。
てっきり何もないかと思いきや、立派な祭壇がありました。左上には毘沙門天の肖像画がかかっていました。三浦七福神の一つで、お正月から1ヶ月間は、御朱印がもらえるみたい。
毘沙門天からは、さらに下り坂が続きます。
この辺りに大根を廃棄するところがあり、強烈な腐敗臭がしました。ポケットにしまっていたマスクを着用しました。
再び、海岸に出ました。こちらは岩礁ではなく、白浜でした。児童公園もあり、子供が遊べるビーチです。
海中の石柱と断崖を通り抜ける、スリルある海岸線へ
白浜だけど、貝殻の形を残したビーチなので、砂みたいにサラサラしていません。ただ、知る人ぞ知るプライベートビーチっぽくて良い。
海水の透明度は神奈川の海にしてはそこそこ綺麗でした。
ボッチキャンプをしているおじさんが3〜4人いました。日常から逃れて、孤独に癒しを求めてきているのか、ただ何をすることもなく、寝転んでいました。
さて、再び岩場登場で、ここからがアスレチックポイントです。そして、今回一番ヒヤヒヤした場所が、この場所でした。
崖の斜面に僅かばかりの足場があります。斜めになっている上に、砂が積もっているので、足を滑らせやすく危険です。
海側に滑ってしまうと1m50センチは落下して、打撲・怪我は必至です。
なんとか崖を乗り切ると、お次はコンクリート杭の足場が登場です。マリオの世界にこんな障害物あったなと。
崖が海面まで達しているので、人工物を作る他になかったんでしょう。ここは難なくクリアしました。
ずっと続く岩歩きに、足が少し疲労してきましたが、まだ湾の向こうの道を進まねばなりません。
再び、一般道に出て、次の海岸に向けて歩いて行きます。この付近には「毘沙門茶屋」という食事どころがあるので、休憩してもOK。
再び、漁港に入り、看板に従って進んでいきます。
トイレがあったけど、漁業関係者しか使えないやつかな。ちょっと、入るのには勇気がいるけど。
さて、3回目の海岸へと入りました。正直、海岸歩きはもう飽きてる…。最後の見どころである盗人狩を目指します。
海岸入口にダイビングスーツを着て、岩場に潜って、何かを獲っている3人組がいました。漁師かなと思いましたが、聞こえてくる言葉は日本語じゃなかった…。もしかすると…。
道らしい道があったのは序盤だけで、次第に自然そのままな岩場へと変わります。
このあたりはフラットな岩場が広がっているので、釣り人が20人くらいはいたでしょうか。何が釣れるんでしょうかねぇ。
日の当たらない森の木に「サルノコシカケ」って生えていますよね。そんなサルノコシカケが岩礁から突き出しているような不思議な地形になっています。
高さは50センチから1m、厚さは10センチの直線状に並んでいます。これらに物体としての名前が存在するのか、はたまた現象に名前があるのでしょうか。
波のエネルギーを感じる盗人狩と岩礁地帯
盗人狩に到着しました。三浦・岩礁のみちにおける最重要スポットです。たぶん。
20mの断崖にV字状の切れ込みがあり、海水の流れ込む入り江になっています。
昔、追いつめられた盗賊がこの地で渦巻く波濤を前に足がすくみ、ついに捕えられてしまったことから「ぬすっとがり」と名付けられました。
単純明快な理由でした。
しかし、この盗賊は何を盗み、狩られてしまった盗賊はその後どうなってしまったのか…。ヤンジャンあたりの漫画の世界観だったら、石を括り付けられて海に投げらえるとか、残酷な目にあってそう。
盗人狩周辺は石畳が広がっています。そして、写真では立体感が伝わりにくいけど、たくさんのサルノコシカケが発生していました。
なんやかんや疲れたので、10分ほど休憩していましたが、大量のフナ虫が周囲をモゾモゾしていることに気づき、先に進みます。
盗人狩の奥の方は、ボルダリング的に岩壁につかまりながらでないと難しそうです。
盗人狩を後にして、先へと進みます。
何千年・何万年かかっているかもしれませんが、打ち寄せる波のエネルギーによって作られた複雑な風景。油絵を虫メガネや顕微鏡で見たら、こんな景色が広がってそう
下から見上げると、怪獣みたいな岩壁がありました。ゴジラ岩とか名付ければ、名所ポイントが増えそうなものです。
岩礁を歩くのにウンザリしていた時に、アスファルト舗装された道が出てきて、ありがたっかた。さりげなく、天然の洞窟があったりします。
磁石みたいな棒がある関東ふれあいの道の石碑を見ると安心する。
ようやく、最後の港である「宮川港」が見えてきました。丘の上には風車が回っています。
これにて、岩礁歩きは終了です。
神奈川県の関東ふれあいの道のNo.1だからなのか、看板が毎回内容が違って充実しているなぁ…。
宮川港には民家は数軒ほど、大型の漁船はなく、とても静かな港です。
宮川港「まるよし食堂」の美しい赤身のマグロ漬け丼
宮川港の唯一の食事処「まるよし食堂」で食事にします。岩礁のみちのゴール地点にあるので、歩き切ったご褒美に立ち寄るハイキング客も多いとか。
このコースを歩く原動力の60%はこの店があったからです。
漁港によくある婦人食堂で、女性が切り盛りしている食堂です。店内の窓からは、漁港に停泊する船と湾が見え、旅情ポイントが高い。
メニューに一番人気と書いてあった中トロ漬け丼(1400円)を注文しました。三浦と言えばやはりマグロを食べずには帰れません。
こちらは、まるよし食堂オリジナルメニューの海かけ丼(1400円)です。マグロのスキ身の上にわかめの芽株が、とろろのように掛かっています。
飴細工のような光沢のある赤身は、ちゅるんと口の中にあり、嫌みも臭みもなく、旨味だけを残して消えていきました。とても、上品なマグロ丼でした。
大満足の食事を終えて、坂道を5分ほど登ると、「三浦・岩礁のみち」のゴール地点である宮側町バス停に到着しました。バスは1時間に一本しか来ないので、調整が必要です。
バスが10分前に出発したころもあり、せっかくなので三崎港まで歩いて行ってみます。徒歩25分くらいの距離でした。
三崎漁港でドーナッツを食べ、三崎マグロをお土産に
歩道がギリギリ幅しかない県道を歩くと、神奈川県最南端の三崎漁港に到着しました。
昼過ぎではありましたが、三崎漁港にあるマグロ料理の人気店「くろば亭」は外まで列がありました。気功で相手をぶっ飛ばせそうな仙人みたいな名物店主が有名で、テレビでもよく紹介される店です。
以前、「みさきまぐろきっぷ」で食べに来ましたが、名物のまぐろのカルビ焼きは、牛肉以上に牛肉じゃんみたいな食感で、ご飯が進むタレと絡んで最高に美味しかったです。
この日は、たまたまテレビの取材が入っており、「あっ、えっと、東京からきて、はい、お肉以上に美味しかったです…」と、たどたどしいインタビューが全国放送されてしまったことがありました。
三崎漁港の街並みは、一軒一軒が隙間なく建てられていて、狭い裏路地が迷路のように張り巡っています。メイン通りにはレトロな建物が多く、意外と若い世代の観光客が多い印象でした。
デザートを食べるため、「ミサキドーナツ」にやって来ました。鎌倉や横浜など神奈川にいくつか店舗があるローカルドーナツショップです。名前の通り、ここが本店です。
ショーケースには、美味しそうなドーナッツが並びます。
腰の曲がった地元のおじいちゃんが、8個ほどドーナッツを買っていくのを見て、定着しているんだなぁと思ったり。
お土産にドーナッツを購入し、イートインでレモンクリームドーナッツとアイスコーヒーを注文しました。マグロの後に食べるドーナッツ、”あり寄りのあり”である。
マグロきっぷはこの店も対象なので、次から次に観光客が来店していました。
2012年開業なので、歴史ある店じゃないですが、三崎港の文化交流スポットになっているみたい。店内に置かれたフライヤーの数が、それを物語っていました。
ドーナッツの甘さで疲れを回復した後は、三崎・城ヶ島観光の中心、「うらり」に移動しました。
この中は産直・市場になっています。マグロを買うために、ザックの中にはクーラーバックを忍ばせてきました。
電車で来ているので、鮮魚やホタテを箱で買えないのは残念…。1000円でゴロゴロと身が入っていたマグロカマのパックを買いました。
「うらり」から道路を挟んである三崎館本店は、古き良き旅館の風情がエモいです。
買い物を終えて、三崎港のバス停から、再び京急バスに乗り込みます。もちろん「三浦1DAYきっぷ」のフリー区間なので、運賃はきっぷを見せれば支払い必要なし。
渋滞に巻き込まれつつも20分程で、三崎口駅に着きました。京急線久里浜線の終点の駅です。
は?!よく見ると三崎マグロ駅でした。
それでは、再び京急線に乗って、帰宅します。
三浦市は神奈川県で唯一の消滅可能性都市に指定され、移住を推進しているのだとか。品川まで特急で一本、座席指定サービスあり、なので、稀に出勤が必要な会社なら選択肢としては良いな。山からは極端に遠くなるけど。
三崎漁港で買った脂の乗ったマグロのカマはバーベキューと竜田揚げに、三浦大根はゆず漬けとなますにして美味しく頂きました。
三浦・岩礁のみちのハイキングを終えて
10年以上の登山ライフを振り返ると、海岸がスタート地点、ゴール地点と言うのはありましたが、海岸コースを歩くのは初めての経験でした。
山登りと比べると精神的なハードルは低く、出発する前は「赤子の手をひねる」じゃないですが、気がとても楽でした。しかし、実際に歩いてみると、思ったよりも距離が長くて、時間が掛かったなと言うのと、硬く凸凹の岩礁に足をやられて、後半はグッタリでした。
しかし、美味しいマグロや海産物があり、山歩きにはない海岸ハイキングの魅力を発見できました。
「三浦・岩礁のみち」以外にも神奈川県には、海岸ハイキングコースがあるようなので、この冬、もう一度別のコースに出かけたいなと思いました。
コメント
山もいいけど、海もやっぱりいいですね。
それにしても「関東ふれあいの道」ってずいぶんストライクゾーン広いな。。
コメントありがとうございます。
夏のような賑わいがない海も新鮮で良かったです。
関東ふれあいの道って、気がついたら通ってるので、「あ、ここもか…」ってなります。
大勝軒の影響を受けたラーメン店のように…。
こんにちは。
登山が好きだが海岸を歩くという同じ記事に出会えたので、ちょっと嬉しくなったのでコメントさせていただきます。
私は膝を悪くしてから2~3年、三浦半島をあるいています。
最近は、毘沙門~松輪~剱崎~大浦~戸津浜海岸と歩いてきましたので、危険な石柱の道は私も通りました。
三浦の海は綺麗でよいですね。
山もそろそろ復活したいなと思っています。
赤石さん
コメントありがとうございます。
ずーっと山ばかりを歩いていましたが、目を向けると海岸の遊歩道など歩きごたえあるコースがたくさんあることに気が付きました。
住んでいるところからアクセスが良いので、最近よく三浦半島を良く歩いています。
海岸にせり出した石柱とか、あの辺の雰囲気はとてもいいですねぇ。山では味わえない体験ができます。
他にもおすすめのコースがあったら教えて頂けると幸いです。