2016年7月18日
奈良県と三重県にまたがる大台ヶ原に行ってきました。標高は最高峰の日出ヶ岳の1695mです。
大台ヶ原の定番である東大台コースを周回して歩きました。コースタイムは4時間弱ですが、変化のある樹林帯歩きが楽しめ、大蛇嵓などの迫力ある見所満載です。
大台ヶ原は2度目の訪問になるのですが、前回は大杉谷峡谷の縦走をして、山頂はガス兄(快晴でも山頂をガスらせることができる能力者)が待っていてくれたお陰で、周囲は何も見えないといった記憶の残らない山となりました。
今回は7月の連休に紆余曲折ありながら、大台ヶ原を単品でじっくりを旅をしてきました。
大台ヶ原について
地図
大台ヶ原のビジターセンターを起点に周回する東大台コースを歩きました。最も一般的なコースです。
コースタイム
- 4:08大台山上駐車場
- 4:43〜5:48日出ヶ岳
- 6:00正木ヶ原
- 7:15大蛇嵓
- 8:27大台山上駐車場
行動時間は4時間19分でした。
大台ヶ原 日帰り登山
祇園祭の京都から星空拡がる紀伊半島の奥地へ
2016年の海の日の三連休、紆余曲折ありながら、当てのない旅をしていました。
7月の連休は大抵の場合、天気が悪く、この年も例に漏れずそうでした。当初は白山に1泊2日で、予備で観光というプランでした。天気の良いところを求めていると、以下のような非常に変則な旅になりました。
- 1日目:南アルプス甲斐駒ヶ岳(テント泊)
- 2日目:京都の祇園祭観光
- 3日目:紀伊半島の大台ヶ原
というわけで、3日目の大台ヶ原の記録になります。
大台ヶ原の登山前日は祇園四条の夜を満喫し、飲み食いをしていました。深夜まで賑わい続ける京都の町を離れ、途中の入浴施設で汗を流し、奈良県を目指しました。
大台ヶ原の登山口のある駐車場についたのは真夜中。
見えないものを見ようとして望遠鏡を担いでいった午前2時です。紀伊半島の内陸部にはいわゆる光を放つ市街地がないため、満天の星空が迎えてくれました。天を仰いで2分後には箒星が流れました。
大台ヶ原登山口(4:08)
日出ヶ岳に向けてナイトハイク開始です。距離は1.9キロ。
真夏に1600mの山というと灼熱地獄ですが、さすがに真夜中はフリース一枚を着ていないと寒いくらいです。
真夜中にクマなぞに遭遇したら、一巻の終わりです。
去年(2015年)の大杉谷トレッキングで歩いている道なので、整備されていることはわかっていたので、ナイトハイクで迷う道でないことはわかっていました。
Nikonのフルサイズカメラをぶん回しながら撮影するのはレジェンド氏。
機材に惜しみなくお金をつぎ込み、1週間前にふと思いついた海外へ旅に出かける風来坊だ。撮影方法を学ぼうとレクチャーを受けようとするが、理系男子にしかわからないキーワードが並び、毎回のように挫折する。撮影には地球の自転を考量する必要があるようだ。
日出ヶ岳まで後わずかばかりところにある展望テラスまでやってくると、東の空がオレンジ色に明るみ始めていました。登っていると暑くなったので、上着を脱いで半袖です。
日出ヶ岳の山頂へ続く、階段を登ります。
大した距離でもないのに疲労を感じるのは、夜中まで熱気がたぎる京都の町を徘徊したからか…。
観光地のごとく整備された大台ヶ原は関西圏の人にとっては、一度は遠足や旅行で訪れる場所なのだろうか…。関東民でいう長野県の美ヶ原や霧ヶ峰のように。
山頂付近は笹原が広がり、高い樹木がなくなります。
日出ヶ岳の山頂に到着です。
高さ5mほどの展望台が建てられています。連休最終日にも関わらず、日の出を見に来る人が自分たち以外に4~5人ほどいました。
大台ヶ原の最高峰「日出ヶ岳」から見る日の出
日出ヶ岳着(4:43)
展望台に登り、東の空を眺めます。
山頂は風が強く、さすがにTシャツ一枚だと寒いです。標高1695mですし。展望台の上は標高1700mに達してるのかな?
大台ヶ原は紀伊半島の山の中と思いきや、意外と東に位置しているので、海が近いです。雲海が無ければ熊野灘が見えるはずでした。
フルサイズカメラでのタイムラプスが撮影されています。この作品を見ることは結局なかった…。現場では写真を数百枚撮ってるのに、共有されるのは数枚というレジェンドスタイル。
のっそりと太陽が顔を出し始めました。
関西地方で日の出を見るのは2度目で、2014年の秋に曾爾高原で見ています。大峰山の帰りの焼肉屋で、大台ヶ原で日の出を見るか、曾爾高原に行くかで検討したというのを覚えている。その時は、すすきの方が良くねとなったが、歴史は繰り返されるというわけか。
太陽がその全貌を表しました。
「大台ヶ原の日出ヶ岳で日の出を見る」
名前に日出と入っている以上、文字通りに実行しなければ大台ヶ原まで来た意味がないと、他の登山者にマウントをとることに成功です。
欲を言えば雲海が邪魔で、熊野灘の水平線から上がる方が完ぺきでした。
前回展望が全くなかったこともあり、個人的に大満足の日出ヶ岳です。
自分以外の二人も関西の高原で見る日の出に多少なりとも、いいものを見れたと思ってくれているようでした。
山頂は奈良県と三重県の県境になっています。ビジターセンターは奈良県にあるので、大台ヶ原は奈良県の山という認識。ちなみに日出ヶ岳は三重県の最高峰です。
展望台にいつまでもいると風が冷たいので撤収。
この日の本州においては紀伊半島だけが晴れていたようです。
西は大峰山脈が見えていました。
紀伊半島はどこまでも山が連なり、アルプスとはまた違った秘境感があります。余裕があれば何度も訪れたい場所なんですけど…。関東からはやはり遠く、別のエリアに行きがちです。
京都の八坂神社で購入した祇園水を飲んで、体に聖なる力が湧き上がってくるような気がします。ちなみにこれ200円しました。前回はこの展望台の下で、松坂牛を食べたな。あれは非常においしかった。
ガスガスの山頂で、感動の再開に熱い抱擁を交わしたっけな…。
感動の大杉谷トレッキングもまた必見ですので、よろしくお願いします。
立ち枯れの木が並ぶ東大台コースを周回する
ピークハントだけでは大台ヶ原の良さが1%もわからないので、東大台コースを歩きます。一旦、来た道を引き返します。
駐車場の分岐を正木峠へと歩いていきます。
7月下旬ということもあり、花はあまり咲いていませんでした。
花の最盛期は5月下旬から6月にかけてで、シロヤシオや石楠花が見られるようです。
前回のゴールデンウィークは、新緑が始まってもいない時期なので、もし晴れていたとしても、回っていなかったかも。それ以上に膀胱が弱い人がいて、全員疲れていたので、土台無理な話であったが…。
早朝の大台ヶ原は清々しく、人がいないので気持ちいです。正木嶺から下ります。
正木峠は高い木が生えていなく、立ち枯れています。大台ヶ原の象徴的な風景です。
正木ヶ原(6:00)
正木ヶ原となっている一帯です。
まるで十字架が立ち並ぶヨーロッパの墓地のような風景を作り出しています。
大峰山の八経ヶ岳でも同じように立ち枯れした場所がありました。鹿による食害と言われていますが、立ち枯れ現象は実際のところ原因不明と言われています。
展望デッキとベンチが整備されていて、ハイキングコースとして優秀、とても歩きやすい。雨が降ってたりするとつるつる滑って大変そうではありますけど。
奥には雲海のない熊野灘が見えていて、極めて爽快。
登山初期の頃にガイドブックで見る大台ヶ原は「退屈そうなところで、遠くて、わざわざ行くくらいなら、アルプスとか東北に行った方が良かったな~」と思っていました。
過去の自分にドロップキックをしたいくらいです。
ただ、いろいろなところを旅したからこそわかるものもあるはずです。一面、熊笹に覆われる山の斜面は緑一色。ちらほらとツツジの木が生えているので、きっと時期が早ければシロヤシオが見られるんだろうなと思います。
昨晩は祇園の賑わいの中にいたせいか、風に揺られる笹の葉が擦れる音がよりクリアに聞こえます。
大台ヶ原について、詳細に書かれた看板が設置されています。
ネットで大台ヶ原の情報を調べるより、現地を歩いたほうが学べることが多い。
自分は人よりキョロキョロと見ながら歩く系なので、遅いペースなのですが、レジェンド氏は尚のこと遅い。裸婦をデッサンする芸大生のように丁寧に写真を撮っていますが、いまだにその作品を見たことはありません。
完璧主義らしく、見せてもらえないのです。
立ち枯れのエリアから変わって、鬱蒼とした樹林帯に入りました。まだこの時間の日陰はひんやりと涼しいです。
徐々に蝉も鳴き始めてきました。一本の木道を歩いていきます。
途中に神武天皇像がありました。
神武天皇本の初代天皇とされている神話・伝説上の人物。神武天皇が紀伊半島を旅したという伝承があり、たぶんですが方角的に熊野の方を向いているようです。
神武天皇の像の奥には笹原が広がっていて、牛石ヶ原と名がつけられていました。牛石は実際にありますが、写真を撮り忘れ。これも何かの伝承があるようです。
牛石ヶ原を抜けると、大蛇嵓がある分岐がありました。
一旦、周回コースから外れるように歩いていきます。距離は大したことないのですが、岩場も出てきて少し険しくなります。
絶妙に設置された木造の階段を登ると展望がよくなります。
2メートル幅の岩の上、木がなくなると断崖絶壁にいたんだと気づかされます。両サイドに鎖の手すりがありますが、そこから転げ落ちるとアウトです。
しかし、恐怖に打ち勝たないと大蛇嵓は顔を出してくれません。
大台ヶ原のシンボル、大蛇嵓の絶景と大峰山脈
大蛇嵓(7:15)
大蛇嵓が出現しました。
山の中腹から突出している岩壁はまさに大蛇のようです。大蛇嵓の「嵓」ってなんだよって思って調べると、山の岩石という意味らしいです。岩と同じで読みは「がん」。ちなみに、尾瀬の燧ヶ岳に俎嵓という山頂があります。
手前の山脈の奥には大峰山脈が並んでいます。
近畿地方の最高峰である八経ヶ岳(はっきょうがたけ)には登りました。しかし、本来は吉野から熊野へ抜ける古来よりの修験道がメインなので、いつの日にか歩きたいと思います。営業する小屋が少ないので、アルプス縦走より大変なのは間違いない。
絵になるレジェンド氏。
写真撮影技術だけではなく、ポージングスキルもマスターしているので、非常に勉強させていただいています。基本的に教えてくれないので、見て学ぶスタンスです。
入れ替わりも大変です。混んでる時間帯だとまともに写真撮れませんね。
ちなみに早朝だと大台ヶ原本体の影が大蛇嵓に掛かってしまうので注意しましょう…。
紅葉の10月下旬~11月上旬頃の紅葉期の方が、より映えると思います。
大蛇嵓をひとしきり楽しんだ後は駐車場を目指して下山を開始します。
しかし、ここで気を抜いてはダメで、一度グッと下ってから、グイっと登るので体力は残しておく必要があります。
しばらく歩いて行くと下り坂になり、清流の音が聞こえてきました。この時間帯になると樹林帯も暑くなり、汗がダクダクです。
日陰であじさいが咲いていました。
雨量が日本一とも呼ばれる大台ヶ原のあじさいですから、きっと他よりも逞しいのでしょう。
シオカラ谷と呼ばれるところです。沢の水を触るとひんやりと冷たく、顔を洗い汗を流しました。
緑が眩しく、思わぬ癒されポイントでした。まぁ、この後に絶望的な登り坂が待っていますが。
沢に降りていますが、対岸へ行くには吊り橋を渡る必要があります。
立派な大吊橋で、大杉谷を歩いた時を思い出しました。
最後の急坂をヒイヒイ言いながら登ります。
前日は登山はしていないですが、南アルプスのテント場からの移動、夜の京都観光からの夜通しの移動をしているので、体力はガタガタです。
急坂を登りきると、道路を走る車やバイクの音が聞こえてきて、後は平坦な道を歩き切ります。
大台ヶ原登山口(8:27)
無事に駐車場に戻ってきました。
大台ヶ原のこの巨大な碑の前で、「大」の字になってしまう程に疲れ果てました。日差しがガンガン照り付けて、気温も20度後半になっているようでした。標高1000m台ということもあり、早朝から登るのが良いのかもしれません。熱中症待ったなし。
ビジターセンターがあるので、時間があれば立ち寄ってみてください。大台ヶ原や紀伊半島の自然や気象を学ぶことができます。温泉の情報もここで仕入れていきましょう。
ウィンドウズの壁紙のような曾爾高原へ
おまけ的な意味で、大台ヶ原から東京へ帰る途中に曾爾高原に寄り道しました。秋のススキが有名で一度訪れていますが、夏もまた違った一面が見られました。
秋には黄金色に輝く場所ですが、夏はアニメに描かれるようなド直球的な夏の景色です。
コンパクトなモンゴル風景。遊牧民の白いテントがあったとしても違和感がなさそうです。
レジェンド氏は意外なことにこういう風景が良いらしく、熱心に撮影に興じていました。
夏らしい雲と草原にできる雲の影がとても穏やかです。気温は30度を超えているので、かなり暑いのですけど。
寄り道といっても、紀伊半島の難しい道をくねくねと1時間強ほど運転するので、距離的におススメはできませんが、夏の曾爾高原はウィンドウズの壁紙的な風景が見られます。
秋に曾爾高原を歩いた記事です。
そして、大台ヶ原から下山して数時間が経過しましたがようやく温泉に入ります。曽爾高原温泉「お亀の湯」はとても山間部にあるとは思えない充実っぷりと、露天風呂の広さが良いです。料金750円です。
下山後の瓶コーラが夏の喉を潤します。
そして、昼がまだだったので併設するレストランで食事を取りました。
ご飯にたれの味が染みた焼肉丼をかっ込みました。やはり下山後は肉です。
そして、運転を交代しながら、渋滞する東名高速道路に乗って、東京へと帰りました。
大台ヶ原の登山を終えて
大台ヶ原は比較的簡単に登れる為、軽視されがちの山ですが、じっくりと歩いてみる価値の山です。
同じ百名山と言うことで、大峰山とセットでよく登られたりしますが、この山だけを目的に来ても損はありません。大杉谷からの縦走と日出ヶ岳から日の出と2回の登山で、関東民としては大台ヶ原をより堪能できたと思っています。
自分たちのように京都の祭りからの登山というのもありかも知れません。やろうと思う人はいないと思いますが…。
時期的には5月下旬ごろの花期、10月~11月の紅葉期がベストシーズンですが、夏の大台ヶ原も鮮明な緑が色濃く、今回の登山で大きな記憶として残りました。
紀伊半島にまだまだ歩いてみたいところがあり、今後何度か訪れることになるかと思います。大台ヶ原には西大台コースという許可がないと歩けない秘密のコースもあるようですし…。
大杉谷から大台ケ原の縦走記事
三重県側からの大杉谷から縦走して大台ヶ原へと抜けた縦走記事です。併せてご覧下さい。
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