北アルプスに登山に行った帰りの売店で、「さるぼぼ」という人形を見かけたことはないでしょうか。顔の描かれていない赤い人形で、可愛らしくあり、ちょっとだけ不気味なデザインです。岐阜県の飛騨高山地方に伝わる工芸品で、ルーツは奈良時代に中国から伝わった人形にあるようです。
諸説の一つですが、さるぼぼの人形は流行病を避ける目的で作られたという説があります。
赤色は魔よけの効果があると信じられていて、子供に贈られていたそうです。
現在でも残る疫病の名残
福島県の会津地方に伝わる「赤べこ」もさるぼぼ同様に天然痘に由来する説があります。会津地方も飛騨高山と同じ山に囲まれた地域で、共通して今でも残っているという点で興味が沸いて調べた次第です。
現在では会津地方の感染対策のシンボルとして活用されているようです。
飛騨と会津、遠く離れた山間部の地域に共通した郷土玩具が残っているのが、興味深かったので紹介させてもらいました。
新穂高方面の山や磐梯山に行った時、お土産屋で探してみてください。
天然痘に由来するもので最も有名なのは、奈良の大仏です。正式には東大寺盧舎那仏像。建設の背景には、天然痘の大流行があります。アマビエという妖怪が話題になりましたが、疫病を背景としたものが、現代においてたくさん残っているようです。
天然痘ウィルスの脅威
というわけで、日本を恐怖に陥れた天然痘を調べてみました。
奈良時代(710年~794年)は朝鮮半島との交流が盛んに行われていました。中国の先進的な技術、文化、政治制度が島国の日本に伝わりました。特に仏教は遣唐使によって伝播することになりました。
しかし、この交流は良い面でもなく、「目に見えることのない最悪なもの」を伝えてしまったのです。ウィルス、そう天然痘です。
天然痘は恐ろしい疫病でした。「でした。」と表現するのは、現在は完全にゼロになっているからです。人類が史上初めて撲滅した感染症だからです。
天然痘は紀元前から存在し、撲滅できたのは1900年代に入ってからです。人類は3000年以上、天然痘に苦しめられ続けたのです。
パンデミックの死亡者数を表現したインフォグラフィックスです。
天然痘は世界第2位、推定で3億人から5億人の死亡者数です。日本人の累積人口(過去を含めた人口)が5億人と言われてますから、日本が存在しなくなるほどの数、世界中の人間を殺してきたウィルスです。恐ろしい…。
しかし、天然痘の約3倍、人類を滅ぼしかけたペスト(黒死病)の圧倒的1位感は異常。感染が広がったヨーロッパ、特にイタリアの一部では大きな町が全滅するほどだったらしいです。戦争で隊が全滅、ゲームでパーティが全滅はありますが、町が全滅する疫病の脅威さよ。
現在、流行している新型コロナウィルスは図中では豆粒です。
この豆粒がどこまでの大きさになるのか…。小さいままで終息することを願うばかりです。
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