登山南アルプス

【南アルプス】山伏・大谷嶺 〜 熊笹の平原と山体崩壊、二刀流の景観を楽しむ旅

山伏

2023年11月4日

 静岡県と山梨県にまたがる山伏やんぶし大谷嶺おおやれいに行ってきました。標高は2013m、1999mです。

安倍川の奥地「阿部奥」エリアにある山で、また、南アルプスに属する山です。山伏はくまざさで覆われた平たい山頂で、大谷嶺は山体崩壊で斜面が崩れていて、隣接しているのに全く違う特徴の山です。

山伏

「よし、今週は山伏に行こう!!」と決めたのに、「もっと他に良い山があるんじゃないか?」と変更される筆頭の山でした。「山伏」という特徴的な名前を知ってから、10年以上温めていた登山でした。

良い山なんだけど、ちょっと遠すぎる、そんな旅をしてきました。

山伏・大谷嶺 往復コース

高速ICから山道で2時間以上、百畳平登山口から山伏

蓬峠

この旅は職質からスタートしました。

仮眠する予定だったSAを通り過ぎてしまい、新静岡IC近くの公衆トイレ駐車場で寝ていると、警察官に車をノックされました。そりゃ、未明に黒のボックスカーに男3人が寝ていたら、闇バイトの臭いしかしない…。

警察の手を煩わせない登山者になりましょう。

百畳平駐車場
百畳平駐車場

山伏の登山口がある百畳平駐車場です。

南アルプスの深南部エリアって、気が狂いそうになるくらい山道が長いです。ICから登山口まで2時間以上は、これは国内において相当な距離。

山伏登山

百畳峠登山口より入山です。

ゆっくり歩いて山伏山頂まで1時間です。なので、一番メジャーな登山口なのかな?

確認ですが、山伏は「やんぶし」と読みます。法螺貝を吹く修行僧の「やまぶし」とは違います。

山伏登山

傾斜も緩やかで、歩きやすい登山道です。それと、樹林の密度がまばらなので、人の手が入っているようです。

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11月上旬はすでに枯れ落ちている木が多数で、紅葉のピークは1週間前の10月下旬のようです。まぁ、そこまで紅葉に期待してきたわけじゃないですが、現地来てみたら残念ではあります。

市営山伏小谷

立ち寄りませんでしたが、市営山伏小屋があるみたいです。無人小屋らしいですが、縦走とかする人が利用するのかな。

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針葉樹林帯へと変わりますが、以前として傾斜は緩いです。

標高2000mを超える山ですが、美ヶ原や霧ヶ峰のような観光ハイキング気分で登れます。登山口までの遠さがエクストラハードですけど。

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抜けのよい空間に出ました。どうやら山頂が近そうです。

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山伏には、ヤナギランの群生地があるようです。開花時期は8月中旬頃とされており、その季節が山伏を訪れるのに最適な時期のようです。一帯がピンク色に染まるみたいです。

山伏から富士山
山伏から富士山

東側の展望が開けて、富士山が見えました。

箱根や丹沢と距離は変わりないので、大きく富士山が見えます。ただ、東側から見ることがないので、新鮮に感じました。

山伏の山頂

山伏の山頂が見えてきました。熊笹が茂り、フラットな山頂です。雰囲気的には四国の剣山と似てる気がする。

山伏は「やんぶし」と読む、熊笹に覆われた平たい山頂

山伏の山頂

山伏の山頂に到着しました。

よく見る団子状の看板ですが、3文字目の「」の字が意図的に剥げていました。「山伏」という名前にこだわる人が消したのでしょうか…。興味はないですけど。

おさらいですが、「やんぶし」と読みます。

山梨百名山

山梨百名山の看板がありました。山頂は、山梨県の角っちょなのです。山梨百名山は特にカウントしてないけど、実質、百個クリアしていると思ってます(横暴)。

標高2013m、2014mなので、今から10年前に標高年の山として話題になりました。

山伏の山頂
山伏の山頂

山頂看板が5、6個乱立していました。

山頂展望視野率は50〜60%くらいで、全貌が見えるわけじゃないです。3000m峰が並ぶ、南アルプスの核心部を眺めることができます。

山伏から大谷嶺

それでは、山伏から大谷嶺を目指しますが、まるで雑木林のような風景が待っています。「展望至上主義者」の我々は、正直進む気が起きない。

山伏
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こんな遠くまで来て、奥多摩みたいな道を歩きに来たわけじゃない」と、定型句化した悪態をつきながら、1時間以上歩きました。

山体崩壊が見れる大谷崩、脆く細い稜線歩き

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「そろそろ引き返して、ダムとか観光しない?」と、本気で言い始めた頃、山肌が剥き出しの大谷嶺が見えてきました。長野県の浅間山のように、まるで火山を思わせるような迫力のビジュアルです。

大谷崩

これは、大谷崩おおやくずれと呼ばれていて、今から300年以上前の1707年に発生した宝永地震によってできた山体崩壊です。

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大谷崩

大谷崩の風景は圧巻で見応えがありますが、これは江戸時代に発生した南海トラフ地震の爪痕です。そのため、近い将来起こると言われている地震を想像すると恐ろしく感じます。

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新窪乗越に降りたら、大谷嶺への登り返しです。大谷崩を直登するルートがあるようですが、バリエーションなのかな。

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登山道がガラリと変わり、岩肌を登っていきます。

大谷崩

高度感が凄いです。

崩壊から300年以上経っても植生が復活しないのは、台風や大雨でダメージを受け続けているからなのかな。

大谷崩

山体崩壊の鳴動に、失くした感情を取り戻す我々でした。

大谷嶺が見えてきた

最後の登りがなかなか長い。

大谷嶺が見えてきた
大谷嶺の紅葉

この辺りは、砂礫の斜面に生えているカラマツの黄色い紅葉がいい感じでした。

大谷嶺が見えてきた

脆そうな細道で、北斜面には頼りないロープが張ってあります。

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山体崩壊している斜面に転げ落ちたら肉体崩壊待ったなしです。

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急角度の坂道を登り終えてると、いよいよ山頂が見えてきました。

標高2000mの大谷嶺

大谷嶺

大谷嶺に到着です。

山伏からは2時間20分くらいかかりました。前半の樹林帯が異様に長く感じました。

大谷嶺

山頂も崩壊していますが、意外に広々しています。マニアックな登山者しか来ないから、柵などの安全策は考慮されていません。

大谷嶺

標高2000m?標高1999m?なので、ノストラダムスの大予言、コンピュータの2000年代問題が騒がれていた世紀末イヤーに、この山の登山は盛り上がっていたのかな?

盛り上がってなさそうだな…。

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見た事ないデザインのファンタオレンジ缶が捨ててありました。この缶は、2000年よりもっと前から存在していますね。

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全方位とは言えないものの、南アルプスの眺めがありました。北岳とか間ノ岳あたりが見えてるんでしょう。たぶん。

登山口を出発して、何度かの登り返しがあり、3時間以上が経っているので、お腹ペコペコだったおにぎりでチャージ。

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「大谷嶺」は「おおやれい」と読みますが、漢字的には世界の「大谷」と同じなので、ストック二本を素振りして、大谷の真似します。二刀流はそういう意味じゃないですが。

野球ファンがたくさん登りに来てると思ったが、登山する人は別に野球好きいないか…。

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大谷嶺の先には「八紘嶺はっこうれい」やさらに先には「七面山しちめんさん」などの山と繋がっているらしいですが、よほどの強者じゃないと歩けない距離です。

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下山を開始しますが、山伏まで戻るのも一苦労です。

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日が高くなり、富士山の冠雪具合も見えるようになってきました。

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山伏に戻ってきました。帰りは2時間10分で、標高差がないので往路と時間は10分しか違わずでした。夏雲みたいな大きな雲が上がってしまい、再びの富士山を見ることはできませんでした。

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山伏からの下山は緩やかなので気が楽です。綿毛のような草木がありましたが、これが、ヤナギランの名残りなのかな。

山伏
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13時3分に下山完了です。7時間3分の登山で、個人的には久しぶりにがっつりと歩きました。

口坂本温泉

山伏の登山口があまりにも秘境なので、温泉への移動も大変で、山道を1時間以上移動しました。

秘境の口坂本温泉、丁子屋でとろろ汁でご飯を食べまくる

口坂本温泉
口坂本温泉

口坂本温泉」に立ち寄りました。字面が珍しく、「口」がチェックボックスに見えてしまう。

静岡サイダー

この時代に300円という驚きの安さで利用できる温泉です。山林を眺めながら入れる露天風呂も素晴らしく、登山後に立ち寄った温泉の中では、個人的に特に高評価でした。

とろろ汁 丁子屋

山伏から最寄りでもなく、かなり街中まで移動しました。本日は「丁子屋ちょうじや」でご飯を食べます。400年以上歴史がある、とろろ汁の老舗です。

とろろ汁 丁子屋

休日は10組、20組の待ちが発生する超人気店らしいです。まずは、開幕のだし巻き卵が美味しい。

とろろ汁 丁子屋

お椀に入ったとろろ汁が登場です。そして、3人分のご飯がお櫃で提供されました。ご飯はおかわり自由です。

とろろ汁 丁子屋

ご飯の潤滑油となったとろろは、気がつけば2杯、3杯と箸が進んでしまいます。5杯目食べたところで「これ、胃、やばいんじゃね?」と、気づきストップ。

とろろ汁 丁子屋

東海道を行き交う旅人の力となったとろろ汁、恐るべしです。

静岡ななや
丸七製茶

お腹いっぱいだけど、アイスは別腹だよねってことで、静岡市内まで移動し、「ななや」で濃厚抹茶アイスを食べてフィニッシュでした。

山伏・大谷嶺の登山を終えて

大谷嶺と富士山

同じアーティストでもピアノ主体のバラードが得意かと思えば、ボーカルがシャウトするロックも得意なように、隣接する山伏と大谷嶺は、それぞれ異なる魅力を持ちながら、山としての「幅広さ」を感じさせてくれる存在でした。まるで、「二刀流」のような登山でした。

大谷嶺

初めての阿部奥エリアでしたが、アクセスのハードルが高いものの、久しぶりに新しい場所を訪れる新鮮な気持ちを味わうことができました。他にも良い山がたくさんあると思うので、また別の山を調べて登りに来ようと思います。また、観光としても訪れてみたいと思いました。

VERYBLUE
VERYBLUE

おすすめの山があればコメントで教えてください

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