2019年2月3日
群馬県の上州武尊山に行ってきました。標高は2158mです。
雪山登山の定番の一座で、冬の方が山頂までの距離が短いという稀有な山です。川場スキー場のリフトトップからアプローチし、往復4時間~5時間程です。谷川岳から利根川を挟んで東側に位置し、標高1800mからはかなりの積雪量があります。
「GUNMA 2020」
2020年は東京オリンピックが開催する歴史的な年です。しかし、登山界では間違いなく、群馬県の武尊山がフューチャーされるでしょう。武尊山の一部を構成する剣ヶ峰山の標高は2020m、そう年山です。雪が真っ白に積もる稜線歩きが魅力的で、特異なシルエットの剣ヶ峰山は圧巻でした。
バイブス上がる若者ボーダーに紛れ込み、ゲレンデから雪山を旅してきました。
冬の武尊山について
地図
川場スキー場のゲレンデトップから往復するコースです。
コースタイム
- 09:14川場スキー場ゲレンデトップ
- 09:48剣ヶ峰山
- 11:30武尊山山頂
- 12:57剣ヶ峰山
- 13:26川場スキー場ゲレンデトップ
行動時間は4時間12分です。
川場スキー場の雪山登山
川場スキー場から雪山登山をする場合、2つの義務が発生します。
- 川場スキー場専用の登山届の提出
- 「ココへリ」装着を義務
リフト利用料は以下になります。
リフト料金 | 「ココヘリ」レンタル料金 | 合計金額 | |
---|---|---|---|
リフト片道利用 | 1,200円 | 1,100円 | 2,300円 |
リフト往復利用 | 2,400円 | 1,100円 | 3,500円 |
詳細は川場スキー場のサイトを参照して下さい。
冬の武尊山 登山
冬の武尊山の入口、青春が煌めく川場スキー場
武尊山は終電で出発するには近く、始発で集合するにはちょっと遠いという微妙な距離感です。前日、車を出してくれるなべ氏の家に泊まり、リフトが動く前に到着する算段です。
真冬にしてはよく晴れた日で、水上に近づいてくると白い山脈が見えてきました。
川場スキー場に到着。ゲレンデ直結の駐車場に入るためには、ゲレンデ開始の30分~1時間前に到着することを推奨します。電車+シャトルバスまたはスキーツアーバスでも来れます。
前泊させてもらったなべ氏の猫、もんじゃ。夜中、寝ていたところにやってきて、狂ったように自分のザックに体をこすりつけていました。生魚の臭いでもしていたのでしょうか…。
川場スキー場は雪山登山者に理解があり、専用のカウンターが設けられています。登山届を提出しないとリフト券が買えないシステムです。
登山者専用のICカードリフト往復券を購入しました。
料金はリフト料金2000円+「ココヘリ」レンタル料金1000円の合計3000円。500円はICカード返却時に戻ってくるので、実質2500円です。
LINK https://www.kawaba.co.jp/snow/activity/snow-trekking/
ホームページを事前に確認し、登山届を印刷して記入しておけば手間が省けます。
川場スキー場はボード率が高いので、大学生が多い。そんな、 若者が青春を繰り広げるゲレンデを中年男二人でライドする地獄。 かつては、そんな輝かしい時代もあった…。いや、無かったかな。
本日はネトウヨ系登山者のなべ氏との二人旅です。
リフト乗り替えが一回あります。とぼとぼ、200mくらいゲレンデを横切ります。
リフトの上部、1800mを越えてくると武尊山が見えてきます。
武尊山は日本百名山に属していて、登山界では知れた存在。しかし、一般知名度は皆無に等しい。その証拠に武尊山の周辺はスキー場がたくさんあるが、「ほたか」の名前がついてるのは、オグナほたかスキー場くらいしかない。
赤城山、谷川岳、尾瀬が周辺にある山岳激戦区なので、武尊山のブランド力が少し低いのが残念である。
と言う感じで、ゲレンデトップに到着。麓から20分くらいかかりました。
登山口はリフトを降りたところにある作業用のスペースの奥です。登山者に理解のあるスキー場です。下山用のスキー板をデポする人もいました。
標高1870mのゲレンデトップ。遠く離れた富士山が見えました。暖かい日だったので、大気の層のようなものが出来ていました。
標高1870mのゲレンデから登る剣ヶ峰山
ゲレンデからまずは剣ヶ峰山を目指します。標高差は150mです。冬季以外に川場スキー場は営業していないので、3シーズンより距離が短いです。他に冬の方が距離が短い山とかあるかな…?
大迫力の岩壁を目の前に進んでいきます。雪山としてはメジャーな山なので、トレースはついています。
降雪直後だったりすると雪が溜まりやすい場所なので、ワカンが無いと大変です。
岩壁を西側から回り込むように登っていきます。序盤にして最大の傾斜で、ここを進むのは本当に大変でした。
息を切らしながら登っていきます。平坦な関東平野で暮らす茨城県民のなべ氏は、この傾斜にたいぶやられていました。徒歩10分のコンビニでも車を使いますし。
苦労して坂道を登りきると、武尊山より西側の展望が広がりました。谷川岳をはじめとする上越国境の山々です。谷川岳は冬に3度も行きました。もうお腹いっぱいです。
この辺りで、ゲレンデの雑音は消えました。
突起した剣ヶ峰山が見えてきました。
まるで、夜中にチョコレートを食べて、翌朝出来たにきびのような出っ張り具合です。ただ、剣って感じの鋭さは感じられない。反対側から見ると、その名のとおりであることがわかります。
山岳信仰の山なので、小さな祠がありました。冬でも熱心な地元の人が掘り返しているのでしょうか。
剣ヶ峰山に近づくにつれて、徐々に道幅が狭くなります。晴れてれば良いですが、ガスっている場合は、歩きたくないですね。ご覧の通り、両サイドはかなりの傾斜です。
登山者のすれ違いが困難な程、極細の登山道。そして、風を遮るものは一切なし。風に煽られないように慎重に歩みを進めます。
極細の道の果てに標高2020mの剣ヶ峰山
剣ヶ峰山に到着です。標高2020m、果たして2020年オリンピックの年に五輪を掲げる登山者が現れるのでしょうか?!誰かの忘れ物の熊のぬいぐるみが吊り下がってました。
剣ヶ峰山より先にどっしりと重厚感のある武尊山の本体が見えてきました。稜線より右側の斜面はカールのような地形になっているので、吸い込まれるような白さがあります。
雪山の美しい写真を収めるため、ポケモンの進化を止めるBボタンを連打するかのようにシャッターボタンを連打するニコ爺。
さて、剣ヶ峰山から武尊山に向けての下りはかなりスリリングです。先行者が慎重に降りていたので、並びました。夏場は鎖のある岩場になっているところです。
自分の番が回ってきました。
ストックを両方ともしっかりと刺さり、アイゼンがしっかりと刺さったことを確認して下ります。ここはトレースがある状況の方が、雪が固まって怖いかもしれません。
滑落を考えて先行者との距離を空けておきましょう。
足をピンと伸ばして状態で段差を降りる所作は、冬場だと特に怖いです。谷川岳の天神尾根ルートにはこのようなところがないので、危険度は武尊山の方が上だと思う。
樹氷がつくられたアップダウンの稜線歩き
剣ヶ峰山をくだってしまえば、稜線伝いに武尊山を目指していきます。急激なアップダウンはありませんが、往復すると結構ヘトヘトになります。
西側斜面は樹林帯になっていて、一部が樹氷(スノーモンスター)化していました。
少し進んだところで振り返る剣ヶ峰山。逆サイドから見た目が全然違います。冬の武尊山と言えば、白く染まった剣ヶ峰山が醍醐味でしょう。
鳥取県の伯耆大山も剣ヶ峰があり、その風景と類似しているのを感じます。
剣ヶ峰の見え方は場所によって異なるので、たびたび振り返って、ベストな剣ヶ峰山を見つけましょう。
武尊山って、パソコンやスマホによって、変換が出てこない場合があります。その場合、「ぶそんさん」で変換しているのは自分だけじゃないはず。
そうなってくると字面が「北斗の拳」原作者の武論尊に見えてきますよね。ちなみにこのペンネームは60年代アメリカのムービースター「チャールズブロンソン」から付けられています。超有名なフレーズ「う~ん、マンダム」のCMで一世風靡。
この武尊山には男臭さを感じるのは偶然でしょうか(個人の感想です)
CMで使われた曲「マンダム~男の世界」は、日本で130万枚も売り上げるヒットしたのだから、すごい時代なんだなと思う。
カントリーポップ調の陽気な音楽で、古臭さは感じるけど、馴染みやすいメロディーライン。 是非、Youtubeなどで検索して欲しい。
話がだいぶ逸れているが、剣ヶ峰山~武尊山の稜線は、たまに道幅が細くなるものの危険個所はない。トレースを辿れば何の問題はないです。
視界不良になった場合は、進行方向の右手(東側斜面)が切れ落ちているので注意しましょう。2019年は冬季遭難事故が2件あったようです。その影響で2019年4月からココヘリ加入が必須になりました。
写真の右手の西側(日本海側)にだけ樹林があり、スノーモンスター風に形成されているのが面白いです。お隣の谷川岳だと一本も高木が生えてませんから。武尊山特有の風景と言えます。
ほぼほぼ一緒のところから撮影した秋の一枚。熊笹とハイ松に覆われている稜線です。
登山者の誰よりも汗をかく男なべ氏。雪山の稜線においてもそれは変わらず、Tシャツ一枚にチェンジ。
コースタイム以上に長く感じた稜線は終盤、山頂直下までやってきました。武尊山の左肩付近まで急な登りが始まります。
息を切らしながら登ります。剣ヶ峰山はあんなに小さくなりました。
山頂の方付近まで登りきると、山頂はあと少しです。
群馬全域の山々が見渡せる武尊山の山頂
武尊山に到着しました。
リフトトップを出発、登山口から2時間15分かかりました。登り時間としては短いですが、アップダウンが何回もあるので、体感時間は長く感じます。
「ん~マンダム」と唸ってしまう完璧な晴天。360度の展望を楽しませてもらいました。剣ヶ峰山の奥には浅間山、左手には赤城山が見えます。
栃木県民、茨城県民が群馬県の山でイキる。
平標山とか苗場山とかの方角、さすがに北アルプスまでは見えません。
谷川岳の斜面。
遭難者世界一として、「世界の山ワースト記録」としてギネス認定されています。詳しいことはわかりませんが、写真の岩が露出して黒くなっている部分を、60年代~70年代の登山家は挑戦したようです。
こちらは栃木県の方角です。谷川岳、武尊山のガードによって、積雪量が少ないのが目に見えてわかります。飛びぬけて高いのは日光白根山です。
2月3日、節分と言うことで儀式的に恵方巻と豆まき(豆食い)を敢行しました。恵方を山頂で探すのに、グローブ脱いで、スマホ捜査したので、指の感覚がなくなりかけました。
大ヒットした「ボヘミアンラプソディー」に影響されてのポーズ。
QUEENを語り始めると前日のマンダムの比ではなくなるので控えます。「う~ん、ママー!!!」
そんな寸劇に興じてたら山頂から誰もいなくなる。我々も下山を開始します。
天候のみるみるうちに変化、武尊山より脱出
下山を開始して10分ちょっとで、西側からやってきた雲に空が覆われました。冬の天気は変わりやすい。今までの晴れ間の方がイレギュラーです。
太陽の光がなくなり、どんよりとした剣ヶ峰山。
たまに「剣ヶ峰」と表記している人がいますが、それはフェイクニュース。剣ヶ峰山が正しく、剣ヶ峰は別のルートに存在します。
剣ヶ峰山を再び登り返し、登るときは下りほどの危険はありませんでした。
きっと、2020年は盛り上がるんだろうな…剣ヶ峰山。
剣ヶ峰山を登り切り、先ほどまでいた武尊山を眺めます。いつの間にか木についていた雪が溶けていて、風景の黒面積が増えていました。
稜線歩きの帰りは体力削られます。雪山はシーズン2~3回しか登らない自分としては毎回ヘトヘトです。
帰ろう、群馬へ。
ちなみに今回の場合、ピッケルとワカンは使うところが全くなかったです。往復するので状況を見て、どこかに放置して回収するのが良いかもしれません。最後の登りの直前ではザックをデポってる人もいました。
ゲレンデまで戻ってきました。
「ここでお待ち下さい」と、イレギュラーな登山者に理解のある看板です。
「きゃ~!!!雪山を登る登山者よ!カッコイイ!!」
「ゲレンデを滑っているだけの僕たちでと違って偉業を成し遂げた人たちだ!!」
リフトで上がってくる人たちは羨望の眼差しを送ってくるので、手を振ってあげましょう。きっと、変人と思われるでしょう。
登山している時以上に着込みましょう、寒さに震えながら戻ってきました。
リフト券を返却し下山報告、シュラスコ食べ放題へ
戻ってきたらリフト券を返却し、下山報告します。デポジット金の500円が返却されます。このゲレンデは若者が多いので、単独で来るとなかなかの惨めさがあるので、複数人で来ることをおススメします。
下山後の温泉は何度か訪れたことがある「望郷の湯」に立ち寄りました。時間帯的にゲレンデ帰りとかち合うと、洗い場が混雑します。早めに到着するのが良いです。
下山後は同じ県内ではありますが、群馬のブラジル人街まで移動して、「プリマベーラ」で食事します。
栃木県の太平山の帰りに一度訪れています。ブラジルワールドカップの応援みたいな位置づけで、なかなか愉快な旅でした。
シュラスコ食べ放題を堪能。
ディナー開始の17時に入店したせいで、しばらく自分たちだけしかいない時間が続き、無限に運ばれてくる肉に苦戦しました。なべ氏ならたくさん食べてくれると思っていましたが、ビュッフェの炒飯を気に入ったせいで、後半にかけてポンコツでした。
冬の武尊山登山を終えて
黄金期の少年ジャンプをご存知でしょうか。ドラゴンボール、キャプテン翼、北斗の拳、キン肉マン、スラムダンク、今でも知られている作品が同時連載していました。その連載の中で、シティーハンターやるろうに剣心は平均より人気なかった時代があったのです。
武尊山はそんな存在だと思うわけです。
赤城山、榛名山、妙義山の上毛三山は群馬県民にとっては親しい存在。前二つは戦艦の名前にもなっています。列島を分断する谷川岳、活火山の浅間山、温泉地の草津白根山、尾瀬の至仏山。 武尊山はそんな存在の中で埋もれてしまっているのです。実力は確かなのに…。
武尊山の稜線から眺める剣ヶ峰山は非常に画力の強い風景です。
冬の武尊山は、軽アイゼンで登れる山を卒業して、12爪アイゼンを手に入れた時に選択肢の一つとしてうってつけな山だと思います。遭難事件は発生していますが、余程の悪条件でない限り、危険は少ない山だと思います。
オリンピックイヤーの2020年、標高2020mの剣ヶ峰山と共に、武尊山に登ってみてはいかがでしょうか。
秋の武尊山の記事へ
秋に登った武尊山の登山記事です。併せてご覧ください。