2017年5月26-27日
長野県、山梨県、埼玉県にまたがる甲武信ヶ岳に行ってきました。標高は2475mです。
東京から長野県の東西に連なる奥秩父山塊に属し、その中央に位置している山です。山名の「甲武信」は、旧国名で甲州(山梨)、武州(埼玉)、信州(長野)の県境、また山頂が拳のように見えるという説があるらしいです。
長野県の登山口である毛木平から千曲川源流遊歩道を歩き、甲武信ヶ岳でテント泊。翌日は、山梨県の西沢渓谷へ降りるルートを歩きました。
食わず嫌いがあるように「登らず嫌い」があるんです。
甲武信ヶ岳はその登らず嫌いの一座でした。奥秩父には金峰山、雲取山、瑞牆山など、コースタイムが適度であったり、見所の多い「万人受け」する山があります。しかし、甲武信ヶ岳はずっと樹林帯を登り続ける辛い山と周囲の登山者から聞き、何となく嫌厭していました。
しかし、計画を工夫を凝らせば、一つの山を2倍にも3倍にも楽しめるということが分かった旅になりました。
甲武信ヶ岳について
地図
甲武信小屋のテント場に宿泊しています。
1日目は長野県側の毛木平から入山、2日目は山梨県側の西沢渓谷に下山しています。
コースタイム
- 9:32毛木平
- 11:37ナメ滝
- 13:42水源地標
- 14:53甲武信ヶ岳
- 15:38甲武信小屋
- 6:13甲武信ヶ岳
- 8:13木賊山
- 11:33西沢渓谷入口
1日目の行動時間は6時間6分、2日目の行動時間は5時間20分でした。
アクセス
- 塩山駅から信濃川上駅へ電車移動
- 信濃川上駅から毛木平にタクシー移動
- 1泊2日の甲武信ヶ岳縦走
- 西沢渓谷からタクシーで塩山駅
3人で行きましたが、1人当たりの交通費負担は6000円~7000円でした。
甲武信ヶ岳 テント泊(1日目)
ほっらかし温泉で不発の御来光風呂、山岳風景を見ながら小海線で毛木平へ
終電で集合し、やってきたのは笛吹市にあるほったらかし温泉。
高台にあるこの温泉は、露天風呂から見える御来光を売りにし、早朝から営業しています。電車が動き出す、時間つぶしにひとっ風呂浴びようという算段です。
真っ暗ですが、駐車場は数十台が駐車していて混雑しているようでした。
肝心の御来光風呂は残念ながら不発。
正面にある雲が邪魔していて、日の出はある程度の高さになってから見えました。雲海風呂と思えば、それはそれで素晴らしい非日常体験をしたわけです。
しかし、登るであろう奥秩父山塊の方角に分厚い雲がべったりとのしかかっているのが懸念です。
朝風呂を終え、塩山駅に到着しました。駅から3分くらい離れたところにあるコインパーキングに駐車しました。
塩山駅は2011年に乾徳山に来た時以来で懐かしかった。壁が少し新しくなっている。また、登りたいなと思っている山の筆頭です。
6時22分に甲府行きの中央線に乗ります。
目的地である信濃川上駅まで2時間9分の乗車、料金は1660円。金と時間と労力を無駄にしているなと思う人もいるかもしれません。だが、無駄こそ男のロマンなのです。
甲府駅で松本行に乗り換え。
八ヶ岳に向かう知り合いとバッタリ遭遇し、声を掛けられるハプニングがありました。鈍行で八ヶ岳に向かうなんて相当なものです。我々は貴重な睡眠時間を無駄にしません。
小淵沢駅で小海線に乗り換えます。
小海線は山梨県の小淵沢駅と長野県の小諸駅を結び、愛称は八ヶ岳高原線。へんちくりんな縦走プランでも構想しない限り、絶対に乗ることがないレアな路線です。
八ヶ岳と奥秩父の高原地域を走り、車窓からは登山者垂涎の美しい山岳風景を見ることができる路線です。
進行方向の左手には雪を残す八ヶ岳連峰。
野辺山駅を通過します。
この駅は標高1345mのJR線最高駅です。海がない二つの県を結び、山間部を抜ける小海線。鎌倉時代にこの名前は由来するそうです。
ちなみにこの駅からは、飯盛山が登山可能です。電車好きな登山者にはお勧めかもしれません。
8時22分、信濃川上駅に到着です。信濃とついている通り、長野県です。駅の標高は1138mで、JR線では4番目の高さ。
信濃川上駅はSuicaの読み取り機がなく、塩山駅からSuicaで入場した我々は清算できない事態に陥った。駅員さん(一応いる)に説明すると簡易的な乗車証明書を貰い、翌日塩山駅に戻った時に清算しました。
手間になるのでこのコースを利用する場合は、切符の購入が無難です。
駅舎に東南アジア系の人が4~5人ほどいて、田舎駅なのに国際色が強い。
駅前には電車の到着時刻に合わせて、村営バスが止まっています。これに乗れば、登山口の毛木平まで近づくことができます。しかし、バス停からだと毛木平まで1時間以上アスファルトを歩くことになります。
3人という割り勘レートが良い人数のため、事前にタクシーを手配していました。駅前にはおなじみのハッピードリンクショップがあります。
毛木平へ向かう一直線の道路。
広がるのは広大な高原レタス畑です。
山間部の小さな村ですが、高原野菜の出荷で「日本一裕福な村」と呼ばれているようです。農家の家はだいたい新築で、公共施設的な建物は非常に立派。山間部にある風景とは思えません。
圧巻のレタス畑。飛行機で上空から見てもこの川上村はよくわかります。
駅前にいたアジア系の外国人は農業研修生だと思われます。道すがらも何人か見ました。数年前に研修生を云々かんぬんなひどいニュースがありましたが今はどうなんでしょうね…。
毛木平の駐車場に到着です。
時期的に十文字峠の石楠花全盛の時期だからなのか満車状態でした。
駐車場には立派なトイレがあるので安心です。
入口では登頂証明書が貰えるようです。空だったけど。
天然記念物に指定された川上犬とレタスを混ぜ合わせたレタ助が川上村のマスコットキャラクターらしい。
川上犬は栃木県の奥鬼怒温泉郷にある手白澤温泉の飼い犬で見たことがあります。Saku兄はその川上犬に発情されて、押し倒されるという事件がありました。ちなみに♂です。アッー!!!
新緑の清流が都会の淀みを溶かす、千曲川源流遊歩道
毛木平(9:32)
準備を整えて、いざ登山開始です。
登山口までの到着でだいぶ旅をした気分であり、既に食傷気味なのでポージングだけは闘魂込めてお送りします。
改めて今回の甲武信ヶ岳を登った3人、ユニット名「ステップアップボーイズ」のメンバを紹介しよう。
Saku兄
社畜、薄給、非モテなどアンダーグラウンドな登山シーンを牽引する男。
しかし、最近どの要素も薄まりつつあり、没個性なキャラクターに悩む。歳を重ねるにつれて若い頃に出来たことが不可となる「老衰キャラクター」で、再ブレイクを狙う。
くまちゃん
波乱万丈なスキャンダラスな男。
古代インドより伝承される触れずともオーガニズムを得る秘儀を進化させ、自然よりオーガニズムを得る究極秘儀「ネイチャーオーガニズム」を人類で初めて体得した。
そして、自分の3人である。
ユニット名は、縦走2日目につけられたので省略です。
千曲川源流までは5.8㎞、甲武信ヶ岳の山頂までは6.5㎞となかなかの距離です。
宿泊地の甲武信小屋はさらに+α。
序盤は作業用の車が入れるほどの道幅があり、登山道の雰囲気はゼロです。Saku兄は年々徹夜での運転が辛くなってきているようで、気を抜くとふらふらと左右に揺れています。
それはまるで、新緑の葉のように。
フレッシュさを都会の荒波に汚された社会人3人が、生まれたての眩い緑の中を歩きます。
途中に大山祇神社がありました。
愛媛県しまなみ海道の瀬戸内海にある島の神社です。他の山でもちらほら見かけるので、信仰する登山者が多いんでしょうか。
日当たりのよいところで石楠花が咲いていました。
奥秩父と言えば、5月下旬~6月下旬の石楠花が有名です。十文字峠は一番の名所とされているようですが、今回はルートにないので、次回訪れたいと思います。
林道をある程度進んでいくと沢沿いに歩きます。「西沢」と名がつけられているようです。
テント泊装備できていますが、Saku兄は自分のテントに寝るため、寝袋とマットを担いでいます。しかし、豪華な食事ということで、テントより重い食材を担当しています。なので、隙あれば岩の上に座り込んでいます。
毛木平から山頂までの標高差は1042mあります。
「千曲川源流遊歩道」は、緩やかに登っていく優しい登山道です。ただし、源流地点まで。
流れる沢は、透き通る清流で心安らぎます。
くまちゃんは新緑と清流からスピリチュアルなパワーを下半身で感じているようです。
洗顔するSaku兄。
彼は千曲川源流の水でラーメンを食べるという目標があるようです。
水はキンキンと冷えています。5月下旬ですが、夏日の気温だったので、心地よい涼しさ。
あ、森の陰毛だ。
前進する気がない一行。
日帰り可能な山を宿泊すると言う余裕の表われでしょうか。
5月下旬とは言え、山の春はまだまだ先。完全な緑化は進んでいません。
重い腰を上げて先を進んでいきましょう。まず最初の中継地点となるナメ滝を目指します。
苔が生えていたり、北八ヶ岳方面の雰囲気があります。
ナメ滝(11:37)
ナメ滝に到着しました。
千曲川源流遊歩道の半分を少し過ぎたあたりの位置です。
巨大な一枚岩の滝で、滑るように流れているからナメ滝。舐めるではない。
水が流れる端っこの部分に苔が生えているので、転びそうになったのは御愛嬌。
ここで昼食タイムを挟みます。セブンイレブンは地方限定のおにぎりが売っていたりします。山梨県は甘い小豆のお赤飯。ここは長野県なわけですけど。
Saku兄のお腹はEmpty状態だったため、千曲川源流を待たずにラーメンを作り始めていました。セブンプレミアムに熱い信仰を持っている男です。
水が入っているナルゲンを沢に入れて、キラキラする光を閉じ込めた的な写真を撮りたかったが何か違った。
大休憩2回目を終えて、甲武信ヶ岳の山頂を目指します。
そろそろ急になってくるんじゃないかなと思いきや、まだまだ登りは緩やかです。しかし、徐々にSaku兄が遅れ始めています。老衰が止まらない模様。
橋を渡る箇所がありました。
甲武信ヶ岳のクラシックルート(旧道)は毛木平のルートなんでしょうね、水の確保が容易ですし。水のある所に歴史ありは、平地も山も変わらない。
橋の上でボーゲンのポーズを決めるSaku兄。
お茶目な一面を見せるも確実に疲労と睡魔に蝕まれつつあります。
千曲川源流まで「あと0.9㎞」の表示。1㎞を切りました。
毒々しいカラーリングコーディネートのくまちゃんがガンガン引っ張ってくれます。
が、ついにSaku兄が力尽きました。思いっきり登山道に足を投げ出しています。
Saku兄を死体と勘違いしたのか、羽虫がたかり始めたので、好意による虫よけスプレー噴射です(決して彼を害虫扱いはしていない)。
深い眠りについているので、全く気づきませんでした。
まだまだ千曲川源流が見えてきません。
そもそも長野県から新潟県に流れる千曲川に対し、我々は全く思い入れがないなと思い始める。
登っていくと残雪ありました。
奥秩父は日陰だと6月中旬くらいまで雪が残っているところがあるようです。
下りの登山者とすれ違いが多くなるころ、樹林帯の中に広場が見えてきました。
千曲川のスタート地点、凶悪な稜線への急登
水源地標(13:42)
千曲川源流に到着です。
長野県と新潟県の二県しか流れていないと思って地図で確認したら、東京から宮城くらいの距離があることにビビります。
- 千曲川は長野県と新潟県を流れ、日本海に注ぐ
- 千曲川は長野県、信濃川は新潟県の読み方
- 全長367キロで日本一の長い川
看板から一段降りたところにコップが設置されています。
「え?根っこからぽたぽた落ちてるやつを飲めって?」
水場に共有のコップが設置されていることはよくありますが、抵抗感のあるところないところがあります。ここは飲もうとは思えなかったので、指でペロッと舐めておきました。
「この水量じゃラーメンを作れる分を待つのに日が暮れてしまうな。」
と、Saku兄は我慢できずに途中で食べたことを勝ち誇っていました。
千曲川源流までは序章にしか過ぎなかったのです。
稜線上に出るためにグッと傾斜が厳しい坂道を登ることになります。樹林帯の密度が濃くて、先が見えない。
甲武信ヶ岳の頑張りどころでしょう。Saku兄は力尽きてしまったのか、見えなくなってしまいました。
時間にしたら短いのですが、ようやく奥秩父の縦走路に辿り着きました。
稜線分岐(14:17)
右に行くと奥秩父の最高峰がある国師ヶ岳と金峰山の方角です。
大弛峠からのルートは樹林帯歩きが5時間以上続き、見所もあまりなさそうで、自分は歩こうと思いません。瑞牆山荘から雲取山を一気に歩く人もいるようです。
分岐点から少し進むと南側の斜面が開けた稜線に出ました。コース的にはあと少しのはずですが、山頂らしき一点が見当たりません。
登るにつれて、ガレた岩場になってきました。
午後になって雲が沸き立ってしまいましたが、金峰山のある方角の展望が広がりました。「奥」秩父と言うだけあって、人里から見える範囲は山林しか見えません。
そして、ガレた登山道を進んで行くと、山頂を示す看板が見えてきました。
雲が登ってしまった甲武信ヶ岳の山頂とテント泊の愉快な夜
甲武信ヶ岳山頂(14:53)
甲武信ヶ岳の山頂に到着しました。
休憩を多めに取っているので、登山口からかなり時間が掛かりました。数が限られる埼玉県、長野県、山梨県の3県県境の山頂です。長野県の東端にあります。
甲武信ヶ岳の山頂は展望が良いという話ですが、この日は既に雲が広がってしまいました。
明日もあるし、今日のところは勘弁してやる。
甲武信ヶ岳で天高く拳を突き上げる。
ラオウのように強烈な波動で雲が一掃される能力があるといいですけどね。
というわけで、山頂は明日もまた来ると言うことで、さっさと甲武信小屋を目指します。
甲武信小屋(15:38)
山頂から小屋までは、10分から15分ほどの距離があります。
甲武信小屋に到着しました。
小学校の時に取り壊された木造校舎を思い出す外観です。手作りの看板が印象的です。
甲武信小屋は二種類のバッヂが売っています。桂紀章の記念バッチ(500円)と日本百名山ピンバッヂ(1000円)。
バッヂに1000円は後々揃えると後悔するので、500円のバッジを購入しました。
お酒はビール、日本酒、ウィスキーを完備。
甲武信ヶ岳は稜線の北側にあるから所在は埼玉県なのでしょうか。秩父錦が売っているし。今回の縦走だと埼玉要素は微塵も感じませんけど。
内装は長年使い古された感じで、ストーブや窯など使い込まれた感じです。
2階はオープンスペースの寝室。区切られていないので、周りの宿泊客に恵まれないと眠れない仕様です。
小屋番曰く、「一年で最も人が多い時期」とのこと。
小屋の夕飯はカレーのようで、その魅惑的な匂いのせいで、我々の空腹が噴火寸前です。
そして、ここが我々のキャンプ地。
自分とSaku兄が同じテントで、くまちゃんは一人自分のテントで寝ることになりました。二人で荷物を分担して軽くなるはずが、宴会の準備で結局通常より重くなってる事実。自分のテントじゃないSaku兄は「ねーこれ組み立てわかんない、やってやって」と手伝いもそぞろだったので、イライラしましたが。
小屋のベンチにて豪華ディナーが開催されます。
- 山のカプレーゼ
- 山の焼きとうもろこし
- 山のレモンペッパーチキン
- 山の野菜炒め
- 山のすき焼き
すき焼きは予算の都合上、和牛を少しと後はアメリカ産と豚バラで嵩増しです。
調理担当はほぼ自分のため写真は無し。出来上がり具合はくまちゃんのブログ記事(消滅)を参考にして頂きたい。
飯食って、酒飲んでる時が、山で一番楽しい時間と言うのはやぶさかではなく、行動時間6時間の辛さや山頂の展望が良くなかったことマイナス面が逆にスパイスとなり、一層に愉快な夜となった。16時から19時の3時間、周囲の寒さも感じないほどにひたすらしゃべり続けた。中身のない無駄話と誰かに聞かれたら即座にドン引かれる猥談が9割ですけど。
ここで話した内容は明日には忘れるだろうけど、この時間が凄い楽しい時間だったということは、ずっと忘れないだろう。そう思いながら、甲武信ヶ岳の夜は更けていくのでした。
甲武信ヶ岳 テント泊(2日目)
甲武信小屋で見る御来光と雲海上に浮かぶ富士山
2日目の朝です。
19時半に就寝、4時に起床しました。山頂で御来光を見ようという計画がありましたが、小屋の人が山荘からでも見えるという情報もあり、のんびりと朝食を準備して、待つことにしました。
朝食はタマゴサンドです。京都で食べたタマゴサンドが美味しかったので、個人的ブームでした。京都のタマゴサンドは厚焼き玉子ですけど。
陽が登り始めました。
木々の隙間、東の空に薄雲ありで、中途半端な日の出。
小屋前にいた登山ガイドらしき人が「ステップアップ〇〇〇〇(某ツアー会社の名称)」の皆さん集合してください」の声を合図に、出発前の準備運動を始めました。
その団体名が琴線に触れた我々3人は、団体名をもじり「ステップアップボーイズ」を名乗ることになりました。
甲武信ヶ岳山頂着(6:13)
新生「ステップアップボーイズ」は、快晴の甲武信ヶ岳の山頂ステージに立ちました。
昨日までの雲は夜中に取り払われて、雲一つない天候に変わっていました。一泊二日の行程を組んで大正解。
雲海の果てに孤高に存在感を放つ富士山。
5月の柔らかな青空の中に、ポツンと濃い青の山肌。冬でもなく、夏でもなく、5月~6月のに見る雪が残る富士山は、浮き出るような錯覚を覚えます。
西側へと続く奥秩父の縦走路。
見てわかる通りに樹林帯の稜線です。樹林帯稜線フェチの性癖に目覚めない限り、自分は歩こうとは思いません…。
八ヶ岳、南アルプス、中央アルプス、北アルプス、日本の天井たる山脈が展望できます。「山頂からは日本百名山を43座を見ることができる」と言うのも嘘じゃなさそうです。
金峰山のシンボルである五丈岩が見えました。
初めて金峰山に登った時も同じ時期で、富士山が同じように見えた。
北側には浅間山が見えます。
薄っすらと谷川連峰などの上信越の山々も見えました。
雲の上に浮かぶ八ヶ岳連峰。
甲武信ヶ岳は地味な山だと思っていて、登らず嫌いでした。手のひらを反して、お詫びします。申し訳ございません。
富士山に対してどこまでも挑戦的なSaku兄である。
彼は登山始めた頃の3月くらいに、カチコチに凍った甲武信ヶ岳を日帰りで登っている経験者です。再びの甲武信ヶ岳に大満足の様子です。
昨日の老衰っぷりが嘘のようです。
絶景に囲まれたくまちゃん。
奥義「ネイチャーオーガニズム」で、絶頂にて絶頂を達していました。山は煩悩を取り払うと言いますが、人間が動物であるという正体を解き放ち、実のところ自然と性は蜜月なのではないだろうか。
ネイチャーオーガニズムはドライなのでしょうか…。
30分から40分ほど山頂を愉しみ、後ろ髪を引かれつつ下山します。
甲武信小屋まで降りてきました。ほとんどの登山者が撤収を終えて、早朝の賑わいは去っていました。
一本ラインの入った甲武信ヶ岳を望む、樹林帯に囲まれた木賊山
ステップアップボーイズは平均的出発時間からだいぶ出遅れての出発です。
山梨県側へと降りるため、木賊山方面を目指します。
甲武信小屋と木賊山に掛けては展望が開けており、甲武信ヶ岳の姿をハッキリと捉えることができます。甲武信ヶ岳のランドマーク的な風景で、千曲川源流コースをピストンだと往復40分ほどの対価を払わないと見られません。
同じ奥秩父山塊にある瑞牆山と金峰山のように華のある見た目ではありませんが、山頂部から崖崩れ(?)のラインが入っているのが特徴的です。この栗を剥いたようなワンポイントがないと、日本各地どこにでもありそうというのは一理ある。
展望地を離れて、樹林帯へ。日陰になっている場所が多いので、登山道に雪が残っています。
甲武信ヶ岳の方角から木賊山を見ると圧倒的な樹林帯です。
木賊山に到着しました。
樹林帯に囲まれた山頂で、見事に周囲が見渡せません。ちなみに標高2469mで、山梨県山梨市と埼玉県秩父市に跨ります。徳ちゃん新道を登ってくる場合は、ここまで来ても展望が許されないのか…。
木賊山を過ぎると戸渡尾根と雁坂峠の分岐に差し掛かります。
石楠花満開の戸渡尾根と徳ちゃん新道、新緑の西沢渓谷へ
本日の登りは終了し、下山を開始します。
現時点から西沢渓谷まで、展望また見所なしの樹林帯、標準コースタイム3時間の背筋が凍る登山道の始まりです。
下り際に展望のあるポイントに来ました。この日は夏日、雲の上層速度は早く、稜線を覆い隠そうとしていました。早朝に山頂に立てて良かったとガッツポーズです。未明から登り始めたと思われるトレランの3人くらいしか展望を得られなかったんじゃないだろうか…。
見所がないと言ったのはあれは嘘で。
戸渡尾根から徳ちゃん新道にかけてはたくさんの石楠花(シャクナゲ)が自生しています。
5月下旬から6月中旬ごろに見ごろを迎える石楠花に歓迎されました。
背丈以上に伸びる山の石楠花は見応えがあります。石楠花のトンネル、略して「シャクネル」と呼び、ステップアップボーイズの旅をまだまだ楽しませてくれるようです。
上部は蕾が目立ちましたが、降りるにつれて徐々に満開になっていきました。
石楠花の群生区間は20分ほどあったのではないでしょうか。甲武信ヶ岳の花要素も十分に楽しませていただきました。
新道分岐(9:43)
徳ちゃん新道と近丸新道の分岐に到着。
登山道としてメジャーである徳ちゃん新道を選択しました。「徳ちゃん(甲武信小屋のオーナー?)」がどなたかは、御存じありませんが、公式な登山道に個人名がついていることから、登山道整備に相当尽力したのだろうと思います。近丸新道は近丸さんが作ったのだろうか。それだったら丸ちゃん新道でも…。商標の問題か。
新道に良いイメージはないけど、徳ちゃん新道はなだらかな部分があり、植生の変化がありました。唐松のフレッシュグリーンにステップアップボーイズは癒されます。
しかし、今年初めてのテント泊のステップアップボーイズ。肩へのダメージは非常に大きい。
ミツバツツジが咲くようになりました。時期的に石楠花の少し前に咲きます。
枯れかけの石楠花。
雲の掛かっている位置からだいぶくだったので光が射してきました。
木の根張り巡るクッション性の高い斜面であるため、足への負担は少なめ。しかし、夏日の気温により、ステップアップボーイズの憔悴の色は隠せません。
細い尾根道に変わってきました。沢の音が近づいているので、ゴールの西沢渓谷が近づいているのでしょう…。
沢の音が聞こえ始めてからが長いんですよね…。
そして、ようやく徳ちゃん新道の入口に到着しました。日帰りで登るなんて出来ないな…。
登山口(11:16)
甲武信ヶ岳の入口を示す立派な看板があります。「戸渡尾根コース」が正式な呼び方なのか…。
西沢渓谷のバス停を目指し、しばらく車道を歩きます。新緑の西沢渓谷をトレッキングするハイカーが沢山いて、テント泊で汗で溶けそうな登山者は圧倒的マイノリティ。
西沢渓谷入口(11:33)
西沢渓谷のバス停は、バス会社を示す丸い看板が無くなっていて殺風景でした。
1時間40分後にバスが来ますが、さっさと風呂に入りたいという欲から、タクシーを手配しました。3人であれば、そんなに負担にはなりませんし。学生の団体もバス待ちしていたし。
バス停の横にある茶屋(ドライブイン不動小屋)にて、ステップアップボーイズの小さい祝勝会が開催されます。強烈な甘み、強烈な刺激、まさに「脳天直撃コカ・コーラ」です。
お腹もペコペコだったのでカレーを注文し、少しの間の腹ふたぎです。この後に重要な食事プランが計画されているのです。
登山後のカレーライスは、すまし汁を飲んでいるようなものなので、名物らしいよもぎ餅を同時購入。青々強い香りがして、とても懐かしい味でした。
飲み食いしている間にタクシーが到着。
学生が炎天下のアスファルトでバスを待つ中、大人の余裕を見せつけます。
30時間ぶりに塩山駅に戻ってきました。
信濃川上駅で出来なかったSuicaの支払いを忘れずにやっておきます。Saku兄の車を回収後、温泉に向けて出発します。
温泉は勝沼ぶどうの丘にある「天空の湯」。甲府盆地を見下ろすことのできる温泉です。
甲州高尾山の帰りに立ち寄ってるので2度目。
甲州ぶどうジュースで再度の乾杯。ステップアップボーイズの祝勝会はまだまだ続きます。
登山者は御存知だろうかと思いますが、日曜日の上り中央道は毎回のように大渋滞を起こします。しかし、現時点で14時、現在地は東京よりの甲州市。渋滞になる前に小仏を抜け、16時には都内に着いて、飯にありつけます。
と、ステップアップボーイズは確信していました。
しかし、中央道渋滞の現実は厳しく、ステップアップボーイズの理想は瓦解されてしまう。結局は2時間ほど渋滞にはまり、都内に着いたのは18時を回っていた。中央道との終わりなき戦いは続きそうだ。
阿佐ヶ谷の博多鉄鍋ぎょうざで祝勝会
ステップアップボーイズの祝勝会は阿佐ヶ谷にある「博多鉄鍋餃子なかよし」で開催されました。
奥多摩の帰りに寄りたい店リストに入れていたものです。もはや、登山後のご当地グルメでも何でもない。入店すると既に満席、20分ほど待ちました。
鉄鍋で提供される博多一口餃子が売りの店です。
一泊二日の登山を終えた、ステップアップボーイズの挑戦が始まります。
博多餃子にSAPPORO、いいじゃないか、いいじゃない。
鉄なべ餃子3人前の登場です。
格式ある美術館に飾られている名画のように美しい餃子です。餃子に対する欲求がどの登山者よりも強い我々は、数あるメニューから餃子の一点突破です。
餃子は通常のよりも小ぶりで一口サイズ。表面はパリパリで、中身は野菜と肉のバランスが絶妙、程よくジューシーです。本場博多では酢醬油と柚子胡椒で食べるらしい。もちろん醤油とラー油もあります。
「レッツ!ステップアップ!!」を合図に貪るように餃子を食べました。
アツアツを一口で「ほふほふ、はふはふ」頂きます。箸の手を止めるすべがなく、ペロリと一皿8分で平らげました。オーダー待ちの時間を惜しむように次の皿、次の皿を注文します。
餃子とビールのあまりの美味しさにくまちゃんは「ああ、幸せ」と叫びながら絶頂していました。この日、人類が誰も体得しえなかった「餃子オーガニズム」が生まれる瞬間に立ち会えたのかもしれません。
全員、脳内麻薬がドバドバ出ているのは間違いありません。
ステップアップボーイズは最終的に3人前を4皿(計120個、1人40個)食べ尽くしました。店員さんの「こいつらまた餃子食べるんかい」みたいな視線が痛かったです。
甲武信ヶ岳にちなんで、拳を三つ重ね、ステップアップボーイズの祝勝会を締めました。
店を出たのが19時半を回り、すっかり暗くなっていました。
登山の幸福感と餃子の満腹感、形に残るものではないですが、いつまでも心に刻まれる熱き魂を胸に帰宅の途に着くのでした。
甲武信ヶ岳の登山を終えて
樹林帯が多くて辛い印象が強い「登らず嫌い」だった甲武信ヶ岳。
終わってみれば、異常なくらいに楽しい山でした。後回しにして損したと思いましたが、たくさんの登山経験を積んでいなければ生まれなかった1泊2日の計画だったと思います。
日帰りしたり、コースタイムを巻いたりと、忙しい社会人ならば仕方のないことですが、時間をかけることで、より登山は深みを増すものだと思います。
今回のように新緑が芽吹き、石楠花が咲く5月下旬以降数週間が最も甲武信ヶ岳を登る時期と言えます。
電車とタクシーを利用し、交通費こそ多少かかりますが、長野から山梨に縦走するルートは間違いなく甲武信ヶ岳のベストルートだと保証できます。
ステップアップボーイズは、登山に対して一つ次のステップを甲武信ヶ岳で学びました。
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