2020年9月21日
沖縄県石垣島の於茂登岳に行ってきました。標高は526mです。
沖縄県の最高峰で、泡盛の銘柄になるような石垣島のシンボル的な存在です。「川平湾と於茂登岳」として国の名勝に指定されています。石垣島に暮らす島民の貴重な水源で、昔から霊峰として信仰されてきました。
「県の最高峰」このワードに期待を寄せる自分がいました。
日本47都道府県の最高峰を登ることを目標としているので、石垣島の於茂登岳は登りたい一座でした。沖縄で登山は、餃子が評判の店でカツ丼を食べるようなもので、邪道の極み。調べてみると往復コースタイム2時間くらいなので、「まぁ、午前中の時間にちょろっと」と、計画しました。
しかし、それが結果的に浅はかな考えで、大変な目に遭う旅となりました。
於茂登岳について
地図
於茂登岳の地図は日本山岳会のページから入手できます。登り1時間、下り55分となってますが、もうちょっと掛かると思います。水場のマークから先は、藪漕ぎを覚悟しましょう。背丈を越える藪のトンネルを腰を屈めて歩きます。
駐車場はわかりにくいので、Google Mapを参照したほうが良いです。ストリートビューで見るとGoogleカーに驚いているおじさんが見える。
於茂登岳の注意
沖縄なのでハブの危険性があり、登山道には毒をもつ虫がいるので、暑いのを我慢して肌の露出がない格好で登るのが良いです。
サンダル・短パンで行ったら、確実に後悔します。マジで。
於茂登岳 登山
石垣島の朝早い、ゆし豆腐が食べられる「とうふの比嘉」
石垣島の朝早い。
リゾートなんだから朝はゆっくりしたいところだが、どうしても食べなければいけないものがあった。
「とうふの比嘉」にやってきた。
早朝から昼間にかけて営業している店で、沖縄のゆし豆腐を食べることができます。石垣の市街地から車で10分ちょっと、さとうきび畑の真ん中という場所に位置してます。朝6時半の開店だけれど、すでに行列が出来ていました。豆腐に行列って…。
さすが、石垣島の超有名店、40分くらい待ってようやく座席に案内されました。週末は開店待ちする気力が必要か。
たぶん、一番注文されるであろう「ゆし豆腐セット」は小サイズ450円、大サイズ550円です。その他にもいろいろなセットがある。ゆし豆腐そばも気になる。
白いご飯に丼に入ったゆし豆腐と豆乳(お替り自由)がつきます。卵焼きは別売り。丼の底までぎっしりなので、2丁ぶんくらいたっぷり豆腐が入っている。
テーブルには味噌、塩、しょうゆ、グース―(島唐辛子の泡盛漬け)が置いてあり、これらで味変をする。
ゆし豆腐はおぼろ豆腐のようなぼそっとした食感。味ついてないのに大豆のきちんとした風味が強い豆腐でした。特製の味噌をかけるとコッテリします。豆腐と豆乳をご飯にぶっかけて食べたり、食べ方は自由。
豆腐なんだから大のセットで余裕と思っていましたが、最後まで食べきるのがきつかった。
これだけ未整備な最高峰があるだろうか、於茂登岳の登山口へ
豆腐でお腹を満たし、登山をする、これが石垣スタイル(たぶんしない)。
食事中は雨がザーザー降っていましたが、於茂登岳に向かっていると晴れてきました。島の天気は、猫以上に気まぐれです。さっきまで降っていた雨というのが、災難を生むわけですが…。
於茂登岳の登山口に駐車場はなく、林道の空いている場所に停車。一応、沖縄県の最高峰であるはずなのに、この未整備具合よ。
もちろん、登山口にトイレや売店はありません。
レンタカーを駐車したら、林道を20分ほど歩きます。車高のある4WDなら通行できるっぽいけど、島外の人間はまず無理。
しばらくすると広場のような空間に出て、ジャングルの中に進んでいく登山口を見つけました。
一歩足を踏み入れると熱帯雨林のジャングルの中。むわッとしたまとわりつく湿気があります。このコースは序盤から沢沿いを歩いていきます。
石垣島は本州では見られない昆虫が多いようで、虫探しの青年が探検していました。緑がさし色の黒い蝶がいましたが、これは石垣にしかいないものかどうか…。
登山道はよく整備されている印象でした。しかし、これは途中にある滝までの話。
「大御岳ぬ清水」と書かれた祠がありました。御岳と言えば、長野と岐阜の御嶽山を想像するけど、沖縄の離島にまで信仰はなさそうだし、現地の信仰があるんでしょうか。
沢の上にかけられた丸太橋。この時は大した水量ではなかったけど、増水すると流れが激しそうです。
緩やかな傾斜の階段が続く。
さて、登山道も奥まで進んでいくと、そこは爬虫類と昆虫の世界に変わる。ヤモリは沖縄に宿泊すれば必ず見るので、まだ可愛いほうです。
サソリモドキなどの攻撃的フォルムの虫を結構見かけます。写真に撮らなかったが、見たことない黄色いヤスデが岩や木でうごめいています。
映画インディージョーンズで、虫がうごめく壁の中にあるスイッチを押すシーンを直視できないあなた。於茂登岳の登頂は不可能です。
蒸し暑い環境だけど、長袖長ズボンが必須。そして、ハブの危険性もあります。
登山口から30分ちょっとで、滝の分岐とさしかかりました。
道を少し外れ、険し目なところを通り過ぎると、落差3~4mくらいの滝がありました。特に名前はついてないようです。頭を突っ込んでクールダウンしました。
さて、滝の分岐を過ぎたあたりから急激にきつくなります。滝まで植物が刈り払われていましたが、藪が登山道を覆っています。
谷になっている場所まで来ると、少し展望がよくなります。しかし、足元は藪。毒虫やハブがいるんじゃないかという恐怖の中の藪漕ぎは本当にツライ。
やがて、藪は背丈を越えてきます。そして、ここで問題が。朝方、雨が降ったせいで、葉っぱに水滴がついています。そんな中、歩いたらどうなるか?
答え「雨に降られたようにビショビショになる。」
途中でレインウェアを着た人が降りてきて、「暑っ苦しいカッコしてんな~」と思っていたが、そういうことだったのか。
最後の給水ポイントに到着。ちょろちょろと沢水が流れていたが、今までの環境を考慮するに、飲んで大丈夫なんだろうかと疑問になる。問題ないんだろうけど。
さて、ここから先が大変だった。
リュウキュウチクが繁茂し、腰をかがめて歩くトンネル状態。葉っぱが体にこすり付く状態が続き、ザックに枝が引っかかる。
そして、トンネル状態が抜けたと思ったら、また始まる。それの繰り返し。そして、急坂も登場する。
暑さで汗は出るし、水滴でずぶ濡れになる不快感。
そして、害虫が体についているんじゃないかという恐怖感。不快感と恐怖感が頭の中で渦を巻き、発狂しそうになりながら、於茂登岳に登りに来たことを後悔し始めた。
そしたら突拍子もなく、植物が刈り取られた空間に出て、人工物が見えた。ゴルフ場に迷い込んだのではと錯覚するような立入禁止の看板がクールに立っていた。
ここは、風が通り抜けて、少しだけ気持ちよかった。
再び少しだけ藪のトンネルを抜けると、鉄塔の下に出た。NHKの中継局を担っているようで、宮古島から受信した電波を、石垣中継局から、さらに武富島、西表島、波照間島などの離島へリレーしているようです。
離島の情報インフラを支える重要な施設が於茂登岳の山頂にあるのはわかった。しかし、これだけの施設だ、どこかに作業用道路があるはず。作業員がわざわざ山登りするとは思えない藪漕ぎ具合だったぞ…。
花崗岩で形成されている於茂登岳だが、シダ植物の木で覆われている。山頂は平べったくなっていて、離れた場所に電線や施設が見えた。
藪に囲まれた沖縄最高峰、於茂登岳の山頂
於茂登岳の山頂に到着です。
東京の高尾山(標高599m)より低いけど、沖縄県の最高峰です。藪の中にポツンと山頂看板が、地面に直置きされていました。
ポツンと頭を出した岩、これが山頂である。ここまでパッとしない県の最高峰は始めてかもしれない。
於茂登岳の展望ですが…。山頂看板の立てかけてあった岩の上に登れば、辛うじて石垣島の海岸線を眺めることが出来ます。展望は前日に登った野底岳の方が優れている。
於茂登岳は島の生活を支える重要な役割を担っている。だが、観光資源としては全く重要視されていないらしい。
地図上には山頂に「聖域」があるらしい。おそらくだが、島民以外の人間が訪れるのは禁じられている場所だと思われる。土着信仰の残る波照間島では、島民以外の人間が入ってはいけないエリアがあった。
まぁ、石垣島まで来て山に登ろうなんて考えはそもそも起きないし、温暖で成長の早い植物に対し、管理が大変そうだ。
藪をかき分けて歩き回れた、もう少し展望のあるポイントがあったかもしれないが、その気力はなく、岩の上から見えた海の景色を目に焼き付け、下ることにした。
登りより下りの方が、藪のトンネルを抜けるのが多少楽だった。雨滴と湿気でカメラのレンズがすっかり曇っていて、撮影する気にもなれなかった。
正味2時間半くらいの登山だったが、7〜8時間登ってきたくらいの疲労だった。湿度と暑さ、そして慣れないジャングル環境のせいだろう…。
雨露と汗でベトベトになったので、一旦宿に引き返し、シャワーを浴びることにした。
よもぎを盛るジューシーな牛そば、あらかわ食堂
昨日に引き続き、八重山そばを食べるために石垣港から少し離れた「あらかわ食堂」にやって来ました。13時過ぎという時間だったが、人気のため、炎天下で20分くらい待つことになった…。
ローカル色がより強そうな牛汁が気になったが、牛そば(中)を注文。
とんかつ定食、からあげ定食、カレーがラインナップされているように石垣で働く男の食堂という感じだ。
先日食べたソーキそばもそうだったが、8割ほどの面積を肉が占有している。肉の上にのっているのは、生ニラとよもぎ。注文の際に「にんにく入れますか?」のように「よもぎ入れますか?」と聞かれる。生のよもぎはかなり苦いので、迷ったが、よりローカルに触れるため「はい。」と回答した。
後に注文していた工事現場の浅黒いおじちゃんが「よもぎ入れないで」と言っているのを聞いて、「…。」となった。
ラーメン以上、うどん未満の太さの麺は、つるんとしていて、脂っこいスープとの相性抜群。スープもこってりしていて美味しい。八重山そばは、店によって全く違うんだな…。
テーブルには調味料が置いてあり、ピパーチとグースーが顔を揃えていた。ピパーチを入れた時の味の変化はよくわからなかったけど、シナモンっぽい甘い匂いがする。
まるで肉の泉、ほってもほっても肉が出てくる。ホロホロに煮込まれていて、内臓のとろっとした部分まである。かなりこってりなので、苦味の強いよもぎと合わせて食べるのは納得。
昨日食べた明石食堂のソーキそばと全く違う味わいの牛そばでした。これを食べるのに石垣まで来ないと行けないのが辛いところ…。
於茂登岳に登ったからには、泡盛の於茂登を買わなければならない。
石垣島で生産されている泡盛で一番に有名なのかな。正直、泡盛を飲み慣れていないが、飲み口が甘いけど、2秒後にぐわっと口の中が熱くなります。自宅に買って帰り、チビチビ飲んで、ユンタクしています。
余談も余談なのだがこの日、北海道最高峰である旭岳Tシャツを着て登っていた。わかる人にはわかるネタと思ったが、3人くらいしかすれ違わなかったので徒労でした。
於茂登岳の登山を終えて
牛に食べさせる飼料用のとうもろこし。「人間が食べても食べられなくはないけど、決して美味しくないよ」って言わるが、見た目も一緒だし少しは美味しいんじゃないかと期待して食べて、結局美味しくないような。於茂登岳はそんな山だったのかもしれない。
石垣島で過ごす貴重な時間を削って登るほどではありませんね…。毎年石垣島に来ていて飽きた人が登るか、県の最高峰に熱意のある人に価値がある山と思います。
於茂登岳は評価しにくい内容で、次に石垣島に行くことがあっても絶対登ることはないかな…。バラエティ番組でジャングルに入っていくタレントとか尊敬するわ…。
マレーシアのキナバル山、香港ドラゴンズバックなど、日本より暑い国でのトレッキングも経験しましたが、於茂登岳はそれよりきつかった…。とにかく藪の中に潜む虫への恐怖は忘れられない。
於茂登岳より展望も良い野底岳(マーペー岳)の方がサラッと登れるのでいいと思います。苦い思い出の残った於茂登岳の登山でした。
西表島のピナイサーラの滝トレッキングへ
翌日は石垣島から西表島に行き、ピナイサーラの滝のトレッキングをしました。
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