2021年7月18日
群馬県、長野県、新潟県の3県にまたがる白砂山に行ってきました。標高は2139mです。
群馬県の秘境である野反湖に登山口があり、標高2000mからは笹尾根の稜線があります。7月中旬頃、野反湖にはノゾリキスゲが満開になり、秘境のお花畑を求めて観光客でにぎわいます。
山単体として見ると、特徴は薄いですが、野反湖や温泉などを組み合わせで、一気に面白くなります。
白砂山は毎回候補には挙げられるが、他の山が優先され続けていた山でした。「いつかは登りたい」そう思っていた山でした。
7月中旬、ノゾリキスゲ満開の知らせを受けて、アルプス、八ヶ岳、東北の山々の魅力をガン無視し、群馬県の奥地へと旅してきました。
白砂山について
地図
群馬の山旅サイトに掲載がある「野反湖~白砂山周遊コース」を歩きました。標準コースタイムは8時間なので、いわゆる健脚向きコースです。
コースタイム
- 05:59白砂山登山口
- 07:59堂岩山
- 09:43白砂山
- 10:53堂岩山分岐
- 12:31八間山
- 13:35白砂山登山口
行動時間は7時間36分でした。
ノゾリキスゲ(ニッコウキスゲ)の見頃
野反湖の湖畔に咲く、ノゾリキスゲ(ニッコウキスゲ)の見頃は7月中旬頃です。野反峠(富士見峠)に群生地があります。
白砂山 登山
野反湖登山口よりスタート、群馬と長野の県境のシラビソ尾根
野反湖は都心からは遥か遠く、車でも4時間以上かかるまさに秘境です。前日は2時頃に到着し、車中泊をしました。夜中、外に出ると肌寒く、星空が綺麗でした。
野反湖の駐車場は、キャンプ場も併設しているので、とても広々としていました。
白砂山の最短はやはり野反湖からですが、標準コースタイムは約4時間と長いです。コースタイムの長さの割に、標高差は600mなので、大きく横に移動する区間が2回あります。
立派な白砂山登山口です。
登山口の横には「ぐんま県境稜線トレイル」のキャンペーンの人が、バッジやグッツを販売していました。
踏み固められた登山道って感じはなく、フカフカした地面です。
ちなみに、前を歩くさく兄は、6月に20日間くらい北海道の山をウロウロしていたので、登山ボディがバキバキに出来上がっていて、背中からオーラが溢れていました。
登山口から10分~15分歩くと、ハンノキ沢に到着しました。
横幅5mくらいの徒渉があります。完璧な吊り橋は設置されておらず、水浸しになった岩の上を歩く必要があります。
「北海道の幌尻岳で何度も渡渉した」と経験を語るさく兄は、このくらいの沢を越えることは造作もない様子でした。ただ、酔拳でもしてるのかと言うくらい、体がぐにゃぐにゃしている。
地蔵峠を通過すると、シラビソ尾根と名がついている尾根道になります。
地蔵峠からは新潟県の秋山郷までコースが伸びています。ここは、下ノ廊下みたいに水平道の大冒険コースになっていそうです。
ここからは、群馬県と長野県の県境となり、山頂まで続いていきます。
標高差がないコースのため、ずっと平坦な道が続きます。
ここから夏の暑さが襲い掛かります。関東甲信越の標高2000mの山は、7月登るのはキツイです。
シラビソの木やシダ植物が目立つようになってきて、北八ヶ岳の雰囲気が出てきました。
苔の間にはギンリョウソウが顔を出していました。
樹林の密度が濃く、水分の保湿力がいいせいで、蒸し暑さが出てきました。
ノゾリキスゲの咲くシーズンが白砂山のベストシーズンと考えていたが、白砂山は6月とか10月以降と、少し気温の低い時期に登る方が良いようだ。
一部、展望が見られる場所がありました。
山脈が見えますが、何を隠そう浅間山です。上信越道から見ると、独立峰の立ち振る舞いをしていますが、白砂山側から見ると連峰なのが良くわかる。
麓に見えている町は、草津温泉の温泉街だと思われます。
顔を右に向けると、草津白根山と野反湖が見えました。
草津白根山って、噴火で規制されてたり、観光道路が通っているので、登山者からは今一つ重要視されていない山。詳しく地図を見ていると、芳ヶ平など素晴らしいコースが潜んでそう。
汗をボタボタと垂れ流しながら、シラビソの樹林帯を進んでいきます。
終盤になると徐々に傾斜が出てきました。
それにしても、登山口の標高がすでに、神奈川県丹沢山塊の山頂くらいあるはずなのに、暑い暑い…。
標高2000mを越え、堂平山からは笹の稜線歩き
最初のピークである堂岩山に到着しました。ご覧の通り、展望は皆無です。そして、アブなどの虫が飛び交ってました。幸いなことにブヨは見かけなかったです。
堂岩山の標高は2051mなので、白砂山までの標高差は88mしかありません。しかし、ここから1時間20分のコースタイムが待っていますけど。
山頂の名前が示すような岩などは一切ないです。
堂岩山周辺だけは藪がかなり成長していて、バリエーションルートのような状態になってました。
そして、白砂山の山頂へと続く稜線が見えました。これは、まだまだ先は長そうです。
シャクナゲや熊笹で覆われている緑の稜線は、とてもフレッシュな見た目です。そして、直射日光は強いものの、風を感じることができ、樹林帯を歩くよりは快適です。
稜線から展望はとても見晴らしが良く、奥秩父山塊の向こうに富士山の頭だけがチラッと見えました。
堂岩山から白砂山は、見た目通りにアップダウンがあります。行きは良いけど、帰りを考えると憂鬱です。
猟師の頭は二つの山に挟まれた小ピークです。登り返しに、猟師が頭に来るほどって、意味だと思うね。
稜線には高山植物が花を咲かせていました。ちょっと枯れかけてはいますがコバイケイソウの花。
風に揺れるクルマユリの花にはアゲハ蝶が止まっていました。
足元を見るとピンク色の小さな花、ハクサンフウロが咲いていました。
猟師の頭からいったんは下り、白砂山へと登りが始まります。草に覆い隠されて見えませんでしたが、岩々しい登山道になってきます。
暑さに弱い、なべ氏と自分は息が絶え絶えです。
斜面にはコバイケイソウの群生が咲いていました。
遂に白砂山の山頂が見えてきました。風の応援も虚しく、暑さでヘロヘロです。
大展望の白砂山の山頂、群馬・長野・新潟の奥地を眺める
白砂山の山頂に到着しました。
登山口を出発して3時間44分かかりました。稜線の後半でだいぶ失速したものの、後ろからは抜かれていたので、まぁまぁのペースでは歩けていたようです。
山頂はそこまで広くはないですが、登ってくる人もそこまでなので、十分なスペースは確保できます。それにしても暑い…。
白砂山の山頂看板はとてもシンプルでした。
それにしても、「白砂」の要素は歩いた感じ見当たらないのですが、景観とは違った由来があるんですかねぇ。
展望の良い山頂と謳われていることだけあって、群馬県の山々を中心に眺めることができます。近くに見えるのは、伊香保温泉がある榛名山かな。
富士山は雲に隠れてしまったが、重なり合う山脈が永延と続いています。
草津白根山をはじめとする志賀高原の山々が見えます。浅間山は標高2500mもあるので、この界隈では一番目を引く山です。
長野県の方角の奥には北アルプスの山々も見えていました。
白砂山の山頂を後にして、堂岩山の分岐点へと引き返します。
登り返しに涙目になりながら、堂岩山の分岐まで戻ってきました。
堂岩山から白砂山の山頂までの動画です。
アップダウンを繰り返す灼熱の稜線で八間山へ
白砂山をピストンする人が多い中、できる限り登りと下りは違う道を行きたい我々は、周遊コースへと進んでいきます。四国の剣山のような、低い笹の稜線が気持ちいい。
八間山を続く稜線が見えました。どうやら、いくつかアップダウンがあり、樹林帯も突入するようです。一筋縄では行きません。
ある程度、下ってしまうと風もなくなり、灼熱地獄へと変わりました。この辺りでは完全にバテしまって、足を引きずるようなスピードでした。
黒渋の頭というピークを通過。
浅間山の外輪には「トーミの頭」があったりするので、ピークのことを「頭」と表現する文化があるようです。
熱中症ギリギリの状態でフラフラしながら歩いていました。フラットな稜線に見えて、結構なアップダウンが繰り返されました。日傘でも持ってくればよかった…。
八間山に到着しました。
これほどまでにボロボロになったのはいつ振りだろう…。水も飲み干してしまったので、さく兄からわけてもらいました。
暑いのは熊谷だけにして欲しい…。
白砂山の山頂は遥か遠くにありました。こっち方面から登っていたら、間違いなく堂岩山あたりでリタイアしていたことでしょう。
八間山で休憩をして、野反湖へと下山を開始します。
茅ノ尾根と名前がついていて、下りはじめは急斜面でした。
野反湖見晴という場所がありましたが、何も見えない罠。白砂山に登ると、野反湖はほとんど見えないんだなぁ…。
後半は緩やかな道に変わりました。緩やかな下りなのにヘロヘロなので、前を歩く二人に全然追い付けない。
八間山登山口に降りてきました。稜線区間の長さに比べるとアッサリしていました。
さらに、ここからアスファルトを20分程歩いて、駐車場へと戻ります。
ここに来てようやく野反湖が見えました。少しだけ緑が入っているような、不思議な青色をしていました。
駐車場まで戻ってきました。車内はそのままサウナに使えそうなくらい熱されていました。
登山口に救急車が止まっていました。救急隊員の方に「稜線上で熱中症になって、動けなくなってしまった登山者を見かけましたか。」と尋ねられました。
自分が一歩手前だったこともあり、夏山って怖いなと改めて思いました。
休憩所で野反湖名物のニジマスサンドをさく兄が買っていたので、半分もらいました。味はサーモンですね。
野反湖峠に咲き乱れるノゾリキスゲの群生地
野反湖駐車場から移動して、ノゾリキスゲを見るために野反峠にやってきました。
野反峠の休憩所から、野反湖の方に下って行くとノゾリキスゲが群生していました。
ノゾリキスゲは、ニッコウキスゲの事なのです。
ニッコウキスゲの「ニッコウ」は、東照宮でお馴染みの栃木県の日光のことです。霧降高原の群生が有名で、その名前が各地で浸透しています。ノゾリキスゲは栃木県のことをよく思っていない人が、「ノゾリ」を付けることを主張したに違いありません。
ノゾリキスゲだからと言って、見た目は全く変わりません。
バンドエイドや宅急便みたいに、商標名が一般的に広まってしまうことは、山業界にもよくあることなのかもしれません。ちなみに、ニッコウキスゲは正式にはゼンテイカと言います。
山頂から野反湖は見えなかったけど、八間山が見えました。白砂山は全く見えません。
野反湖のブルーとノゾリキスゲのイエロー、青空と浮かび上がる雲。とても、夏を演出してくれる風景でした。
灼熱の白砂山登山と無理やりセットにしなくても、キャンプついでに散策するくらいで良かったかも…。ちなみに更なる群生地は、野反湖の西側にあるカモシカ平で見られるようです。
ちょうど見頃の時期に来れて良かったです。
ノゾリキスゲのシーズンだけではなく、野反湖をぐるっと周回するトレッキングコースも良さそうだし、八間山にシラネアオイが群生するシーズンに来ても楽しそう。
初めての温泉体験、川にドボンの尻焼温泉
大量に登山で絞り出した汗を洗い流すために川にやってきました。世にも珍しい、川がそのまま温泉になっている尻焼温泉です。白砂山に来たら、必ず寄ると決めていた温泉です。
野反峠からは車で15分ほどの場所にあります。専用の駐車場から5分ほど歩くと、川風呂の入口がありました。
本当に川が温泉になってて驚きました。こんな温泉は初めてです。
まるで治外法権の如く、ここには自由がありました。
- 無料
- 混浴
- 水着でもスッポンポンでも
- より綺麗な温泉がある湯船あり(ここだけはマッパ)
- 脱衣所なんて文明はなし
女の人でスッポンポンの人もいて驚いた。まぁ年齢はだいぶ上だったけど。
川の底から温泉が湧いているので、水が熱い場所、冷たい場所があります。とても、開放感のある温泉に、登山で疲れた体が癒されました。川の温泉を浴びたままだと流石に臭いかなと思い、グツグツに熱い湯船で洗い流しました。
尻焼温泉は、今年最高の温泉体験でした。
八ッ場ダムの道の駅で買ったかりんと饅頭美味しい。
温泉に入った後は、群馬ローカルの焼肉チェーン「あおぞら原町店」で肉を食らい、東京へと帰りました。
野反湖〜白砂山周遊コースを終えて
ノゾリキスゲの見頃に合わせた計画でしたが、真夏の標高2000mの稜線歩きは暑くて暑くて、久しぶりに過酷な登山を味わいました。登って降りるのシンプルなコースならまだしも、アップダウンの連続コースはアルプスでもないと厳しい…。登山後の3日間は、喉がずっと渇いているかのような余韻が続きました。
白砂山は奥深いトレイルを堪能できる、開放的な稜線でした。ぐんま県境稜線トレイルの一部でしたが、他のエリアも歩いてみたくなりました。
また、野反湖は色の青さと四方を山で囲まれた静けさで、不思議な魅力を感じました。今度はテントを持ってきてキャンプをし、湖畔をのんびり散策できたらなと、将来実現させたいと思いました。
コメント
自分的にも「何度も候補に上がりつつ後回しになってる山」の1つです、白砂山。
遠くまで伸びる稜線と山深い景色は魅力的ですね。今年こそは足を向けてみようかな。
コメントありがとうございます。
親子丼やハヤシライスみたいに、食べたら美味しいんだろうけど、普段はなかなか食べないメニュー。山もそういうのありますよね。
群馬ながら周囲に山しかない山域ってなかなかありませんね。
是非、行ってみてくださいー。