2015年8月8日~9日
長野県中央アルプスの空木岳行ってきました。標高2863mです。
中央アルプス(木曽山脈)の南部エリアの主峰であり、山頂一帯が花崗岩で形成されています。ロープウェイが運行し、比較的に登山が容易な木曽駒ヶ岳と違い、山頂までの道のりは非常に長く、通常一泊以上の日程が必要です。
空木岳(日本百名山)、南駒ヶ岳(日本二百名山)、越百山(日本三百名山)を周回する「中央アルプス・ワンツースリープラン」は、2015年の夏における最重要案件でした。
中央アルプスは北と南アルプスに比べると小規模かつ山頂までの距離が長く、山岳リゾートといても過言ではない、お隣の木曽駒ヶ岳より登山者はグッと少ない山です。
「俺たちなら簡単に登れる」と根拠もなく勢いだけで出かけ、例の如くボロボロにされる男4人の夏の旅物語のはじまりです。
空木岳について
「空木岳ワンツースリープラン」という頭が悪そうな企画に参加した4人のメンバ。さく兄、ゆうちゃん、くまちゃんです。
地図
中央アルプスの西側に位置する伊奈川ダム登山口からの周回ルートです。
1日目に越百山~南駒ヶ岳を歩き、コースの中間に位置する擂鉢窪避難小屋で小屋泊します。2日目は空木岳に登り、木曽殿山荘を経由し、登山口まで戻ります。
全長30キロ以上の骨太なルートです。
コースタイム
- 6:02登山口
- 6:44福栃平
- 8:57御嶽見晴台
- 10:56越百小屋
- 12:22越百山
- 15:00仙涯嶺
- 15:56南駒ヶ岳
- 17:50擂鉢窪避難小屋
- 4:00擂鉢窪避難小屋
- 4:58赤梛岳~御来光
- 6:57~8:33空木岳
- 9:28木曽殿山荘
- 12:53金沢土場
- 14:00登山口
行動時間は1日目は11時間48分、2日目は10時間でした。
空木岳登山(1日目)
気の遠くなるような中央アルプスの樹林帯
登山をする前に最も大切なことがあります。それは睡眠です。
さて、アルプスの登山となると当然のように深夜移動となるのですが、中央道における車内トークが異様な盛り上がり(下世話な話)となり、全員が完徹というビハインドからのスタートです。
先述した「中央アルプスワンツースリープラン」の登山口である伊奈川ダム登山口は、中央道伊那ICから下道を1時間40分強とかなり遠いです。
夏山ハイシーズンということもあり、10台以上の車が駐車していました。
駐車場に登山届を提出するポストが設置されていました。
駐車場の標高は1080mで、本日の最高点である南駒ヶ岳は2841mです。
単純標高差1761m
一年前の2014年から計画があった割りに詳細を全然詰めていなかったので、想像以上に大変な登山が待っているとは誰も予想していなかった。
- ヤマレコで周回コースを日帰りしている人がいる
- 避難小屋泊をすることでテント泊より荷物が軽い
と言った二つの要因で、空木岳の周回は比較的容易だろうと思っていた。しかし、実際のアンサーは以下の通りである。
- ヤマレコで周回コースを日帰りしている人がいる⇒超人的体力の登山者を参考にしていた
- 避難小屋泊をすることでテント泊より荷物が軽い⇒宴会しようぜということで食材の荷重が加わる
駐車場から登山口までは、たらたらと車道歩き。
最初の分岐。
明日に空木岳から帰ってくることになります。
6時44分 福栃平(3合目)
とりわけ面白くもない車道歩きを40分こなし、福栃平に到着。さく兄は、夜通しの運転を経て、座り込むと同時に眠りについた。
「寝たら死ぬぞー!!!」
と、起こします。登山口で。夏で。
南駒ヶ岳と越百山のルート分岐になっているが、ワンツースリープランの完遂のためには越百山を目指します。
標高がいつの間にか210mも上がっている。何となく楽勝ムードがこの時はあった。
ともあれ、越百山の山頂まで4時間と記されています。
「KOSMO」というアルファベット表記が、先端をいっている感じがする。
君はコスモを感じたことがあるか
越百山というハイセンスな山名が、漫画「聖闘士星矢(セイントセイヤ)」の有名なフレーズを想起せざるおえません。
コスモ(小宇宙)を感じない藪の多い道からスタートします。アルプスと名のつく山域の玄関口とは思えない地味さです。
樹林帯をひたすら登り続けることになります。もう、歯に衣着せぬ言い方で、先に言ってしまいましょう。
「見どころが何もないクソみたいな樹林帯」が永延と続きます。
水場に到着。
越百小屋までに2か所の水場がありますが一つ目です。
細い管からちょろちょろを水が出ていました。基本的に遠見尾根という尾根道であるため、水量は乏しいようです。
中央アルプスの緯度は八ヶ岳より南、南アルプスと変わりない位置。森林限界は高く、標高2600m~2700mくらいにあるのだろう。稜線直下しか展望は開けないのです。木曽駒ヶ岳の気分出来たら消沈します。
下のコルという場所に到着。
少し熊笹が開けたスペースがあるくらいです。
瘦馬の背
中央アルプスは林業のため、国立公園どころか国定公園にも指定されていません。そのため、原生林というのがないのかもしれない。
とにかく、忍耐強く登り続けるしかないのです。
しゃくなげの尾根と書かれた場所に出ました。時期的に花は枯れ落ちているため、我々の目を引くようなポイントではありません。
見どころを増やそうという熱意は伝わってきます。
そして、個人的に体調不良が発生。
原因は不明ですが、汗をかく量が尋常ではなく、ダラダラと垂れ流し状態。生きていて初めての症状だった。水分と共に塩分が奪われ、足を頻繁につりそうになる。
しかし、ここまで来てはどうしょうもなく、歩き続けるしかありません。汗が出続ける以外には至って健常。
手ぬぐいの水分許容量が、十分でいっぱいになり、その都度きつく絞ります。
8時57分 御嶽見晴台(7合目)
2時間弱が経過して、ようやく展望が見えそうなポイントに来た。
見えなかった。
休憩を挟み、少し歩くと「上の水場」の分岐があります。
ここが2つ目の水場となります。
この水場は尾根から少しくだった場所にあり、沢水を採水します。
汗の大量噴出により、消費し続けていた水を補給します。冷たくて生き返る。
越百山までの登山道で一番よかったポイントだったかもしれません。水場がハイライトとは…。
無常なる樹林帯が続きます。
単調かつ急です。深夜にあった元気はどこへやら、ひたすら無言で登り続けました。
登り続けて、ようやく小屋が見えてきたときは感動すら覚えました。
10時56分 越百小屋
福栃平の登山口から4時間12分が経過しての到着です。越百山の山頂までは1時間ほどのコースタイムがある。登山口の看板には山頂まで4時間と書いてあったのだが、小屋に到着するのですらオーバーしているのだが…。
中央アルプス南部のコースタイムは玄人志向になっているようです。
山頂方向を見るとどうしょうもないくらいに曇天となっており、一同のテンションは雪崩の如く、下がり切っていったのです。
越百小屋はビビットな赤、ダークブラウンのツートンカラーで、山小屋としては珍しいデザインをしていました。
内部は昔ながらです。ここで、缶ビールを購入し、避難小屋でのご褒美とします。エビスが4種類くらい売っていました。
小屋の前はこじんまりとしたスペースになっています。
家族経営しているんでしょうかねえ。
越百小屋で大休憩を挟みつつ、山頂を目指します。高山植物帯へと変わり、樹林帯は途切れます。
しかし、稜線に雲が掛かっており、何も見えない。
ハイマツ帯となり、アルプスの高山感が増してきます。細い道で、あちこちに木の枝が飛び出しているので歩きにくかった。
コスモを感じさせてくれと願いながら、空へ空へと歩いて行きます。
アクセスの悪い道であれば仕方がなく登るが、楽が出来る手法があれば、そちらを利用した系のハイカーなので、登り甲斐など要らないのです。
コスモは夢の中、パーティー全滅の越百山
12時22分 越百山
駐車場を出発してから、6時間20分掛かりました。体調不良も相まり、今夏一番厳しい登りでした…。
日本三百名山の一角となっている山です。
越百山はコスモ(小宇宙)を全く感じられない風景だった。
展望はたまに垣間見る申し訳程度の青空のみ。樹林帯を4時間歩き続け、辛い急登を歩き続け、この仕打ち…。
次に目指す南駒ヶ岳方面は厚い雲に覆われいます。この夏最大の企画だっただけにパーティー全員に虚脱感が襲い掛かりました。
そして、我々は…。
全滅した….
後に我々界隈で語り継がれる「越百山全滅事件」です。
ゆうちゃんが休憩するためマットを敷いて、寝っ転がっていたら、寝息をかき始めた。
「おいおい、寝ちゃったぞ」
と、そこまでは覚えている。自分も真似して寝っ転がっていたら、意識を失った。それに続くように残り二人も寝てしまったようだ。
そして、誰かが異変に気付き、起きたら、20分~30分の時間が経過していたのでした。
我々は何も見えない現実から逃れ、夢の世界にコスモを感じに行ったのかもしれません。全滅中に別の登山客が来ていたら驚いただろうな…。
大の大人4人が野ざらしの山頂で寝ているのだから。
睡眠によってある程度の回復が出来た我々は、南駒ヶ岳へと向かいます。
越百山からは中央アルプスの稜線歩きです。
越百山から南駒ヶ岳へは標準コースタイムで3時間20分、さらに避難小屋までは40分と先はまだまだ長いです。
さぁ、いざ稜線へ。
木曽駒ヶ岳の幅広な稜線と違い、道幅が狭くキレのある稜線です。
真夏らしく巨大な入道雲が流動しています。
依然として、ぼたぼたを滝のような汗が垂れ流し状態ですが、稜線に咲いている花をチェックしなければいけません。
トウヤクリンドウが咲いていました。クリーム色のリンドウを初めてみました。
越百山から南駒ヶ岳へは容赦のないアップダウンが繰り返されます。
花崗岩の山であるため、砂礫の道です。急斜面になると足がずるっと滑るのでストック必須です。
南アルプスの鳳凰三山、甲斐駒ヶ岳、日向山、北アルプスの燕岳のような登山道です。
きっと、晴れていれば感動でジョボジョボしてしまうような道なのでしょうが、人生そううまくはいきません。
正面にぽっかりと空いたサークル状の台地が見えてきました。
15時00分 仙涯嶺
仙涯嶺(せんがいれい)に到着です。
あれ?15時?
気持ち的にはとっくに小屋に着いて、酒盛りをしている時間帯かと思っていましたが、どうしてこうなった。
宗教画のような終末の空をしています。
自分は汗の大量放出により、油断すると足が釣りそうになり、鈍重なペースで迷惑をかけていました。自分以外も寝不足により辛そうでしたが。
次の南駒ヶ岳までは1時間50分の道のり。全く予期していなかった日没との戦いのはじまりはじまり。
鎖場があり、慎重にくだる場所がありました。
断崖絶壁のような場所もあり危険。
むかし、鹿島槍ヶ岳から五竜岳に歩いたことがありましたが、こんな感じの道がずっと続いたなと。
コマウスユキソウが咲いていました。
中央アルプスの固有種らしい。ウスユキソウ属の最も小型の種らしいです。
くまちゃんは本来レッドシュガーの代役として急きょ参加したのですが、この過酷な稜線が辛すぎてレッドシュガーへのあたりが強かった。
トリカブトが咲いています。
初秋の花という印象があります。
ハクサンイチゲの残りかすが咲いていました。
中央アルプスの稜線の特徴なのですが、進行方向の左(西)は岩盤が剥き出し、進行方向右(東)はハイマツや高山植物が群生しています。
冬に日本海から吹き付ける強風の影響なのでしょうか。
陽が落ち始めると稜線を覆っていた雲が徐々に移動をはじめ、飯田市、駒ヶ根市の展望が見えてきました。
そして、ようやく避難小屋が前方右下に見えてきました。
1泊2日で今回のコースを周回しようと思うと、この小屋に泊まることになるため、登山客の集中によるキャパシティ不足に不安があります。
とにもかくにも前進、前進。
アップダウンの多さに、何度となく「ここ登り切ったら南駒ヶ岳だろ?」と言ったことか。
展望のない稜線を経て、満身創痍の南駒ヶ岳
16時56分 南駒ヶ岳
ようやく本日最後のピークである南駒ヶ岳に到着しました。空木岳より23mほど低い山頂です。日本二百名山の一角となっております。
木曽駒ヶ岳~空木岳の主稜線から外れますが、山頂からの眺めは一級品(らしい)。
岩に守られるように御社が設置されていました。
登山口をスタートして10時間以上が経過し、周囲の展望が得られない環境と想像以上に厳しい道中でしたが、本日の最後のピークということで安堵と開放感がありました。
南駒ヶ岳から進行方向に空木岳が見えるはずでしたが、夕方になり尚、しぶとい雲が覆っていて全体像がわかりませんでした。
本日のねぐらである避難小屋に向けて下山を開始します。南駒ヶ岳から避難小屋までは下りで40分の道のりです。
空木岳の展望地っぽい岩場にて、最後のキメポーズを取る。日使用していた手ぬぐいは常時汗でびしょびしょでした。
くまちゃんから貰っていた塩タブレットがなければ途中で一人引き返していたかもしれません。塩分の重要性を再確認した一日でした。
ダラダラ下山していたら、空木岳の山頂が姿を現してくれました。稜線の比翼を広げ、どっしりとしたたたずまいです。
明日は晴れ予報(今日も晴れ予報だったはずなのだが)なので、期待十分で夜を迎えられそうです。
先ほどまでガスに覆われていた南駒ヶ岳も荒々しい岩稜を見せていました。
そして、ようやく避難小屋への分岐。
アウトラインがひいてあるフォントで見やすいな。
擂鉢窪避難小屋までの道のりは摺鉢窪カールと呼ばれる氷河の浸食作用によって削られた地形をくだっていきます。
- 宝剣岳 千畳敷カール
- 空木岳 空木平カール
- 南駒ヶ岳 摺鉢窪カール
中央アルプスには3つのカールが存在するようです。
斜面はお花畑となっており、コバイケソウをはじめ、様々な花が咲いていました。
イブキトラノオが目立っていました。
このほかにも多くの花が咲いていましたが、夕方の虫の活発化と疲労困憊から撮影する気力は全くなかったです。
擂鉢窪避難小屋でひと夏のキャンプ
17時48分 擂鉢窪避難小屋
最後の最後は意識がない状態で、足だけが動いていたような気がします。カール地形から崖の上に建っており、ロケーション的には抜群でした。陽が当たっている時間帯に到着したかった…。
擂鉢窪避難小屋の内部は中央が土間で両サイドが寝床。トイレが隣接しており、非常に快適(避難小屋として)と呼べる造りでした。収容人数は20人から30人ほどでしょう。懸念していた混雑もなく、ゆとりあるスペースを使用することが出来ました。
小屋の外でビストロ。本日の献立は具材をみんなで持ち寄った夏野菜カレーでした。
満載過ぎて食べきれなかったが、後でプラスしたシチューの元が味に変化を与えて高評価でした。
Saku氏は前回の登山で学んだらしいアヒージョを作っていました。
しかし、アヒージョは煮込みという概念を知らなかったのか、高温に熱したオイルに具材を投入し、「じゅわー」と音を立てて、素揚げ料理を作っていました。
具材をもっとレトルトに寄せるなどし、軽量化すればいいんじゃねという話はありますが、この面々は人一倍に楽はしたいが、楽をする努力の優先度が欠けている天邪鬼な連中なのである。
「スカイツリーワンツースリープラン」の初日が終了しました。
日帰りで周回する人もいるし、泊まったら楽なんだろうという考えは通用しないんだなと思い知らされました。
夕食後はいそいそと避難小屋にひっこみ、あまりの疲れと体調不良で、20時ちょっと過ぎに一瞬で眠りに落ちました。
空木岳登山(2日目)
中央アルプスの夜明け、赤梛岳から御来光
正直なところ後5時間は寝ていたかったが、4時前に起床し、御来光を見るため赤梛岳を目指します。ヘッドライトを装備して、急なカールを登っていきます。
4時58分 赤梛岳
御来光直前に山頂に到着し、太陽を待ちます。
AM5:00、中央アルプス稜線上で見る御来光タイムの開始。
奥秩父山塊と南アルプスの中間より、太陽が昇り始めました。
一日のはじまりです。
太陽拳。
昨日は全く展望が見えませんでしたが、今日は周囲の山々を眺めることが出来ます。
中央アルプスから広大な南アルプスが一望できます。甲斐駒ヶ岳はよく目立ち、隣にあるのは仙丈ヶ岳。
長野県伊那地方は甲斐駒ヶ岳を東駒ヶ岳、木曽駒ヶ岳を西駒ヶ岳と言い、そして昨日の南駒ヶ岳。駒ヶ岳に囲まれているんですね(北はない)。
富士山は塩見岳であろう山の奥にちょこんと頭だけを出していました。
西側には圧倒的な独立峰の存在感がある御嶽山が鎮座しています。奥は白山連峰でしょうか。
そして、乗鞍岳が目立ちます。
夏のハイシーズンで最も天気の安定する時期なので、多くの人がそれぞれの山に集結しているのでしょう。
そして、これから登る威風堂々たる空木岳です。
本日はこの稜線を登り切ってしまえば、後はくだるだけで楽。と、この時は思っていました。
さて、ここでジャンプする写真を撮ってくれと言うさく兄のショータイムをご覧下さい。
御来光に向かって勢いよくジャンプです。
出だしがキョンシーのようで珍妙です。
膝を曲げ、手の指がピンと広がっています。首が後ろに傾いています。
跳び箱を飛んでるような姿になった。
ピンと広がった指がカエルのようです。ジャンプ1つでここまで不細工に飛べるのか。
そして、またしても不自然極まる飛び出しをするさく兄。
以上、さく兄の不細工ジャンプショーでした。
真似してみたけど、全然できないんだよな。
太陽も昇りきると、徐々にオレンジがかった世界は平常を取り戻し始めます。中央アルプスと南アルプスに挟まれた伊那地方は雲海が発生しやすいのでしょうか。
素晴らしい2日目を迎えられたことに感謝。
「ありがとう、レッドシュガー」
代打として機会を与えらたくまちゃんは、レッドシュガーさんへの感謝が止まりませんでした。彼は今頃、雲の下で寝ている頃でしょうか。
白と青の境界線上、中央アルプスの天空の尾根道
稜線歩きが特別に好きというわけではありませんが、南駒ヶ岳から空木岳の区間は、今まで歩いた中でも一級品の登山道だったと思います。
花崗岩の白い山肌が美しい。燕岳と比較すると岩が角ばっています。
東側の斜面は絶壁になっているため、西側の斜面を歩くことになります。赤梛岳から空木岳へ向かう稜線は、最後にグッと登り返しますが、平坦に感じました。
西側の木曽方面。
岐阜県や北陸方面もまた雲海がどこまでも広がっています。御嶽山が島のように浮いて見えます。
高山植物はちらほらとだけ咲いています。
昨日までの汗が異常に出る体調不良は回復し、とても快調に歩けました。
空木岳の手前にある小ピークを越えていきます。
ゴジラの背のような稜線で、巨大な岩を巻いて行くように歩きます。ここを乗り越えれば空木岳の山頂です。
乗り越えた先から後ろを見ると後方を歩くさく兄が間違って岩に登ってしまい、ここルートじゃないなとおろおろしているのが見えました。
山頂手前のピークには「南」と書かれた石柱がありました。伊那地方の南ということでしょうか。
山頂まで射程圏内。
花崗岩の美しい緩やかな稜線を歩きます。砂礫をシャリシャリと音を立て歩くのが非常に爽快な道です。
果てしない青空の屋根、空木岳の山頂
6時57分 空木岳
中央アルプス南部の越百山、南駒ヶ岳、空木岳の3座を巡る「中央アルプス・ワンツースリープラン」が完成の運びとなりました。
去年、成しえなかったプランであったために感動も一押しです。
中央アルプス南部の稜線は一筋縄ではありませんが、歩けて本当に良かった。樹林帯さえなければ、何度でも歩きたい道です。
空木岳のスペースは思ったより広く、砂礫で平らになっていました。
下から見ると花崗岩の巨岩がごろごろ散りばめられています。
中央道からのアクセスも良く、空木岳の登山者の大半が利用するであろう池山尾根の方角。
個人的にこのルートのピストンは、退屈そうだったので候補に挙がらなかった。駒石が気になるところですが。
空木駒峰ヒュッテが見えます。
見た目は日本海の漁村地域に建っていそうな倉庫ですが、山頂から近く、テラスからの眺めが良さそうです。軽い荷物出来て、このヒュッテに泊まるは良さそうです。
ベット代わりに昼寝ができそうな花崗岩の巨岩。
さく兄は昼食に甲子園開催中ということで、甲子園カレーラーメンを食べていました。気持ちはいつまでも高校球児。
昨日ガスガスだった南駒ヶ岳は風格ある山容を見せていました。
中央アルプスの稜線上の果てに一つだけ離れ小島のように存在感を示す山は恵那山です。2015年の秋に訪れ、前評判を覆す楽しい山でした。雲海上の奥には南アルプス、そして隠れている富士山。
噴煙を立ち昇らせる御嶽山。
火山規制はずっと続くのでしょうか。
北アルプスの穂高連峰と槍ヶ岳が見えます。
中央アルプスの盟主である木曽駒ヶ岳。
ちなみに2012年に木曽駒ヶ岳から取ったものを探してみました。空木岳は鋭い山容していて、木曽駒ヶ岳より見た目は秀逸です。
宝剣岳が遠目で見てもその尖がり具合がよくわかります。
宝剣岳から続く稜線ルートは人気のようです。しかしながら、空木岳を含む周回ルートのようが、より中央アルプス南部らしい花崗岩の稜線を体感できると思います。
数々の名峰に囲まれていますが、何もない青空が一番素敵でした。
空木岳は名前の響きに人気がありますが、元々は「卯木」から来ているようです。ウツギという花があります。時間の経過と共に「空」と「木」と変遷したようです。
ゆうちゃんは昨日、最愛の人を殺された様な顔をしており、「鬱木岳」になるんじゃないかと心配していましたが、雲の上を飛び跳ねるくらいたいへん元気です。
結局、1時間以上も山頂に滞在しました。
早朝の人がいない時間帯に山頂に立てるというのが、山中に宿泊する最大のメリットだと思います。
下山もまた苦行、真夏の熱された樹林帯
名残惜しいですが空木岳より下山を開始します。
強烈な威圧感を放つ御嶽山に向かって歩きます。
木曽殿山荘方面は険しい岩場の斜面ですが、しっかり階段で整備されていました。
登りたくなるような岩場ばかりですが、グッとこらえて慎重にくだっていきます。
折り返しの部分で、昨日歩いた稜線を見納め。南駒ヶ岳の迫力が凄い。
コースタイム1時間ほどのくだりであるため、山荘は見えていますがなかなか近づいてる感覚がない。
今日は下るだけで楽と思っていたが、日差しが強くとても暑い。これは標高を下がってくると樹林帯は熱を溜めて厳しいんじゃないかという疑念が生まれる。
9時28分 木曽殿山荘
空木岳山頂から1時間ほどで到着しました。収容人数100名ほどの小屋です。
山荘内部はフローリングがテカテカしていて非常に綺麗でした。宿泊には必ず予約が必要らしい。
位置的にロープウェイを利用して周回する人が泊まるのかな。
炭酸を買わずにはいられなかったので、CCレモンのペットボトルを買いました。
いっつも乾杯シーン撮ってるな。あまりの美味しさに一瞬でなくなりました。
トイレも済ませ、後はひたすら下るだけとなります。
須原・伊奈川ダム方面の下山道へ。
小屋の直下はお花畑になっていました。そのためか虫も多い。
義仲の力水という給水ポイントがありました。
名前の由来は平安時代の末期の武将である源義仲(みなもとのよしなか)が、この山を越えたことに由来するようです。
中央アルプスの周回ルートは稜線上には水場がないため、水の運搬には気を付けましょう。
さて、水場をすぎると樹林帯に突入です。
4時間30分の樹林帯歩き、1時間20分の車道歩きの幕開け。
8合目までの道のりは比較的に緩やかな道が続きました。
途中に展望の開けた場所があり、中央アルプス南部の稜線が見えます。
代り映えもなく8合目。
仙人の泉と書かれた2回目の給水ポイントがありました。冷えていて美味しかった。
ここからは登り同様に記憶が全くないくらいに単調な下り坂。沢の音が近づいてくるのだけが唯一の希望でした。
時間はそこまで掛かりませんでしたけど、ずーっと樹林帯が途切れないんじゃないかと不安になるほどでした。
6合目の吊橋まで来てようやく急なくだりが終わりました。
時間にして11時過ぎとなり、気温が上がり始めて猛烈に熱い。沢のほとりで行動食を食べて休憩しました。
吊橋を通過してからが、何だかんだきつかった。沢から少し登ったりがあり、暑さと単調さで完全にグロッキーでした。
12時39分 うさぎ平
木曽殿山荘から黙々と歩いて、2時間40分で下山しました。驚異的なペースでコースタイムをかなり巻きました。周回ルートでここだけが早かった。
しかし、駐車場への道のりはまだまだ長いです。
稜線を歩いた分を戻らなければいけません。
12時53分 金沢土場
最後の分岐ポイントです。
車道を1時間20分ほど歩かなければなりません。男4人で下衆な話をしながら、退屈な林道を歩きます。
14時00分 駐車場
空木岳の「中央アルプスワンツースリープラン」の下山完了です。地区大会を勝ち抜き甲子園に出場できた時の気分に等しかった。
避難小屋を出発して、10時間かかりました。
結局、両日ともに行動時間を10時間を越えるハードな旅でした。
避難小屋で荷物が軽いし、日帰りで周回している人もいるようだし、簡単なコースと言ってたやつは誰だ!!!はい、私です。
木曽川のせせらぎ温泉と青い塔でソースかつ丼
木曽川で川遊びやBBQに興じる名古屋あたりからやってきたのであろう連中を羨ましと思いながら移動しました。
あまりにお腹が空き、道の駅に寄り、軽食を取りました。
2日分の汗を「せせらぎの湯」で洗い流しました。くまちゃんは相当気持ちよかったのか湯船で絶頂に達していました。汗以外のものを垂れ流していないだろうか。
渓流沿いの露天風呂が良かった。
本日の登山後グルメは、個人的に定番入りしているソースカツ丼の名店「青い塔」です。
馬刺しを注文。さしが綺麗に入っていて美味。
厚切りのソースかつ丼は非常にボリューム感がありながら、上品な味に仕上がっています。肉の味をしっかり感じられるのが良いです。
ソフトクリームブロガーのレッドシュガーさんの意思を継ぎ、帰りの八ヶ岳PAで、信玄ソフトを購入しました。美味しいです。
これ車内で食べたらきなこが飛び散って悲惨だろうな。
当時、さく兄の最寄り駅だった町田駅で解散。
男4人の短い夏の2日間の旅を終え、自宅へと帰っていくのでした。
空木岳の登山を終えて
南駒ヶ岳から空木岳へと続く稜線は、空と大地を繋げているような感覚が一歩一歩にあり、過去に歩いた中でもトップクラスに良い道でした。白く輝くような花崗岩の稜線は、中央アルプス一帯では、他にないと思われます。
展望は中央アルプスと並行する南アルプスをはじめ、御嶽山、乗鞍岳、北アルプスなど多くの山々を眺めることが出来ます。
体力があるように見せかけて実はない我々なので、基準になるかはわかりませんが、両日ともに行動時間10時間以上の相当骨太なルートでした。空木岳の山頂だけを目的に目指すだけであれば、その他のルートが適正ですが、中央アルプス南部の良さを把握できる素晴らしいコースでした。
越百山から南駒ヶ岳はガスっていたのでまた歩きたいところですが、標高差のある長い樹林帯歩きが待っていると思うと再訪に躊躇します…。
齢を重ねて集まれる頻度が減っていますが、男が4人も集まるとパワーがあり、何でもできる様な気がします。
アオハルと書いて青春ですが、アオナツと書いて青夏。登山者である僕たちは、そんな青夏をこれからも送りたいです。
また、日に恵まれて、「晴夏」を楽しみたいです。
コメント
わ〜最初の周回ルートの地図見ただけで無理思うわ。(^_^;)
でも骨身にしみるような倦怠感が、よく滲み出てる良いブログだと思いました。(o^^o)
途中で本当に寝てしまってる4人様を見てみたかったな。
たぶん自分はこの登山行くことはない、行けないです。(^_^;)
今春はなかなか天気と予定日が折り合わず山歩きスタート出来ないでいます。
安達太良山も三国山も計画倒れで
今月中に再度の安達太良山と平標山を予定していますが晴れることを祈るばかり。(^^)
筑波山で滑り、腕をやられてから滑り恐怖症になり、滑りそうな状態だと所要時間倍増。
去年9時間もかかった平標山仙ノ倉山がどうなることやらって感じです。(^_^;)
先日、登らなかったけれど越後湯沢に行って雪山を見ながら(源太山とか)山菜取りしたり綺麗な川を眺めたり。春のあっち方面は良いですよね。(o^^o)
つくしんぼなんか見ながら、山登りスタート時期だなあと感じ入っておりました。
また登った後でコメントさせて下さいね。(o^^o)
blueさんの山体験ブログも楽しみにしています!
>ユメミンさん
コメントありがとうございます。
たぶん、避難小屋泊で無駄に荷物が多かったという点で、僕たちは満身創痍でした。
途中にある山荘を利用すれば、空木岳に登ることはできるかと思います。
山頂で男4人が倒れていたら事件ですよね。
だいぶペースが遅かったので、誰ともすれ違わなかったと思います。
安達太良山と平標山はこの時期だと高山植物が咲いて楽しめそうですね。仙ノ倉山はこれからが花が咲いてきそうですが、ブヨにくれぐれも気を付けて下さい。
残雪の新潟は守門岳で訪れていますが、来年は角田山に登ってみたいと思っています。
あ、ちなみに今年は佐渡に行っています。
またのコメントお待ちしております!!
どうもです。
今回も楽しい登山ブログで笑ってしまいました❗️
「越百山全滅事件」
「ありがとう、レッドシュガー」
は、笑ってしまいました
空木岳はダム側から周回すると、超キツイのですね、とても参考になりました。稜線歩きはあまりないですがピストンになってしまいますが池山尾根が楽そうですね
また、次のブログも楽しみにしています❗️
>ハルオさん
天城山に引き続き、コメントありがとうございます。
レッドシュガーさんは数字の取れる登山タレントなので、今後の登場に期待して下さい。
樹林帯さえなければ…ということですね。
池山尾根は一番スタンダードだとは思いますが、ピストンでも厳しいかと思うので、なるべくであれば宿泊を検討してください。
またのコメントお待ちしております。
初めまして!
以前より、隠れ読者としてblueさんの破天荒日記を
拝読させていただいてます。
いつも魂をすり減らすような山行に、ハラハラしつつも
色んな意味で羨望の眼差しで読んでいます。
自分は桃頼みの岡山在住なので、blueさんの良く行く山域から遠く、
また、登山弱者なので…
そんな中、中央ア123は自分の憧れでした。が、今回なんとか
blueさんの日記を参考に、踏破してきました⤴⤴
越百山の山頂・全滅現場に着いたときは、感動して同じように
寝転んでみたのは言うまでもありません!
いつも楽しい日記にインスパイアされてます❗
多くの隠れ読者の一人として、山行日記を心待ちにしています✨
日記にしてみました!西の山へもおいでください。敬具
>mt.moon(むー)さん
初めまして、コメントありがとうございます。
肉体と魂をすり減らす登山を続けていましたが、最近では時間をかけて山を楽しむということを憶え、極力厳しい登山を控えることを心がけています。
しかし、毎回のように歯車が狂い、ハラハラな展開になってしまうのですが…。
岡山からアルプスは遠いですね…。
岡山県は夜行バスで通り過ぎただけで、足を踏み入れたことがない件です。
瀬戸内海沿いは個性的な山が多そうで、注目しています。まあ、遠いのですが…。
空木岳の登山お疲れ様でした。
空木岳の一泊二日は本当に大変でした。風景が一切変わらない無慈悲な樹林帯歩きが…。
日記も拝見しました。ご苦労様です!!!