2泊3日の後立山連峰の縦走の後編です。
後立山連峰を縦走するため、初日に扇沢から入山した僕らは、順調に爺ヶ岳を登頂。宿泊地の冷池山荘に到着しました。しかし、翌日は天気予報が外れ雨。そんな雨の中、鹿島槍ヶ岳を登頂しました。
後編は、今回の縦走で最も危険な八峰キレットと五竜岳になります。
今までで、最も過酷な登山となりました。
鹿島槍ヶ岳・五竜岳 テント泊縦走
後立山連峰の地図はこちら
見上げると空が広がっていた
手が届きそうで届かない、とても澄み渡った青色をしていて一瞬で消え…
360度の視界を雲によって遮られた鹿島槍ヶ岳の頂上を踏んだ僕達は、後立山連峰の奥地へと足を踏み入れます。
気持ちがローになっていますが、ここから先は危険地帯。
心のレバーを切り替えなければ、大怪我を招きかねません。
固定されていない石が非常に厄介で、慎重なフットワークが要求されます。
狭い道ですがまだ八峰キレットではないため、比較的歩きやすい。
ライチョウ御一家。
一番大きな体躯をしている一匹がずっと鳴き声をあげていました。お父さんなのでしょうか。
途中、分岐がありザックを下ろし鹿島槍の北峰へ。
もはや景色の期待はゼロとわかってはいますが、ポイントは抑えておきたいところですね。
遂に、鬱積した不満不平が爆発し仲間割れがはじまってしまいました。
少々お待ち下さい…
さぁ、ここからはいよいよ八峰キレットです。
鹿島槍ヶ岳から五竜岳の稜線上を八峰キレットと言います。
本来なら2日目に一気に抜ける予定でしたが、本日はキレット小屋まで向かいます。
雨で岩が濡れているので難易度は倍増です。滑らないように神経を尖らせて進みます。
普段なら何と無しにくだれる道も時間をかけてゆっくり降ります。
テント泊の大きなザックだとしゃがんだときに、地面にぶつかり思わぬ方へ体が傾いて危ないからです。
鋭利な岩壁が連なっていて迫力があります。
そして、途中西の斜面が明るくなってきたので見てみると…
そ、空だッ!
水流のように流れる雲の合間に確かな青空を確認しました。
これだけでもとても嬉しい。
10分も続かなかった青空でしたが、心の曇りを少しだけ取り払ってくれた気がします。
青空をバックに岸壁に立つえきぃ君。マムートのパンフレットに使えないかしら。
( ゚д゚ )<こっちみんな
「こんな天気に登山、お疲れ様ッス!」って言われているような気がした。
キレット小屋に早く到着したい。
その一心で歩を進めます。
キレット小屋直前の道が、今回のルートのハイライトになります。
細い梯子の上を渡るのにすごい緊張しました。
切り立った渓谷の隙間にとても長い鎖と梯子が立てかけられていました。
鎖をしっかり握らないと怖いですね。
落ちたら急転直下、天国まで快速で旅立てることができるでしょう。
斜面の側面を僅かに平らになった場所を足がかりに進む道が、一番怖かったかもしれません。
落ちたら怪我じゃすまないだろうしね。
楽しそうにしているが必死。
晴れていて軽装ならきっと楽しめるんだろうけど…。
16時30分 八峰キレット小屋 ---
鹿島槍ヶ岳から3時間で到着することができました。
素泊まり6400円を支払い受付をすませました。
乾燥室があったので、レインウェアや濡れたものを一式干しました。
翌日は平日の月曜日と言うこともありガランとしていました。
指定されたベットの場所に行ってみると、端っこでうずくまっている人がいました。すると急に吐き出して…。どうやら、飲み過ぎのようでした。ウィスキーの小瓶2本空けたとか…。
そんなこんなでベットの場所も移動となりました。
17時過ぎに玄関の横にある炊事場で夕飯の調理を開始しました。
山と言えばカレーですよね。これは世界の定説です。
懐かしい言葉だな…。
誕生日プレゼントでもらった宮崎にある航空自衛隊の基地カレーで、なにやらあの宮崎地鶏を使用しているとかで、おいしゅうございました。
そそり立つウィンナーをキレットに見立てたキレットカレー。
えづらが悪いな。
そんなわけで夜も更けて…
就寝時間までは食堂で漫画読書していました。
山関係の本がほとんどなくて、漫画の「岳」が1巻だけぽつんと置いてありました。
20時に消灯。
暗闇の中、外では強く吹きつける風と降り続く雨の音が響いていました。
「まぁ、夜のうちに止んでくれるだろう…」
そう考え、眠りにつくのでした。
翌朝。
大悪天候
雨は降り続き、風は西からもの凄い強さで吹雪いていました。
「このくらい普通だよ」
と山小屋の主人には言われましたが、都会で暮らす僕らにとって全然非日常です。
普通はこんな天気の中、登山をしないのが正解なのですが、迂回路もない稜線上に留まることはできないため出発。
写真だと伝わらないので風の強さを動画で。
西風が吹いており、八峰キレットは西側の斜面に沿っているため、直に受け続ける形です。
もう、泣きたい。
寒い、寒すぎる!
標高2500mの世界で受ける猛風は、ゴアテックスのレインウェアを着ていても体の芯を冷やしてきます。
幸い登りなので、歩き続けていれば耐えられる寒さではありましたが、低体温症になるかのギリギリのラインだと思う。
みぞれ交じりに変わるし…。
もう今日の天気はこのまま回復しないなと歩いていて思いました。
色んなポイントがあったり、ライチョウ何度も会いましたが、写真を撮る余裕なんてない。
立ち止まると寒くて寒くて…。
そして、昨日の道より危険なのは確かで、落石が発生しやすそうな斜面が随所にあります。
かなり慎重です。
ちなみにレインウェアの下を忘れている自分は、下半身がびしょびしょです。
あと、手袋も防水ではないので濡れ濡れ。
何度も何度も鎖場と梯子を繰り返したのは記憶していますが、無我夢中でよく覚えてないです。
晴れていればスリリングで楽しめたと思いますが。
途中、G4とかG5とかあった気がするけど、よくわからず素通り。サミットでも開かれたんですか。
そして、小屋を発ってから3時間で五竜岳の手前に到着。
荷物をデポって山頂へ向かいます。
9時35分 五竜岳山頂 ---
…。
視界ゼロ、見晴らしも何もあったもんじゃない。標高2814mという高さも微塵にも感じない。ただ、岩と砂で固められた地面。
「悲しいけど、これ登山なのよね」
うぉぉぉぉぉ。
奇跡の晴れを祈りました。
「降りようか…寒いし…」
「うん…。」
ザックを回収し、五竜山荘へ向けて出発しました。
登ってくるパーティが2組ほどいて、なんだか安心した気分になりました。
難所は抜けたと言え、雨で濡れた道は危ないので注意ですね。
五竜山荘到着。
といっても何も見えないな。
ストーブだぁぁぁぁ。
完全に冷え切った体を生き返らせてくれました。渇いた砂漠でオアシスを見つけたようなそんな気分。
五竜山荘の食堂が営業していたのでお昼ご飯にすることにしました。
チャーハン、えびピラフ、うどんなんかのメニューがあり700円くらいだったかな。
自分はピラフを食べました。
冷凍モノですが、ちゃんとフライパンで焼いてくれるので美味しかったです。
はぁ生き返った…。
3日目は、この五竜山荘のテント場に泊まり、先にある唐松岳に向かう予定でしたがその余裕はないため下山です。
遠見尾根から白馬五竜スキー場を目指します。
ストーブの前から離れたくないとダダをこねましたが下山しなければなりません。
遠見尾根は後立山連峰の東側なので、先ほどまで受け続けていた風は遮られました。
さすがに、下山時にずっと受け続けていたらと思うとゾッとする。
西遠見山、大遠見山、中遠見山、小遠見三と続きます。
最初の西遠見山には小さな池がありました。
アップダウンはある尾根道ですが、そこまでの高低差はなく歩きやすいです。
ただ、3日目ということもありやっぱり疲れの色は拭えませんが。
街のある東へ進んでいくと徐々に雨が止み始めました。
街の方は晴れているようで、山脈にだけいやがらせのように雲が掛かっていました。
小遠見山に辿りついた頃には、雨はすっかり止んで、山頂で待ち望んでいた青空が広がりました。
散策コースになっているため道が整備されて歩きやすいです。
資材などの提供はアサヒビールみたいでした
遠くから旅のエンディングを知らせてくれる、リフトかゴンドラの音が聴こえてきました。
無人で動き続けるリフト。
高山植物園に出ました。
ほとんどの高山植物園は枯れていて、無人で動き続けるリフトが寂しい雰囲気です。
15:00 ゴンドラ乗り場---
高山植物が咲き乱れる6月から7月は平日でも人がいるかもしれませんが、とてもガランとしています。
登山者用の水汲み場と足を洗う場所があるのが嬉しいですね。
1000円くらいだったかな。
ゴンドラに乗って下山です。
安心できる瞬間ですね。
肉体的な疲労は思ったよりは感じませんでしたが、ザックの調節が下手なのかやたら肩が痛かったです。
下界に降りてきました。
このゴンドラ駅のすぐ側で、スキージャンプの練習場があって面白そうでした。といっても雪はないので、飛んだ先はプールにどぼんです。
エスカルプラザで帰りの交通手段と何より温泉!情報を受付で聞きました。
歩いて15分くらいのところに温泉があると聞いて向かいました。
十郎の湯に到着です。
施設は新しく、内湯と半?露天風呂がありました。
初日は汗だくになり、2日目3日目は雨と風に当てられて、どろどろに汚れた体で入る3日ぶりの風呂は最高ですね。
休憩室の畳に寝っ転がった瞬間、憑き物が取れたように体から緊張感が抜けた。
そして、地元の牛乳を一気。
食事施設のある温泉だったので、なぜか天丼をいただきました。
当たりはずれのある温泉施設の食事ですが、ここは満足できる美味しさでした。
細麺のうどんが美味しそうだった。
うーん、やっぱりうどんか蕎麦を頼むべきだな。
タクシーを呼んでバス停まで移動。
帰り方は色々あるようで、一番早く帰れる方法を選択。
白馬のバス停から長野駅に行き、そこから新幹線で東京へ。
18時にやってくる長野駅行きのバスを待つ。
まだまだ夏日と言われていましたが、半袖だとひんやり寒く、短い夏も終わりなんだなと。
1時間ほどで長野駅に到着。
平日なので、働いてこれから都心部へ帰るサラリーマンに「くだばれ」と思われているでしょう。
小屋代と新幹線代と予想外の出費が多く、財布には御札がなくなり小銭しか残らなかったぜッ!
東京に入り夜景が見えてくる。
朝方に標高2800mの山中で極寒の暴風雨に遭っていたギャップに、違和感を覚えずにはいられない。
お金がなかったので東京駅から定期が使える大手町駅のロングコースを歩いて帰りましたとさ。
というか月曜発売のジャンプを買うためです。
後立山連峰登山を終えて
言うなれば、「勝負に負けて、試合にも負けた」
二日目の朝に引き返さなかったのは間違った選択だったと思います。慣れた二人だったから結果的に無事に下山できたようなもので。高い交通費を払って、貴重な休みを費やしているので意地になっていた部分は否めないですね。
レインウェアを忘れると言うこともアホだったけれど、ある程度天気図を読めるようにならないと。
結構、修羅場を切り抜けてきましたけど、今回以上に危険な事は絶対にしないようにします。何より安全が確保できない上で、冒険的な登山したところで何の面白みもないですしね。
まぁ、いい経験ができました。
山頂はすごい残念な結果になりましたが、3人で登山できたことは楽しかったです。
いよいよ秋に入りますね。
去年紅葉を満喫できなかった分、今年は期待しております。
コメント
こんばんは
veryblueさんでも悪天候続きがあるのですね
無事に戻れて良かったです。パンダちゃんもね。
でも、合間に表情のある風景撮れてましたね。
ところで、ピンクフロイドってかなり古いよね?
ホントは40代なんじゃ?0^^0
>すんこさん
パンダは特にコメントもなくさりげなく入れているので、よくお気づきになりましたね。
実はONE PIECEという漫画に隠れキャラで出てくるパンダマンを元ネタにしています。
これからは、写真の隅っこに隠れて登場させようかなとか思っています。3・
年齢ですか?
40代な分けないじゃないですか、17歳です。
ご無事で何よりです。
いつも何だかんだ、楽しそうですが、
今回はかなりきついし、危険だったんですね。
でもどんなにつらくとも、寸劇をするあたりはやはり玄人ですよ。
次のブログも楽しみにしてます。
>さつおさん
いつも何か面白いネタを提供できるように考えて歩いていますが、さすがにこの時は思考が回りませんでした。
これからも体を張って笑いをとっていきたいと思います(ぇ
こんにちは、いつも登山前後で気持ちが盛り上がったときに読ませてもらってます。
教えてほしいのですが、カメラは何を使っているのですか?いつも写真きれいだなーと思いまして。
>はろさん
はじめまして!
まずはコメントありがとうございます。盛り上がるような事書いてましたっけか…。
カメラについてはよく質問されるのですが、Canon Eos Kiss X4と言うのを使用していて、レンズも標準のものを使っています。
なので特にこれといってすごいカメラと言うわけではありません…。
こんにちは^^
悪天候の中おつかれさまでした、そしてご馳走様でした。今回もおいしく堪能させていただきました。
お天気良くてもかなり危険なとこだったと思いますが、雨風強い中ホント無事でなによりです^^ 山頂での見晴しが連日悪く残念でしたね。 でも再チャレンジできる楽しみが増えたんじゃないですか? 次回も楽しみにしてます!
ちなみに、ザックは何リットルくらいの使ってますか?テント泊2・3泊行ける大きさってどのくらい?
>ひでさん
そうですね、いずれは再チャレンジしてみたいですね。
悪天候の山頂は、ただの岩の塊にしか思えませんしね。
そして、八峰キレットで八宝菜を食べることを完全に忘れてしまっていたのが心残りでなりません。
テント用のザックは65リットルを使っています。
50リットルから75リットルが1泊~2泊の相場のようですね。
勝負や試合に負けたのではなく、
自分自身に負けたのだ。
>adaさん
北アルプス縦走にのぞむこと自体が間違っていたのかもしれません。甲子園で言うと21世紀枠のような存在で、全国の力を体感しました。
まずは筋トレからやり直します。
五竜岳蹴っちゃだめよw
鹿島槍もカッコイイわ~☆
>Tomomiさん
晴れていてその姿を望めませんでしたが、五竜岳と鹿島槍はイケメンかもしれませんね。
Tomomiさんが通いつめたくなる気持ちもわかります。
貢ぎ過ぎないように気をつけてください。
無事に帰ってこられて良かったです~
途中読んでて何度も心配しました。
八峰キレット小屋の手前の、斜面の側面のかすかに平らな場所を探して歩くとこなんか、自分が登ってると思うと足がすくみました。コワイ。
しかもレイン忘れ手袋びしょびしょなんて・・・
風邪引かなかったですか?
でもいい思い出になりましたね。
なかなか出来ない体験ですよね。
五龍岳。。。ガーン。山は神様です。
G4G5のサミットのクダリと、ライチョウが2匹同時にこっち向いた時は吹き出しましたw
とっても楽しかったです。またきます。
>heartyさん
お陰様で五体満足で帰ってくることができました。
なんだか、左足の中指が内出血して黒くなっている以外は。
貴重な体験になりましたが、もうこんな体験はしたくないと思える体験でした。
今度は、山の神様に晴れを祈ってから登ることを心がけようと思います。
鹿島槍ヶ岳~五竜岳 テント泊登山(後編)、拝見しました!
天候がちょっと残念でしたが
読み応えがありました~お疲れさまでした。
自分も先週、宇都宮からマイカー利用で大天井岳行ってきました。
次回の山行も楽しみにしています。でも、お気をつけて。
>文壱さん
宇都宮お住まいなんですね。
宇都宮からだとアルプスへ行くには高速乗り継ぎが大変ですよね。
大天井岳いいですね。
来年は、燕岳からの槍ヶ岳に行こうかなと思っていたりいなかったりします。
すみません、生意気言いました。
真面目に返されるとは思いませんでした。ごめんなさい。
>adaさん
夕日に向かって走ろうぜッ!
Veryblueさんのこの過酷な山行からちょうど2年後の週末、扇沢から鹿島槍ヶ岳をピストンしました。自分史上トップクラスの素晴らしい山だと思ったので、ぜひお天気のいい時に再訪してみてください。
近々ブログ書きます。でも、ライチョウには会えませんでした。ライチョウは雨の日の方が遭遇率が高いようですね。
>icyfireさん
晴れの日の鹿島槍ヶ岳…。
とてもうらやましい限りです!鹿島槍ヶ岳と五竜はまた歩きに行かなければなりません。
ブログを楽しみに待たせて頂きます。
すごい!すごい!すごいです!高原山を調べていて、しゃざん→ここのペイジに辿り着きましました。今年の目標は五竜岳なので、とても参考になりましたし、(*゚∀゚)パンダかわゆす!♡私も栃木県民なので、色々参考にさせてください!ちなみに。正嗣>みんみんです。( ・ิω・ิ)
>クラパンさん
初めまして、コメントありがとうございます。
五竜岳はこの通り、暴風雨登山となったので、いつかまた登りたいと思っています。
なるほど、栃木県の登山者さんなのですね。北関東道でアクセスが良くなっていいですよね!渋滞もしないし…。
自分は餃子があれば幸せなので店舗は問わずです!
ご飯が食べたいときはみんみんですね。
来週爺ヶ岳~鹿島槍岳の予習で再読させてもらいました。
はっちゃけてたなぁ…
けど楽しそう!山頂の雨乞いなら晴乞い…青空のためなら
藁をもつかむ気持ち、よくわかります。
アフターコロナでテントは予約制。冷池はとれなかったので
種池テント泊。自分はチャッピーにピザと鹿島槍岳を楽しみます。
またsaku兄さんとの登山レポも待ってます❗