2016年4月30日
群馬県桐生市の鳴神山に行ってきました。山頂は桐生岳で、標高は981mです。
5月上旬から中旬にかけて、世界で唯一この山にしかないカッコソウが咲くことで有名です。それを抜きにしても緑が多く、沢あり、岩場ありの変化にとんだ山歩きができます。
カッコソウは例年5月中旬頃に開花します。
暖冬の影響により、ゴールデンウィークに見頃を迎えたという情報を察知し、帰省先の栃木県から行って参りました。世界で一つだけの花を巡る旅スタートです。
鳴神山について
地図
駒形登山口からの周回ルートです。
カッコソウの群生は2か所あり、鳴神神社から東側へ下ったところ、椚田峠から東側に下ったところにあります。規模的には後者の方が咲いていました。
コースタイム
- 10:45駒形登山口
- 12:36鳴神山
- 13:23椚田峠~カッコソウ群生地
- 14:33駒形登山口
行動時間は3時間48分でした。
母と一緒に歩いているため、ペースはゆっくりでした。
鳴神山 登山
帰省先の栃木県から群馬県へ
帰省先の栃木県宇都宮市から母親と父親を連れ、北関東道で群馬県を目指します。この高速が開通したことにより、群馬県へのアクセスは格段に良くなった。尚、県民同士の仲の悪さは周知の通り。
栃木県の名峰「男体山」が白い雪の筋を作り、関東平野を見下ろしています。
県道338号線を北上し、鳴神山の登山口に到着です。
ナビに「宝徳寺」とセットし、そのまま山道へと進むのが良いかと思います。駐車場らしい駐車場はなく、路駐が何十台と連なっていました。人気具合が伺えます。
工事中で通行止めになっていましたが、登山者専用の通路がありました。
木漏れ日射す、水と緑豊かな登山道
鳴神・吾妻ハイキングコースを行きます。
山頂までの距離は2.2キロ、1時間30分の道のりです。標高差550mです。父親は麓の街で待っているということで、母親と一緒にスタート。
「足元に注意するZ(ぜ~っ!!)」
超、面白いやつです(群馬的に)
仮設トイレが設置してありました。
水は外のホースからじゃぶじゃぶと出ていました。
沢沿いの舗装道を登っていきます。
10時58分 鳴神山登山口
駐車場から10分ほど歩くと登山口に到着です。
「種の保存法」によりカッコソウは国内希少植物種に指定され採取や譲渡が禁止されていますと書かれた看板がありました。
国内外の絶滅のおそれのある野生生物の種を保存するため、平成5年4月に「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)が施行されました。種の保存法では、国内に生息・生育する、又は、外国産の希少な野生生物を保全するために必要な措置を定めています。
カッコソウは平成24年に指定されています。南アルプスの北岳に咲く固有種「キタダケソウ」も選出されています。
白滝橋よりスタート。
小さな清流が流れる清々しい道です。
小学生が作った看板が設置されており、地元密着型の山なんだなと感じました。これを作成した小学生も現在は44歳(2017年時点)ですか。
片割れが落ちてしまったニリンソウが咲いていました。
巨大は岩壁に挟まれるようになり、渓谷の様相になってきました。
都内からアクセスのよく、埼玉県にある棒ノ折山のような道です。
母親は地元のハイカーと仲良くなって、おしゃべりしながら登り始めやがったので、自分は後方30mの間隔を空けて歩きます。
第一石門
ロープで岩をよじ登る場所がありました。
新緑の葉が活力を与えてくれます。
ゴールデンウィーク中は1000m前後の山に新緑前線があります。
大きな黄色い花。
なんだろ。
登山口に近いとこにあったニリンソウより花びらが大きい。
中央の沢が流れているところに並木道のように落葉樹が自生しています。山の斜面は杉が生えているので、レイアウトされているかのように思います。
気温は徐々に上がってきましたが、日陰は涼しく、沢の音が心地よい。
ナルカミスミレが咲いていました。
こちらは後で知ったのですが、「ナルカミ」と冠していることから、鳴神山の固有種だそうです。二つも固有種を持っているとは、実力のある山ですね。
11時39分 中間点
「中間点」と手書きで書かれたところに到着。
緑満載の登山道が本当に心地よい。
極限の雪山や大解放の稜線も良いですが、朗らかな里山も同等かそれ以上に好きです。
ツツジも開花しており、見どころはさらに増えていきます。
渓谷の斜面をずんずんと登っていきます。
水場がありました。
標高900m台の山ですが、上部まで水流が豊富です。
背の高い木が空に向かって背を伸ばしています。
光を遮るように葉が茂り、射しこむ太陽の光を浴びながら歩きます。ああ、長い冬が終わり、ようやく山に春がやってきたのだと実感。
小さい白い花が少しだけ咲いていました。
ハナネコノメかな?最盛期は3月下旬ごろらしいです。
レンゲショウマを育成している保護ネットがありました。小さな山だがいろんな花が咲くのだなと。
小さいカッコソウの群生地
尾根道に到着しました。
吾妻山との縦走路になっており、骨太な縦走路になっているらしいです。ここで、カッコソウのある場所へと少し下ります。
全然、花なんて咲いてないぞと思いつつ、目を凝らしながら歩いていると…。
咲いている個体を遂に発見。
カッコソウが咲いていました。
カッコソウはサクラソウ科です。正真正銘、世界でこの鳴神山にしか咲かない花です。こちらの群生地では数株しか咲いていなかったので、次のポイントに期待を込めて進みます。
肩の広場と呼ばれる少し空間の開けた場所に鳴神神社があります。
狛犬が狼なので、秩父界隈にある信仰の神社と同じなのでしょうね。群馬県にもあるというのが興味深いです。
神社の建物の正面は広場になっていて、桜が咲いていました。昔は神主さんが滞在してたんですかねえ。
山頂直下で群馬テレビが取材をしていました。
群馬県民にとってカッコソウ開花のニュースは、県民の関心毎ということがわかります。撮れ高十分なのかインタビューはされませんでしたが、「栃木県から来ました」と言ったら、間違いなく使われないでしょう。
山頂直下にある分岐点に到着。山頂方面に向かいます。
山頂付近は岩盤が露出しています。黒黄のロープが張ってあるので安心です。
山頂が見えてきました。
鳴神山の最高峰である桐生岳は360度の展望地
12時36分 鳴神山(桐生岳)山頂
山頂のスペースは、10畳ほどはあったでしょうか。カッコソウ効果なのかゴールデンウィークだからなのか、たくさんの登山者が休憩していました。
山頂は高い木が生えていないため、360度の展望があります。
関東平野側が特に開けています。霞がなければ富士山まで展望するようです。
里山には若者はいないという風潮がありますが、鳴神山には20代から30代の好青年的登山男子がかなりの数いました。
山ガールさんにもおすすめの一座。
四方八方にある山を示す看板が斬新でした。
大宮から電車で来たという青年は吾妻山からの縦走をしてきたそうです。その青年は、自分で撮影したというフォトブックをザックから取り出し、自慢げに見せてくれました。
現像した写真を持参するというのは、山中でコミュニケーションを取りやすいな感心しました。
アカヤシオが咲いていました。
前日、前々日は強風、そして雨が降ったので、だいぶ散ってしまっていたのが残念でした。アカヤシオは花びらが大きいので、開花中に強風を受けるとすぐ散ってしまいます。
簡単な昼食を終えて、カッコソウの群生地を目指します。
仁田山岳に到着。
「アカヤシオを守るために」と書かれた案内板が設置されていました。風から守ってほしかったぜ…。
道幅は細く、段差のある岩を降りて行きます。
展望台あり行ってみると群馬県を代表する赤城山が見えました。
3回ほど行っていますが、季節はすべて冬。レンゲツツジの咲く時期に訪れたいです。
強風から守られていたアカヤシオを発見しました。大粒の鮮やかなピンク色のこの花は、5月の登山には欠かせない存在です。
第二展望台と書かれた場所があるようです。寄れる場所は、寄っていくスタイル。
赤城山のお替りポイントだった。
母親は友だち(現地登山者)とガンガン進んで行きます。初対面の人とずっと会話が続いているのが理解しがたい。
女同士で話が弾むと男の居場所がなくなりますよね。
世界で鳴神山でしか見ることのできないカッコソウの群生地
カッコソウ北保護地の案内板を発見しました。
下山する道とは逆の斜面を3分ほど下ります。
樹林帯の中で自生しているようです。
カッコソウの群生地に到着です。
枯れた杉の葉が敷き詰められている地面から、たくさんの緑色の葉が出ており、紅紫色のカッコソウの花が彩っていました。
カッコソウがたくさん咲いています。
登山道に保護のためのロープが張ってあり、カッコソウまでの距離は遠いです。撮影は超望遠レンズがないと不可能です。
群生地にはボランティアの人が3人ほどいました。
保護のためのロープ設置、登山者の誘導を行っていました。貴重な花なので、盗掘被害もあるようで、そのための抑止効果の意味もあると思います。
里山は地元の有志によって守られています。
高齢化が進んでおり、この先10年後~20年後に意思を受け継いで、守っていくという人が減少するというのが問題化していくんだろうなと想像できます。
サクラソウ科ということで花の形は、夏の高山植物として見られるハクサンコザクラ、北海道で見られるエゾコザクラに似ています。
こちらは大雪山で見た、エゾコザクラ。
茎に毛が生えていて、触ってみたい…。
カッコソウは鳴神山にしか咲かない固有種ですが、四国には「四国カッコソウ」という別の固有種が咲くそうです。
カッコソウの見学を終えて、再び斜面を登り、椚田峠へ。
下山を開始。
雪山の大絶景もいいのですが、登山道の自然一つ一つをを楽しむといった観点で、春という季節が一番変化の大きい季節。黙々と下るだけの登山道にも色を添えてくれます。
清流が流れる道が続いているので、間延びせず楽しめます。コースタイム自体も3時間~4時間なので、中だるみしない。
最後は舗装道に変わり、元の登山口まで1700m歩きます。
3時間強の時間を経て、再び登山口に戻ってきました。
宝徳寺のぼたん祭り
下山後、下で待っていた父親と合流し、桐生市内へと車を走らせていると、賑わいを見せるところがありました。
宝徳寺という臨済宗のお寺です。
たまたま、ぼたん祭りが開催されており見学します。毎年、4月の最終の週末に開催されているようです。
ぼたん祭りに併せて、和傘が添えられていました。
様々な種類と色のぼたんが植えられています。このイベントを無料で見れたのは、カッコソウが早咲きしたおかげです。
観光客が混雑しない程度にいるので、賑わいながらもストレスなく、ボタンを鑑賞することが出来ました。
このお寺は風景も素晴らしく、鳴神山を奥に眺めることが出来ました。
こちらの宝徳寺は御朱印に個性的なイラストが描かれ、御朱印集めをしている人に人気らしいです。
なんか違うキティーちゃんの石像…。
以上、鳴神山を訪れた際の立ち寄りスポット、宝徳寺でした。
立ち寄りスポットをもう一つご紹介、白滝神社(しらたきじんじゃ)です。
桐生市は織物が盛んな地域であったため、織物の神「白滝姫」を祀っている神社です。社務所に人気がなかったので、GWだからやっていないのか、そもそもいないのかは謎です。
桐生の隠れたグルメ「あいすまんじゅう」と佐野ラーメン
登山後に食べるものと言ったら、そう!アイスまんじゅうですね。シロフジ製パンという店で買うことが出来ます。パン屋なのにオリジナルアイスを売っているという不思議な商売。
専用のアイスケースに入って売られていました。お値段は一つ210円と少し高めですが、手造りなので許せます。
氷が周りに付着していて、ガッチガチに硬かった。
懐かしい味というか非常に安心する味です。鳴神山の登山後に是非。
結局、食事は栃木県の佐野ラーメンになってしまうのは進歩がないところですか。
麵屋ようすけは何度も訪れているお気に入りの店です。
ラーメン一杯580円。
価格破壊とも思える値段設定でありながら、麵もチャーシューもボリューム感は十分です。
餃子一皿270円で三個ですが、ジャンボ餃子と言っても過言ではありません。野菜たっぷりで美味美味。
チャーシューが足りなくて、追加注文。口の中でトロッととろけて病みつきです。
佐野ラーメンを食べ終えれると日が暮れていました。
筑波山を正面に眺めながら、北関東道で実家のある宇都宮へと再び帰っていくのでした。
鳴神山の登山を終えて
直線距離にして数キロ程しか離れていない山でも世界が全く異なります。
道路や電車の窓から見える特徴のない山でも、不思議なもので、足を踏み入れて見ればそれぞれの山が持つ個性を感じ取ることが出来ます。
日本には平均すると標高1000m以下の山がほとんどかと思いますが。高い山は確かに目立ちます。しかし、平凡に見えても射撃がプロ級、あやとりで何でも作れるといった人間がいるように、山もそうなのです。
早池峰山のハヤチネウスユキソウ、北岳のキタダケソウと言った山岳固有種と同様に鳴神山のカッコソウは群馬県桐生市の里山に宿るとても貴重な花です。今回はろくに焦点を当てれなかったナルカミスミレも。
3時間~4時間ほどで周回することが出来、新緑がとても美しい山です。多くの花が咲き、歩いて良し、見どころも満載の里山でした。
コメント
Veryblueさん、こんにちは。
鳴神山もカッコソウも全く知りませんでした。
ちょっと記憶に留めておきます。
私は植物もまだ少ししか知らないので、いつも下山後に調べまくっています。
また山の情報はどうしても有名な山に偏ってしまうので、他の方のブログは非常に参考になります。
でも、実際に見てみたい花や、これから行ってみたい山があれば、憧れが膨らんで楽しいですよね。
だから登らずに恋焦がれるまで残しておく山があっても良いかなと思ったりしてます。
ただ、どの山を残すかが問題ですが・・・。
最後に余談ですが・・・、
LINEにもブログの更新案内を頂ければ助かります。
>あんでぃさん
鳴神山の記事読んで頂きありがとうございます。
植物を知っていると登山がより楽しくなりますね!
まぁ、ツツジと石楠花を押さえておけば5月は何とかなりますね。
毎年、あの花を見るためにあの時期に行こうと計画はするのですが、天候が悪く、来年に持ち越しということがよくあります。それは、2年も3年にも及びますので、やはりタイミングは大切です。
LINEの更新通知ですが、システム的に送信件数が限られていまして、月刊運用にしているんですよね…。
ツイッターまたはフェイスブック、Google+などではリアルタイム通知をしているのですが。
ここでナルカミスミレと紹介していますが、写真を見る限り
どこにでもあるタチツボスミレ。ナルカミスミレはヒトツバエゾスミレの
白花で、鳴神山以外にも自生地はあります。
>ナルカミスミレさん
ご指摘ありがとうございます。
この記事は眠い目をこすりながら書いていたので、あまり確認もせず書いてしまいました。
後日修正をかけようと思います。