2014年8月24日
栃木県と群馬県に跨る日光白根山に行ってきました。標高は2578mです。
関東地方の最高峰であり、これより北または東に日光白根山より高い山はありません。現在でも活動中の活火山であり、山頂は溶岩ドームで形成されています。栃木県側の奥日光では湯元温泉郷、群馬県側は丸沼高原スキー場と観光地としての役割を持つ山でもあります。
ロープウェイが運行しているため、比較的容易に登山が可能な山です。
日光白根山は2011年以来となる3年ぶりの再訪です。
8月中旬のお盆を過ぎると山は高山植物の最盛期を過ぎ、紅葉にはまだ早いと言った無為な期間という認識でした。後述しますがこれといった目的もなく選択した日光白根山でしたが、当時置かれたバックグラウンドも相まって非常に楽しいものになりました。
晩夏、緑と沸き立つ雲に包まれる日光の旅スタートです。
日光白根山について
地図
菅沼登山口を利用し、日光白根山の山頂と五色沼を周回しています。
- 丸沼高原のロープウェイ利用が一番の短縮ルート
- 菅沼登山口は早朝から出発できる
- 山頂までの1時間はかなり急坂
- 五色沼は立ち寄る価値のある場所
日光白根山 日帰り登山
プロローグ
2014年は悪夢のような夏だった。
度重なる週末の天気は軒並み悪天候で、野心的に計画を立てていた夏の登山プランは、手の施しようがないくらいに頓挫を続けていました。8月も終わりに近づき、山に行きたくても行けない抑圧されたリビドーを開放すべく、代替として日光白根山に向かったというのがプロローグです。
日光白根山を選択したのは、何となく天気が良さそうという個人的な勘で、「これが見たい!」といった決め手は特になし。登山適齢期を過ぎた8月晩夏の日光白根山に特に期待を込めずに東北道に乗り、日光へと向かいました。
急遽決まったプランだったので、今回はいつもの進化しない社畜ことSaku氏と二人です。
奥日光の戦場ヶ原で星空撮影
どういう理由かは覚えてませんが、星空撮影しようということになり、都内を早出で日光に到着しました。いろは坂の終わり際にある「明智平」にて撮影を開始。
しかし、いろは坂を爆走するドリフト族(群馬ナンバー)の轟音により、とても星空をロマンティックに眺めることなんて出来ませんでした。赤城山か妙義山でやれよと。
騒がしい明智平から奥日光の戦場ヶ原に移動。ここはさすがに静かでした。
星空撮影に適した条件下だったのか、技術のない二人でも「それなり」の星空を撮影することが出来た。深夜3時ということもあり、どんどん撮れる星の数は減っていったので、もっと早くじゃないと星は撮れないという初歩的なことを知る。
戦場ヶ原は下方に朝もやが溜まっていて、日の出まで待てば幻想的な風景が広がるんだろうなというシチュエーションでした。
しかし、午後から天気が崩れそうだったので、先を急がなければいけません。
戦場ヶ原から湯本温泉郷を通過し、金精峠へ移動。
男体山ごしの御来光(ダイアモンド男体山)を狙うも、山間における展望が足らず不発に終わりました。
それでも朝焼けにたたずむ男体山の圧倒的存在感は栃木県を象徴とするが所以の山です。
初めて登った山ということもあり、私的に毎年登りたい山の一座です。
標高1840mの高所にある金精トンネルを抜けると群馬県の領域となります。
ちなみに金精というのは…。や、やめておこう。
菅沼登山口~阿弥陀池
菅沼登山口に到着。
2年前も同じ登山口を利用しました。クラシックルートは栃木県の湯本から伸びている登山道ですが、距離も長くアップダウンも激しいので玄人向けです。一番容易に山頂に立てるのは、丸沼高原スキー場からロープウェイの利用です。
ある程度の登山キャリアを積んでいるなら、菅沼登山口が良いでしょう。
8月も終わりということもあり、花は枯れ果てているんだろうと思いきや、背の高い黄色い花の群生がありました。
「ハンゴウソウ」
本州の中部以北に咲く、キク科の多年草だとか。
5時32分 登山開始
ハンゴウソウの群生を抜けて、登山開始です。
序盤は樹林帯歩き。
光の届かない鬱蒼とした樹林帯なので、苔とキノコが目立ちます。
北八ヶ岳のような雰囲気があり、「苔萌え」という特殊な嗜好性を持つ人にとって、きっと気に入る登山道でしょう。
樹林帯に光が差し始めると蒸されて暑い。
火山ならではの岩石帯を登り続けます。
本登山において単焦点レンズ40mmを導入してみましたが、今ひとつ使い勝手がわからず苦戦。
接写することにより、対象物が際立ち、背景がボケる。付け替えの面倒さ、使い勝手の悪さで、あまり使用することがない一品になっております。
地味な樹林帯を抜けて、平坦な道になりました。
6時44分 阿弥陀池
樹林帯を抜けると突如として、日光白根山の本丸が現れます。
凪の阿弥陀池ごしの日光白根山は、秘境感も相まって心打たれる風景です。
3年前10月末の同じ場所からの撮影。
当然のことながら山肌の色が全然違い、この時は阿弥陀池に薄っすらと氷が張っていました。
太陽が登り始めると、水面が輝き、とても綺麗に反射していました。
3週間ぶりの快晴登山ということに非常に浮かれていた場面でもあります。
当初の予定では、南アルプス南部(赤石岳と荒沢岳)の縦走を予定していました。全部が恵まれた天気というのは難しいと思っていましたが、8月全ての週末が悪天になるとは想像もしていなかったです。
阿弥陀池の周囲はお花畑があります。
この花が後2ヶ月で。
こうなるというのか。
時期をずらせば全く見えるものが変わり、登山の追求のしがいがあるというものです。
尾瀬の展望が良い急斜面
阿弥陀池の畔に沿うようにして木道が整備されています。
急峻な登りを要する日光白根山で、癒やしと呼べるポイントです。
芝の変色している部分を発見。火山の成分が流れているのでしょうか。
山頂方面と五色沼方面への分岐点を山頂方面に歩きます。
高度を上げると特徴的な双耳峰が見えてきます。
福島県の端っこに位置する尾瀬の燧ヶ岳です。
標高は2356mで、東北地方で一番高い山です。ほぼ群馬県と隣接しているので、この称号は微妙と思っています…。ちなみに燧ヶ岳を抜かすと山形県と秋田県に位置する鳥海山が標高2236mで2位です。
山頂を目指します。
火山らしい岩石帯の登りが続きます。
尾瀬との中間地点に山頂付近が禿げた山があります。たぶん、鬼怒沼山でしょう。
禿げた部分は標高2020mに広がる高層湿原です。
奥鬼怒温泉郷から登山道が伸びていますが、手白澤温泉の誘惑により毎回敗退(堕落)して帰ってくる山です。
久しぶりの本格的な登りを前に、息絶え絶えです。
この日は日光から上越国境沿いの山々だけが晴れていたようで、自分の勘が冴え渡った日だった。
上越国境の風景は燧ヶ岳が目立ち、至仏山、平ヶ岳、谷川岳、巻機山といった山の区別がつかないんだよな…。
登りの道中、如何にも登ってくれと言わんばかりの岩があります。
我々の業界では「登るべき岩」と言います。
見た目の割に登りやすく、先端においても安定感のポージングが可能です。
奥に見える山は上州武尊山です。
こちらは残雪期に登り、道に迷った挙句、撤退したという経験があります。
武尊山へは2か月後、紅葉の季節に登っています。
満足。
定員一名ですが、確実に抑えておきたい岩です。
きつい登りが終わり、広大な山頂に到着です。
山頂を奥に進んでいくと日光方面の景色が広がります。
男体山と中禅寺湖は日光に必要不可欠な自然造形物。中禅寺湖方面から日光白根山を見ても、特徴がつかめなかったりします。
夏空の日光白根山山頂
8時9分 日光白根山山頂
登山口から約2時間40分で山頂です。程よい長さとコースの充実度が素晴らしい。3年前と同じコースを辿っているはずですが、初めてのような感覚で楽しめました。
関東最高峰ということで、山頂からは遮るもののない抜群の風景。
こちらは日光方面。
群馬新潟方面。
奥会津方面など360度の景色を眺めることが出来ます。
ちなみに前回来た時は晩秋の澄んだ空気ということもあり、富士山を見ることができました。
栃木県の最高地点で飲む「レモン牛乳」は美味。賛否両論を呼ぶ甘ったるい味です。
他県の人に認知されるようになりましたが、昔は県内の小学校や中学校で、運動会や文化祭の時に特別に給食で出される牛乳でした。
山頂から男体山を結ぶ方角にある突出した絶壁は収めておきたい一枚です。
断崖絶壁の下に見えるエメラルドグリーンの池は五色沼です。
関東平野から襲い来る厚い雲を男体山がガードしてくれていたため、日光白根山にいる我々が快適な登山をすることができました。
雲に巻かれる男体山に感謝の意を。
前回も同じように撮っていました。
男体山の紅葉が麓に降りていくような状態が印象的でした。
男体山は完全に雲に包まれていました。
日光白根山という選択、そして早朝でという選択は限りなく正解でした。
燧ヶ岳を狙撃するベトコン。
出張でベトナムに行ったSaku氏は、現地で購入したTシャツと帽子でベトナム兵に扮するのがブームでした。
山頂から少し降りた場所には日光白根山の奥宮があります。
山頂の火口は、何かのステージのように正円。
相撲などしたら良いのではないでしょうか。
山頂を後にして下山を開始します。
下山のルートは五色沼を経由します。
砂礫の道なので滑りやすく、転びやすい道が続きます。
「イワギキョウ」
「ハクサンフウロ」
8月に咲いているイメージだけど、9月も咲いているんですね。
「トリカブト」
たくさんの高山植物がまだ咲いており、登山口で見たハンゴウソウの群生が広がっていました。
前回も同じ道を歩きましたが、こんなに花が咲く山だったと知り衝撃です。
秋や冬に登った山は、夏に登り直すと違った見え方がします。
避難小屋があります。
栃木県の湯元側から登る場合、コースタイムが長くなるので利用する人がいるようです。
神秘の五色沼
9時34分 五色沼
山頂が遮るものがない展望地ですが、五色沼は山に囲まれた景勝地です。 風によって水が波打つ音しか聞こえないとても静かな場所です。
近づくと無色透明なのに、遠ざかると緑色に見える不思議な沼です。
少し風があったため輪郭にジャギーがありますが、綺麗な逆さ白根山を見ることができました。
紅葉最盛期になる時期に来たら五色沼が真っ赤もしくは真っ黄に見えるのでしょうか…。
避難小屋に泊まって夕焼けに染まる白根山と五色沼とか乙なものかもしれません。
五色沼から阿弥陀池に向かいます。
ちなみに前回は五色山から金精山を経由して少し長めに歩きました。藪漕ぎと痩せ尾根で難儀した上、枝に思い切り頭を突き刺して流血したっけ…。
五色山からは五色沼と白根山(本体)をセットで捉えることができます。
五色沼から阿弥陀池に向かうルートがまさか登りになっているとは思わなかった。
登る気力と心構えなんて、山頂を後にした時に捨ててきたので、パンチ効いた道でした。
この道にはでっかいヘビイチゴが自生していました。
再び阿弥陀池に戻ってきました。
ホントにこの場所は良い。
男体山によって雲の襲撃から守られていた山頂に雲がかかっていました。
11時20分 下山完了
トータル5時間30分とは思えない充実した内容の登山でした。登山口に到着すると同時に小雨がパラつき始めたので、完璧に天候を読んだ自分に花丸をつけたい。
菅沼登山口はレストハウスとほぼ併設しています。
個人的に何度も訪れている場所で、毎回ここで何かしら食べてます。
プリっと大きいヤマメの塩焼きは食べてしかるべき一品です。
500円くらいだったかな?
日光湯元温泉と天然かき氷
県境を跨いで再び栃木県の湯元温泉郷に移動。
湯元には日帰り入浴施設はなく、旅館の日帰り入浴を利用することになります。本日は日光休暇村の日帰り入浴を利用です。営業時間が12時~16時と限定的なので注意が必要。
湯元の温泉は乳白色で、硫黄の匂いが服に残るくらいに濃厚。
自分が経験した中では一番かもしれない。
入浴後は休暇村のカフェスペースで日光天然氷のかき氷を食べました。
天然氷は都内の喫茶店に降ろされて、おしゃれなかき氷ブームの火付け役です。温泉後に食べるかき氷はクールダウンにもなるし、口がさっぱりするしで、鉄板の美味しさです。口どけが滑らかで、水の良さからなのかいくらでも食べることができます。
竜頭の滝でカメラ技術向上を図る
かき氷を食べた後は、少しの仮眠をはさみ竜頭の滝で寄り道。
滝のバルブ撮影を敢行。
シャッタースピードを遅くして、水の流れを撮影する技法を試す。
そこそこの撮れ高でしたが、遮光するレンズフィルターの必要性を感じました。
雲から守ってくれた男体山に別れを告げ、いろは坂にて奥日光を後にします。
日光からの帰りでも味わえる、ぎょうざ専門店「正嗣」
栃木県=餃子というのは、もはや関東に定着しているイメージであり、今回の旅においても餃子を食べることと相成ったわけです。正確には宇都宮が餃子の街なのですけど。
日光下山後に一番近い餃子専門店は「正嗣」今市店です。
「え?ライスないの?」
と衝撃を受けるSaku氏。正嗣はライスやビールと一緒に餃子を食べるならテイクアウトをして家でやれ、というのが基本方針なのです。イートインはおまけであり、メニューは焼き餃子と水餃子の2品のみです(一皿210円)。
栃木県は「正嗣」と「みんみん」の2大餃子店舗があり、県民はそれぞれの派閥に属しています。自分はどっちかというと正嗣派。派閥についての話は長くなるし、他県民には理解し難いので、興味があれば検索してみてください。
ちなみに本ブログにこの店舗が登場するのは2回目だったりします。
日光天然氷 蔵元「松月氷室」
餃子で脂とにんにくまみれになった口内をさっぱりしたい!ぴったりの食べ物があります。天然氷のかき氷です。
下今市には、松月氷室という天然氷の蔵元の直営店があります。
正嗣からは車で10分かからないくらいの場所に店舗があります。本店と新店があり、新店(旧セブンイレブンがまるわかり)の方が並びが少ない気がします。閉店間際に訪れて、最後の整理券をゲットするというタイミング。
どれもこれも引かれるばかりの豊富なメニュー数です。値段は400円~700円。Saku氏はフルーツミックス、自分は生レモンを注文しました。都内の喫茶店で提供されるソースよりは単純なものですが、特製なのでこだわっています。
日光登山後には定番化確実でしょうか。
登山がいつの間にかグルメ旅行に変わっていましたが、行動時間22時間を経て、東京へと帰りました。
日光白根山の登山を終えて
登山時間は5時間弱と短く、お互い2回目の再訪の山。
天候だけが決め手という理由で訪れた日光白根山は、他の山旅と比べれば薄れやすい記憶になるはずでした。しかし、都度あるごとにその後の語り草になる今回の日光白根山の旅は、一つのターニングポイントがありました。
同じ山でも季節を変えれば楽しめる「再発見があること」を発見したということでしょう。
9月になっても暑い日は続きます。子供の頃に刻まれた8月の終わりは夏休みの終わり、つまり夏の終わりとしていつまでも刻まれています。やはり、8月を楽しんでこその夏。に
地元栃木の日光白根山ということもありますが、自然の中を駆けずり回って、かき氷を食べるという極めて夏休みを満喫した一日でした。ただの週末だけど。
そして、失われた夏を取り戻す一日になりました。
2011年日光白根山の記事
そして、Sakuさんのブログ記事も併せてご覧下さい。
コメント
わたしも日光白根山は登ったことあるのですが、veryblueさんは前後の星空撮影会、日光の滝鑑賞、正嗣の餃子と、盛りだくさんのスケジュールで、ほんとに同じ山なのかしら?と不思議な気持ちになりました。
すごい行動力ですね!
>まゆさん
あまりにも眠くて温泉後は1時間寝ました。
日光白根山というより、1日に出来ることを追求した結果です。ただ、かき氷二杯というのはやり過ぎた感はありました。